素薔薇しく困惑するゲームの数々
なぜ普通のキノコを2つ用意したら「どくキノコ(▲999)」に変わるのか
本日は七夕であり、短冊に願い事を書いて吊るしておく日でもあります。個人的には短冊に「会社の売上が増えますように」という、まことにプリミティブな願いを書いておこうと思う次第ですが、こうしたなか、そんな七夕にふさわしいさわやかな話題を探していたところ、ちょうど良いものが見つかりました。
知的好奇心を刺激する「ビアフロ問題」
当ウェブサイトではこれまで、政治、経済、金融、外交などさまざま分野について、「読んで下さった方々の知的好奇心を刺激する」ように心掛けた記事を掲載して来ました。それが結果的に読者の皆様の知的好奇心の刺激にいくぶんでも役立っているならば、本当に幸いです。
ここで、「知的好奇心」と呼ぶのには、理由があります。
世の中のありとあらゆる問題には、「答え」があるとは限りませんし、それを主張する人の立場によって、前提条件も変わります。
たとえば、当ウェブサイトでこれまでかなり力を入れて議論してきた「ビアフロ問題」が、その典型例でしょう。
これは、1992年に発売されたスーパーファミコン(SFC)用のゲームソフト『ドラゴンクエストⅤ』において、ストーリーを進める途中、主人公が「幼馴染」か、いきなり出現した大金持ちの娘か、そのどちらかを妻に選ぶ、という問題のことです。
これに関しては、当ウェブサイトでもさまざまな意見が分かれている論点のひとつですが、立場によって「答え」が変わります(※なお、リメイク版で登場する女性に関しては、当ウェブサイトではあえて議論しないことにしたいと思います)。
あえて批判を恐れずに申し上げるなら、「幼馴染」といいながらも、現実のゲームでは幼少時に一緒に「お化け退治」をしただけのキャラクターに感情移入できるかという問題はあると思います。
ただ、著者自身がさまざまな手段でアンケート調査を行ったところ、やはり「金持ちの娘」よりも「幼馴染」を選好する、というパターンが多いようです(図表)。
図表 あなたはどちらを選びますか?
(【出所】著者作成)
バカゲーというジャンル
さて、アニメ、マンガと並び、わが国が誇る文化のひとつが、ゲームです。
といっても、個人的には最近のゲームにはあまり詳しくないのですが、その代わり、個人的に「異常に詳しい分野」のひとつが、「バカゲー」と呼ばれる領域です。
この「バカゲー」、もともとは『美食倶楽部バカゲー専科』や『美食倶楽部バカゲー専科2』などで提示された概念です(ちなみに刊行年月は『美食倶楽部バカゲー専科』が1998年12月、同2が2000年12月、同3が2003年2月です)
【参考】【重要】『美食倶楽部バカゲー専科』
(【出所】アマゾンアフィリエイトリンクより)
【参考】【重要】『美食倶楽部バカゲー専科2』
(【出所】アマゾンアフィリエイトリンクより)
【参考】【重要】『美食倶楽部バカゲー専科3』
(【出所】アマゾンアフィリエイトリンクより)
いまや絶版になっているに違いない、と思い、アマゾンのリンクを覗いてみたら、なんだか普通に売られていて驚いてしまいます。
どれも刊行年が古いので、収録されているものも非常に古いのですが、どれも大変参考になり、また、勉強になる記事ばかりです。端的にいえば、「おバカなゲーム」というジャンルを確立したのが、同著の功績だからです。
ほっほっほ ここは私の実家なのです!
これらの書籍、ポイントは、単なるゲーム紹介に留まらない、という点にあります。すべてのタイトルに余計なヒトコトがついています。たとえば、前世紀に刊行された『美食倶楽部バカゲー専科』の10ページは、こんな具合です。
世界名作劇場・地獄変 小公子セディ(同P10~)
ちなみに『小公子セディ』は1970年代(※論者によっては1960年代)から1997年3がつまで続いた『世界名作劇場』の1編として、1988年1月から12月までフジテレビ系列で日曜日の夜などに放映されたアニメ作品です。
原作者のバーネット夫人は1849年生まれで、問題の『小公子セディ』、1886年に発表された作品であり、原題は “Little Lord Fauntleroy” で世界的な名作とされていますが、ゲーム版の小公子セディは強烈です。
「タイトル画面で、いきなり頭を暗いものがよぎる。『ニューゲーム』『コンティニュー』に相当する部分が『はじめまして』『おかえりなさい』になっているのだ。これはもしや、『ミョーなところに凝っている』というバカゲーのお約束では…」(同P10)。
いったいなにがどう強烈なのか。
どうもこのゲームの目的、主人公のセディさんが母親を探すことにある(らしい)と気付く評者、町を出るとドラクエっぽいフィールドマップで通行人がいきなり突進してきて、こう言い放つのです。
「ほっほっほ。やっとみつけましたよ セディさん さあおべんきょうしましょう」(同P11)
じつは、敵キャラがこの家庭教師で、しかも通常のRPGにありがちな戦闘画面が「クイズ」なのだとか(ちなみに敵キャラを避けるためにはジャンプボタンを押す必要がありますので、ご注意ください)。
では、どんな問題が出題されるのでしょうか。
きっとアニメ版『小公子セディ』や原作 “Little Lord Fauntleroy” にちなんだ問題が出るに違いない…と思っていると、面食らいます。
「クイズの内容がまたすごい。『リヒテンシュタインの首都は?』などと聞かれて、即答できる子供の方がどこか間違っていると思う(ちなみに正解はファドツ)。クイズは地理や歴史の問題が中心で、もちろん原作やアニメとは全く関係ない」(同P12)。
なるほど。
ちなみに感動のラストシーンは、こういう具合です。
「川上の代官に会うべく、門番小屋をたずねるセディ。だがそのまえに、最大の宿敵が立ちふさがった…『ほっほっほっ ここは私の実家なのです!さあ おべんきょうしましょう!』」(同P16)
では、いったいいかなる「お勉強」がなされるのでしょうか。
続きを読んでいきましょう。
「ここまでくると、クイズの答は完全にわかっているので、もはや家庭教師など相手にならない(中略)しかしふと『バナナはアルカリ食品、日本と初めて国際電話がつながったのはシンガポール』などというどうでもいい知識を大量に刷り込まれている自分に気付き、嫌な気分になる」(同P16~17)。
先が思いやられますね。
素薔薇しいシステム
さて、こうしたなか、最も重要な概念は「素薔薇しい」、です。
「素薔薇しい」美食格闘アクションゲーム 美食戦隊薔薇野郎(同P18~)
これは、簡単にいえば、いまでいう格闘ゲームの走りのようなもので、敵と戦い、ステージクリア後に敵が落とした食材を必ず2つ組み合わせてサイバーシェフに料理を作ってもらい、それを食べてライフを増やしたり減らしたりすることができる、というシステムなのだそうです。
なかなか素薔薇しいシステムですね(「美食戦隊」は「グルメせんたい」と読むのだとか)。
ちなみにパターンとしては、次のとおりです。
- ぶたにく+こめ=かつどん
- たまご+こむぎ=スパゲティカルボナーラ
- トウガラシ+やさい=キムチ
(【出所】同P22)
なるほど。
要するに、素材を2つ組み合わせて料理を作る、というわけですね。経済学的な用語でいうところの「中間素材」というやつでしょう。
ところが、この素材の組み合わせ、なかにはこんなパターンもあります。
- ぎゅうにく+かい=やきハマグリ
- きのこ+えび=やきエビ
(【出所】同P22)
…。
なぜ「牛肉」と「貝」を組み合わせたら「やきハマグリ」になるのでしょうか?「きのこ」と「えび」で「やきエビ」のくだりも、なかなか何度は高めです。
これについて同著では、次のような解説を加えています。
「これは肉やキノコを燃料にして焼いているという説が有力である」(同P22)。
こういう細かい解説が加えられているのも同著の大きな魅力でしょう。
こうしたなか、さらに参考になるのが、こんなパターンです。
- アイス+こめ=アイスクリームどん
- さかな+アイス=さかなアイス
- きのこ+きのこ=どくキノコ
- (【出所】同P22)
なぜそこまでして混ぜる必要があるのでしょう。アイスはアイスで食べればよいのではないでしょうか?なぜ魚とアイスをわざわざ混ぜる必要があるのでしょうか?
それになんですか、「どくキノコ(ライフ▲999)」って…。
同著は、「普通のキノコを2つ用意して、どうやって毒キノコを作るのかはさだかではない」としつつ、次のように指摘します。
「そもそも料理じゃないだろう、それは。」(同P22)
同感。
【参考】きのこ
(【出所】林野庁『きのこのはなし』)
問題点はまだまだあるが…
さて、本稿ではほかにも取り上げたい論点は多数あるのですが、これ以外の素薔薇しいネタにつきましては、またおいおい、提示していきたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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7月7日に始終苦笑のネタを・・。
素薔薇しくって好きです。
キノコの毒性は、2本を食すると中毒量に至るのかもですね。
ビアフロは出自や関係性ではなく「活発な娘か、お淑やかな娘か」と捉えていましたわ。そして私は「好きな色」の方を選びました。設定ガン無視。甦れドット絵文化。
ウナギ+ゼリー=ウナギゼリーな国もあるようですし、きっとどこかにサカナアイスもあるんでしょう。冷凍輸送時はサカナアイスみたいなもんだし。
会計士様が、この本を読んでいるとは。
たしか、ゲーム批評という雑誌にコマーシャルが載ってて、買った記憶があります。
ゲームの内容もそうですが、解説がまた面白い。
話のネタに、思わず買ってしまった「里見の謎」と「デスクリムゾン」が今ではいい値段になってるのが驚きです。
この3冊は、今買って読んでも損はさせないクオリティーです。
ブックオフに偶に落ちてるので見かけたら手に入れましょう。
毒キノコというとスギヒラタケ騒ぎを思い出します。
https://shinjukuacc.com/20201003-00/#comment-126931
大丈夫だったのかなあ。
ゲームは『三国志』が素薔薇しかったです。
でも、『三国志』は何度が高いです。
コメント失礼します。
私は超クソゲーシリーズを何冊か読みました。洋ゲーのポスタル、カーマゲドン、モータルコンバットとかはグロ過ぎてかえって可笑しかったです。
ニコニコで「大冒険 セントエルモスの奇跡」の動画を視た事が有りますが、あまりにも退屈で最後迄視れなかった次第。
大勢の人間が時間とお金掛けて作るのに変なゲームが出てきてしまう不思議。面白いのならまだいいのですが、そうでないやつもそれなりに出てくるのがなんとも。