普段から当ウェブサイトでは、新聞、テレビなどのマスメディアの報道に関し、ときどき、大変に的外れで無責任な言説が出て来ることがあると警告して来ているつもりです。その典型例でしょうか、数日前の日経が「日韓は地域安定へ対話探れ」と題する社説を掲げました。「日韓」を「韓日」に変えたら、そのまま韓国メディアの社説として通用しそうです。
日経社説「日韓は地域安定へ対話探れ」
こ当ウェブサイトで普段から申し上げているとおり、現在の日韓関係は破綻の危機に瀕していますが、日韓関係をここまで壊したのは、韓国側の不法行為の数々であり、関係破綻を回避するためには、次の3つしか方法がありません。
日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
- ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
- ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する
身もふたもない言い方ですが、①は期待できません。したがって、残る選択肢は②と③のどちらか、というわけですが、そのどちらを選ぶかを巡っては、私たち日本の側にも覚悟が求められるのでしょう。
こうしたなか、とある人から、「2日前の日経の社説が酷い」と聞きました。
そこでさっそく読んでみたのですが、たしかにこれは、「韓国メディアの記事か」と勘違いするほどの記事です。
[社説]日韓は地域安定へ対話探れ
―――2021年6月15日 19:00付 日本経済新聞電子版より
社説自体は800文字程度と、たいした長さではありません。しかし、破壊力は満点です。「有料会員限定記事」とのことですが、失礼を承知で申し上げるなら、「よくこれでカネを取ろうと思ったな」と思ってしまうほどのレベルです。
冒頭、G7で日韓首脳会談が実現しなかったことに関し、日経社説はこう述べます。
「(菅義偉総理が韓国を)『重要な隣国』と位置付けるなら、首脳間でメッセージを直接伝えあうべきではなかったか」。
自称元徴用工判決問題が発生して2年半が経ちます。そもそもこれ以上、何のメッセージを伝える必要があるというのでしょうか。
もともと、対話を無視したのは韓国の方だ
この社説を書いた人物はご存じなないようなので、教えてあげましょう。日本政府は2019年1月、韓国政府に対し、日韓請求権協定第3条(1)に基づく外交協議を申し入れ、4ヵ月ほど韓国政府に時間を与えました。
韓国はその間、日本の対話呼びかけを無視した挙句、李洛淵(り・らくえん)首相(=当時)が2019年5月15日、「韓国政府にできることには限界がある」と匙を投げてしまったことを受け、やむなく日本政府は20日、同(2)に基づく仲裁手続への付託を通告しました。
韓国政府がこの付託を無視し、期日(6月19日)までに手続に応じなかったため、日本政府が同(3)に基づく第三国仲裁への付託を通告したにも関わらず、韓国政府はこの第三国仲裁の手続すら黙殺しました。
しかもその間、G20大阪サミットで文在寅(ぶん・ざいいん)大統領が訪日する機会があったにも関わらず、文在寅氏は手ぶらで日本にやってきたのです。安倍晋三総理大臣が文在寅氏との首脳会談を行わなかったのも、日本との外交協議を無視したのが文在寅政権の側だったからでしょう。
さらには、日本政府が2019年7月1日に発表した、韓国に対する安全保障上の輸出管理体制の変更(厳格化ないし適正化措置)に対し、韓国政府は日本が求めた政策対話に応じるどころか、むしろ日韓GSOMIA破棄を持ち出すなどし、徹底的に日本と対決しました。
こうした経緯を一切無視し、なにが「首脳間でメッセージを伝えあうべき」、ですか。
韓国は安保パートナーとして信頼に値しない
日経社説の問題点は、まだまだあります。
今回のG7議長国である英国が韓国をゲストとして招いたことについて、「米欧が関与を強めるインド太平洋地域で民主主義や法の支配などを守るには、韓国の役割が重要だとみているからだろう」、と分析しています。
ではお伺いしますが、韓国は「法の支配」、「国と国との約束を尊重すること」、「国際法秩序に従うこと」を守っているのですか?この事実を無視し、「民主主義や法の支配を守るために、韓国の役割が重要」とは、議論としてはちょっとお粗末すぎます。
ただし、日経のこんな社説が出て来てしまう背景には、現在、「日米韓3ヵ国連携」という「建前」を、日本としてはまだ捨てることができていないからです。
そして、その責任は、必ずしも日本政府にあるものではありません。米国、とくにジョー・バイデン政権が、「日米韓」という枠組みに、強くこだわっているという事情があるからです。
ただ、文在寅氏が4年あまりの期間になしたことを思い出すと、現在の韓国が北朝鮮の非核化を実現するうえで、あるいは軍事大国として野心を膨張させる中国を牽制するうえで、日米両国にとって「頼りになるパートナー」たりうるのかは、大いに疑問です。
韓国は中国に対し、2017年に「三不の誓い」(高高度ミサイル防衛システムを追加配備しない、日米韓協力を同盟に発展させない、米国のミサイル防衛システムに参加しない)を差し入れました。
また、2017年に国連安保理で北朝鮮制裁が2回決議されていますが、これらについても、欧米やASEAN諸国に対し、「北朝鮮に対する制裁の緩和」を呼びかけて回ったのは、ほかならぬ文在寅氏ご本人です。
こうした状況を無視し、さすがに次の文章は、支離滅裂です。
「朝鮮半島の平和と安定を最優先する文氏は隣国である日本の役割も期待し、関係改善に意欲を示している。首脳会談を実現して、その糸口を探る狙いがある。(中略)緊張が高まる地域情勢に猶予はない。若者の交流にも悪影響を及ぼし、将来世代にツケを残すなら無責任だ」。
現在の日本が、文在寅政権という信頼ならない相手が率いる韓国を「重要な隣国」と呼んでいることを批判するならば、話はまだわかります。しかし、文在寅氏の一連の行動を批判せず、「日韓首脳会談に応じない」という日本の表層的な行動を批判するのは、明らかにおかしな話です。
徴用工「却下」、だから何なのですか?
さて、今月7日、韓国のソウル中央地裁は、自称元徴用工の集団訴訟を却下しました。
これについては当ウェブサイトでは、6月8日時点の『徴用工判決「却下」を対日配慮と見るべきではない理由』で、「『この訴訟は韓国における司法判断がまともになった証拠だ』、といった主張が出て来るに違いない」と報告したとおり、この日経社説にも、こんな趣旨の記述があります。
「元徴用工訴訟をめぐり、7日のソウル中央地裁は原告の訴えを却下し、日本企業に賠償を命じた大法院の判決とは異なる判断を示した」。
だから何だというのでしょう。
『韓国の裁判所の「変節」に一喜一憂すべきではない理由』でも指摘しましたが、この件についてはすでに、韓国側で控訴されています。日経社説の公表が6月15日夕方7時だそうですが、控訴の報道はその前日までに出ていました。
社説の執筆者に日本語が読めるなら、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に前日掲載されていた、次の記事を、読んでいないはずがありません。
韓国強制労役被害者、日本企業相手の損害賠償訴訟却下で控訴
―――2021.06.14 16:01付 中央日報日本語版より
いずれにせよ、日経という、いちおうは日本で最も影響力がある(とされる)新聞が、こんな社説を掲載したこと自体、無責任でもありますし、大変に残念な話でもあります。
さて、日経の報道が問題だらけであるという点は、まだ社会的に認知が進んでいるとは言い難い状況ではあります。
実際、日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏が日本経済新聞社出身であるという事実を指摘するまでもなく、日本経済新聞社にはまだまだ優秀な書き手が在籍していることも事実でしょう。
もっとも、財務省が大好きな「国の借金論」の片棒を担いでいるメディアのひとつが日本経済新聞社でもありますし、『早いもので、ウェブ評論を始めて10年が経過しました』などでも報告したとおり、日経は過去に、シャレにならないレベルの誤報事件などを発生させています。
2005年の「SMBC・大和証券経営統合」誤報事件や2008年の「時価会計停止」捏造報道事件を知っている身としては、日経の記事にも、ときとして慰安婦問題を捏造した某メディアと大差ないクオリティのものが紛れていると考えるのです。
なにより、現在は「捏造メディア」として経営難に突き進んでいる某新聞の場合も、今から10年前は、社会でわりと信頼されていたという事実も、忘れてはなりません。
社会のネット化が進むなか、日本経済新聞社は比較的、ネット戦略で成功しているメディアのひとつではあります。しかし、出版不況、新聞不況のおり、日経新聞もこんな社説を出していると、もしかしたらこれから10年後には社会的信頼を失っているかもしれませんね。
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これは酷い....。この前は社外の人が寄稿した、異様にK国バイアスのかかった記事が載って驚きましたが、今回は中の人ですか。つい先日、私の業界のニュースで誤報記事がありましたが、修正記事は確認出来ていません。事実ベースで作成されるはずの記事ですら、誤情報が修正出来ない、或いは気づくように記載されない現実がある中で、主観で作成される社説など信頼に値しません。
朝日毎日東京ではなく、日経までもが、このような社説を出すとは、残念ですね。これを読んだ韓国民は、頑張ればそのうち日本が折れてくると、勇気百倍でしょうからね。そういうなら、いわゆる被害者や現状の韓国民が納得して、日本が受け入れ可能な”案”を、日経が考え出してみるべきでしょう。そうやって日本が”原罪意識”から譲ってきた経緯が、今日の韓国の無法を生んだことを理解していないとしか思えません。まだまだ新宿会計士さんに頑張ってもらわないといけませんね。
taku様
早速韓国でも日経の記事が紹介されています。
ホルホル顔が目に浮かぶようです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/86f282b1269c2ab8341962e1eb3b7fdc4ecfc6e1
今どき日経新聞に何を期待しているのですか?
共産チャイナが「解放」経済へと転換したら、共産チャイナへの進出や投資を煽って幾多の中小企業経営者を自殺に追い込み日本の貴重な技術を大量に奪われる原因を作った新聞を。
それだけでなくバブル経済の時も冷静な分析をせず狂乱の土地高騰が更なる高騰を呼ぶぞ、不動産への投機こそ金儲けのチャンスだ、と言わんばかりに煽りに煽って大量の倒産や自殺者を生み出したのも日経でしたし。
>首脳間でメッセージを直接伝え合うべきではなかったか。
日本経済新聞に、「それで何とかなると思っているか?」と問い詰めいたい。
第一に、韓国のメッセージは菅総理にも伝わっているし、当然日本のメッセージも文大統領に伝わっているはずです。
早々に日本と対話したがっている韓国の側が、それ以上の話を持っているなら、事前に話をもってきてしかるべきです。
日本は韓国に対して、新たに伝えたいことなんて無いのです。
単なる立ち話にしても、三権分立など騙って国際法を犯す韓国司法を擁護し、繰り返し両国間の約束を破るような韓国大統領とするのは、時間の無駄です。
日本の首相をはじめG7に出席している韓国以外の要人は皆さん忙しいのです。
韓国の大統領は、写真撮影までの待ち時間なのか知らんけど、そんなに時間が余っているなら、一人でイギリス流のクラブサンドを食べにどっかに行けば良いのであって、そんな時間つぶしができなかったことの腹いせを日本にぶつけられても迷惑千万。
韓国も日経新聞も、G7の邪魔するな、ということです。
日経も中途半端に政治を扱わずに 経済にもっと特化しないと 朝日、毎日のようになりそう。まあ 新聞社内の士農工商はありそうだが。
>まあ 新聞社内の士農工商はありそうだが。
日経では財在華日かも知れません。
財:財務省の代弁者
在:在日朝鮮半島系の代弁者
華:中共の代弁者
日:普通の日本人
但し、NHKのダイベンシャも何処かに紛れ込んでいるかも。
なるほど。おっしゃるとおりだと思いました
目先の利益を失うと経営者で無くなるせいか、経済界は韓国に甘々ですよね。
一体中国と切った貼ったになる時は、どうなることやら。
日経の記事は、経営者向け。この内容に賛同する経営者は、少なくない、多分多数派の様に思います。
>朝鮮半島の平和と安定を最優先する文政権
朝鮮半島の平和と安定が、周辺地域の安定をもたらすという論理の人も多数派だと思います。
朝鮮半島の平和と安定は、日本の安全保障上の脅威になると言う日本人は、現時点で少数派でしょう。
韓国を敵国とする認識が、平和ボケの日本人には薄いんだと思いますね。
だんな様
私も、似たような感想を持ちました。
経済界には、いまだに「韓国に儲けさせてもらっている」という企業、人がたくさんいるんでしょうね。
ネット上では、向こうの言動、振る舞いを問題視する厳しい意見がほとんどなので、つい、日本では圧倒的多数が向こうに厳しいと思いがちですが、実社会はそうではないと肝に銘じる必要があると思い直しました。
とくに、NO JAPANの標的になったビールやユニクロなどと違い日常生活で目に触れることがない中間財関連の企業だったりするうと、ネット民が実態を把握するのは難しいでしょう。
とはいえ、理屈に合わないことに唯々諾々と従う必要はないわけで、向こうはもちろん日本国内からも、おかしな主張や言いがかり、難癖を付けてきたときは遠慮なくツッコミを入れて反論しなければいけないとも、あらためて思いますね。
もはや向こうの言ってることは単なるワガママの域を超えて、戦後の国際秩序を壊しかねないレベルに達しているので、筋の通らない向こうに甘々な意見に対しては地道に厳しく批判していくしかないでしょう。
かつて知韓派として知られた豊田有恒先生は、最近の彼の国に痛く失望されて批判する書籍をいくつか著していますが、その中で「彼らと付き合う際に、史実に合わないおかしなことを言ってきたら、面倒くさがらずに、ちゃんと反論しなければいけない」ということを書かれているのが印象に残っています。
だんな 様
徳明 様
日経の記事は私も読みましたが、なんだかなあ~というのが感想です。
日経は経済界の代弁者なので、韓国との断交はやはり困ると言うのが財界の本音なので、そう書くのは理解できます。
企業は儲けて社員・株主を喰わさなければなりませんから、理想ばかりを追いかけていけないのでしょう。
こちらに集う(理想に燃える)諸兄諸譲とは立場が違うのは仕方ありませんね。
でも財界の代弁者である以上、儲けが無いと判れば損切りに出ろという論調に代わると思います。
そういう所は韓国の代弁者たる某朝日新聞とは違うと思います。
因みに今日の記事は、半導体分野で韓国から台湾に比重が移ると言うのがありました。国際政治の方向次第でしょう。
ひどいですよね。まあどこかから圧力がかかったんでしょうね。紙だと土曜日の朝版の社説ですが、土曜日の日経の社説を読んでる人は少ないと分かった上で、社説に載せました、と言う事ができる。信頼低下も最低限に抑えれるとふんだ(そうかな?)。某捏造新聞ほどではないですが、そんなものじゃないかなあ、と。あくまで私の個人的な妄想ですが。
追記。土曜ではなく、水曜の間違いです。
ごめんなさい、修整してお詫びいたします。
経団連には「諦めて損切り」という選択肢を採りたくないひとたちがマダマダ居るんでショーカねェ?
これ、紙の新聞ですと、16日水曜日の朝刊なんですよね。なので、土日説はとれないですねぇ。それにしても、新聞って何故、決まったページ、まとまった紙面で修正記事を載せないのでしょうね? 他業界みたいに経営陣が揃って頭下げるシーンを自演できるようになったら、やっとこの業界も常識ができたか、と思えるようになる気がします。
あ、ごめんなさい。
完全に曜日間違えました。
雁首揃えて頭下げればいいものでもないと思うが マスコミはそれ以前ですね。まずは これから。
お疲れさまです。
ハンギョレ新聞キルユンヒョン氏は、名前入りで記事を書くのでそのことについては、私は立派だと思います。
恨の気持ちを理解せよ。というのには、ついていけませんが。もう日本は、日韓基本条約の時にやるだけやってます。それ以上というのは、受け入れられないです。
日経新聞は名前入りでは書けないのでしょう。
それではじり貧になるのではないでしょうか?
>恨の気持ちを理解せよ というのには、ついていけませんが。
同感です。
これって、絵にかいたような『自己愛性パーソナリティー障害者』、又はそれの取り巻きのセリフですからね。
私が思うに、集団・国家としての韓国は無視できない頻度で『自己愛性パーソナリティー障害』の症状を晒します。
シロウト考えでは、朝鮮半島特有な各々が「自分は優秀で正義であるからなにをしても正当化出来る」と思い込んでいる故の個人間の葛藤と価値観の不安定性がパーソナリティー障害者を量産してしまうのだと考えていますが、『自己愛性パーソナリティー障害者』の周りには往々としてそれに呼応する方々がいらっしゃるので要注意です。
>『重要な隣国』と位置付けるなら、首脳間でメッセージを直接伝えあうべきではなかったか
韓:お互い知恵を出し合うニダ。
日:国内問題として対処してね。
↑ん???『重要な隣国』だからこそ、日本はきちんとメッセージ(知恵)を発しているんですけどね・・。
もっとシンプルに考えると、そもそも重要な隣国だなんてこれっぽっちも思ってなかったというだけの事かもしれません。