さきほどの『英G7サミット、日本にとっての「成果と課題」とは?』とは別件で、もうひとつ、G7ネタです。日経が「日本はアジア唯一のG7参加国として、G7拡大に反対している」などと報じましたが、これは分析としてトンチンカンと言わざるを得ません。これに加え、今回のG7では「日韓首脳会談」「日米韓3ヵ国首脳会合」が実現しなかったそうです。それにしても良かっ残念でした。
菅総理、ぎこちなかったが…
菅義偉総理大臣が参加した、英・コーンウォールでのG7首脳会合(サミット)が閉幕し、菅総理は帰国の途に就きました。
個人的に、今回のサミットについては、「少なくとも米、英、仏、豪あたりとの連携が確認できれば良い」、「あとは5月のG7外相会合よりトーンが後退しなければ成功」くらいに考えていました(『日本は米英仏加欧豪印等と友好や連携を確かめてほしい』等参照)。
理由は、菅総理にとっては今回のサミットが事実上、初めての多国間会議であり、まずは場に慣れてもらうのが大事だという点に加え、すでに「露払い」役として、茂木敏充外相が5月の会合でそれなりの成果を上げているからです(『【資料】G7外相会合コミュニケ』等参照)。
あるいは、当ウェブサイトではあまり取り上げていませんが、麻生太郎総理が現在でも副総理兼財相を務めており、G7財相・中央銀行総裁会合などもこなしているため、菅総理の動きが多少、ぎこちなくても、何とかなるというのが、個人的な見解でもあります。
「菅」は「菅」でも「カン」違い
ことに、同じ「菅」でも、「すが」ではなく「かん」の方、すなわち菅直人元首相は、大変に酷いものでした。
少し古い話題ですが、今から10年以上前の『NEWSポストセブン』の記事を紹介しましょう。
菅首相の「外交嫌い」 サミットでの恐怖体験が発端との説
―――2010.11.09 10:00付 NEWSポストセブンより
今になって読んでも驚くのが、次の記述です。
「初日の昼食会ではオバマ大統領の隣の席で、ニコニコと神妙に振る舞っていた菅首相だが、もともと黙っているのは得意ではない。夕食会の席上、何も考えずに『時には中国をG8サミットに呼ぶことを考えてもよいのではないか』といってしまった」。
なお、記事本文中に「G8」とあるのは誤植ではありません。当時はまだロシアが参加していたからです(※2014年、ロシアがウクライナからクリミア半島・セバストポリ市を併合したことを受けて追放され、G7に戻って現在に至ります)。
NEWSポストセブンは、こう続けます。
「事務方との事前の相談もなく、思いつきの提案だった。このような席では、一見、雑談に見えても、各国首脳は綿密に計算された発言をするものである。案の定、オバマ大統領はじめ7人の首脳たちは、菅首相の発言を完全に黙殺した」。
著作権の都合もあるので当ウェブサイトでは紹介しませんが、実際、菅元首相がG8などの場で浮いている写真などが多数残っています。麻生太郎総理、安倍晋三総理らと比べて、雲泥の違い、というわけですね。
見たところ、同じ「菅」でも菅義偉総理は、(見た目の地味さはともかくとして)サミットのコミュニケ等では確実に成果を残していますので(『英G7サミット、日本にとっての「成果と課題」とは?』等参照)、「菅」は「菅」でも「カン」違い、といったところでしょう。
日経新聞のトンチンカンな分析
さて、今回のG7といえば、ゲスト国として、豪州、インド、南アフリカとその他1ヵ国、合計4ヵ国が招かれました(※ただし、インドにおける感染拡大の影響もあり、結果的にインドのモディ首相は参加しませんでした)。
これに関連し、日経電子版には昨日、こんな記事が出ていました。
G7拡大ありえるか? 英が主導した「D11サミット」
―――2021年6月13日 16:00付 日本経済新聞電子版より
これは、ボリス・ジョンソン英首相が4ヵ国をゲストとして招いた理由と、その拡大があり得るかどうか、という点に関する解説記事のようなもので、「D11」の「D」とは「民主主義国」、という意味があります。これに加え、日経はジョンソン首相の狙いについて、次のように述べます。
「D11には鉱物資源が豊富な豪州や南アも含まれる。ジョンソン氏はD11を、さまざまな供給網の中国依存から脱却する協力の枠組みに育てたい意向だ」。
要するに、中国に産業のキーデバイスを握らせないという狙いですね。
こうしたなか、日経電子版にはこんな記述もあります。
「(拡大G7は)アジア唯一のG7国として影響力を維持したい日本にとっては都合の悪い話だ。G7関係者は日本が英側に『ゲスト国として韓豪印を呼ぶのはいいが、G7の枠組み拡大には反対だと訴えた』と語る」。
はて、そうでしょうか?
私見ですが、日本がG7の安易な拡大に反対しているのは、「アジア唯一のG7国として影響力を維持したいから」、ではありません。日本がしつこいほど強く主張しているとおり、G7は「基本的価値を共有する国の協議体」だからです。
基本的価値を共有しない国を安易に入れてしまうと、ロシアを加えたG8のように、協議体としての力が弱まってしまいます。
豪州くらいであればG7に相当するかもしれませんが、国際的な秩序の破壊者をG7に入れることに強く反対するのは、「基本的価値」を標榜する日本としては当たり前の対応でしょう。
そもそもこの日経の記事を読んでいて抱く違和感は、「G7が基本的価値を共有する国々の共同体である」とうい視点が欠落している、という点でもあるのです。
いやぁ、良か残念でしたねぇ…
さて、G7といえば、日韓首脳会談・日米韓3ヵ国首脳会合が実現しなかったことも、「小ネタ」としては興味深いものです。個人的にこれらの会談が実現するかどうか注目していたのですが、結局実現しなかったのは大変に良かった残念だったと思う次第です。
こうしたなか、かなりどうでも良い話題のひとつが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、こんな報道です。
英国G7サミットの日程を終えた文大統領…「菅首相と会談できず残念」
―――2021.06.14 07:10付 中央日報日本語版より
文大統領・菅首相、晩餐会場で1分対面…結局なかった韓日会談
―――2021.06.14 06:57付 中央日報日本語版より
最初の記事は文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領は現地時間13日、菅総理との会談ができなかったことを「残念だ」と述べた、という話題です。また、次の記事は「両首脳が晩餐会の会場で1分間対面した」、とするものです。
昨日の『産経「文在寅氏が菅義偉総理に歩み寄って声を掛ける」』でも話題に取り上げましたが、日韓の首脳が近づいて挨拶するだけで記事になってしまうとは、日韓関係もずいぶんと変化したものです。
もっとも、以前の『「日韓」と「日米韓」を明らかに分けて考える日本政府』などでも触れたとおり、現在の日本政府は韓国・文在寅政権に対し、「相手にしない」という姿勢を明確にしています。
自然に考えて、約束も守らず、国際法も破り、外交上もさまざまな欠礼を行う国を相手にしても意味がありません。日本政府の対応は、ある意味当然のことでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
いずれにせよ、個人的な感想を申し上げるなら、G7の場に「その他1ヵ国」が招かれたのは、大変に良いことでした。
『英G7サミット、日本にとっての「成果と課題」とは?』で述べたとおり、今回のG7では対中牽制、対北朝鮮牽制などが盛り込まれたからであり、中国や北朝鮮にしてみたら、韓国の文在寅氏がこの声明を指示したかにも見えるからです(※といっても、韓国は単なるゲスト国ですが…)。
また、日本から遠く離れた欧州の首脳に対しても、日本の総理大臣が日本の隣国の大統領を無碍に扱っているのを間近で見て、「日韓は近くて互いに友好的な国だ」とする漠然としたイメージを捨てることにつながったのかもしれません。
もっとも、「日米韓3ヵ国首脳会合」すら実施されなかったことは、ある意味では衝撃的でもありました。
そういえば、以前の『米韓首脳会談は「建国以来最大の外交敗戦」=鈴置論考』でも取り上げましたが、ジョー・バイデン米大統領は訪米した文在寅氏を「クラブケーキ」でもてなしたものの、とりあえず文在寅政権の「次」は左派政権を認めないぞ、という立場なのかもしれません。
日米の文在寅氏に対する扱いを見るにつけ、今回のG7はまことに興味深いものだったと思う次第です。
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残念だ、残念だ、あー残念だ、バンザーイ。
G7 に関する英文記事を検索してみましたが、韓国に関するものはほぼありませんね。
https://news.google.com/s/CAoiI0NCSVNGRG9HYzJWaGNtTm9XZ29LQ0djM0lHdHZjbVZoS0FBUAE?sceid=US:en&r=11&oc=1
出発前の記事と、韓国紙による記事のみです。思った以上にゲスト国というのは存在感がないものですね。
日本絡みの記事も決して多くはありませんが、存在感がないというほどでもない。
https://news.google.com/s/CAoiI0NCSVNGRG9HYzJWaGNtTm9XZ29LQ0djM0lHcGhjR0Z1S0FBUAE?sceid=US:en&r=11&oc=1
ボリス・ジョンソン英首相が4ヵ国をゲストとして招いた理由と、その拡大があり得るかどうか、という点に関する解説記事のようなもので、「D11」の「D」とは「民主主義国」 >
スレッドの主題とは逸れてしまうのですが、今回のサミットの前後で上記のB・ジョンソン英首相の言葉が各メディアで散見されていて、正直言って私は非常に違和感を覚えました。豪州・インド・南アフリカの三国は多少の差はあっても、民主国家と呼ぶに値する国々だと思いますが、その点韓国はどうでしょう?
韓国は、民主主義国というよりも明らかに民族主義国家といえる国だと私は考えています。一応国民による投票によって大統領以下国会議員なども選出される仕組みにはなっているようですが、それをもって無条件に民主義国家であると認定してよいものでしょうか?
当然否というべきでしょう。国際法は遵守しない、国家間の合意は平気で反故にする、国民のデモ(という形の世論)で時の大統領が罷免される、そんな国家は制度としては民主主義を名乗ろうとも、民主主義国家などとは言えないでしょうし、そもそも法治国家すらあありません。私としてはこういう国家はポピュリズム的似非民主義国家と呼びたいところです。
しかし、そんなことは置いておき、英首相ジョンソン氏が韓国に対してこのような認識しか有していないのだとすれば、それはそれで少々問題があるようにも思えます。英国は今後TPPに参加の意思を示しています。またFOIPにも関心を寄せているようです。これには香港の問題も絡んでいるから当然といえば当然でしょうが。
しかし、その英国の首相の韓国観がこのような歪んだものであるとしたら、他の欧州勢にとっても韓国はやはり、はるか東の果てにある何やらよくわかない国ではあるが、曲がりなりにもも民主主義国家であり法治国家らしい、などというようなおぼろげではかない印象しか持っていないのかもしれません。
この辺り、(もしそんなチャンスがあればの話ですが)G7だけでなく世界各国のリーダーたちに厳しく問うてみたくなる時があります。
あなた達の目には、日本と韓国の関係が、そして韓国という国がどのように映じていますか?と。
懸念の通りです。「韓国は日本に似た民主主義国家で西欧の頼もしい仲間」くらいの認識しかありません。
彼らは韓国の問題点に直面することがないですし、そもそも東アジアへの関心は薄いですからね。
韓国の異常さを理解してもらうのは相当に困難です。
また、民主主義国家かどうかと言われれば、インド、南アフリカも相当に怪しい部分がありますので、中立的な立場からするとドングリの背比べでしょうか。
更新ありがとうございます。
良か…が薄~く見えてしまってますねぇ…
ウン仕方ない!
イギリスは、G7に旧植民地国を加えて発言力を強化する為に、D11なる構想を持っているのは、ご承知の事と思います。
韓国は、ここでもオマケなんですね。
G7への追加は、全加盟国の賛成が必要。
今年イギリス主催のG7が終われば、誰も言い出さなくなると思います。
それでも韓国は、「日本が韓国の邪魔をしている、その理由は、日本がアジア唯一のG7国だと言う立場を守るためニダ。」と言い続けるでしょう。
朝鮮脳は、そうでなければ日本が韓国をG7に加えるようにしようとしないのは、おかしな話だと考えているんだと思います。
23年のG7は、日本開催です。伊勢志摩サミットの時は、日本から韓国にゲスト参加を打診しましたが、断って来ました。もう次に参加打診する事は、無いでしょう。
毎度、馬鹿馬鹿しいお話を。
①韓国の文大統領は、イギリスからオーストラリアに行って、そこから韓国に戻る前に、中国に行って習近平国家主席に言い訳するんだって。
②アメリカのバイデン大統領が、「韓国の文大統領が『韓国は強制労働を許さない。だから、中国のウィグル強制労働を止めさせ、中国共産党に被害者への謝罪と賠償させるために、韓国が先頭に立つ』と言っていた」と、感心していたんだって。
みなさんは、どちらを選びますか。
https://www.news1.kr/articles/?4337916
ホルホル記事です
匿名のコメント主様
ネタの提供大変ありがとうございます。さっそく使わせていただきます。
引き続き当ウェブサイトのご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
日本の権限あるやつに会って話してくるニダというのは、韓国で偉そうに権力ふるうためには絶対必要な能力っぽいです。
今回大統領は同じ会議に呼ばれたという絶好の機会があったにもかかわらず「会って話してくるニダ」が出来ない。敗北宣言をしてしまいました。
韓国における文大統領の求心力はさらに低下するでしょう。
逆にとりあえずでも会って話が出来た韓国人の権力は高まるものと思われます。それを画策して、いろいろ仕掛けてくるのは警戒しなきゃいけません。
G7での韓日会談開催合意 日本が一方的に取り消し=韓国当局者
http://m.kmib.co.kr/view.asp?arcid=0924195946&code=11171211&
本当は、日本と首脳会談するはずだったニダ。
「実務レベルで暫定合意していた」から始まって、朝鮮脳で歪曲されているんだと思います。
そもそも事前には非公開の竹島演習だから、「予定通り」会談を開くのに必要なら延期するのは容易だったはずです。大統領自らあれだけ会談を希望しているのにそれが出来ないわけがありません。暫定会談の合意があったとの報道がフェイクでしょう。
韓国としては、日米韓もさることながら、米韓首脳会談すらできなかったというのは、かなりの目論見外れだったのではないですか? バイデン大統領にワクチン追加のおねだりができなかったし、AZのCEOと話してもリップサービスしかもらえなかったようですし、それにもかかわらず2億ドルの拠出を約束させられる羽目に陥りました(実行するとはだれも思ってませんが)。共同宣言にも、(当たり前ですが)韓国の願望はほとんど反映されていません。結局のところ、大方の予想通り、文大統領にとっての成果は、プリクラよろしく写真を一緒に取ってもらっただけです。
アメリカが日米韓会談を開催するべく調整を試みていたというのは、多分事実でしょうが、どこかの時点で調整を放棄したものと見られます。個人的には、短時間の会談があり、「朝鮮半島問題に対処するための結束を確認した」くらいの空疎な発表が行われるのではないかと予想していましたが、それすらもありませんでした。
つまり、これは朝鮮半島問題がごくごく局所的な問題であり、グローバルな問題を討議する(という建前の)G7という場では、たとえサイドラインとしても討議するにふさわしくないということを明らかに示したものと考えます。米韓会談が行われなかったのも、似たような文脈で捉えることができるかもしれません。要するに、アメリカとしては、韓国をグローバルな問題に対処するための戦略的パートナーとは見做していないということです。
今後アメリカがいつまで日米韓という枠組みを維持しようとし続けるかは不明です。少なくとも、文在寅大統領在任中は機能しないであろうことを見切ったのではないかと推測します。だとすれば、アメリカにとって、米韓会談すら行う意味がありません。儀礼的な会談さえ時間が惜しいということになったのではないかと推測します。
アメリカが韓国に対して、「日本との間で儀礼的な会談すら行えないような状態では、これ以上の会談は行わない」と申し渡したという噂もありますが、案外事実であるのかもしれません。「とにかく会いさえすれば......」という文大統領の姿勢は、そんなところから来ているのかもしれませんね。だからこそ「残念だ」とわざわざ言わねばならないのでしょう。
龍さま
まず最初に反駁や意見する立場でないことを表明したうえで、現アメリカ政権の「線の細さ」が今般の G7 対応でさらにあからさまになったように当方は思えてなりません。
ひとことでいうと「絶望的な経験不足かつ理解不足」
例えるならば「学生時代に勉強して来なかった引け目をひしひしを感じて、慌てて本を買い込み再履修を試みる、かつての秀才集団」
「お前分かってないだろう」下手をするとそこいら中で総すかん。トランプ政権4年間の後始末に苦労しているせいではなくって、あなたがた実は素人なんじゃないですか。そう見すかれてしまうとすれば、アメリカ合衆国の未来は明るいとは思えないんです。