日本は「日米プラスアルファ」の同盟重層化を急ぐべき

『産経ニュース』に週末、日本が米国、フランスとの「3ヵ国共同訓練」を実施した模様を公開するとともに、その定例化を検討している、とする話題が出ていました。あくまでも一般論ですが、味方の数は少ないよりも多い方が良いですし、また、フランスはインド太平洋地域に海外領土を所有し、間違いなく、インド太平洋地域の平和と安定に利害関係を持っています。

日米プラスアルファ

あくまでも一般論で申し上げるならば、国防は1ヵ国でやるよりも2ヵ国でやった方が、2ヵ国でやるよりも3ヵ国でやった方が効率的です。そして、もしも好戦的な国から挑発されていたならば、「こちらには味方がたくさんいる」と見せつけること自体、抑止力になり得ます。

戦後の日本にとって、日米同盟は一貫して重要な抑止力であり続けていますが、それと同時に米国以外にも味方を増やし、より安全な国づくりをしていかねばなりません。これが「日米プラスアルファ」の議論です。

現状、日本にとっての「米国以外の味方」となり得る最も有力な候補は、「自由で開かれたインド太平洋」、あるいは “Free and Open Indo-Pacific” を略した「FOIP」にコミットする諸国でしょう。

このFOIP、現状において深くコミットしているのは日米豪印の4ヵ国であり、この4ヵ国のことを最近では「クアッド」と略すことが増えています。

ただ、当ウェブサイトなりの理解に基づけば、このFOIP自体、自由主義、民主主義などの「基本的な価値」を大切にする国々の緩やかな連合体、という側面がありますので、べつに「FOIP=クアッド」、とは限りません。

FOIPは将来的に、もしかしたら「クアッド」を中核に一種の条約機構にまで発展するかもしれませんし、現状の「緩やかな連合体」のままで、参加国数が5ヵ国、10ヵ国、20ヵ国、といった具合に増えていくかもしれません。

その意味で、FOIPに強くコミットしてくれる国が、日米豪印以外にも出現すれば、これは日本にとって本当に心強い話です。

日米仏3ヵ国連携

こうしたなか、産経ニュースに土曜日、こんな記事が出ていました。

【動画】日米仏、共同訓練を定例化へ 中国念頭、離島防衛戦

―――2021.5.15 22:34付 産経ニュースより

これは、陸上自衛隊、フランス陸軍、米海兵隊との共同訓練の様子について報じたもので、15日に公開された動画のリンクも掲載されています。

産経によると、今回の訓練は「離島への着上陸と市街地戦闘などを想定」し、宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島演習場で実施されたもので、「日本国内で日米仏の陸上軍隊が本格的な実動訓練をするのは初めて」だそうです。

また、今回の訓練については仏海軍の艦隊「ジャンヌ・ダルク」が長崎県佐世保港に寄港した機会を生かして実施されたものだそうであり、産経は「防衛省は艦隊の次回の寄港時以降も共同訓練を行い、定例化する方針」だと報じています。

これは、大変に興味深い話題と言わざるを得ません。

フランスがこの地域に利害を持つ理由

この点、「インド洋からも太平洋からも遠く離れたフランスが、なぜ日本くんだりにやってきたのか」という疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし、フランスはインド洋や太平洋、大西洋などに「海外領土」を保有しており、間違いなく、インド太平洋地域に利害関係を持っています。

「フランス観光開発機構」の次のウェブサイト(日本語版)によると、インド洋にはレユニオン島(La Réunion)、マイヨット島(Mayotte)などが、太平洋には仏領ポリネシア(Polynésie française)、ニューカレドニア(Nouvelle-Calédonie)などがあります。

3つの大海に浮かぶフランス海外領土

―――2012年02月27日 10:34付 フランス観光開発機構HPより

フランスが日本にとって、「同盟」相手国としてどのていど力になってくれる相手国なのかは別問題であるとして、こうした共同訓練がなされるのは非常に良いことだと考えられます。

日米プラスアルファを増やすのが得策

ところで、産経ニュースによると、今回、海上自衛隊も訓練の一環で英仏豪各国の海軍と東シナ海で共同訓練を行っている、という話もありますが、こうした多国間連携が一層進むことを強く期待したいところです。

もちろん、日米同盟自体は極めて大切ですし、それ単体でも強く機能する状態にしなければならないのですが、やはりこれを補完する仕組み作りはそれ以上に必要です。

とくに、「日米プラスアルファ」に関しては、「日米仏」、「日米豪」、「日米英」、あるいは「日米台」という具合に、事実上の同盟が重層化していくことは歓迎すべきであるだけでなく、急ぐべきであることは今さら指摘するまでもない話でしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 匿名 より:

    自由フランス国は自由のためなら命をかけるのが国是なので、ぜひその本領を発揮していただきたいところ。今回は空港の奪還を想定した演習だったとか。まるっきり台湾対策ですね。

  2. 理系初老 より:

    動画リンクありがとうございました。ジャンポールベルモントと同じ鼻、誰がどう見てもあの顔はフランス人、と思ったのは私だけでしょうか。

  3. イーシャ より:

    フランス観光開発機構HPにも載っているように、タヒチはフランス領です。
    ハワイの南に位置しますが、ハワイより好きです。
    便数は少ないものの、タヒチからイースター島への直行往復便もあり、魅力的なルートでした。

  4. 引っ掛かったオタク より:

    中共は「ガソリンの無駄遣い」などとコメントしたとかしないとか?
    …効いてる?のか??

  5. 伊江太 より:

    何だか英仏両国にとって中国は
    「嫌いだが、付き合わざるを得ない国」から
    「嫌いだし、付き合いたくもない国」に
    格下げ進行中のような(笑)

    一頃ほどではないにせよ、
    中国ズブズブのドイツへの反感もあるかも知れないですね。

  6. めがねのおやじ より:

    更新ありがとうございます。

    陸上自衛隊、フランス陸軍、米海兵隊との共同訓練。頼もしいですなぁ〜。鹿児島県宮崎県で演習なんて!是非見たかった(私のような不審者は入れません)。私見ですが、ビーチでの上陸作戦、沿岸部掃討や橋頭堡作り、揚陸作戦は、日本はあまり得意ではないと思います。是非、米・仏軍から学べる所はしっかりと学んで欲しいです。

    また海軍(海上自衛隊)も訓練で英仏豪各国の海軍と東シナ海で訓練したとか。仏国はインド洋、太平洋に植民地、、では無い、島嶼の海外領土があるんですネ。

    これで列強(なんて古臭い言い方ダ)の日米英豪仏印がクアッドに参加し、ヘキサですか?多数派工作は順調ですネ。中露北南は一番弱い環の「南」に自爆装置付けてテロさせるかも知れません。狙うは一番甘い日本。

    当分、韓国の不審船、空からの侵入、韓国人の入国には強い制限を掛けるべきです。

    1. 理系初老 より:

      海上の合同訓練動画です。ご参考までに。
      https://twitter.com/i/status/1393146083337916420

  7. 迷王星 より:

    >あるいは「日米台」という具合に、

    これは台湾が改憲し大陸の領土と共に「一つのチャイナ」原則を放棄して独立宣言をしない限り不可能。アメリカも現状の独立せずに反乱政府状態の台湾とは同盟を組んだりしません。

    統治能力に優れ日米との関係深化に真剣に取り組もうとしている(ように少なくとも見える)蔡英文総統の任期中に台湾が改憲をして独立宣言をしてくれれば一番良いのですが、突然に台湾での中華コロナの感染急拡大が始まったので、蔡英文総統にとって改憲&独立宣言という大仕事をやる余裕は全く無くなってしまった(否、無くされてしまったと言うべきか)。非常に残念ですね。

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