北朝鮮ミサイル発射とロシア外相の訪韓は「同じ文脈」
ロシア外相「北朝鮮の核開発と米韓軍事演習は同時に停止すべき」
朝鮮半島は、自由・民主主義諸国と無法国家の「境界線」のようなものであり、その境界線をどちらに押しやろうとするかという力比べは、常に行われているものでもあります。昨日は北朝鮮がミサイルを発射したと報じられましたが、折しも同日行われた露韓外相会談では、ロシアのラブロフ外相は「北朝鮮の核・ミサイル開発と米韓軍事演習を両方ストップすべき」などと述べたそうです。本当にわかりやすい反応ですね。
FOIP対無法国家
「最近では、『自由で開かれたインド太平洋』のことを、英語の “Free and Open Indo-Pacific” を略して『FOIP』と呼ぶ」――。
以前から当ウェブサイトで何度か指摘して来ましたが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」とは、日本にとって、戦後初めて、世界に向けて本格的に提唱した価値同盟のようなものではないかと思います。
実際、このFOIPは「自由主義」、「民主主義」、「法の支配」など、多くの国が賛同しやすい理念を旗印として掲げたもので、事実上の事務局を務めている日本は、「この理念に賛同する国であればどこでも参加可能」とする考え方を示しています。
ことに、このFOIPに強くコミットしている日米豪印4ヵ国は「クアッド(=4)」と呼ばれていますが、当ウェブサイトなりの理解に基づけば、単に「4ヵ国」だから「FOIPクアッド」なのであり、これに英国、フランス、ニュージーランドなどが加われば、名称はそれに対応したものに変わっていくべきでしょう。
ただし、この「クアッド」が気に喰わないのは、明確にこれらの価値観と反している国・中国であり、北朝鮮であり、また、中国の経済的な属国と化しつつある韓国でしょう。さらには、最近だとロシアがこのFOIPに強い警戒を示しています。
つまり、『中露朝韓「無法国家クアッド」を「正しく」警戒すべき』でも述べたとおり、偶然ですが、中露朝韓も「4ヵ国」、すなわち「クアッド」です。この4ヵ国が一種の「無法国家クアッド」のような連合体となるのであれば、それは非常に警戒すべきことでもあります。
北朝鮮のミサイル発射と「小ネタ」
さて、もうひとつ偶然を申し上げるなら、当ウェブサイトにおいてこの「無法国家版クアッド」について言及した直後の昨日、日本政府は25日、北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを発射したと発表しました(『【速報】北朝鮮がミサイル発射?迅速な日本政府の対応』参照)。
このタイミングで北朝鮮がミサイルを発射したことについては、さまざまな解釈があり得ます。
ことに、今年1月に米国でバイデン政権が発足し、今月は「日米2+2」、「米韓2+2」会合などが相次いで行われたなか、昨日のミサイル発射は米韓同盟の結束を試すという意味合いもあるでしょうし、あるいは「バイデン政権はどこまでやってよいのか」を試す、という目的もあるのかもしれません。
こうしたなか、ついでにこんな「小ネタ」についても紹介しておきます。
米軍インド太平洋軍司令部のマイク・カフカ大佐が25日、このミサイル発射を巡り、「東海に向けて(into the East Sea)」と発言し、坂井学官房副長官が記者会見で「訂正を求めている」と述べる、といった椿事もありました。
米軍、北朝鮮ミサイル声明書に「日本海」でなく「東海」と表記…日本が反発
―――2021.03.26 10:06付 中央日報日本語版より
もっとも、時事通信の今朝の記事によれば、米インド太平洋軍は新たに発表した声明で、この発言を巡っては「日本海あるいは朝鮮半島東方海域と表記すべきだった」と釈明し、「日本海がその海域を示す唯一認められた名称であるとする米国の立場に変わりはない」と述べた、と報じられています。
米軍、日本海が「唯一の名称」 「東海」表記を訂正
―――2021年03月26日07時30分付 時事通信より
「米軍が(日本海ではなく)『東海』の呼称を使った」という韓国メディアの騒ぎは、一種の「ヌカ喜び」のようなものだったのかもしれませんね。
「日米と立場を異にする」という点で露韓両国は共通している
さて、FOIPを巡る「無法国家クアッド」に関連し、個人的に看過できないのが、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された、次の話題です。
露外相、北核実験・韓米演習の「双中断」を要求
―――2021.03.26 09:21付 中央日報日本語版より
中央日報によると、昨日(25日)行われたセルゲイ・ラブロフ露外相と鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外交部長官の露韓外相会談では、ラブロフ外相は「北朝鮮の核・ミサイル私見と米韓合同軍事演習を同時に中断すること」を要求したのだそうです。
大変にわかりやすいですね。
米韓同盟はロシアから見ても「目障りな存在」であることは間違いありませんが、それにしてもラブロフ外相の反応はわかりやすすぎます。
また、中央日報によると「北朝鮮の非核化の前提条件と方法論で(露韓両国の)立場の隔たりがあった」などとしていますが、この点についても注意が必要です。
というのも、中央日報によると、鄭義溶氏は「南北関係改善と朝鮮半島の平和プロセスを通じた北朝鮮の非核化」を主張したのだそうですが、こうした韓国政府の立場は、経済制裁や瀬取り監視などを通じて圧力を強めようとする日米などの国際社会の立場とは、相いれないものでもあるからです。
つまり、細かい違いはあれど、露韓両国は北朝鮮非核化に向けて、日米両国との立場が大きく異なっているという点では共通しているわけです。
ロシアが韓国に「FOIPに参加するな」と牽制
さて、この中央日報の記事で、個人的に強く関心を抱いたのは、次の趣旨の記述です。
「ラブロフ外相は韓国を『アジア・太平洋地域で一番重要なパートナー国の中の一つ』と評価し、『アジアを中心に安保体制内に構成される多国間協議体に関する意見を交換した』と明らかにした」。
この発言を巡って、中央日報は「クアッド(Quad、米国・日本・オーストラリア・インド)に参加せず、多国間協議体を基に韓露友好協力を増進しようという提案に読まれる」と述べていますが、言い換えれば、韓国に対して「FOIPには参加するなよ」と牽制する発言のようなものだ、ということです。
さすがに韓国が今すぐ、中露朝3ヵ国とともに「無法国家クアッド」を形成するとは思いたくはありませんが、ただ、いまこのタイミングでロシアが韓国にメッセージを発したという事実は、警戒しておくに越したことはないでしょう。
つまり、米国からFOIPへの参加を強く求められた韓国が、中国だけでなくロシアの後ろ盾も得て、FOIPへの参加を拒絶し、自由・民主主義諸国陣営と無法国家陣営の間で右往左往する、という展開が容易に予想できるからです。
この点、『米「日米同盟への声明」に含まれた唐突な韓国論の意味』でも述べたとおり、バイデン政権発足以降、米国がやたらと「日米韓」に拘泥しているというのも気にかかる点ですが、当ウェブサイトでいつも報告しているとおり、一般に「無能な味方」は「有能な敵」を上回る脅威でもあります。
韓国は日本に対しては自称元慰安婦問題、自称元徴用工問題などの「歴史問題」に加え、火器管制レーダー照射事件、日韓GSOMIA破棄騒動などの安全保障上の問題を発生させていますし、また、2019年7月の輸出管理適正化も、韓国の輸出管理の不備に起因するものでもあります。
しかし、韓国の問題は、これに留まりません。
米国に対しても、自由・民主主義陣営に所属していながら中国の言いなりになるなどの不誠実さを示しています(ちなみに米戦略国際問題研究所の10年遅れの認識については、『CSIS「韓国の戦略的曖昧性が米国を不安にさせる」』などでも紹介したとおりです)。
逆に、もしも米国が「米韓」「日米韓」を強調すればするほど、その反動として、中露朝はそれぞれのロジックで韓国を自陣営に引きずり込もうとするのではないかと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
「無法国家クアッド」
ではなく
「闇クアッド」
「裏クアッド」
または
「暗黒面クアッド」
というのはどうでしょう?
語感的にはFOIPと対を為す感じで、マスタード(Master dominates)とか・・。
*権力を一方的に振りかざすご主人様の集まりなのです。
イランも反米側で決まりでしょう。
中国イラン関係は、強くなっていると思います。
韓国は、とっくにあっち側。
米軍の「東海」表記問題は、国務省の中に韓国系米国人の官僚が2名居ることも影響しているのだろうと、今朝の虎ノ門ニュースで藤井厳喜さんが言ってました。
韓国人は米国に帰化しても、韓国に肩入れする傾向が強いから、とも。
翻って日系人の官僚は、そもそも米国の政府機関にほとんど居ないし、日系だからといって米国の利益を考えずに日本に肩入れすることはまず無いことでしょうし。
しかし、この伝でいけば、前駐韓米国大使であったハリー・ハリスさんが、韓国であのようなひどいバッシングを受けたことはむべなるかな?韓国系だったら韓国に有利に働く、という自己投影からくる行動なんでしょうね。
ちかの様
この、パク東アジア太平洋副次官補等でしょうか?
https://news.yahoo.co.jp/articles/07d903c239b958ac680010e927ac87d5672adc7a
確かにバイデン大統領就任後、慰安婦問題に関して国務省高官が日本に厳しい声明をした旨の韓国系メディアによる報道が何回かなされましたが、それら高官が韓国系である可能性がありますね。
ブリンケン国務長官や報道官でなく、なぜ単なる高官なんだと違和感を感じていました。
それにしても朝鮮民族の人達は民族的自尊心が異常に強いですね、日本でも岩城 滉一氏の韓国愛は有名ですし、なぜなんでしょうかね?
PONPON 様
えーと、ちょっと見直してみると、藤井さんは「ソン・キム国務次官補代行とその部下のジュン・パク」と言ってます。
PONPON さんのリンク先記事では「チョン・パク」とありますが、同じ人物を指していると思われます。
韓国は「無能な味方」だけでなく「中朝と内通し懸命に日米双方の足を引っ張る味方」です。
偽の情報を韓国政府に流してみるのも面白いかも知れません。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(そう自分に言い聞かせないと、韓国と同じく、自分は間違えない存在と自惚れそうなので)
ロシアとしては、(中朝に忖度したい)韓国の文大統領にあわせていたのではないでしょうか。そして、あわよくば、米中新冷戦の場面でロシアの存在感を増すために、まずは韓国に唾を付けようとしたのではないでしょうか。
駄文にて失礼しました。
韓国の企業や工場を北方領土や樺太に誘致なんて話もありそうですね。
北朝鮮が3月25日という日をわざわざ選んで、ミサイルを放った意味には様々な要因があると思います。
まず、バイデン大統領の初の公式記者会見がある日を狙ったということ。北朝鮮はバイデン大統領就任前に、米民主党政権とは敵対していくことを明確に表明していました。
細かく言えば、日韓でサッカー大会がある日を狙い、日韓で馴れ合うことを許さない目的があったこと。(馴れ合うことなどあり得ませんが…)
また、福島から聖火リレーが始まる日を狙い、東京オリンピック開催を支持しないことを明確にしたこと。(これは、1964年の東京オリンピック開催にあわせて、中共が初の核実験を敢行したことに通じるものがあります。)
北朝鮮は反日反米路線を改めて明確にし、韓国左派の小手先の対日宥和路線(東京オリンピックを利用して、南北平和統一の対話の機会とする)など全く期待していないことがわかります。ここは、非常にドラスティックなものを感じます。
聖火持つ
その手と心
譲る人
無名なれども
実ある人かな
>逆に、もしも米国が「米韓」「日米韓」を強調すればするほど、その反動として、中露朝はそれぞれのロジックで韓国を自陣営に引きずり込もうとするのではないかと思う次第です。
米国がダチョウ倶楽部的手法で韓国の重要性を高く見せているのかもですね。
米国が「米韓」「日米韓」を強調する事で中朝路露からの韓国への引き抜き工作が活発化すれば、ヅラ外相が言い放った様に「韓国はモテモテ」とホルホルする韓国人が増えそうですし。
更新ありがとうございます。
彼等は国際的な約束を忘れっぽいので、
They are Forgetful their international promises.
で、FOIPなどいかがでしょうか。
少々強引ですが、
Forgettable of international promises.
でも意味は通じそうです。
原文当たってないのでわからにけど、北朝鮮の非核化って言ってるのは中央日報とバイデンだけで、露韓は朝鮮半島の非核化のはずだよね。韓国の政府役人が北朝鮮の非核化なんて言ったらホネホネマシーンから即更迭要求が来るはずだし。