本稿は、ショートメモです。韓国船舶がイランの革命防衛隊により拿捕された事件と、韓国政府がイランのウォン資金口座を凍結している問題に関連し、韓国メディア『中央日報』が「イランの主張はごり押し」などと批判的に報じる記事を掲載しています。普段から無責任かつ不誠実な態度を取り、理不尽にごり押しをする国が、外国のことをこうやって批判しているのを眺めると、イランだけを無碍に責めるのも気が引けるというのが偽らざる心境だと思う次第です。
当ウェブサイトでは先日より、イラン革命防衛隊による韓国船舶の拿捕事件について、韓国国内に凍結されているイランのウォン資金口座との関連性などを議論しています。
ことに、『イランが「韓国は理性的かつ責任感を持って行動せよ」』でも報告したとおり、イランの外務省のハティーブザーデ報道官が韓国に対し、「韓国政府の行動は理解できず、受け入れることもできない」、「韓国政府には理性的かつ責任感を持って対応してもらいたい」と述べたそうです。
韓国に対して「理性」だの、「責任感」だのという表現が通じるとも思えませんが、それをよりにもよってイラン政府の報道官にまで言われてしまうとは、なかなか強烈です。というよりも、べつにイランの肩を持つわけではありませんが、韓国政府の対応は客観的に見て大変に不誠実かつ無責任と言わざるを得ません。
現在、イラン名義のウォン資金口座には、米ドル換算で70億ドルにも達するとされる資金が溜まっています。これについて口座開設の経緯や凍結に至るまでの流れを踏まえると、韓国にもかなりの責任があるからです。
イランは産油国であるとはいえ、総務省統計局『世界の統計2020』(P67)によれば、イランの2017年におけるGDPは4610億ドルで日本の約10分の1です。そんな国にとっての70億ドルといえば、決して小さい額ではありません。
しかも、国際的に通用する通貨でもない韓国ウォンを使った決済をイランに強いていた理由は、もともとは米国の対イラン制裁を逃れるためです。それなのに、米国のイラン制裁に関連し、韓国は昨年9月に該当するウォン資金口座を凍結してしまったのです。
これを「不誠実」と言わずして、何と言うべきでしょうか。
うがった見方ですが、イラン革命防衛隊が海洋汚染を名目に韓国船舶を拿捕・抑留した狙いは、一種の「身代金」、あるいは「賠償金」にあるのではないでしょうか。つまり、凍結されているウォン資金口座の一部を回収する、という考え方です。
これに関連し、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には昨日、こんな記事が掲載されていました。
イランの難癖…拿捕問題で韓国代表団が訪問したのに「凍結資金を議論」
―――2021.01.08 11:48付 中央日報日本語版より
中央日報によると、韓国政府代表団がイランに到着したものの、ハティーブザーデ報道官は現地時間7日、船舶拿捕問題について話し合うつもりはないなどと述べたのだそうです。
中央日報はこれについて、「韓国政府代表団は拿捕問題を議論するためにイランに到着した」が、「イラン政府は『凍結資金の議論が目的』として難癖をつけた」、などと報じています。自国にとって都合が悪いことを「難癖」と呼ぶあたり、普段の日本に対する行動とそっくりで、思わず苦笑してしまいます。
もっとも、ハティーブザーデ報道官の発言をそのまま読むと、イランの立場としては、最初から資金凍結問題を議論するための訪問であり、船舶の問題について議論するつもりはない、ということのようです。
つまり、今回やってきた韓国政府代表団は、10日からイランを訪問する韓国外交部第1次官の「先遣隊」、というのが、イラン政府としての認識なのでしょう。
この点、中央日報は「イランは彼らが到着するやいなや拿捕問題でなく韓国都市銀行に凍結されたイラン石油の輸入代金70億ドルの議論が目的だと一線を画した」、「このような差し迫った状況が発生したにもかかわらず、イランの主張はごり押しに近い」などと述べ、イラン政府の対応を批判しています。
しかし、ごり押しもなにも、イランの目的はおそらく70億ドルの行方にあるのでしょうし、船舶を拿捕したのもそれが目的なのだとしたら、「まずは70億ドル」とイランが要求するのは自然な流れでしょう。
もちろん、海洋汚染を名目に民間船舶を拿捕するイランの行為が褒められたものではないことは事実ですが、本件については韓国政府のこれまでの不誠実かつ無責任な対応を見る限り、イランだけを無碍に責めるのも気が引けるというのが偽らざる心境だと思う次第です。
View Comments (17)
更新ありがとうございます。
土曜日は割に更新多いですネ(笑)。話題も多いですから、当然そうなりますね。私も休みなので、サイトを開くのが愉しみ〜です。日曜日なら「あ〜更新ナシかぁ」が多いもんですから(笑)お忙しいのに、チャチャ入れてスミマヘン。
イラン、頑張れヨー!ではない。ココは悪党国同士の駆け引きを勉強するケーススタディでしたね。しかし70億ドルを凍結させて、使い道の無いウォンとやらに変えさせ、怪しげなワクチン買えッとか、無茶苦茶ですね。
米国のドル禁止に悪乗りして、一丁イランにかましたろ!という狙いだったと思います。韓国はね、いずれに対しても誠意が無い。
イランに協議に行くなら、まずは70億ドルの話でしょう。まとまらなかったら、何するか分からんヨ。韓国外交部第1次官が行方不明に、、(笑)。貨物船は韓国人乗組員だけ拘束延長、、(笑)。
敵の敵は友達だ、ってところでしょうか。 どうしてもイランに味方したくなる誘惑に負けそうです。
匿名29号様
ワタシも同じ思いです。
座布団5枚です。
これこそが、まさに、国際法が認める「対抗措置」ではないでしょうか。
「対抗措置」そのものは、国際法に違反する行為ですが、相手国の国際法違反行為に対しては、国際法違反行為で「対抗」することが認められています。
手続きに問題があるかもしれませんけどね。
>かつて合意した議題だけを次官会談で扱うというイランの主張はごり押しに近い。
合意していない議題を、話し合おうという方が、ごり押しだろう。
そだね~
・・。何というか、やりたい放題の国→KANKOKU
彼らが遵守してる原則は「自己の例外だけは許される」くらいしか思いつかない。
そして、責任は取らなくていいってんだから、話にならない。彼らは変わらない。
相手はイラン🇮🇷、日本の様に遺憾表明して、あとはモゴモゴ言ってる国とは違う。すでに拿捕されてる事が物凄い強行手段であることに気がついてない、アホな韓国政府とマスコミ。どうなるか見ものですよ!
きたたろう様
まだ、一隻ですが、K国の出方次第では2、3…5…10隻とイランが拿捕するのはワタシの妄想でしょうか?
いやあ妄想とも限りません。あとは韓国への原油輸出停止とか、資産差し押さえとか色々有るかも知れませんね。
お得意のツートラックですね、わかります。
「政治(船舶拿捕)と経済(70億)は別だ!」
ホルムズ海峡を韓国にだけ封鎖。
これは韓国は持たないでしょう。
韓国を応援して介入する国はあるのかな。
成功できなかった新薬開発経験者 様
>韓国を応援して介入する国はあるのかな
当然日本に期待してるんだと思います(笑)。
しかし、イランもえげつないですね。平常の時で米国が乗り出して来るという状況ならタンカーを拿捕するなどという強硬策は取れなかったでしょう。でも、今の米国は大統領選のゴタゴタで韓国のことどころではありませんからね。上手いタイミングです。我が政府にもこのくらいのえげつなさがあるといいんですが。だからといって我が国も国際法違反をすればと勧めるわけではありません。我が国はあくまでも国際法を遵守しつつ韓国に対抗しなければなりません。韓国の国際法違反を非難しつつ我が国が国際法を破ったらかの国と同類のネロナンブルになってしまいます。そうなると現在の国際的な地位を築いてきた努力が無になり我が国の国益が大きく損なわれてしまいますもの。
会談が前々から決まっていて『凍結資金の議論が目的』だから、拿捕事件があっても計画変更せずに会談すると言っていたのは韓国の方だったと思いますが。