マクドとすかいらーく、同じコロナ禍で明暗はクッキリ
「コロナ禍で赤字・店舗閉鎖」。「コロナ禍で過去最高益達成」。これはどちらも、昨日の決算報告で出てきた文言です。かたや過去最高益、かたや財務制限条項(コベナンツ)に抵触して店舗リストラ・資産圧縮。この明暗を分けた要因は、いったい何なのでしょうか。
同じくらいの売上高の2社
昨日、外食産業を巡って、対照的なこんな2つの話題がありました。
すかいらーく、「ガスト」など200店閉店 首都圏中心、雇用は維持
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―――2020年11月12日20時17分付 時事通信より
マック営業利益、過去最高 持ち帰り増で
―――2020.11.12 18:01付 産経ニュースより
すかいらーくホールディングス(以下「すかいらーく」)、日本マクドナルドホールディングス(以下「マクド」)は、いずれも外食産業であるという共通点があります。
かたや200店舗閉鎖、かたや過去最高益。両社の明暗は、いったいどこで別れるのでしょうか。
これについては報道を眺めるよりも、四半期報告書や決算短信などをチェックした方が早そうです。
まずは「すかいらーく」から。
図表1 すかいらーく2020年第3四半期連結業績(IFRS)
項目 | 2020年3Q | 前年同期比 |
---|---|---|
売上収益 | 2136億円 | ▲717億円(▲25.14%) |
うち、第3四半期 | 745億円 | ▲233億円(▲23.83%) |
売上総利益 | 1456億円 | ▲538億円(▲26.98%) |
販管費 | 1597億円 | ▲181億円(▲10.19%) |
営業利益(▲損失) | ▲211億円 | ▲411億円(▲205.74%) |
税引前四半期利益(▲損失) | ▲237億円 | ▲405億円(▲240.90%) |
四半期利益(▲損失) | ▲146億円 | ▲251億円(▲239.12%) |
うち、第3四半期 | 43億円 | ▲9億円(▲16.51%) |
四半期包括利益(▲損失) | ▲146億円 | ▲249億円(▲241.45%) |
(【出所】株式会社すかいらーくホールディングス 2020年12月期・第3四半期決算短信より著者作成)
次は、マクドです(図表2)。
図表2 マクド2020年第3四半期連結業績(JP-GAAP)
項目 | 2020年3Q | 前年同期比 |
---|---|---|
売上高 | 2135億円 | 37億円(+1.78%) |
売上総利益 | 444億円 | 24億円(+5.68%) |
販管費 | 191億円 | ▲14億円(▲7.02%) |
営業利益 | 254億円 | 38億円(+17.77%) |
経常利益 | 253億円 | 40億円(+18.99%) |
税金等調整前四半期純利益 | 249億円 | 39億円(+18.57%) |
四半期純利益 | 161億円 | 28億円(+21.03%) |
(【出所】日本マクドナルドホールディングス株式会社 2020年12月期・第3四半期決算短信より著者作成)
リストラの背景にはコベナンツ抵触か?
いかがでしょうか。
IFRSと日本基準という違いはありますが、くしくも売上高の規模はほぼ同じで、コロナ禍が発生する以前の2019年第3四半期(1-9月期)の営業利益、四半期利益などの水準も似ていた両社の明暗が、くっきりとわかれました。
すかいらーくは売上高が前期比で717億円、つまりちょうど4分の1も減少し、販管費の圧縮効果によるコスト負担(181億円)などでは到底その減収幅を吸収しきれず、営業利益が一気に411億円も減少し、営業損失、そして最終損失にまで落ち込んでしまった格好です。
これに対しマクド側は、売上高こそ前期比で37億円の微増でしたが、売上総利益については24億円のプラス、営業利益に至っては38億円ものプラスでした。さりげなく、販管費が14億円圧縮されているという効果も、増益に寄与した格好です。
そのうえで、冒頭に紹介した時事通信の記事を読むと、同社社長は来年の市場環境について「(コロナ禍以前の)2019年並みに回復するのは極めて難しい」との考えのもと、メニュー削減を含む営業の効率化を急ぐとしています。
もっとも、閉店するのは新型コロナウィルスの影響で不採算になった、首都圏を中心とする「ガスト」「ジョナサン」など約200店舗で、閉店に伴う人員削減は行わず、配置転換などで雇用を維持する、などとしているようです。
さらに気になるのは、同社の四半期報告書のP3にある、「継続企業の前提に関する重要事象等」の記載(俗にいうGC注記)です。
同社によれば、借入金の財務制限条項(コベナンツ)のうちネット・レバレッジ・レシオに関する条項に抵触したとしており、今回の店舗圧縮も、総資産の規模を縮小するという狙いがあるのではないでしょうか。
(※まさにIFRSという会計基準がインチキである証拠として、本当は「のれん」という論点で、極めてクリティカルなことを書きたいのですが、本稿では個別企業の決算を取り扱っているため、自重したいと思います。ご興味がある方は、IFRS採用企業について、純資産とのれんの額を比較してみてください。)
明暗を分けたのは、テイクアウト戦略?
これに対し産経の記事によれば、マクドは新型コロナウィルスの影響で店内飲食が減った一方、持ち帰りなどの売上が大幅に伸びたとしています。
これについてマクド社の短信(P2)には、こんな記述もあります。
「店内飲食は、前年同期比で減少いたしましたが、テイクアウト、ドライブスルー、デリバリーの伸長により既存店売上高は2015年の第4四半期から2020年第3四半期まで20四半期連続でプラスとなりました。」
テイクアウト、ドライブスルー、デリバリー。
この3点セットで「20四半期連続」(!)という驚きの増益記録を達成しているのです。そういえばマクドは新宿の店舗もずいぶんと絞りましたが、イートインを減らしてテイクアウトなどに力を入れたことが、今回の大幅増益に寄与したのかもしれませんね。
もっとも、この記述からうかがえるのは、コロナ禍の到来は、「中食」需要を取り込むというマクド社の中・長期的な営業戦略とたまたま合致した、ということであり、コロナ禍が終息したあかつきには、その反動減もあり得る、ということではないかと思います。
ただ、外部環境がどのようなものであれ、成長する企業は、得てして創意工夫で乗り切るものなのかもしれません。
そういえば、以前の『河野大臣の次のターゲットは印紙』でも取り上げたとおり、マクドといえばスマートフォンのアプリを活用した「モバイルオーダー」などの取り組みでも知られています。
個人的な体験で恐縮ですが、この「モバイルオーダー」、株主優待券が使えない、ポテトの塩抜き指定などの細かい要望が伝えられない、受領時間の指定ができない、といった細かい不満はあるものの、そうした点を別とすれば、非常にユーザーフレンドリーな設計です。
とくにイートインの場合、マクドのルール上は「注文をする前に席を確保する」ということが可能ですが(というよりも、席を確保してから注文しないと大変なことになってしまいます)、特殊な事情(たとえば混雑する店に子連れで入店した場合など)がある場合は、それもなかなか大変です。
とりわけ、せっかく席を確保しても、注文するまでに長蛇の列に並ばなければならないような場合もありますし、昨今のコロナ禍でソーシャル・ディスタンスの確保には難があります。そんなとき、モバイルオーダーの「座席指定」を利用すれば、列に並ばなくてもお店の人が座席まで注文品を持ってきてくれます。
あるいは、テイクアウトなどにも対応していて、あらかじめモバイルオーダーしておけば、列に並ばずにスマホの画面を見せるだけで注文品を受け取ることができます。
クレジットカード情報をアプリに入力しなければならないため、抵抗感があるという人もいるかもしれませんが、個人的には大いにおススメです。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
もっとも、最近ではすかいらーくもテイクアウト、宅配などに力を入れ始めているようです。
外食産業もこのコロナ禍を乗り切っていただきたいと切に願う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
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米国在住です。
外食産業ではファースト・フード以上のレストランでは料理の味や匂いと共に「サービス」や「適度に混雑した店内の雑多な会話、インテリアの色調・照明の醸し出す陰影、食器やスプーン、ナイフ、フォークの感触を楽しむ事も重要になります。
このコロナ禍中ではソーシャル・ディスタンスの保持の為味覚と臭覚以外の感覚の意義が激減しますので、家賃や維持費等の固定経費の高い店ほど採算性への打撃が大きいと思います。
私の視点は少し違います。申し訳有りません。
昨日、すかいらーくが無配との報道がありました。
最低単位の100株ですので、少しショックで済みました。
株主優待権は実施して欲しいなぁ。
高校生の孫に株主優待券をプレゼントを…、考えてました。
昨日の株価は74円安の1644円。11月6日に1536円で購入。
日足表を見ると9月10日1684円814.6千株。
翌日9月11日1521円前日比163円安11102.5千株。
この時は株主優待の半減の発表⁇でした。(多分ですが)
今日の値動きに興味があります。
専門的なことは良く解らないんですけど、すかいらーくの”のれん計上額”は確かに大きいですね。
学校では「最長20年間?までの任意の期間で定期償却すること」だと習った気がします。
企業買収時に発生した「企業ブランド力」なんて無形の資産価値(潜在的な粉飾要因)を取得額のままで計上していい会計基準って、企業の健全性という観点では疑問ですね?
*東芝は買収したWH社の”のれん処理”が適切であればあんにことにはならなかったのかもですね。
*ソフトバンクグループみたいに個々年で保有株式の洗替評価損(実質的なのれん償却?)を計上して法人納税をゼロ近くに調整してるような事例もどうなのかな?・・とは思うのですが・・。
更新ありがとうございます。
飲食業界は、多くの場合薄利多売が基本になっていますので、客足が落ちると厳しいですね。
今日の状況では、①テイクアウト、デリバリーのシステムが元からあるかどうか、②来店して喫食したくなる訴求力(価格を含む)がメニューにあるかどうか、③持っているメニューがテイクアウト、デリバリーに耐えられ且つ特色を持っているか、④キャッシュレスやオンライン決済に対応しているかで、各社の状況が大体分かれるかと。
ガストなど普通のファミレス系のお店は、①②③が弱いので特に苦しく、逆にマックは、②は弱いものの、①③④はしっかりしているので、他社の需要を吸収して業績を伸ばしていると見ることができそうです。
餃子の王将は意外にも②が底堅いのか、同業他社よりかなり落ち込みが少ないようです。
静岡県のみを商圏にしているハンバーグレストランのさわやか(先日店舗の一つが火災で店舗が焼失してしまいましたが、満席状態から一人の死傷者を出さずに客と従業員の避難ができている)は、②がとても強いこともあって客足は回復していると見ております。
ラーメン屋さんは、一蘭など一部の会社を除き、今が一番厳しい状態かもしれません。テイクアウト、デリバリーに耐えられる仕掛けの開発を業界として早急に進める必要があるでしょう。
牛丼業界は、①のメリットを強化するため④のシステムを改良しているように見えます。
ここまで書いて、デリバリーピザが出てこないのは何故か?
個人的には単価が高い(価格の半分近くはデリバリーコストでしょうし、それを除いてもアメリカンピザのカテゴリーとしてはまだ高いという認識)と判断しているので…できたてのクリスピーなイタリアンピザが届けられるのであれば、今のデリバリーピザの価格でも安いと考えますけど。
>ボーンズさん
②ですが、マクドはポテトに何か入っているんじゃないかと思うほど習慣性があると思うのです。(ハイ依存者です)
定期的にすごく食べたくなります。モスやロッテリアにはそんなこと無いのに。
自転車乗りなのでガンガン出ていくため、個人的には新宿会計士さんとは逆にポテトの塩マシマシがあればいいなと。
モバイルオーダーのテーブルデリバリーはコーヒーのフレッシュいらないができないので、そのまま捨てるしかないのがもったいないです。砂糖は即燃料なので大歓迎。
更新ありがとうございます。
私、ガストもマクドも長い間足を向けてません(笑)。ガストは15年以上、マクドも5年、一度も利用してないです。
理由は、子が巣立ち、孫も居らず、家内と行く選択肢には上らないからです。でもまったく外食が嫌いかと言うとそうではなく、お好み焼き屋の◯風、コーヒーの◯タバ、ド◯ー◯、パスタの店、うどんの丸◯◯麺、そばの家◯亭、寿司の回らない店、その他地元の昔からある喫茶店等は行きます。
あー。気付きました。もう脂っこいものが駄目なんですネ。マクドに昼行ったら、夕飯まで堪える。でも家庭で食べるハンバーグはペロッと食べて平気!
外食産業は薄利多売で難しいですよ。1店舗だけならオーナーの知恵と家族ら身内のような方の頑張りで、なんとか食って行けます。しかしどだいチェーン化なんて無理でしょう。北海道から九州沖縄まで、定番メニューは同じ(味は変えても)、料金体系もほぼ同じ。
店の作り、厨房も、材料も一括仕入れ。大手スーパー、百貨店、大型家具店、DIY、ドラッグストアと並んで、凋落産業の見本とさえ思います。マクドも数年前、大失敗しているからな〜。
お疲れ様です。
売り上げ関係とは少しズレて、本題に上がった店舗とは無縁の問題になりますが
飲食関係店舗のテイクアウト&デリバリー戦略の中で少し懸念していた
無許可でこれらを提供する法令違反の店舗や、それによって夏場に
食中毒が続出するかもしれなかった問題は何とか無事切り抜けましたね。
まだ今年を締めるには早いでしょうけど、来年も何事もありませんように・・・。
こちらのブログで楽しいと思う記事の一つが、財務諸表の限られた情報から現実を類推する、今回のような記事だと思っています。
>コロナ禍が終息したあかつきには、その反動減もあり得る、
「テイクアウト、ドライブスルー、デリバリー」が、20四半期連続増益ということは、コロナ前からその傾向が続いていたわけですよね。
コミュニケーションの手段として店で食う人は、ネットの影響で減ってると思うので、食習慣の変化のような影響もあったんじゃないかという気がしてます。
コロナでそれが加速してしまったと。
あとは、消費期限切れチキン問題が2014年頃でしたから、20四半期の初期はそこからのV字回復(反動増)で、食習慣の変化の追い風+コロナ、でしょうかね。
無根拠推測ですが、コロナ後の反動減も多少はあるんでしょうが、乗り切っちゃうような気がします。
こういうのをあれこれ考えるのも楽しいもんです。
詳しい方の分析があると嬉しいです。
少し違うというか頓珍漢な視点から…
「新宿会計士さん、あんたァ鈴鹿の関より西の出だね」
(妙にドヤ顔のバーテンダー口調でご再生ください)
マックでなくマクド、だから?
マクドは近畿地区では?
私の住んでいる所はマックです。四国や中国地方はどうなんでしょうか。
福岡在住者さん
お疲れ様です。
中国地方は当方の地元に入りますが、大雑把に言えば地域によりますねぇ。
各県内でも方言は地域によって微妙に違ったりしますが、基本の方言の中に
近畿的寄りな要素が混ざってるところはマクドのところが多い印象です。
(もしかすると厳密には地域の方便ではなく、単に他所から移住してきた方達なだけかもしれませんが)
ちなみに私の地元では大半がマック呼びでした。
コメント有難うございます。
もっと他の地域の方々にも食いついて欲しいですね(笑)
昔から不思議に思っている疑問を率直にぶつけて 話を盛り上げるのが好きなのですが、中国地方に住んだことの無い者としては 岡山県の広島県との違い それと近畿地方の兵庫県の違いはどこから来ているのしょうか。
そこにある企業文化の違い? あっ、これは雑談投稿ですね。
引っ掛かったオタク様
失礼します。兵庫県の私はマクドですし、三重県津市、愛知県名古屋市内の知人もマクドでした。基本、西日本はマクドだと思いますよ。四国、中国、山陰地方も。出張に行ってた頃、周りの人がマクド、マクドと言ってました。九州は、、ちょっと分からないです。
ちなみに首都圏に住んで8年目の長男も、未だにマクドです(笑)。神奈川県の嫁を貰ってもマクド(笑)。会社内で関西や、西のほう出身の方とは良く話が合うそうです。さぞかし嫌がられてる事でしょう(爆笑)。