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韓国高官「度量の広い宣言を」/公示送達小出しの狙い

久しぶりに驚きました。訪日中の朴智元(ぼく・ちげん)韓国国家情報院長が二階俊博・自民党幹事長に対し、「韓日関係の葛藤を解くために、韓日両国首脳が度量の広い宣言を発するべきだ」と提案したと伝えられているからです。この手の「度量の広さ」という表現が出てくるとき、たいていの場合、それが求められるのは、「韓日両国」ではなく一方的に日本の側なのですが…。

朴智元氏「度量の広い韓日首脳共同宣言を」

先ほどの『この期に及んで、まだ水面下アプローチにこだわる韓国』の続きです。

韓国メディア『中央日報』(日本語版)の今朝の記事によると、日本を訪問中の朴智元(ぼく・ちげん)国家情報院長が8日、「韓日葛藤を解くための解決法」として「両国首脳の度量の広い宣言」を提案したのだそうです。

訪日した朴智元、自民党に「韓日首脳共同宣言」提案

日本を訪問中の朴智元(パク・ジウォン)国家情報院長が8日、二階俊博自民党幹事長と会い、強制徴用や輸出規制問題など、韓日葛藤を解くための解決法として両国首脳の度量の広い宣言を提案したと外交消息筋が9日、伝えた。<<…続きを読む>>
―――2020.11.10 06:51付 中央日報日本語版より

中央日報によると、これは「外交消息筋が9日伝えた」情報だそうであり、また、「韓日関係の短い黄金期を可能にした1998年の『金大中(キム・デジュン)-小渕宣言』に続く性格のものと見ることができる」、などと評しています。

そのうえで、これを明らかにした「外交消息筋」の説明も交えつつ、中央日報は今回の朴智元氏の提案の狙いについて、次のように分析します。

  • 朴氏は韓日関係が最低点をつけている状況で、当時のような指導者間の大乗的な決断が必要だという次元でこのような構想をしたとみられる
  • 強制徴用問題を両国が直ちに解決することは難しいことから、まず指導者が大きな枠組みで共に未来志向的に進んでいこうという約束、すなわち政治的宣言をすることで、関係改善の転換点とみなすことができるようにしようという趣旨だ

…。

なかなか面白い考え方ですね(※もちろん、皮肉です)。

たいていの場合、日本が一方的に譲歩する

もちろん、中央日報が引用した「外交消息筋」とやらの情報が正しいかどうかという問題はありますが、この手の記事を読むと、正直、日韓の認識差は、もはや絶望的ではないかと落胆せざるを得ません。

まず、この手の「度量の広さ」という言葉が韓国側から出てくるときには、たいていの場合、それが求められるのは一方的に日本の側です。当ウェブサイトでいつも指摘している「ゼロ対100」理論の典型例であるとも言えます。

ゼロ対100理論とは?

自分たちの側に100%の過失がある場合でも、告げ口外交、瀬戸際外交などを駆使して「相手も悪い」などと言い募り、過失割合を「50対50」、あわよくば「100対ゼロ」に持ち込もうとする、韓国特有の屁理屈のこと。

つまり、韓国の政府、メディア、自称有識者(あるいは日本の左派メディアなど)が「日本は度量の広さを見せよ」と述べるときには、日本が原理原則を曲げて、韓国に対して譲歩せよ、という要求とまったく同じです。

考えてみればわかりますが、自称元徴用工判決問題を筆頭に、現在、日韓関係を破綻に追い込みかねない数多くの問題は、そのほとんどが韓国由来のものです。

たとえば自称元徴用工判決は、日韓請求権協定で解決済みの請求権を覆したという意味で、韓国の司法が国際条約を一方的破ったという問題であり、また、韓国政府も日韓請求権協定に従った外交的解決プロセスを無視したという意味で、国際条約を一方的に破っています。

また、輸出管理適正化措置も、日本政府が安全保障上の理由で講じた措置を勝手に輸出「規制」と偽って全世界に宣伝し、あまつさえ軍事情報共有に関する協定を破ろうとしたり、日本を世界貿易機関(WTO)に訴えたりしています。

そんな韓国に1ミリでも譲歩したら、それこそ日本という国が韓国の無法を認めたということにつながりかねません。だからこそ、たとえば自称元徴用工判決問題においても、日本企業が1円たりとも自称元徴用工らに損害賠償を実施してはならないのです。

朴智元氏にそれを提案する資格があるのか?

さて、中央日報の記事にもあるとおり、1998年の日韓共同宣言では「日本の植民地支配の謝罪」が盛り込まれています。そして、金大中(きん・だいちゅう)元大統領(故人)自身もこれについて「両国間の歴史葛藤は一段落した」と評価したそうです。

ただ、中央日報のこの記事の執筆者は、そこで思考停止していないでしょうか。そもそも1998年、日韓両国がともに未来に向けて歩もうと宣言したにも関わらず、ことごとく、それに反する動きをしたのは韓国の側であるという事実を忘れてはなりません。

慰安婦問題を突如として蒸し返したのは李明博(り・めいはく)元大統領(※収監済み)ですし、朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領(※刑事訴追中)のもとでかわされた日韓慰安婦合意を一方的に反故にしたのは文在寅(ぶん・ざいいん)現大統領の政府です。

中央日報によると、この朴智元氏自身、金大中政権下で「大統領秘書室広報首席秘書官」だったと述べているのですが、そうであるならばなおさら、自分の国が数多の日韓合意、国際約束、条約などを反故にしてきた事実と向き合う必要があるでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

さて、中央日報によると、朴智元氏は1999年、文化観光部長官として、当時の運輸大臣だった二階俊博氏と会い、2002年の日韓ワールドカップ共催などを通じて親交を深め、朴智元氏が北朝鮮送金問題で収監された際にも二階氏が手紙や下着を送って慰労した、などと述べています。

この記述だけを読むと、両氏は個人的な親交を深めているかにも見えますね(※余談ですが、「下着を送る」という発想には個人的な違和感を抱くのですが、この点は本論とは無関係なので、敢えて触れないことにします)。

ただ、朴智元氏が提案したとされる「度量の広い韓日関係」とやらを巡って、中央日報は短く、次のように述べています。

これについての二階氏の反応は確認されなかった」。

おそらく、これがすべてなのでしょう。

オマケ:三菱重工の件

さて、本日の「オマケ」です。

自称元徴用工判決から2年:徹底的に不誠実な韓国』でも報告したとおり、本日、自称元徴用工判決を巡り、三菱重工の資産売却に関する公示送達の期日が到来しました。これについてサンケイビズは「11月10日午前0時以降、地裁は売却命令を出すことが可能となる」と報じています。

三菱重工の韓国内資産売却 公示送達の効力が10日午前0時に発生

―――2020.11.9 22:52付 SankeiBizより

ただし、サンケイビズの報道によれば、今回公示送達の効力が発生したのは9月7日に掲載された審問書の内容に関するものであり、これとは別に10月29日にも、資産の差押に関する公示送達をしていて、こちらの効力は12月30日に発生するのだとか。

そのうえでサンケイビズは、「地裁は2つの公示送達の効力がそろう年末以降に、資産の売却(現金化)に向けた判断を出すものとみられている」と評していますが、果たしてそうでしょうか。

というのも、こうやってさまざまな手続を小出しにしていること自体、彼らの側にも日本企業の資産を本気で売却するつもりがないという証拠に見えてならないからです。非核化と称したパフォーマンスを続ける北朝鮮と、やっていることはそっくりですね。

いずれにせよ、「強制売却、やるのならばどうぞ早くやって下さい」という言葉をお贈りしておきたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (41)

  • やっぱり、こんな埒もないことを言うために、わざわざやってきたんですね。金大中時代に旨く日本を抱き込んだことで、散々オイシイ思いをした。夢よもう一度ということでしょうか。朴智元という人物が今のムン政権の中でどんな位置づけになっているのかは知りませんが、蔵からほこりを払って引っ張り出してきた、手入れもしてない錆刀って感じでしょうか。

    それにしても、日本を敵性国家として強く意識するなら、それだけ対日外交力の強化を図るべきところを、外交部の対日本エキスパートを軒並みパージしてしまって、正攻法で外交交渉をやるなど不可能な状態にしてしまった。全くの素人集団としか言えないことを、改めて曝け出したってことですね。対日外交に限ったはなしではないですが。

  • これは、訪問販売でいうフットインザドアでは?
    足さえ入れば、次は体と次々要求を上げていく。
    日本は原理原則を貫き、ドアを絶対に開けてはなりません。

  • 差し押さえ資産の売却&GSOMMA破棄

    大阪流に言えば
    うどん屋の釜⇒ゆう(湯)だけ

    江戸っ子風に言えば
    菜っ葉の肥やし⇒掛け肥え(掛け声)ばっかり

    • こんなのもありまっせ。

      NATOおぢさん⇒No Action Talk Onlyおぢさん

      乞食の雑炊⇒湯(言う)ばっかし

      お粗末様でした。

  • まだまだ日本は韓国を本腰を上げて破壊する気が全くない。
    なんという度量の広さだろう。驚くよ。
    今の日本にできることは韓国が信頼を築くのを待つことだけ。
    早く韓国の国内問題を解決しなさいと急かすことだけが日本の最後の愛情です。
    中国なら痛烈な猛批判を連日出してるところ。
    北なら目に見える破壊措置を遂行する段階の一歩だけ手前。
    日本みたいに韓国に親しい国は見たことがありませんよ。

  • 未来志向と言いながら、過去に拘る支離滅裂。トップ同士が英断しようった言うなら、まずやってみたらどうかと思いますけどね。まあ1000年経っても無理だと思いますが。

  • あ~なんか嫌な予感がする。
    2F氏やその子分のK村が蠢いているような・・・
    バイデンさん、「日米韓の協力関係を強めるために」とか言って、自称徴用工問題で日本に譲歩を迫らないでね
    バイデンさん、まず先に、あなたが後見した(と言ってる)慰安婦合意を守るよう韓国に迫ってね

  • 日本は脅せば韓国の言うことを聞く。
    金も出す。
    韓国は日本を操っているのだ、
    というような過去の成功体験が忘れられないのでしょうね。

  • 本筋から外れたところに反応します。

    > 指導者間の大乗的な決断が必要だ

    儒教社会である韓国人が、珍しく「大乗的」などという仏教用語を使ったことが興味深いです。李氏朝鮮時代の崇儒排仏によ、り山奥で細々と命脈を保っていた朝鮮の仏教が、こんな所で顔を出すとは。

    日本人コリアウォッチャーの多くは「韓国人は漢字が読めない」と認識していますし、実際に大部分の韓国人は漢字が読めません。しかし日本よりも長く深く中華文明と接してきた歴史的蓄積から、朝鮮語の中には深く漢語が根付いています。さらに日韓併合時代に日本が作り出した和製漢語で近代化教育を受けましたので、ハングル専用の願いも虚しく、韓国語から漢字語を除去することは困難です。

    韓国人がちょっと格好を付けてインテリっぽいことを言おうとすると、漢字語を使わざるを得ないのです。

    本筋の内容は、全く評価に値しません。

    • 阿野煮鱒様

      >儒教社会である韓国人が、珍しく「大乗的」などという仏教用語を使ったことが興味深いです。

      アチラの要人が「大乗的」という言葉を使ったのは、これまでにも度々あったと思います。わたしが読む韓国の報道といったら 対日関係の記事に限られてはいるので、確言はできませんが、この言葉は多分、自らの悪行で日本との関係が不味くなったとき限定で、口にするんじゃないかと思っています。

      仏教の教義など一知半解の彼らが、この言葉を特定のシーンで好む理由は明白だと思います。徳を積み、高みに登っているウリが、広い心で過去に悪行を重ねたナムを許してやるんだから、ナムも同じように振る舞うニダ。(ついでにしっかりお布施を寄こすニダ)。まあ、そういう底意なんでしょう。

      仏教であろうが、キリスト教であろうが、土俗的シャーマニズムであろうが、アチラではこぞってカルト化するのは、こういう精神構造からすると不可避なんでしょうね。

    • 阿野煮鱒 様

      韓国人は絶対に「大乗」という言葉を理解していないですね。
      大乗仏教の基本は「自未得度先度他」です。
      すなわち「自分が救われるより先に他人を救いたい」ということです。
      これほど韓国人に似つかわしくない言葉はありませんね。

    • 韓国人の言う「大乗的見地に則って」とは「法律論的議論や論理的整合性などは取っ払って」とパラフレーズして良いので、「たーけたこと言やぁすな」とだけ返せばそれでオシマイです。

  • 何を言おうがど〜でもいいんだと思うのですが、とりあえずひとことなのです♪

    >まず指導者が大きな枠組みで共に未来志向的に進んでいこうという約束、すなわち政治的宣言をすることで
    仮に、そういった約束をしたとこで、韓国がその約束を反故にしないってことは、どうやって保証してくれるのでしょうか?
    せっかく結んだ約束をひっくり返したりしたら、余計関係が悪くなるとは思わないのでしょうか?

    やるんなら2国間でどうこうするよりも、まずは多国間での当たり障りないとこから、はじめてはどうでしょうか?
    例えば、香港問題とか東シナ海の安全保障とか、他の国もいる枠組みへの賛意を示すとか、なんかは入り口としてちょうど良いんじゃ無いのかな?
    これはちょっとハードル高いかな?
    だったら他の地域の問題で、ちょうど良さげなのとして、・・・
    ・・・・
    ・・・
    ・・

    思いつかなかったのですm(_ _)m

  • 韓国は、日韓請求権協定や慰安婦合意なんて、まとわりついてきて鬱陶しい蜘蛛の巣程度にしか思ってませんよきっと。
    全部掃除したいとすら思っているんじゃないでしょうか?
    彼らにとって、従うべきは「法」「条約」「協定」「合意」ではなく、「良心」や「常識」です。
    (彼らにとっての)「良心」と「常識」に従えば、「ふほうなしょくみんちしはい」をした日本が譲歩するのが当然なんです(韓国にとっては100:0で日本が悪い)。
    それでも「両国首脳の度量の広い宣言」として、自分たちも譲歩してやるよ(80:20くらいにしてやるよ)、と。

    ただそれを日本が受け入れるとは、さすがに考えていないでしょう(いないよね?)。
    目的は、「韓国は解決のため努力しているのに日本には解決の意図がない」ということにするための既成事実を積み上げること。
    菅総理とも会えても会えなくても、どっちでもいいんじゃないでしょうか。
    日本としては「約束を守れ」を言い続けるだけですね。

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