菅義偉政権発足へ 個人的な注目点
すでに『【速報】菅義偉氏が自民党総裁に 国会議員票の7割超』でもお知らせしましたが、昨日、菅義偉内閣官房長官が自民党総裁選を制し、安倍晋三・前自民党総裁からバトンを受け取り、自民党総裁に就任しました。また、おそらく明日にでも臨時国会で菅義偉政権が発足するでしょう。本稿では個人的に気になっているポイントをいくつか列挙しておきたいと思います。
菅義偉氏が圧勝
昨日の『【速報】菅義偉氏が自民党総裁に 国会議員票の7割超』でも「速報」的に取り上げましたが、自民党総裁選では菅義偉内閣官房長官が他の2候補に圧倒的な得票差で勝利しました。改めて示しておくと、次のとおりです(図表1)。
図表1 自民党総裁選(2020年9月14日)
候補者名 | 国会 | 地方 | 合計 |
---|---|---|---|
石破茂 | 26票(6.6%) | 42票(29.8%) | 68票(12.7%) |
菅義偉 | 288票(73.3%) | 89票(63.1%) | 377票(70.6%) |
岸田文雄 | 79票(20.1%) | 10票(7.1%) | 89票(16.7%) |
(【出所】ライブ中継動画等を参考に著者作成)
当たり前ですが、自民党総裁選は私たち国民が投票できるものではありません。なぜなら自民党という政党の内部の話だからです。したがって、自民党の党則に従い、国会議員票のみならず、地方の議員・党員・党友などからの支持も必要です。
マスメディア的には「国民の人気1番」だったはずの石破茂候補が3位に沈んだというのはご愛嬌として、岸田文雄氏が地方票で7%しか取れなかったことは、同氏にとっては地方への浸透が今後の課題だという証拠でしょう。
また、今回の選挙を「しょせんは国民不在・派閥の理論の出来レースだ」などと批判する方もいらっしゃいますが、そのような方は一般党員の参加を完全に排除して今月10日に行われた立憲民主党の代表選についても、同様に批判されているのでしょうか。
非常に疑問です。
いずれにせよ、今回の自民党総裁選の結果に不満があるならば、あなたが取るべき行動は、ただひとつ。
次の総選挙では自民党以外の政党に清き1票を投じることなのです。
菅義偉内閣の顔ぶれ:麻生太郎氏の扱いは?
さて、菅氏が昨日、自民党総裁に就任したことで、明日にも臨時国会で「菅義偉総理」が誕生します。そうなると、次は菅義偉内閣の顔ぶれ(とくに、現政権の骨格がそのまま維持されるのかどうか)に焦点が集まっていくでしょう。
もちろん、政権の継続性などの観点から、総理大臣と官房長官以外の閣僚人事、党人事はすべて横滑りさせる、という可能性もありますが、ある程度は「菅カラー」を出すのかどうかには注目したいと思います。
安倍政権時代だと、各派閥の力関係などで閣僚ポストが見えてきて、それらを関係者も積極的にメディアにリークしていたフシがあります。ただ、今回の総理の交代劇では、不思議なことに、閣僚人事がほとんど漏れてきません。これは、毎度の内閣改造と比べると、何やら異例な気もします。
この点、菅義偉氏自身が内閣官房長官として安倍政権の屋台骨を支えてきたという点から、安倍政権のこれまでの方針を抜本的に転換するような突拍子もない閣僚人事が行われる(たとえば、石破茂氏を外相にする、などの)可能性はないと考えて良いと思います。
しかし、個人的に注目したいポイントのひとつが、現在、副総理兼財相として入閣している麻生太郎総理の扱いです。あくまでも当ウェブサイトの主観に基づけば、安倍政権は「安倍・麻生・菅」という3つの要素に加え、政権中期までは甘利昭氏も加えた「3AS」が事実上のエンジンのようなものでした。
麻生太郎氏という人物が入閣してうまく機能していた理由は、単なる派閥の力学を越えて、ひとえに安倍晋三総理との個人的な相性もあったのではないでしょうか(政界に知り合いがいるという人物にから、「麻生太郎(氏)が安倍晋三(氏)の精神安定剤だ」、と聞いたことがあります)。
このあたり、「人間の相性」というものは、あくまでも想像の域に過ぎません。しかし、安倍晋三氏という要素が欠落したなかで、案外、麻生氏が今年80歳になるという「高齢」などを表向きの理由にして、閣外に去っていく可能性もあります。
そうなると、菅義偉氏が安倍政権下の重鎮だったというだけの理由で、菅政権が安倍政権のカーボンコピーのようになるとは限りません。その意味では、麻生氏の処遇が「菅カラー」が出るかどうかの試金石のようなものかもしれません。
解散総選挙は?
個人的に注目するもうひとつのポイントは、解散総選挙の有無です。
当ウェブサイトではかなり早い段階で「政権が発足したら可及的速やかに解散総選挙を実施するのではないか」という可能性を議論してきました(『18日に衆院解散なら「野党はめちゃくちゃ困る」!?』等参照)。
さすがに「16日に臨時国会召集と新内閣発足、18日に解散」は日程的に難しいかもしれませんが、一般的には政権発足直後が一番内閣支持率も高く、また、政権発足後は支持率がジリジリ下がる傾向にある点を踏まえれば、与党・自民党にとっては早期解散総選挙が望ましいはずです。
これに加えて、単純に日程だけの話をすれば、現在は麻生政権発足直後と非常によく似ているのも気になります。麻生太郎政権が発足したのは、今から12年前の2008年9月24日のことでしたが、当時、衆議院の任期は2009年9月10日までであり、あと1年弱しか残っていませんでした。
これを現在に当てはめてみると、菅義偉内閣の発足が明日だったと仮定した場合に、衆議院の任期は2021年10月21日まで1年少々しか残されていないという状況に関しては、そっくりです(図表2)。
図表2 新政権発足と衆議院の残り任期
政権 | 政権発足日 | 衆院の残り任期 |
---|---|---|
麻生太郎政権 | 2008年9月24日 | 351日 |
菅義偉政権 | 2020年9月16日 | 400日 |
(【出所】著者作成)
リーマン・ショックで解散し辛かった2008年と、武漢コロナ禍で解散し辛い現在という点も、状況は非常によく似ています。
麻生政権のときには、麻生総理が解散総選挙に臨もうとしたものの、2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発する世界的な金融危機の対応のため、タイミング的に解散が難しく、結局は任期満了直前の2009年7月21日に追い込まれるように解散し、自民党は惨敗しました。
当時の自民党の惨敗は、新聞、テレビを中心とするマスメディアがこぞって「政権交代」を煽ったという側面もありましたし、現在ではインターネット環境が普及していて、社会全体が当時と比べればマスメディアの虚報にまだ騙されなくなっているという側面はあるでしょう。
しかし、政権発足から1年後の解散総選挙で惨敗したというのが麻生政権の教訓でもありますし、政権の重鎮だった菅氏であれば、そのことはよく理解されているでしょう。
コロナ禍が収束しないうちであれば、どうせいつ解散しても批判されるのです。そうであるならば、ウイルスが流行しやすくなる冬が到来する前に、「集近閉(しゅう・きん・ぺい)」を避けつつ、解散総選挙に臨む決断を菅氏が下すのではないか、というのが当ウェブサイトなりの予想なのです。
政策課題はコロナと安保と経済問題
そして、菅政権には対処すべき課題が山積していることもまた事実でしょう。
武漢コロナ禍が収束していないなかで、来年に延期された東京五輪を実施するのかどうか(あるいは無観客で実施するのか)という点も気になりますが、その「本丸」は、経済問題でしょう。
あくまでも個人的な思いを申し上げるならば、消費税(+地方消費税)については、少なくとも合計税率を5%に引き下げることが必要だと考えています。その趣旨は、消費税率の引き下げで消費が喚起され、経済成長するという実例を作ることが、財務省に対する牽制上も重要だからです。
ただ、財務省の増税利権は自民党の政治家であってもなかなか触れることができませんし、菅義偉氏に消費税の税率を触るだけの政治力があるのかどうか、あるいは菅氏がそのリスクを取りに行くのかどうかはよくわかりません。このあたりは未知数でしょう。
また、菅義偉氏が「外交に弱い」と指摘するメディアも多く(※なぜか韓国メディアなどがそう主張しています)、実際、菅義偉氏自身が外相などを経験したという経歴はありません。そして、外交に弱いということは、安倍政権が強化した国防面が緩むかもしれない、という懸念がある、ということでもあります。
もっとも、『「外交に弱く、派閥に振り回される菅政権」は本当か?』でも触れたとおり、当ウェブサイトとしては「菅義偉氏が外交に弱い」という主張自体には懐疑的です。とくに、菅義偉氏自身が安倍政権の重鎮だったという事実を踏まえれば、安倍外交についてはよく理解しているのではないでしょうか。
まずは明日の政権発足を待つ
いずれにせよ、今後について気になる点は多々ありますが、まずは明日の政権発足を待ちたいと思う次第です。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
個人的には小野寺五典元防衛大臣が石破派を抜けてくれるか?に興味があります。
なぜ、見識に優れた小野寺五典さんが石破派に入ったのかが不思議ですが。
女性閣僚としては稲田朋美さんでは弱い、野田聖子さんではGACKTコイン、
なので高市早苗さん、松川 るいさん、三原 じゅん子さん辺りが入閣して欲しい所です。
小野寺五典は宏池会所属ですよ。
「外交に弱い」という懸念を払拭する意味でも、具体的な政策を明言する菅さんには、スパイ防止法の制定を掲げて欲しいと思います。
それを補強するため、特別永住者という区分の廃止も。
立憲民主党の代表が泉氏であれば、自民も多少は危うかったかも知れません。やはり議員の若返りという点について、世論が騒ぐ所のひとつかと思います。個人的には甘利さんを官房長官か財相で起用して欲しいと思っていますが。
菅さんは消費税には触らんでしょう。
叩き上げだけあって、自分が出来ることと出来ないことをよくわかっているうえに、タイミングを嗅ぎ分ける能力が高い人だと思います。何度も口に出している通信費はおそらく本腰を入れて徹底的にやるのでは。
口座問題でやらかしたdocomoは弱目に祟り目ですね。
外交が弱いのであれば、そこに優秀な大臣を。
個人的には、甘利さんにやっていただきたいんですけど難しいですかね。
更新ありがとうございます。
菅義偉総裁は解散総選挙について「コロナ禍が収束してから、見通しが専門家から出てから実施する。すぐにやれば良いものではない」と、昨日語られてます。
しかし、コロナ禍とは関係無く(無いはずはないが)、厳重な予防体制で早くやるべきと思います。
また日本共産党の志位和夫氏は「今回の選挙は国民不在・派閥の理論のみだ。開かれた選挙ではない」と批判してます(失笑)。どの口が言うんでしょう。密室で決めて20年以上、赤帝国に居座る犯罪集団ボスには言われたくないです。
訂正
×めがね橋おやじ→○めがねのおやじ
でした。
6Gをふまえたクリーンデジタル網の構築を期待します。
> 6Gをふまえたクリーンデジタル網の構築
私も賛成です。NHKの受信料を廃止し、デジタル庁にその予算を引き継がせ、強固で広範囲なネットワーク構築を期待します。
もう、テレビよりもそっちの方が災害時にも有益でしょう。
麻生閣下は、麻生副総理・財務相再任だそうです。
下記に日経の記事から一部転載します。
自民党の菅義偉総裁は16日の首相就任後に発足する新内閣で麻生太郎副総理・財務相を再任する方針だ。
全文はこちらです。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO63837910U0A910C2000000?s=4
何でも強いオールラウンダーなんて存在しないと思います。弱いところは閣僚がサポートし、政権として強固であれば何の問題も無いと思いますが、メディアの揚げ足取りは相変わらずって事でしょうね。あと、韓国メディアが外交に弱いって言っている話は完全にブーメランですね。嘘つき害交しか出来ない自国の政権に突き刺さる奴です。
実務能力重視と言われる菅氏ですが、セクシー大臣の再任があるかに注目です。
安倍路線継承で外交に重きを置くなら、麻生外務大臣かなあ。麻生さんに内政任せるよりは良さそう。財相は茂木っちで。
河野談話の再調査をお願いします。
個人的には、世耕氏の起用が気になってます。いわゆる参議院枠。
いい加減、管理人さまやみなさんと逆の意見を言い続けるのは不安ではあるのですが……
麻生政権時代と確かに数字の上では状況は似ていますが状況はまるで違います。
当時は、組閣後にリーマンショックが起きましたが今回は現在進行形ですし、当時福田内閣は背水の陣内閣と自任したそうですが、さて今回自民党はそこまで追い込まれているでしょうか。
昨日、菅総裁は、仕事をしたいと
あとこれは個人的にですが、日本は大統領制の国と違い、比較的任期途中の辞任をしやすい国ではありますが
もう少し、仕事ぶりを見たいと思っています。
少なくとも、菅さんの言葉を聞いてる限り、選挙管理内閣であったり中継ぎという意識で臨んでるようではないように見えます(あくまでポーズなのかもしれませんが)。
個人的に、日本の省庁のIT音痴にはうんざりしていたので、デジタル庁創設は期待しています。
その評価をする時間を、我々には必要ではないでしょうか?(場合によっては、不支持に回らなきゃいけない可能性もあります)
あと、現実的にも、専門家から意見を聞いた上で総選挙を実施すると昨日明言されてたので、やはり早期解散は難しいのではないかと思います。
P.S
自分がどうしても反対してしまうのは、政局一番の某野党をずっと嫌悪して見てきたのと、政治家の仕事ぶりを純粋に評価したい思いが強すぎるからなのかもしれません。
どう考えても、自民党以外に選択肢がない以上、間違っても民主党を利さないためにも総選挙で追い落とすべきという論調は確かにわかります。自分も正直怖いです。
ただ案外、今の国民は冷静というかしっかり見ているようにも見えます。
安倍総理退任前の世論調査は正直驚きました。
あれだけネット・メディアの大きな声から叩かれ続けていた一方で、しっかり評価するところは評価していたのだな、と。
いまの国民は、自分たちが思ってるよりちゃんと見ていたるのではないかなと思うのです。
繰り返しますが、試されているのは国民だと思います。
そのためにも、もう少し菅政権を見る必要があると思います。
論点がさっぱり理解できません。
私のように、菅義偉内閣には過大な期待を持てないと思いつつ、消極的な支持を表明するのは間違いと言うことですか?
どのような政権であれ、万人を100%満足させる政策などできっこないでしょう。個々の政策に是々非々で批判することは健全です。
あなたの意見に100%賛同する人間しかいなくなる方が危険ですよ。
今と麻生政権で同じなのは、残り任期くらいなものだというのは同意です。
麻生政権の時も今くらいに野党がボロボロなら全く違った結果となっていたでしょう。