韓国といえば、巷間では「日韓関係の悪化」にばかり目が行きがちですが、その一方で、私たち日本人がつい見落としがちな重要論点のひとつが、中韓関係、米韓関係です。ことに、日本にとっては中国は「付き従う相手」ではありませんが、韓国にとってはそうではありません。こうしたなか、韓国メディアに本日掲載された記事によると、「韓国光復会」の金元雄会長が18日、朝鮮戦争の原因が米国にあり、「米韓は同盟国ではない」などと発言したのだとか。
鈴置氏の「米韓同盟消滅」論
韓国観察者の鈴置高史氏という論客がいます。
著書『米韓同盟消滅』などを通じ、米韓同盟が消滅の危機に瀕している、と警告しているのですが、当ウェブサイトの勝手な見方によれば、これは韓国国内の「米国につくか、それとも大陸勢力につくか」という争いの帰結を予言したものだ、という言い方もできると思います。
参考画像:『米韓同盟消滅』
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数年前であれば、「米韓同盟は消滅する」などといえば、「なにを、そんなバカげたことを!」と鼻で笑う人も多かったのではないかと思います。しかしながら、残念ながら、事態は着々と鈴置氏の予言どおりに動いているといわざるを得ません。
こうしたなか、当ウェブサイトの理解に基づけば、韓国国内には大きく「保守派(右派)」と「左派」がいて、それぞれの政治的立場は、それぞれ「親米・用日・恐中・反北」(保守派)、「親中・親北・反米・反日」(左派)です。
これを鈴置説に当てはめるならば、まさに韓国国内の親米派と反米派の争いにおいて、いまや「反米派」が勝利を収めつつある、という言い方をしても良いと思います。
ハンギョレ新聞の論考は「日韓」ではなく「米韓」
こうしたなか、韓国メディア『ハンギョレ新聞』(日本語版)に7月、こんな論考が掲載されました。
[キル・ユンヒョンの新冷戦韓日戦]「昔の良き時代」になぜ戻れないのか
「昔の良き時代」は中国の浮上と北朝鮮の核開発という二つのショックとともに幕を閉じた。韓国と日本の戦略的利害はもはや一致しない。両国の対中・対北朝鮮観と東アジアの未来像に対する見解は大きく異なり、そのため互いに対する憎しみと不信を積み重ねる「構造的不和」に陥ってしまった。<<…続きを読む>>
―――2020-07-15 13:45付 ハンギョレ新聞日本語版より
これは、ハンギョレ新聞にしては珍しく3000文字を超える長文であり、また、日本の対韓輸出管理適正化措置を「輸出『規制』」と誤記するなど、ある意味では韓国メディアらしい記事でもあるのですが、こうしたささいな点を除けば、意外と読みごたえがある記事です。
というのも、リード文にあるとおり、この記事の主張の要諦は、「韓日両国は昔の『良き時代』には戻れない」、とするもので、しかも「日韓両国の戦略的利害はもはや一致しない」とする主張には、ハッと気付かされるものがあります。
ところが、ハンギョレ新聞のこの論考、鈴置氏が7月28日付で『デイリー新潮』に寄稿した次の記事の指摘によれば、「日本を米国に置き換えても、この記事の主張は成立する」のです。
米中対立激化で韓国「二股外交」の限界 国論分裂の先には「核武装」?
中国におべっかを使うのをやめて米国側に戻るか、逆に米国との同盟をうち切るか――。米中対立が日増しに厳しくなる中、韓国の国論が分裂した。韓国観察者の鈴置高史氏が展開を読む。<<…続きを読む>>
―――2020年7月28日付 デイリー新潮『鈴置高史 半島を読む』より
早い話が、ハンギョレ新聞の論考は「米韓両国の戦略的利害はもはや一致しない」と読み替えてもよい、ということです。ハンギョレ新聞としてもいきなり「米韓同盟消滅」と角が立つと思って、わざと米国の代理に日本を指名した、という可能性は十分にあるでしょう。
米韓同盟消滅を示唆する発言がまたも登場
さて、巷間では日韓関係の悪化に対する指摘がやたらと目立つのですが、委細に韓国メディアの記事を読んでいくと、韓国側から米韓同盟の消滅を示唆する発言などが、ほかにも少しずつ出てきています。その典型例が、次の記事です。
韓国光復会会長「親日清算を要求することが『真の保守』…米国と韓国は同盟国ではない」
―――2020.08.19 10:34付 中央日報日本語版より
リンク先は韓国メディア『中央日報』(日本語版)のものですが、これによると金元雄(きん・げんゆう)光復会長が18日の講演会で、「我が国で保守を自任している人々は、日本の肩を持ち米国の肩を持つが、これは『偽りの保守』」などと批判したのだそうです。
この金元雄氏なる人物の「親日の清算」、「売国奴の李完用」などの発言だけを見ると、日本を批判しているかに見えるのですが、そうではありません。おそらく彼の本心は、次の発言にあります。
「我が国は米国によって分断され、分断されたせいで韓国戦争(朝鮮戦争)をしたので、戦争の構造的原因は米国にある。米国と韓国は同盟国でない」
…。
つまり、この金元雄氏の見解によれば、韓国にとっての敵は日本というよりも米国であり、韓国にとって連携すべき相手は北朝鮮だ、ということでしょう。
韓国を経済焦土化?
考え様によっては、1960年代まで世界の最貧国レベルだった韓国が、GDPで世界10位前後に食い込めるほどに経済発展した最大の要因は、その地政学的な価値にあります。
いや、正確に言えば、「韓国には地政学的な価値がある」と米国や日本が考えたからだ、ということです。
だからこそ、米国は多大なコストをかけて韓国を北朝鮮などから守ってやり、日本も1965年の日韓基本条約・日韓請求権協定を皮切りに、これまで多額の資本投資・技術支援を韓国に惜しみなく供与してきたのです。
ただ、その「韓国に地政学的な価値がある」という認識が、「誤り」だったとすれば、いったい何が起こるでしょうか。そして、韓国が「恩人」である日米両国を裏切って、中国や北朝鮮にすり寄ろうとすれば、私たちはどう行動しなければならないのでしょうか。
まず、「半導体王国」かつ「経済大国」という状態の韓国が、みすみす中国や北朝鮮との同盟国となり、日米の敵対国となるという事態を避けねばなりません。
そのためには、韓国に対し「日米の側に留まれ」、「中朝の側に行くな」、と全力で説得するでしょう。おそらくこれが、現在の状態です。
しかし、韓国がその説得を振り切り、大陸側に行こうとするならば、私たち海洋勢力側は、その「次の一手」を打たねばなりません。それは、韓国に半導体産業などの基幹産業を持たせないようにすることです。
それがどういうかたちで実現するのかはわかりません。
もしかすると、今年11月の米大統領選の直前に、ドナルド・J・トランプ米大統領が電撃的に北朝鮮空爆を実施し、そのついでにミサイルを数発誤射して韓国の半導体工場を爆破する、というシナリオもあるのかもしれません。
(※ちなみに日本には「1発だけなら誤射かもしれない」という格言(?)もあります。)
したがって、とくにこれから米大統領選がある11月にかけて、本当の意味で「目が離せない」のは日韓関係というよりは米韓関係ではないかと思う次第です。
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光復会は左派系の団体であり、この発言も北朝鮮の代弁者としてのものでしょう。
> 我が国で保守を自任している人々は、日本の肩を持ち米国の肩を持つが、これは『偽りの保守』
韓国の保守は、米国の肩を持つことはあっても日本の肩を持つことはありません。保守政権であった李明博や朴槿恵が激しく反日的発言を繰り返したように、保守は左派以上に反日的でないと、韓国社会では糾弾されます。
それなのに、「保守は日本の肩を持つ」とレッテルを貼り、それに扇動された国民が保守を非難することを狙っているのでしょう。保守が持つ言論空間を狭める作戦ですね。
> それでは李完用死亡日に未来統合党は追悼式をしなければならない
普通の人を、行ってもいない罪状をなすりつけて泥棒と決めつけ、「お前は泥棒だから石川五右衛門の命日に追悼式をしなければならない」というようなものですかね。理屈になっていません。
> 我が国は米国によって分断され
米韓離間作戦です。世論を反米に導き、「民意」に弱い青瓦台をして米韓同盟を解消せしめるべし、という北朝鮮の意向です。
保守の言論空間を狭め、反米を煽り、その先に待つのは北主導での南北統一なわけですが、果たしてどれだけの韓国民がそれを望んでいることやら。景気のいい反日言動に気炎を上げつつ、現状維持しか望んでいないのが実態ではないでしょうか。
楽韓さんの記事によると、この金元雄なる人物は、元々朴正熙大統領、全斗煥大統領の下で国会議員になり損ね、その後右に行ったり左に行ったりという経歴の持ち主だそうですよ。
おそらく、日本でなら、鉄面皮とか破廉恥などと評されるんでしょうが、韓国ではそうでもないようですね。
韓国光復会会長、素晴らしい方ですね。
是非、次期大統領になっていただきたいです。
同感!
こういう究極の利日派(日本を利して下さる一派)の方々ばかりが大韓民国の大統領職に就いて頂きたいと日本国民の一人としては衷心より祈り願うばかりです。
誤射しなくても、サムスンやSKは既に詰んでいそうです。
"アメリカ政府が対ファーウェイ制裁を再強化" (東洋経済 2020/08/19 7:40)
むしろ問題は、サムスンが中国内に今年新たに作った半導体工場。
"中国・西安の半導体第2工場の操業を開始 サムスン電子" (KBS 2020-03-17 11:45:53)
これを使わせないようにしないといけません。
新COCOMのようなものを作って、中国への輸出規制をするのでしょうか。
私たち海洋勢力側は、その「次の一手」を打たねばなりません>
そもそも韓国が「海洋国家」であったことは、有史以来一度もなかった筈です。
そして今後もないだろうと確信しています。海洋国家と大陸国家は基本的価値が完全に相異していますので、原則として両者が平和的に共存共栄することは困難であるとさえ考えています。
思えば昭和時代を除き、日本の過去の主な戦争であった日清戦争・日露戦争は共に、大陸国家との軋轢によって生じたものです。この両戦争に勝ったことで奢り高ぶった日本帝国陸海軍は、海洋国家であることを忘れて愚かにも恰も大陸国家にでもなったかのように振る舞い、そして当然の帰結として最悪の形で自滅しました。
現在の中国は、むき出しの帝国主義を推し進めたかつてのロシア帝国そのもののようです。そしてこのような中国にはっきりとNoを言えない韓国は、鈴置氏がご指摘されているとおり、現代のミロスそのものでしょう。
やはり私たち日本人は「悪友を親しむ者は共に悪名を免かる可からず 我れは心に於いて亜細亜東方の悪友を謝絶す」べきだと考えます。
ご存じだと思いますが、原潜と空母を建造するそうですね。
表向きは対北朝鮮などと言っているようですが、見え透いた嘘、対北に原潜・空母の必要はなし。
内々我が国を敵国として位置づけており、対抗・攻撃するための準備だと思われます。
先週のプライムニュース、鈴置さんが最後に言っておられました、韓国は日本の潜在敵国であると。
また、米艦同盟を消滅させた暁には、韓国は中国に守ってもらうか、核武装することになるだろうとも。
個人的には、後者の選択に走るのではないかと思っています。
そして、その核は、当然、日本に向けられるものと・・。
ごめんなさい。
米艦同盟→米韓同盟の誤りです。
更新ありがとうございます。
『米韓同盟が消滅の危機に瀕している』鈴置氏の論考が予定以上にサクサク進んでますネ。最新機種のスマホかタブレットのように(笑)。
私も8月中旬のこの段階で、親北派とはいえここまで言い切る著名人、「韓国光復会の金元雄会長」が出るとは思いませんでした。
アテネでもスパルタンでもいいが、韓国は所詮、下朝鮮半島という立場を理解して無い。日米を裏切り(もう何べんも、いや何百回も悪行を重ねたが)、今ギリギリの渡りロープに乗っかっている状態。中北圏、つまり向こう側にワザと落ちるだろうから、作戦実行!
米大統領選がある11月には北朝鮮鼻血作戦かな?合わせて京城か仁川にトマホークミサイル攻撃100発!目が離せないです(爆笑)。
私は、ロウソク革命、朴前大統領の弾劾、文大統領になったところで、韓国国内における中朝工作機関の勝ちが、決まったと思ってますので、韓国は既に中国側という認識です。
ですから、大陸側に行く行かないという話しは、無いんですね。
どうやって、韓国が日米を騙して、時間稼ぎをするかの状態なんだと思います。
日米は、韓国に対して甘い対応を続けているから、韓国は、レッドラインを徐々に広げています。
ここ暫くは、韓国の思うように進んでいるんだと思います。
日韓断交、米韓同盟破棄ともに、韓国から言わせるように、追い込まないといけません。
「不面目な結果が明白に予知されるような危機に立ったとき、人間にとってもっとも警戒すべきは、安易な己れの名誉感に訴えること、諸君も心して貰いたい」
トゥーキュディデース「戦史」岩波文庫版久保正彰訳、メーロス島(ミロス島)対話の下りより。
二千年以上も前のアテネ人の忠告は、果たして彼らの耳に届く事はあるのでしょうか。
予知できないのか、危機と思っていないのか、プライドが高すぎるのか。
「バカ」が加速している
加速し過ぎて燃え尽きてしまえ w
>「親米・用日・恐中・反北」(保守派)、「親中・親北・反米・反日」(左派)
韓国人の性情を鑑みるに「用米・侮日・蔑中・滅北」(保守派)、「隷中・従北・嫌米・憎日」(左派)の方が実情に則しているような気がします。彼らは誰にも感謝しないし、正々堂々とした反論もしないので、「親」とか「反」といった理性の匂いのする漢字は似合いません。
>「米韓は同盟国ではない」
これは国家間の建前としては誤りですが、米国の本音では正しいかもしれません。金元雄会長がそれを認識して「韓国人よ覚悟はいいか!」と啓発する意味で発言しているなら大したものなのですが、残念ながらアジテーション以上の意図はないでしょう。いつもの「口だけ」ヒーロー、いざ命のやり取りとなると真っ先に逃げ出す特亜人の典型です。
「韓国に地政学的な価値がある」という認識は、正しかったのだと思いますが、韓国人の国民性(人間性)に対する認識に誤りがあったのだと思います。
同盟国(米国)に対しても「二股外交」を平気で行い、日本に対しても「瀬戸際外交」を平然と実行する。しかし、自分から「米韓同盟を破棄する」とは最後まで絶対に言い出さないし、日本企業の差押財産を「現金化するぞ、するぞ」とは言うが、最後まで実行しない。
そして、米国や日本の最終決断を遅らせ、秋の米国大統領選挙でバイデンが勝利するなど、国際情勢の変化を待つ。
李承晩に懇願されて米韓同盟を締結した時に、米国が韓国人の本性に気が付かなかったのは、韓国人がその本性を露わにしていなかったこともあり、やむを得なかったのかも知れませんが。