本稿は、ちょっとした雑感です。韓国メディアが再び「運転席理論」ないしは「米朝首脳会談待望論」などを掲載し始めたようなのですが、個人的にはそうした仮説に同意できません。朝鮮半島で万が一、「オクトーバーサプライズ」があるとしたら、米朝首脳会談などではなく、むしろ「米国による北朝鮮攻撃」ではないでしょうか(もちろん、中国に対する軍事アクション、という可能性もありますが…)。
運転席理論
以前、当ウェブサイトでは「朝鮮半島運転席理論」なるものを紹介したことがあります。
運転席理論は幻想!この難局を韓国はどう乗り切るのか
昨日の『北朝鮮による事務所爆破と金正恩危篤説はつながるのか』でも触れた、北朝鮮による開城(かいじょう)南北連絡事務所爆破を巡って、いくつかの報道を目にしてみたのですが、金正恩危篤説や権力承継仮説とつなげて議論しているメディアはさほど多くないようです。こうしたなか、韓国メディア『中央日報』には今朝、とても久しぶりに「運転席」理論なる単語が出ているのを発見し、少しだけ懐かしく感じてしまいました。<<…続きを読む>>
―――2020/06/18 12:15付 当ウェブサイトより
これは、韓国メディアなどに2018年ごろ、頻繁に掲載されていた考え方で、朝鮮半島問題(非核化、米朝和解など)を巡って「韓国こそがその運転席に座っている」とする「理論」(厳密には「理論」というよりは「幻想」ないし「妄想」)のことです。
ちなみにたいていの場合、「日本蚊帳の外」理論、「日本はバスに乗り遅れた」理論などもセットで唱えられていて、「安倍晋三(総理大臣)が文在寅(韓国大統領)の運転するバスに乗り遅れ、慌てている」、といった挿絵が得意げに掲載されていたのもこのころです。
また、韓国を「バスの運転席に座っている」状態だとたとえたメディアだけでなく、「仲介者となった」などと得意げに評するメディアもありましたが、この「運転手」と「仲介者」は、同じ意味です。
しかし、実際にはこの「運転席理論」、たんなる幻想に過ぎませんでした。
早い話が、韓国は仲介者の「ふり」をしていた、あるいは「させられていた」だけであり、バスの運転席に座っていたようで、実際にそのバスは自分で行方を決めることができないよう、トレーラーの上に載っていたようなものだったのです(『鈴置論考「米韓同盟終焉見透かし周辺国が韓国を袋叩き」』等参照)。
また出た、運転席理論ないし仲介者理論
ただ、見たところ、韓国国内ではいまだにこの「運転席」理論、あるいは「仲介者」理論に基づく議論(というよりも妄想)を見かけることがあります。昨日、韓国メディア『中央日報』(日本語版)を眺めていると、こんな記事を発見しました。
<Mr.ミリタリー>米朝とも「写真撮るだけ」の会談避けたい…韓国は現実を受け止めなくては(1)
最初から可能性はないように見えたのにいぶかしかった。先月4日の金与正(キム・ヨジョン)副部長の談話で始まった北朝鮮の攻勢が同月16日の南北共同連絡事務所爆<<…続きを読む>>
―――2020.07.06 17:43付 中央日報日本語版より
リンク先は「その2」とあわせて3000文字を超える、中央日報としては比較的長い記事です。
中央日報は文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が今月1日に述べた「米朝が再び対話を交わすよう韓国としては全力を尽くす」という発言を、「改めて仲裁者の役割に戻る方針」だと読み取ったうえで、北朝鮮との何らかの対話が実現する可能性があるか、などと論じている文章です。
先月、北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)の妹である金与正(きん・よしょう)の指示で南北連絡事務所が爆破されるという侮辱を受けてまで、いまだに韓国が「運転者」「仲介者」だとする議論が出て来ること自体、なかなか興味深いところです。
こうしたなか、本稿でもっとも驚くのは、「オクトーバーサプライズ」です。
これは、今年11月の米大統領選に備え、何らかの成果を求めるドナルド・J・トランプ米大統領が「サプライズ」で米朝首脳会談を実施するのではないか、という仮説です。
いちおう弁護しておくと、この「オクトーバーサプライズ」なるものを主張しているのは、中央日報のこの記事だけではありません。複数の韓国メディアで似たような記事が掲載されているようですので、韓国国内ではある意味コンセンサスのようになっている考え方といえるのかもしれません。
北朝鮮は元祖・インチキ外交国家
さて、当ウェブサイト的にいえば、韓国は瀬戸際外交を含めたインチキ外交が大好きな国です。
【参考】韓国が大好きな5つのインチキ外交
- ①ウソツキ外交…あることないこと織り交ぜて相手国を揺さぶる外交
- ②告げ口外交…国際社会に対してロビー活動を行い、相手国を貶める外交
- ③瀬戸際外交…国際協定や国際条約の破棄、ミサイル発射などの不法行為をチラつかせる外交
- ④コウモリ外交…主要国間でどっちつかずの態度を取り、それぞれの国に良い顔をする外交
- ⑤食い逃げ外交…先に権利だけ行使して義務を果たさない外交
ただ、ここで忘れてはならないのは、韓国と北朝鮮がしょせん同族の国家である、という事実であり、こうした5つのインチキ外交は、北朝鮮もまた同様に大好きである、という点でしょう。
これは、良い、悪いという話で申し上げているのではありません。
朝鮮半島の国家は歴史的に見て国力も弱く、戦争をしても絶対に勝てないため、インチキ外交によって相手国を出し抜くことで生きながらえるというのが彼らの基本的な生存戦略なのです。だからこそ、私たちは彼らの手の内を知らねばなりません(詳しくは次の記事などもご参照ください)。
瀬戸際外交を無視されて困るのは、むしろ北朝鮮の側だ
瀬戸際外交といえば、南北朝鮮が揃って得意(?)とする外交戦術のひとつですが、それと同時に、瀬戸際外交に難点があるとしたら、瀬戸際外交を仕掛けている相手国から無視されてしまうと意味がない、という点にあります。日本の輸出管理強化を受けた韓国による日韓GSOMIA破棄騒動が、結局、失敗に終わったことは、記憶に新しい点です。同様に、北朝鮮がICBMの発射などをうかがわせ、米国を揺さぶっているのですが、米国はこれに対してどう対処すべきなのでしょうか。<<…続きを読む>>
―――2019/12/18 10:45付 当ウェブサイトより
要するに、北朝鮮が「米国との対話には応じない」などと言い出しているのも、彼らなりの瀬戸際外交のひとつなのであり、実際、米国が北朝鮮付近に偵察機を送り込んだだけで北朝鮮が黙り込んでしまったのも、彼らが米国を心の底では恐れている証拠なのでしょう。
オクトーバーサプライズは対話でなくても良いはず
さて、個人的に韓国メディアの報道を眺めていて思い出したのは、じつは米国としてはかなり以前から、軍事オプションを保留しているのではないか、という仮説です。
鈴置氏「米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った」
鈴置氏の名著『米韓同盟消滅』の愛読者である私自身は、『米韓未来連合司令部の創設と「米韓同盟消滅」の足音』のなかで、米韓両国があらたな米韓合同司令部の創設と戦時作戦統制権返還に向けて進んでいることについて、「米韓同盟消滅の足音が聞こえる」と申し上げました。こうしたなか、米韓同盟消滅の「本家」である鈴置高史氏が本日、『デイリー新潮』に最新論考を寄稿されています。<<…続きを読む>>
―――2019/06/07 22:00付 当ウェブサイトより
この視点は、韓国メディアにはあまり見当たらないのですが、どちらかといえばトランプ氏が「成果」として強調するならば、米朝首脳会談という「使い古されてしまった手」ではなく、もっとダイレクトに「強いアメリカ」を演じる方法ではないかと思うのです。
この点、今年は「平和の祭典」である東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていて、東京五輪等の期間中に米国が北朝鮮の軍事攻撃に踏み切る可能性は非常に低い、というのが当ウェブサイトの見方でした。
しかし、東京五輪等は、例の武漢コロナ禍の影響で来年に延期になりました。
極端な話、いますぐ米国が、例の「鼻血作戦」ないしは「局地攻撃作戦」に出てもおかしくありません。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ただし、現在、トランプ氏は中国を対決の中心に置いているフシもあります。
とくに南シナ海で中国が不法占拠する諸島を米軍が攻撃する、といった構図が出てくれば、それはそれで、香港問題などとあわせ、トランプ氏は米国の有権者に対し、手っ取り早く「成果」として示すことができるのかもしれません。
いずれにせよ、個人的にはトランプ氏が「サプライズ」を演じようと思うならば、そのもっとも効率が良い手段とは、何らかの「軍事アクション」ではないかと思う今日この頃なのです。
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投稿日時がおしゃれですね
アメリカ人は、多くが北朝鮮を敵国認識してます。
トランプ大統領にしてみれば、支持率上げるなら、戦争した方が効率いいですよね。
更新ありがとうございます。
ドイツのビール祭、ミュンヘン中心に各所で行われる『オクトーバーフェスト』なら知ってますが、『オクトーバーサプライズ』は聞いた事ないですねー。
金与正の指示で南北連絡事務所が爆破されるという侮辱を受けてまで、まだ、南北対話、宥和に未練タップリ。韓国は日米には、やけに強気ですが、北朝鮮には赤ちゃん同然(笑)。「運転者」だ「仲介者」だとする議論が出て来ること自体、呆れます。
トランプ大統領にすれば韓国など相手にする(協力させる)気持ちなど、サラサラないでしょう。
今や正面敵は中国。空母打撃群が遊弋しているのは、その現れです。悲しや南朝鮮の愚民と政府、妄想の域から出れないんでしょうなあ。
やはり不景気と戦争は切れない関係…
ちょうどいい機会なので、いろんな兵器の実験場にしてほしいです。
平和的な解決が不可能と判断している場合、ミサイルを北へブッ放す可能性は充分にあります。
北が挑発的な行動を取らずとも、「核(科学)兵器製造施設への攻撃」という名目で国内世論を躱せると考えていると思います。
また、対中国を睨んだ一手(圧力)としても北への攻撃は有効です。
2017年に米中会談中にシリアへ対してミサイル攻撃を行った事例もあるように、サプライズを最大限活かせる舞台を有効に使っています。
根拠の無い推測ではありますが、G7の最中にミサイルを放り込む可能性も充分あると考えます。
オブザーバーとして、対中国網を敷くメンバーが集まっている状況であれば、対中への強力な圧力になりえますので、攻撃を行う機会の一つと予測しても良いのではないでしょうか。
大統領選前の重要なイベントですので、選挙を睨んだ一手(サプライズ)を繰り出すタイミングとしても最適です。
もし韓国がG7に来ている所で、北朝鮮の攻撃をしたら面白いでしょうね。
だんな様
レス有難うございます。
米国としては、それも考えたうえで招待国の中に韓国の名前を挙げたのかもしれませんね。
G7中に攻撃した場合、韓国も強制的に攻撃側に組み込まれる形になりますので、「向こう側には行かせないぞ」と。
米国としては、当事者であるはずの韓国が余計な動きをする可能性を排除したいはずですから。
韓国を飛び越えて米国が攻撃をした場合、現政権下では米国を批判する側に回りかねませんので。。
かといって、事前に承認を得ようとしてGOは絶対に出さない事は理解しているはずです。
朝鮮半島で戦争が起こると、必ず中国が出しゃばってきます。白村江の戦い、文禄・慶長の役、日清戦争、朝鮮戦争、みな中国との戦争になりました。
中国は、朝鮮を属国として保護しているという意識よりも、裏庭を荒らされてはたまらんという自衛意識ゆえに「防衛」に動くのではないでしょうか。
米国が北朝鮮を攻撃したら、中国は穏やかではいられません。もしも北朝鮮が米国の支配下に組み込まれれば、中国は国境を挟んで米国と対峙しなければならなくなります。
ゆえに、中国は米国の北朝鮮攻撃に過剰に反応して、大規模な反撃に出る可能性もあると思います。
トランプ政権が、それ程のリスクを取ってまで北朝鮮の核開発を阻止したいかどうか、私には疑問です。
選挙に勝つためですから!
ワタシはブンザイトラは運転席で運転していると思います。運転手は使用人でして、使用者ではないのです。バスの運転手なら尚更御主人様では無く使用人です。使用人には行き先の決定権は無いニダ。ブンザイトラは運転手の制服を着ているノカナ?ニダ。
タナカ珈琲さま
疑問文の最後は、ニカ?だそうです。
ちゃんと、制帽も被ってるニカ?
乗客は、乗って居るニカ?
入れ歯は、ポリデントしてるニカ?
運転中にA4用紙を見ては、いけないニダ。
だんな様
御指摘ありがとうございます。
ニカ、ニダの違いが薄っすらわかりかけてきました。
これからはヒンパンにニカ、ニダを使いたいと思います。
間違った使い方をしていたら、指摘して頂けると嬉しいです。
追記
今日のお昼は『鶴丸うどん』のぶっかけうどん、トッピングは竹輪、
年金生活者ですので節約して、473円でした。
タナカ珈琲さま
『鶴丸うどん』のぶっかけうどん、トッピングは竹輪
>うらやましいお昼ご飯だと思います。
まず,香港問題については,アメリカはトランプ氏が望むような成果を上げることは極めて難しいと思います。マスコミが報道する香港の若者の活動とは裏腹に,下記の遠藤誉氏の記事のほうが香港の実体を表していると思います。
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20200707-00186925/
香港市民の大半が民主主義を求めている,という報道は西側メディアによる創作である,ということです。それから,アジアの周辺諸国で欧米型の民主主義を形式的に採用している国々でも,行政の実態や国民の価値観は西洋型民主主義とは異なる場合が多い,という話も今までに書いた通りです。お隣の韓国も,西洋型民主主義国家とは思えないでしょ。ヨーロッパ諸国もそれをわかっているのか,香港問題については,イギリス以外,それほど大きい問題と考えていないように見えます。
という理由で,トランプ氏はたぶん,香港問題で手柄は立てられないでしょう。
このままいけば,トランプ氏はほぼ確実に落選します。何か手柄がほしいところです。南シナ海限定でも中国を相手に戦争するのは相手が強すぎます。確実に勝てる北朝鮮に手を出して手柄にする可能性はあるでしょう。
話は前後しましたが,金正恩氏重病説(死亡説)を書いてる人はいますよ。
『北朝鮮「韓国への軍事行動保留」報道の読み方、“金与正軟禁”もある軍クーデター説』
https://news.yahoo.co.jp/articles/f13b7882ce1b52bc12b8176b4ce6dfcfe7f49b7f
あまり賛同はしませんが,北朝鮮人民軍に関する有用な情報もあるので,読んでおく価値はあると思います。
>アジアの周辺諸国で欧米型の民主主義を形式的に採用している国々でも,
>行政の実態や国民の価値観は西洋型民主主義とは異なる場合が多い,
>という話も今までに書いた通りです。お隣の韓国も,西洋型民主主
>義国家とは思えないでしょ。
これについては、日本も勿論そうだね。
日本は近代に民主主義を導入したが、あくまで外来の制度として
導入しただけで、その精神まで受け入れた訳ではない。
大半の日本国民にとって、政「まつりごと」とはお上という得体の
知れない連中が携わる、得体のしれない領域の話。
自分達がその当事者で、結果に対して責任があるという意識は薄い。
少し前にTwitterで検事長の定年延長に関する問題があったが、あれで
踊らされてる芸能人やクリエイター達の見識に関してはともかく、
彼らが政治に関して主張する事時代に否定的な風潮は、日本がまさに
民主主義を形だけ導入してる国という事を強く感じたよ。
芸能人だろうがサラリーマンだろうが、いい年をした大人が政治に
関して何らかの定見を持っていて、それを表明出来るのが本来の
民主主義国だと思う。
恐らくトランプはカネのかかることはやらんでしょう
トランプの立場を考えたら、カネより大統領選の方が優先されますよ。
自分の財布から金を出すわけではないですし。
景気対策・雇用対策にもなる事を考えると、大義名分さえ捻り出せれば殺ル可能性はあると思いますよ。
世界の悪に敢然として立ち向かう、力強くて頼もしい正義の大統領。
アメリカ人は、こんなのが大好きですから。
アメリカの大統領は、金の心配はしません。
元々そんな必要はないのですよ、日本がついているから、気前の良い超大金持ちの日本が。
アメリカの軍事や外交が、合理的に行われたためしは、歴史上ほとんどありません。
不条理だと思うことを平気でやるのがUSA。
ペンタゴン・ペーパー、アフガンペーパーのごとく、ピョンヤン・ペーパーが流出するまでが既定路線。