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毎日新聞社説「日韓両国指導者は失ったもの直視せよ」

先週の『「誤った社説」を利用して作成した対韓輸出管理Q&A』では、韓国に対する輸出管理適正化措置を「輸出『規制』」と誤記した東京新聞の社説をベースに、「明らかに誤ったことを書いている記事を読み、その誤っている箇所を抜き出して、どこが誤っているかを指摘すれば、ものごとを正確に理解することができる」という仮説を立てました。その仮説が正しいのではないかと思われる事例をもうひとつ発見しましたので、紹介しておきます。

毎日新聞の「輸出規制」に関する社説

毎日新聞が今朝、こんな社説を出しているようです。

輸出規制と日韓関係 失ったもの直視すべきだ

隣国との関係はどうあるべきか、冷静に考える必要があろう。<<…続きを読む>>
―――2020年6月12日付 毎日新聞朝刊より

「隣国との関係はどうあるべきか」。

この視点は、非常に重要です。

隣国は地理的に近く、もし隣国が敵対国であれば、私たちは国を守るために、莫大な軍事費を使わなければなりません。また、得てして隣国とは経済的な関係も深くなりますし、もし経済的な「命綱」を隣国に握られると、否が応でも良好な関係を維持しなければならなくなります。

このため、「隣国とどういう関係を構築するか」については、私たちにとっては避けては通れない、重要な論点なのです。

ただ、毎日新聞のこの社説は、なんだか主張がよくわかりません。というのも、「韓国が日本による半導体材料の輸出『規制』強化を巡る世界貿易機関(WTO)への提訴」だからですが、そもそもこの「半導体材料の輸出『規制』」とは、いったい何のことでしょうか。

毎日新聞によると、これは「徴用工問題」、すなわち当ウェブサイトでいうところの自称元徴用工問題と関連性があるかのように述べていますが、調べた限り、今日に至るまで、日本政府はそんな措置を講じたという事実はありません。

文脈から判断して、毎日新聞はおそらく、日本政府が昨年7月1日に講じた韓国向けの輸出管理の厳格化・適正化措置のことを「輸出『規制』」と誤記しているのだと思いますが、輸出管理適正化措置を「輸出『規制』」だと誤認している時点で話にならないお粗末さです。

無理がある「お互いが悪い」論

さて、従来当ウェブサイトでは、過失割合が「ゼロ対100%」の場合でも、無理やり「50%対50%」、あるいは「100%対ゼロ%」に持ってこようとする、というのが韓国政府、韓国メディアの常套手段である、と主張して来ました。

この点については、少し認識を改める必要がありそうです。

なぜなら、これと同じ「過失割合をイーブンに持っていく」という詭弁が、この毎日新聞の社説でも出て来るからです。

毎日新聞は韓国政府が日本による「輸出『規制』」を巡り、一時は日韓GSOMIA(正式名称は『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』)の破棄まで対抗措置として持ち出したことを、「首をかしげざるを得ない」と批判します。

この批判は正当ですが、これに続いて、こんなことも記述するのです。

一方で日本側の主張にも無理がある。安倍晋三政権は、輸出管理と徴用工問題は全く関係ないと主張してきた。そうであるなら、韓国が不備を正したのに認めないというのは理屈が通らない。

このくだりで「輸出『規制』」ではなく「輸出『管理』」ということばを使っている理由はよくわかりませんが、「韓国が不備を正したのに認めない」という記述については、毎日新聞の議論にかなりの飛躍があります。

そもそも韓国が「不備を正した」のかどうかは日本政府が判断すべき話であり、また、輸出管理の枠組み上、人員を整えたり、組織を作ったりするだけで自動的に「(旧)ホワイト国」に昇格できるという議論はありません。

それどころか、当ウェブサイトとしては、韓国側がフッ化水素など3品目について、横流しや目的外使用などに不正使用した可能性すらあると考えており、もしこれが事実ならば、1年や2年で輸出管理体制を元に戻すということはあり得ませんし、韓国側の回答次第では輸出管理のさらなる厳格化もあり得ます。

グループCへのランクダウンこそ「韓国政府の泣き所」(2020/06/07 09:00付 当ウェブサイトより)

また、自称元徴用工問題で文在寅(ぶん・ざいいん)政権下の韓国が国際法に反した判決を下したことについても、毎日新聞は

徴用工問題での文在寅(ムンジェイン)政権の姿勢は受け入れがたい。国交正常化の際に結んだ日韓請求権協定まで、ないがしろにするものだからだ。きちんと対応するよう、強く求めていくことは当然だ。

と、いちおうは批判する姿勢を見せているようですが、これらの点を除けば、毎日新聞のこの社説の主張は、そもそも事実誤認だらけで、まるで東京新聞や韓国メディア『ハンギョレ新聞』や『中央日報』あたりの主張とそっくりですね。

(ちなみに東京新聞社説については先週、『「誤った社説」を利用して作成した対韓輸出管理Q&A』でも触れていますので、適宜ご参照ください。)

隣国というだけで「仲良く」の愚

さて、毎日新聞の社説では、日韓双方の指導者に対し、日韓の対立局面において「失われたものの大きさ」を直視すべきだ、と求めているのですが、たしかに米中対立局面でも、コロナ対策でも、日韓がスムーズに協力できれば、それなりの成果が得られたのかもしれません。

しかし、それと同時に毎日新聞が無視しているのは、日韓関係の悪化局面の全責任が一方的に韓国側のみにあるという事実であり、むしろ安倍晋三総理大臣は、2014年頃まで韓国を「価値と利益を共有する最も重要な隣国」に位置付けていた、という事実です。

もちろん、今月に入って韓国側で出てきた輸出管理適正化措置を巡る対日WTO提訴の動きや、自称元徴用工問題を巡り資産売却手続が進んだことは、このままでいけば日韓間関係を破綻に追いやりかねないことは確かです。

ただ、これらの動きを見ていて、「このままでは日韓関係が破綻する」、「日韓関係が破綻しないためにはコロナ対策や経済協力、米中対立局面での日韓協力を推進すべきだ」、などとする主張には、大いなる違和感を抱かざるを得ません。

そもそも論として、WTO提訴も資産売却手続も、日韓関係の破綻を匂わせて日本に対し譲歩を迫ろうとする韓国側の「瀬戸際戦略」であり、そんな瀬戸際戦略を取ってくるような相手国を「価値や利益を共有する最も重要な隣国」に位置付けること自体が間違いだからです。

いずれにせよ、こうした毎日新聞の「日韓どっちもどっち」論のような詭弁こそが、日韓の建設的な相互理解を妨げているのだ、という言い方をしても良いのではないでしょうか。

もっとも、ひとりのビジネスマンとして言わせていただければ、ビジネスの現場でも友人関係でも、「無理な関係」というものは、遅いか早いかの違いはあれ、いずれ必ず破綻します。日韓関係もこれと同じではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (33)

  • 最近じゃ新聞に時折現れるこの手の「韓国マスコミ日本版」そのまんまみたいな論評が、なぜ日本では社会的影響力が皆無なのかに興味がありますね。

  • 安倍政権批判派は少なくともこの手の論評勢力とは手を切らないと得票から無縁で有り続けるような気がする。

    • 反安倍派は「それとこれとは別」って機微を捉えたらどうか、と思いますね。いくら政権の政策および行動の瑕疵や印象操作などで支持率を下げても、投票に反映しないのは「韓国に対する塩対応も安倍政権のあやまち」と、日韓問題まで繋げていってしまうからだと思います。
      恐らく今までの経緯から大半の日本人は今までの日本の韓国に対する激甘対応にイヤ気がさしており、それを反安倍の話に繋げた途端に「そこまでは…」という具合いにドン引いてしまうのでしょう。
      安倍政権批判というのは政治言説として正常に出てくるものではあっても永遠の謝罪要求とか射撃レーダー照射とか数々の不始末における居直りだとかがあっても手放しの親韓姿勢、というのはハッキリ言って好事家のマニアックな話であって、それを絡めた途端に批判の熱意に冷水を浴びせたような結果になるのは目に見えてる。

      • 坂本龍一氏は最近「安倍独裁政権に日本人が抗議しないのは日本に真の民主主義が無いからだ。」と思い付きのような事を言い、鳥越俊太郎氏は都知事選落選の言で「戦後日本は落ちるところまで落ちた。」と言い放ちましたが、この「味音痴の客ばかりだから店は潰れた」的な、うまく行かないことは何でも大衆のせい、といった発言が左系論者の常です。
        この性根が結果は自分らのマーケティングの失敗、という単純な事実から目を背けさせてるんですね。
        その上にうまく行かなきゃ大衆批判じゃ選挙活動で得られたわすがな票田をもブルドーザーで埋め潰してるようなモンです。
        そろそろ左系も自分らの主張のうち「票が得られモノになりそうな主張」と「仲間内の景気付けにはなっても一般受けせず、不人気な主張。」を客観的に分析して分け、後者を捨てるくらいの合理性は持たなきゃポスト冷戦の時代には生き残れないと思う。

        • 庶民派・弱者の味方を気取っているのに行動・言動は腐った特権階級そのものですね
          まるでフィクションの世界からそのまま出てきたかのような

        • こういう人たちが政権を奪って大衆からの支持を失った時に何をするか考えると怖いですね。
          一種ポルポト的な…あ、隣に良さげな見本の国があったw

        • ブルー様へ

          >うまく行かないことは何でも大衆のせい

          この考えはサヨクの典型で、ここ百年間変わってません。
          だからこそ、覚醒した先鋭が大衆を導くことが必要なのですよ(笑)。

  • ホワイト国からの除外のこと?

    韓国側が一方的に信頼関係を毀損したから、日本は友好国待遇で韓国に付与してたいた特恵を取り下げただけのことです。(逆差別の解消)

    韓国が失ったもの・・>日本からの信頼
    日本が失えぬもの・・>韓国からの信頼*

    *「日本は裏切らない(はむかわない)はずだ」との根拠のない信頼感のことです。

    ・・執拗に繰り出される瀬戸際外交に際限がないのは、日本側の「ガマンの限界点」を計りかねてるからなのかもですね。

    マダマダ・ダイジョウブダ・・・。なんてね。

  • 「お互いに」という言葉は、韓国人が自分の形勢が不利だと認識したときによく使います。新宿会計士様の表現を借りるなら、過失割合が「ゼロ対100%」の場合でも、無理やり「50%対50%」にする意図です。

    「どっちもどっち」は、仲裁を頼まれた第三者が、面倒くさい、深入りしたくない、といった場合に、責任放棄の意図で使われることがあります。

    今回の毎日新聞の社説は、「どっちもどっち」よりも「お互いに」の意図ですね。誰の立場を代弁しているかは明白です。

    • >「お互いに」という言葉は ...

      確かにしばしば見かけます。
      ふたたび目にするということは「効いている証拠」

      >誰の立場を代弁しているかは明白

      なおもエスカレートする見通しは今度こそありますよね。

  • 結局、日本側でこういった反応を示す勢力があるので、誤ったメッセージを相手に伝えているんですよね。利敵行為としか言いようがない。メデイアは誤報を伝えて仮に認めて謝ったとしても、報道されたことは消えないからですね。言ったもの勝ちになるのは、納得行かないですね。

  • 韓国の論理や都合を垂れ流しする、工作員機関紙らしい記事だと思います。
    神の視点で書いているんじゃ無いかな。
    自社の変態記事で、どれだけ国益を損ねたのか、当然反省は無いようですね。
    お前が、国益を口にするなと、言っときます。

    • >自社の変態記事で、どれだけ国益を損ねたのか、当然反省は無いよう

      ジャーナリズムとは「売文業」です。報道記事は、読んで欲しいひとたちの目に留まりそうな、気に入ってもらえそうな文言を連ねるのが「基本のキ」であるはず。日本発のこんな記事を海外で引用してもらうことそれが直接利益になる構図がきっと「ジャーナリズム」のうちにあるのでしょう。

  •  毎日ウソを付く新聞社がまたなにか言っているようですね。

     「日韓関係」の悪化という言葉を使わせないようにしないと。問題があるのは韓国の方で、日本は関係ないですし。一方的に悪行を重ねているのは彼らですから。

     徴用工問題は韓国の国内問題で、輸出管理は日本からの輸出品の適正化なので全く関係ないですね。この適正化が問題なら、韓国をホワイト国扱いしていないヨーロッパ諸国にも文句を言わないと。

     法律にも限界があり、「情緒」という面までは保証できません、しょせん「お金」で解決するしか手がありません。というかその1965年時点でなぜ騒がなかったのか、これを国内問題として対応してこなかった韓国政府にのみ問題があります。

     なんかこの「仲良くしなければいけない」思考、どうにかなりませんかね。幼稚園児じゃないんだから。国家は国益を追求すべし、が基本です。アメリカファーストを唱えるトランプ大統領は正常です。トランプが「イギリス国民を豊かにしよう」と言い出す人だったら、引きずり降ろされます。

     TVも含めて、こういった論調はまだまだ日本ではデフォルトです。芸人が司会している報道「バラエティ」で、「慰安婦問題は風化させてはいけない」とかまだほざいている人を出しています。化石化しているのはこうした人の思考です。それを追い出せないのも国民の責任。芸能人の不倫問題より、よっぽどこういう人間を非難して番組の息の根を止めるべきです。

  • ビバ!コロナ入国制限!

    お陰を持ちまして、日本海に奇跡の壁が出現しました。
    彼の国から、時折、風船爆弾ならぬ、メディアの情報爆弾が飛ばされて来ますが、日本人の無関心により、ことごとく、日本上空で不発にして風に消えております。韓国メディアの皆さん、日本メディアを押さえたつもりかもしれませんが、昨今の日本人、新聞読んでいないと存じますよ。揚げ物の敷き紙になるだけです(笑)。

    彼の国についてまだまだ、油断をしてはいけないですが、ほんのちょっとホッとしてくつろいではいけません(笑)?

  •  お久しぶりです。4月末に初投稿した際は、常連の皆さまにお返事をいただいたのに、きちんと対応できず失礼しました。
     私はその後、ヤフーのニュース板で検閲や投稿拒否をされ、ネット自体から一時的に離れざるを得なかったのです。この選択の原因が、今回の議題にもなっている日本マスコミと韓国の関係でした。
    検閲と投稿拒否を受ける直前、ヤフーで日本社会における韓国人の浸透ぶりに触れたコメントを目にしたので、それに応じる形で以下の投稿をしました。

    1.日弁連・副会長(15人中1人)に「白 承豪(ペク スンホ、韓国籍)氏」が選出(総合雑誌『正論』2019年5月号p.180)。
    2.シリーズ投稿「TBS ウチがこんなになったわけ」
     民放放送局TBS(をキー局とするJNN系列局)が1960年代から「総連」や「民団」のクレームに端を発する干渉を受け続け、2020年現在では経営中枢まで制圧されてしまった顛末(てんまつ)を記した一連の投稿。

    1.については広く販売されている刊行物ですし、2.についても何年も前からネット上にある投稿だったので、何の問題も無かろうとは思いましたが、ヤフー側は正反対の判断を下したようです。いわゆる「特別永住者」の日本での活動を知られることは、何としても避けたいようです。

    独白めいたものになってすみません。皆さまが実際に接続なさる時間帯に、私も参加できれば良いのですが。

  • 先に投稿した者です。うっかりして匿名になってしまったので、投稿名を追加します。

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