株価などの市場指標の変動が経済のすべてを説明するとは申し上げませんが、それと同時に、株価変動は市場の動揺の証拠でもあります。ここで、過去の株価変動について調べていくと、日米ともに2020年3月は歴史的に見て非常に大きな株価変動が何度も生じていることが判明します。こうしたなか、米国は2兆ドルという史上最大規模の財政出動法が成立したようですが、わが国の議論は「遅すぎてショボ過ぎる」という代物です。
日経平均の極端な値動き
昨今はマーケットが「ぶっ壊れている」状況であり、わが国の例でいえば、日経平均株価は連日のように、1000円を超える上昇や下落などが観測されています。
個人的な手元メモによれば、1980年代以降、日経平均の変動幅の絶対値が最も大きかったのは、前日比3836円48銭の下落となった1987年10月20日(火)のことですが、株価の低迷のためでしょうか、2000年以降は「1日に2000円以上動く」ということはありません。
ただ、2000年以降に限定すれば、「前日比1000円以上動いた」という変動については、2020年3月にはじつに4回も発生しているのです。
2000年以降の日経平均の前日比騰落
- 1位…2020/03/25 (水)…+1,454.28
- 2位…2000/04/17 (月)…▲1,426.04
- 3位…2015/09/09 (水)…+1,343.43
- 4位…2016/06/24 (金)…▲1,286.33
- 5位…2020/03/24 (火)…+1,204.57
- 6位…2008/10/14 (火)…+1,171.14
- 7位…2013/05/23 (木)…▲1,143.28
- 8位…2020/03/13 (金)…▲1,128.58
- 9位…2016/11/10 (木)…+1,092.88
- 10位…2008/10/16 (木)…▲1,089.02
- 11位…2018/02/06 (火)…▲1,071.84
- 12位…2016/02/15 (月)…+1,069.97
- 13位…2020/03/09 (月)…▲1,050.99
- 14位…2011/03/15 (火)…▲1,015.34
- 15位…2018/12/25 (火)…▲1,010.45
2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発する金融危機に際しても、「1日に1000円を超える値動き」は、2008年10月14日に前日比1171円14銭上昇したケースと、10月16日には1089円02銭下落したケースの2つしかありません。
また、東日本大震災(2011年3月)の際に、2011年3月15日(火)に株価が1050円99銭下げていますが、意外なことに、東日本大震災直後の値動きで最も大きかったのは、この1日だけです(※株価の絶対水準が低いためでしょうか)。
したがって、少なくとも「株価変動の絶対値」だけで見ると、今回の「コロナショック」は間違いなく「リーマン級」を超える経済変動であり、昨年10月に消費税と地方消費税の税率を引き上げた際の「理屈」は明らかに消滅しているといえるでしょう。
USはもっと極端!
さて、以上は日経平均の話なのですが、米国のダウジョーンズ工業平均30種に関しては、もっと極端です。
2000年12月29日以降のデータ上、絶対値で見て前日比1000円を超える増減が生じたケースは17回あるのですが、このうち2020年3月に生じたものが、じつに12回もあるのです。
2001年12月29日以降のダウ30の前日比騰落
- 1位:2020/03/16 (月)…▲2,997.10
- 2位:2020/03/12 (木)…▲2,352.60
- 3位:2020/03/24 (火)…+2,112.98
- 4位:2020/03/09 (月)…▲2,013.76
- 5位:2020/03/13 (金)…+1,985.00
- 6位:2020/03/11 (水)…▲1,464.94
- 7位:2020/03/26 (木)…+1,351.62
- 8位:2020/03/18 (水)…▲1,338.46
- 9位:2020/03/02 (月)…+1,293.96
- 10位:2020/02/27 (木)…▲1,190.95
- 11位:2018/02/05 (月)…▲1,175.21
- 12位:2020/03/04 (水)…+1,173.45
- 13位:2020/03/10 (火)…+1,167.14
- 14位:2018/12/26 (水)…+1,086.25
- 15位:2020/03/17 (火)…+1,048.86
- 16位:2018/02/08 (木)…▲1,032.89
- 17位:2020/02/24 (月)…▲1,031.61
とくに、『感染者数で米中逆転?我々も「3つの条件」避けるべき』でも報告しましたが、米国では新型武漢コロナウィルスSARS-CoV-2の感染者数が激増しているなどの状況が不安視されている状況にあります。
金曜日の株式市場では、日本は前日比+724円83銭の株高(+3.88%)だったのが、米国は前日比▲915.39ドルの株安(▲4.06%)だった、ということでもあります。
米国で過去最大の財政出動
こうしたなか、米メディアWSJに米国時間の金曜日夜(日本時間の昨日午前)付で、こんな記事が掲載されていました。
Trump Signs $2 Trillion Coronavirus Stimulus Bill After Swift Passage by House(米国夏時間2020/03/27(金) 20:00付=日本時間2020/03/28(土) 09:00付 WSJより)
ドナルド・J・トランプ米大統領は金曜日、米下院で可決された約2兆ドル規模の財政支出に関する法律に署名した、というのがこの記事の主眼です。WSJは、現金給付や失業者に対する手当などからなるこの財政出動が「米国の歴史で最大規模」であると報じています。
2兆ドルといえば、1ドル=110円と仮定すれば、220兆円という規模ですね。日米両国だと人口規模が違いますので、単純比較はできませんが、それにしても巨額です。
そして、すでに米国の中央銀行にあたるFRBが、事実上の無制限の金融緩和を打ち出した(※)こととあわせて、まさにコロナショックに対し、財政、金融両面から対処する考えを示したといえるでしょう(※FRBの政策については次のプレスリリースもご参照ください)。
Federal Reserve announces extensive new measures to support the economy(2020/03/23付 FRBウェブサイトより)
消費税の停止がなぜできないのか?
さて、当ウェブサイトでは以前から、コロナショックに対し消費税の税率の大幅な引き下げ(というか、消費税の税率ゼロ)を含めた抜本的な対策が必要だと報告し続けています(たとえば次のような記事もご参照ください)。
ただ、政府・与党関係者は、「苦労して引き上げた消費税の税率を元に戻すと、再び引き上げるのが難しい」という、極めて意味不明な主張を述べ、消費税の引き下げに全力で抵抗しています。まさに、増税利権にしがみつく財務省の代弁者、といったところでしょう。
財務省が一番恐れているのは、消費税の税率を引き下げることにより日本経済が活性化され、結果的に法人税や所得税の税収が増えれば、「消費税の増税による財政再建」という財務省が掲げてきたプロパガンダが完全な間違いだったということが白日の下に晒されることではないでしょうか。
もちろん、安倍晋三総理大臣が昨日の会見で少し触れた現金給付なども政策に組み合わせることは必要ですが、やはり、コロナショックを奇貨として、「財務省」という「増税利権」の塊(あるいは「悪の総本山」)を解体する貴重な機会が到来していると思います。
是非、消費税率の引き下げ(あるいは凍結)という議論を、我々国民サイドとしても盛り上げていくべきではないでしょうか。
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米国の大型財政出動を称賛するのはいいのですが、
日本には消費税増税を要求して大型財政出動を要求しないのは整合性を欠いているのではないでしょうか。
りょうちん さん
すみません、サラッと検索したのですが、米国が増税した上で大型財政出動したと確認出来なかったです。。。
もうしわけありません。
>日本には消費税増税を要求して
日本には消費税減税を要求して
の間違いです。まったく意味が違いますね
りょうちん さん
分かりました。
米国の大型財政出動というテーマなのだから日本についても大型財政出動をテーマにした方が良いのではないか?って趣旨だと理解しました。
更新ありがとうございます。
>財務省が一番恐れているのは、消費税の税率を引き下げることにより日本経済が活性化され、結果的に法人税や所得税の税収が増えれば、「消費税の増税による財政再建」という財務省が掲げてきたプロパガンダが完全な間違いだったということが白日の下に晒されることではないでしょうか。
「変化」を断固拒否する価値観の害悪を見ている気分です。
クロワッサン さま
正にそのとおりですね
消費税法凍結は
低所得者、(直ぐに給付額が上がることのない)年金生活者、
(収入が一気に無くなって困っておられる)個人事業者・中小企業経営者、
外注という名目で消費税を負担させられている事業者(実質労働者)
を救うことになると思います
消費税凍結の意見が是非とも広まって政権が動かざるを得ない状況になって欲しい
(政権与党側が自ら率先して動く可能性は低いので)
泣ける さん
消費減税を訴えてる既存政党にロクな政党が無く、そんな政党に投票出来ないので、英国のEU離脱是非みたいに国民投票をする方向に行くと良いのですが。
現状で国民の購買意欲が上がっても困りものですが。今は買い物を控えるフェイズかと。お金を持って出歩かれるのを促進する政策は取るべきではないと思います。
直近で必要なのは生活保障でしょう。解雇等で収入が無い人にとっては死活問題です。企業の下支えも必要です。終息後にエンジンを噴かせる企業が無い、では話になりません。
消費税減税は終息に合せて実施すべきかと。
準備にも時間がかかるので今から調整を行うのは賛成ですが、時期は見極めてほしいです。
特措法で2年間軽減税率5%なら財務省も渋々認めるかと。廃止してほしいものですが、財務省が認めるとは思えません。
追記です。
生活保障は10万円を一律で配ればいいと思います。既に困ってる人がいる以上はスピードが大事です。所得制限を入れると事務手続きが煩雑になります。一律がダメと言うなら、後で富裕層の所得税を上げて回収すればいいかと。
どうも給付金の手続きを意図的に煩雑にさせてると勘ぐってしまいます。グダグダやってる内でに終息してしまえば必要も無くなりますから。そんな事はないと願っています。
山田内膳様へ
自分は山田内膳様の案に賛成の立場です。
現在の状況で消費者にお金を持たせて、街や行楽地を元気一杯練り歩かせ、感染拡大の危険性を増大させてどうするのか、と。
ただ、中小企業の経営を支え、解雇者が出た場合の手当てを篤くする必要ならば当然あるでしょう。これが最優先でしょう。
その後に、政府はニューディール政策を執る必要があるでしょう。(グリーン・ニューディール政策は期待しません。高橋是清の政策と言い換えた方がいいかも。)
まあ、ニューディール政策の終了とともに、世界は第二次世界大戦に突入することになったのですが…
山田内膳 様
私も賛同致します。
今は生活および企業活動維持に必要な支援に限定した内容に限定するのが妥当では無いかと考えております。
消費税率変更するにしても、金計算のパラメータを変更する訳ですから、一週間で…と言う訳にもいきませんし。
コロナ後に関しては、設備投資を呼び込むような施策が主で、消費税減税はその後押しという位置付けになるでしょう。
(消費税減税自身には、ウエイト調整の機能が無いため)
消費を活性化するための消費税減税or凍結ではなく、主に食料品・日用品の負担軽減を目的とするものではありませんか?
減税されたからと言って、いきなり購買意欲が向上するものなのでしょうか?
期間限定と言われれば、駆け込もうとする人が多く出るのは理解出来ます。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
そもそも論ですが、日本は前例のない、予め決められていないことが出
来るのでしょうか。そういうことが出来る非日本人的な人を、リーダーに
選ぶことが出来るのでしょうか。
駄文にて失礼しました。
ようやく20年度予算が成立、しかしコロナ対策はその中に含まれておらず
それ(補正予算)を巡ってまたもや会議、会議、会議・・・
この異常なまでの遅さは何なんでしょうね
それでも今の流行っぷりを見るに予算の成立までにコロナが収束するとは思えませんけど
それにしても最近の日本におけるコロナの感染力は目を見張るものがありますね
眉唾ですが感染力が非常に高いタイプのコロナがあると聞きますし
渡航制限で海外からの帰国者が殺到した現状も踏まえると
もしかすると単に日本にそうしたタイプが無かっただけとも考えられます
今まで感染力が低い、致死率が低いとWHOや中国(どちらもまるで信用出来ない)の言い分を鵜呑みにし
散々喧伝していたコロナ楽観論者や日本すごい論者
百田氏に粘着して叩き続けてきた某ブロガーの人もこの現状を見て考えを変えたでしょうか
ちょっと話題をずらしてご免なさい。
今日のシンシアリーさんのブログの記述。
「韓国(朝鮮半島)の民族主義は、ただの「根拠のない選民思想」です。
自分が一番偉いとするものにすぎません。
その選民思想が、適当に名分に出来るもの(キリスト教、社会主義)を飲み込んだのではないでしょうか。
その結果が、『ウリスト教』と『主体思想』である、と。」
あ~、根拠のない選民思想…、こりゃ話が通じる相手じゃないや。
病識のない気の毒な国民…、やはり関わったらダメ。
財務省のお役人さん達が居る限り減税なんて100%ありえませんわ
正しいことより利権と保身、偉い人達はイスさえ守れれば国が傾こうが知った事ではないのです
自分がツケを払う前にお迎えがくるんだからw
税金をグリップするのが彼らの省益ですが、その権益を拡大しようとする力学はあっても、減じるベクトルなんて発想すらないでしょう。「増税の手立てをどれだけ講じられたか」「政財界にどれだけ権限を伸ばせたか」「天下り先をどれだけ開拓できたか」が財務省の人事考課の要素です。彼らにとっては日本経済とか国民生活なんて正直どうでもいい。景気なんて良かろうが悪かろうが知ったこっちゃないでしょう。
そんな連中をハンドリングできる政治家は悲しいかなおりません。派閥工作やら税務調査と言う武器を活用するのはお手の物です。まあその政治家を選出したのは国民なわけですから、元を正せば我々の自業自得です。残念ながら消費税減税はできそうもないなあ。
「新型コロナで落ち込む日本経済 カンフル剤は消費税カットと給付金」
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/200319/mca2003190500002-n1.htm
終息後の経済政策として、消費税カットを提言されています。
システム屋の立場として・・・
経済政策として消費税減税すべき、というのはまぁ理解できなくもないのですが、税率そのものをころころ変えるのは正直勘弁してほしいです。
まあ特需は嬉しいですけど、半年前ぐらいから体制強化して数か月前から切替準備、切替後1か月ぐらいはイレギュラー対応で大わらわ、費用もン十万と結構なことになりますんで、ハイ。
同感。(私はシステムエンジニアではないけど。)
消費税による税収の、20%(昨年のアップの分)なり、50%なりを、全人口で割って
国民にばらまけばよい(ヘリコプター・マネー)。
最初から10%をそうしておけば、軽減税など面倒なことしないでも、税は増収で、
国民の過半数には所得減税になったはず。税制は単純なほど良い。
還暦を過ぎたエンジニア さま
短期間の効果だけを考えると仰られているヘリコプター・マネーによる対応
でも良いのだとは思いますが
今後の日本の未来を考えると
サイト主さまが提言されている消費税凍結が望ましいのです
今後の経済活性化とプライマリーバランス論に基づく緊縮財政の撤廃
これこそが失われた20年・30年に対する解決策なのです
あと、給付金も振込口座の確認等の行政手続があり、それなりに時間を要します
kurisyu様
準備期間は必要ですよね...
急にやれと言っても無理な物は無理です。(私は生産技術の人間ですが)
ただ公共事業という意味合いではアリかと。余裕を持った納期にして、費用面は全て税金で賄えばいいと思います。
消費税減税分は全て消費になるので給付金よりは大きな効果が見込めます。
お題違いではありますが。
武漢ウイルスが世界的な感染拡大しているなかで、各国とも命(安全保障)の次に大切な経済を投げ出してまで、死にも狂いで感染押さえ込みに取り掛かっています。
そんな中、発生源である中国は収束宣言をしました。もとより、収束はしておらず、お金(経済)に目が眩んだものと思われます。それが、彼らだけの問題であれば構いませんが、武漢発の2次感染爆発が、各国の死にも狂いの努力を無に帰させるかもしれません。1次感染爆発が事故だったとしても、この2次を看過することはできません。
歴史上、大戦は世界恐慌で疲弊した状態から発生しますが、今回はそれを待たないかもしれません。
各国がその命(安全保障)を脅かす中国の存在を許すとは思えません。
エチオピアのように自国の命(安全保障)だと思えなければ別ですが、この感染拡大のスピードはそんな甘えを許しません。いえ、中国の人々でさえも、いいかげん気付くべきでしょう。自分たちがどんな人間に政治を任せているかを。中国共産党と運命をともにするほど、中国の人々は彼らに何をして貰いました?
最後に蛇足となりますが、コロナ禍に紛れて、香港の動きが気になります。
香港 公共の場で“5人以上の集まり”禁止
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20200328-00000293-nnn-int
防疫のためともとれますが・・・