2019年第4四半期のGDPが、予想どおり大幅なマイナスになりました。不要な消費税の増税が日本経済を痛めつけている格好ですが、不思議なことに、これに関する日経新聞の記事では、「増税前の駆け込み需要の反動減、大型台風や暖冬による消費の伸び悩み」などと記載されているわりに、肝心の「消費税の増税がGDPの大幅なマイナス成長の原因である」という点には触れていないのです。
消費増税が日本経済を殺す
やっぱりと言うべきか、当然と言うべきか。
昨年10月の消費増税の影響が如実に出て来ました。
2019年10~12月期四半期別GDP速報 (1次速報値)(2020/02/17付 総務省HPより※PDF)
2019年第4四半期(10-12月期)GDP成長率は、実質ベースで▲1.6%(年率▲6.3%)、名目ベースで▲1.2%(年率▲4.9%)という惨状になりました。
寄与度でみれば、内需は実質ベースで▲2.1%、名目ベースで▲1.7%であり、外需が堅調に伸びたことで、GDPのマイナスが少し緩和された格好です。
当たり前です。
昨年の『数字で見た日本経済シリーズ』でもさんざん議論して来ましたが、逆進性の高い消費税を増税すれば、消費の萎縮を通じて国民経済にダイレクトに悪影響をもたらすのは当然ですし、また、日本の消費税法には軽減税率の規定も不十分です。
子供用のオムツだの、さまざまな衛生用品だのといった、日常の幅広い品目に、10%という税金がかかってくるわけですから、生活が苦しくならない方がおかしいでしょう。
ちなみに、消費税の増税をゴリ押しする人たちが開口一番に強調するのは「日本は財政が厳しい状況にあるから、財政再建が必要だ」というものであり、それが論破されれば「社会保障財源が足りない」「直間比率是正が必要だ」など、次々とゴールポストを動かして逃げるのです。
財政再建論の大間違い
「日本は国の借金が1000兆円を超えている」、「今すぐ財政再建に着手しないといずれ財政破綻する」、といった、非常におどろおどろしい議論なのですが、これについては
- そもそも通貨というものは国の信用を裏付に発行されているものである
- 自国通貨建てで発行されている国債が過大かどうかは国全体の資金余剰との兼ね合いで決まる
- 中央政府の金融負債の負担を削減する手法は、増税だけでなく、資産売却、経済成長という手段がある
- 日本の場合は家計の金融資産の残高が大きすぎ、国内で資金が使われていないという問題点がある
といった議論を踏まえるなら、正直、現在の日本で国家財政が破綻する確率は、あなたの頭上に今すぐ隕石が落ちて来るのと同じくらい低く、現在の日本に必要なのは、増税や国債発行残高の抑制ではなく、むしろ減税と国債の増発です。
「増税による財政再建」論がいかに間違っているかについては、次のような記事で議論していますので、是非、まだの方はご一読下さると幸いです。
経済新聞っていったい…
さて、GDPが大きなマイナス成長だったことについては「ノーサプライズ」であり、財務省の暴走を抑えずに消費増税を実現させてしまった安倍晋三、麻生太郎両総理の責任は極めて重いと言わざるを得ません。
ただ、この問題を巡って、安倍、麻生両総理だけを責めるのは酷というものでしょう。
やはり、財務省が予算の入口(国税庁)と出口(主計局)を一手に支配し、国民経済を悪化させているという構図にはメスを入れなければならないのですが、ただ、財務省による「増税原理主義」の支配力は、思いのほか強力です。
というのも、さまざまな「御用メディア」「御用学者」らが誤った理論を振りかざし、増税原理主義をゴリ押しししているからです。そのことを痛感するのが、本日の日経新聞に掲載された、次の記事でしょう。
10~12月期GDP、年率6.3%減 5四半期ぶりマイナス(2020年2月17日 8:51付 日本経済新聞電子版より)
日経電子版の報道によると、GDPがマイナスとなった理由については、
「消費増税前の駆け込み需要の反動減が響いたほか、大型台風や暖冬による消費の伸び悩みも重荷」
となった、というものです。
「大型台風や暖冬による消費の伸び」で6.3%も減少するはずないというのは、小学生でもわかりそうなものですが、念のため3回くらい読み返してみたものの、消費税については「駆け込み需要の反動減」としか記載されておらず、消費税の増税がダイレクトにGDPを押し下げたという記述はありません。
日経新聞が経済オンチだというのは有名ですが、それにしてもこれは酷い記事です。
あるいは、日経新聞は全力で、財務省様に忖度(そんたく)しているのでしょうか。
財務官僚は「国民の敵」
さて、今回の消費税の増税に関しては、形式的には野田佳彦前首相が主導して、東日本大震災後に成立したものですが、実質的には明らかに増税原理主義を掲げる財務官僚どもが主導したものでしょう。
やはり、財務省(というよりも財務官僚)が実質的に国税庁を支配し、予算編成権を握っているという状況には、弊害しかありません。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ちなみに、当ウェブサイトでかなり以前から提示しているのが、「国民の敵」という概念です。これは、
「自由経済競争や民主的な選挙などの手続によらずに、不当に大きな権力、社会的影響力を握り、国益を妨害している勢力」
のことですが、財務官僚は国民から選挙で選ばれたわけでもなく、増税原理主義により国益を毀損しているわけですから、当ウェブサイト的な基準でいえば、立派な「国民の敵」です。
結局、誤った増税原理主義に対抗したければ、国民ひとりひとりが賢くなり、選挙権を行使し続けることで、財務省の言いなりになる政治家を少しずつ排除していくしかないのだと思います。
View Comments (7)
消費税率の上げ幅が2%では、全開の上げ幅3%の時よりも消費の減速は少ないかも、と期待していましたが、年率▲6.3%とは、凄まじい数字が出ましたね。私の実感としても、買い物の度に税額を見て消費意欲が萎えまくっています。上げ幅より絶対額としての税額の多さが問題なのでした。
ところで、未だに「社会人なら日経新聞を読め」という風潮がまかり通っている企業はあるのでしょうか? 私はサラリーマンを辞めて随分立つので現状が分かりません。どなたか実感をお持ちの方、お教えください。
新宿会計士さま、リクエストにお応え頂きまして、ありがとうございました。それにしても早いから、余計なお世話でしたかね。
ここに来る人は、ほれ見た事かと考えている人が、多いと思います。
MMT論者の方とかが、議論に参加してくれたり、読者投稿してくれる事を期待します。
勉強させて下さいな。
新宿会計士様
数字はともかく予想通りの結果ですね。
PB黒字化の大義名分は、1100兆円の借金が財政破綻させる、という神話だと思っています。この「1100兆円」のインパクトが大きすぎる事が原因かと。
現在、日銀は500兆円近い国債を保有しています。これを無利子国債に代えて帳簿から消す事は可能なのでしょうか?
消してしまえば国債は名目上600兆円です。これなら国民の感じるインパクトは小さそうです。少なくとも1100兆円までは大丈夫と考えるでしょう。PB黒字化の必要性は薄くなります。
キャッシュレス決済のポイント還元が今年の6月までです。この還元額が最大5%なので、今は増勢前よりも実質的に減税になっていることもあります。
この状況で個人消費がここまでマイナスになるということは、7月以降にさらに落ち込む可能性があるということになります。
COVID-19で陥りつつある深刻な経済情勢に対応するために消費税減税を自民党内で言い出したら、野党の反応が面白そうだなと思いますが、増税した政権ではまず無理でしょうね。
インバンド需要などと熱狂を煽り立てて来た経済新聞社の罪は深いと思っています。「潮時」なる見出しの記事でさっそく逃げを打っているようですが。国民生活の安寧を損ない長く続く産業ダメージの礎を引いたのは経済新聞社記者と自分は思います。
私も同様に思います。
日経の無責任体質は昔から変わりません。
バブルの時には企業の財テクや企業の多角化を煽り、バブルが弾けたら「企業は本業に集中するのが大事」と平然とのたまう。
どの口がいうか、、、と思います。
ある程度は下がると思っていましたが、今回の発表「年率-6.3%」はイヤなものを感じますね。
COVID-19の影響で当然、1月-3月も下げるでしょうから 景気の「気」への影響が心配です。決算発表ではco
VID-19の影響等で3月の予想が難しい企業は 今回、予想発表しなくて良いことになっています。
昨年から工作機械の受注とかも減っていましたし、、、。消費税10%は愚策でした。 打開策は「5%へ引下げ!」で解散総選挙しかないのでしょうか。