数日前に発見して、気になっていた記事がいくつかあります。それは、「日韓の温度差」に関するものです。安倍総理は年頭記者会見で韓国にほとんど言及しなかったのに対し、韓国の文在寅大統領は日韓関係を巡って「日本が輸出規制を撤回すれば両国関係がさらに発展する」などと述べたのだとか。また、あまり報じられていませんが、現在、韓国側から韓日議連関係者が来日しており、昨日は二階俊博・自民党幹事長が「近いうちに1000人を引き連れて訪韓する」などと述べた、という報道もあります。
日韓首脳間の温度差
昨年12月24日に、日韓首脳会談が行われました。
これについては「日韓関係改善の兆候」とでも言いたかったのか、韓国メディア(や一部の反日的傾向を持つメディア)が嬉々として相次いで大々的に取り上げるなどしていました(その一例は『韓国メディア「韓日首脳会談、葛藤解決の第一歩」』でも取り上げました)。
しかし、個人的には「会談が行われたこと」自体をことさらに取り上げて叫ぶことに強い違和感を抱いたことも事実です。というのも、韓国が日本に対して非合理で非友好的な行為を仕掛けて来ている問題については、なにひとつとして解決していないからです。
このため、当ウェブサイトでは『日中関係は対等の一方、日韓首脳会談は成果なし?』のなかで、この日韓首脳会談の意義を(表面上は)「日韓関係は大切だ」という原則論を示しつつも、「関係を改善したければまず韓国が国際的な約束を守れ」とくぎを刺したことにある、と報告しました。
こうした「日韓の温度差」を感じるような記事が、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に、数日前に掲載されていました。
文大統領「日本は近い隣人」 安倍氏は「韓」一文字=新年演説に温度差(2020.01.07 16:21付 聯合ニュース日本語版より)
これは、安倍晋三総理大臣の6日の年頭記者会見で、「韓国」について言及したのが「日米、日米韓の緊密な連携」の箇所のみだったのに対し、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が7日の新年演説で、日本についてかなり言及したのが対照的だ、とする話題です。聯合ニュースは
「文大統領は7日に行った新年演説で韓日間の懸案を取り上げるとともに関係改善に向けて期待を示したが、安倍首相は6日の年頭記者会見で韓国について(ほとんど)言及しなかった」
と述べているのですが、いちおう、ファクトチェックをしておきましょう。まずは、安倍総理の発言です。
安倍内閣総理大臣年頭記者会見(抄)
…他方、世界は今、大きな変化のうねりの中にあります。東アジアの安全保障環境がかつてない厳しい状況の下で、日米、日米韓の緊密な連携はもとより、ロシアや中国との協力関係を築くことは極めて重要です。…
安倍総理の年頭記者会見は、冒頭発言を文字起こしすると約2600文字ですが、韓国について触れられているのが、本当にこれだけなのです。
要するに、聯合ニュースの記事にもあるとおり、安倍総理にとっての韓国とは、いまや「日米韓」、つまり「米韓同盟」の存在を前提にした、非常に細い糸でしか繋がっていない相手国なのです(いや、「繋がっている」だけマシだ、という言い方をしても良いかもしれませんが…)。
説得力のない文在寅氏の発言
繰り返しになりますが、これまでの安倍政権の閣僚など(とくに菅義偉内閣官房長官や河野太郎・現防衛相、茂木敏充外相など)の発言から判断する限り、日本政府の立場は
「韓国は国際法や約束を守れ。国際法違反の状態を是正せよ。話はそれからだ。」
という点で一貫しています。韓国が依然として国際法を守る気配すら見せないことに照らせば、日本政府(とくに安倍総理本人)の韓国に対する存在感が低下することは当たり前の話です。
ただ、それがまったく伝わっていないということがよくわかるのが、文在寅氏の『新年の辞』です。
確実な変化、新しい100年を開始します 「2020年新年の辞」【※韓国語】
やや不正確ではあるものの、翻訳エンジンを使ってざっと邦訳してみると、文字数では7500文字を超えるという、なんだか無駄にものすごい長文です。
ただ、正直に申し上げると心苦しいのですが、読み辛いことこの上ありません。というのも、話があっちに飛び、こっちに飛び、そして事実認定においてもかなりの歪みが見られるからです。「文在寅ワールド」には正直深入りしたくありません。
ただ、我慢して「日本」について言及している箇所を抜き出しておきましょう。
昨年、私たちは、「共生の力」を確認しました。
日本の輸出規制措置に対応して核心素材・部品・機器の国産化に企業や労働界、政府と国民が一緒に力を集めました。「誰も振ることができない国」という目標に全国民が一緒にいました。数十年の間になかったことだったが、わずか半年で意味のある成果を成し遂げました。
いままさに、日本からの輸入に依存していた重要な製品を国内生産に置き換えつつあります。いくつかの項目は、外国人投資誘致の成果も成し遂げました。
日本は最も近い隣人です。両国間の協力関係を一層未来志向的に進化させてまいります。日本が輸出規制措置を撤回する場合は、両国関係がさらに速く発展していくことができるでしょう。
いちぶ、翻訳にこなれていない部分がある点はご容赦ください。
それはさておき、文在寅氏が日本について言及したのは、日本の輸出「規制」(※対韓輸出管理適正化措置のことを韓国政府はこのようにしつこく誤記しています)に対して日本からの輸入に頼らなくなったことと、日本との協力関係を未来志向で深化させる、ということです。
文在寅政権下の韓国が、自称元徴用工問題を筆頭に、非友好的・非合理な行動の数々でさんざん日韓関係を一方的に破壊して来たわけですから、日本国民のひとりとしては、いまさら「未来志向」などと言われても、何も感じるところはありません。
またしても日韓議連が余計なことを…?
こうした「温度差」は、ある意味では当然のことといえるでしょう。
なにせ、日本の韓国に対する輸出管理適正化措置を「輸出『規制』」だ、「貿易報復」だ、などとレッテル張りしながら、『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』(いわゆる「日韓GSOMIA」)の破棄をチラつかせるような瀬戸際外交を仕掛けて来るほどの国です。
しかも、日韓請求権協定をないがしろにする自称元徴用工問題については、日本側が求める「国際法違反の状態の是正」という解決には程遠く、それどころかこの期に及んで韓国は日本の一方的な譲歩を期待しているフシがあるからです。
こうしたなか、あまり注目されていませんが、じつは現在、韓国側から「韓日議連」所属の国会議員らが来日していて、これに関連し、いくつかの報道が出て来ています。そのうちのひとつが、これです。
額賀氏「安倍首相は日韓関係解決の意志ある」 韓日議連会長との会合で(2020.01.09 15:09付 聯合ニュース日本語版より)
聯合ニュースによれば、日本側の日韓議連の額賀福志郎会長、韓日議連の姜昌一(きょう・しょういち)
会長との8日の夕食会では、次のようなやりとりがあったのだそうです(以下、敬称略)。
- 姜昌一「安倍晋三総理大臣は韓日関係を解決する意志があるのか」
- 額賀「安倍総理は日韓関係を解決する意志がある」
- 姜昌一「文在寅大統領も韓日関係を解決する意志があるので、しっかり解決しよう」
??
この「韓日関係の改善」って、いったい何を指しているのでしょうか?
この両名が「問題の解決する」と騙るのであればその前提として「問題とは何か」についての共通認識が必要です。そもそも論ですが、日韓間に横たわるさまざまな問題の筆頭格である自称元徴用工問題については、
- (1)日韓間の過去のすべての問題は、1965年の日韓請求権協定において法的に完全に決着が付いており、それをあとになってから蒸し返すのは国際法違反である。
- (2)そもそも自称元徴用工問題を含めた「歴史問題」自体、その多くが韓国(や悪意を持った日本人)によるウソ、捏造のたぐいである。
という点に大きな問題が含まれているのですが、額賀福志郎、姜昌一の両氏がこの点の認識を共有しているとも思えません。
原理原則を守らない国に原理原則以外の方法で問題解決を持ちかけること自体が誤ったメッセージを与えているということに、なぜ額賀福志郎議員という人物は気付かないのでしょうか。
二階派トップが意味不明な行動?
さて、こうした「わけのわからない動き」をしているのは、日韓議連関係者だけではありません。
個人的に心の中で「自民党のゴミ箱」と揶揄している二階派のトップ・二階俊博氏は昨日、姜昌一氏との会談のなかで、近く「1000人規模で韓国を訪問する」と話したのだそうです(ちなみにこの会合では、日韓議連の河村建夫幹事長も同席したそうです)。
二階氏が1000人規模の訪韓計画 韓日議連会長に明かす(2020.01.09 21:18付 聯合ニュース日本語版より)
1000人の訪問団!
これだけを聞くと、「中国人民解放軍の野戦司令官」である小沢一郎氏が2009年に100人規模の国会議員を引き連れて北京を訪問したエピソード(『習近平の国賓招待とは「日本が中国を支配する方法」?』参照)を思い出してしまいますね。
聯合ニュースはまた、二階氏を巡っては、昨年7月31日から8月1日にかけて来日した韓国の代表団との面会が2回延期されたすえに中止となったことを引き合いに出し、今回、二階氏と姜昌一氏の面会が実現したことについて
「当時は日本の対韓輸出規制強化などで韓日関係が今よりも険悪だった」
などと述べています。「韓日関係は一時期よりも少しはマシになった」とでもいいたいのでしょうか(ちなみに聯合ニュースによれば、姜昌一氏をはじめとする韓日議連所属の韓国国会議員ら5人は10日(つまり本日)、両議連の昼食会などに出席するのだそうです)。
余談ですが、二階氏を巡って、この聯合ニュースの記事には
「二階氏は2015年、韓日国交正常化50年を記念し、日本の観光業界関係者ら約1400人を率いて韓国を訪れるなど、両国の友好に尽力してきた」
とありますが、この人間は一般社団法人全国旅行業協会の会長ですので、おそらくこの行動は、「両国の友好に尽力する行動」ではなく、単に二階氏が自分自身の利権のためにとったもの、という性格の方が強いと思います。
韓国側の「問題解決」って…
さて、くどいようですが、改めて一昨年秋口以降、韓国側から仕掛けられてきた「日韓友好に反した非合理な行動」のうち、主なものに絞っても、次のような事件がありました。
- ①旭日旗騒動(2018年9月頃~)
- ②自称元徴用工判決問題(2018年10月30日、11月29日)
- ③レーダー照射事件(2018年12月20日)
- ④天皇陛下侮辱事件(昨年2月頃)
- ⑤日本による韓国向けの輸出管理適正化措置(昨年7月1日発表)
- ⑥慰安婦財団解散問題(昨年7月頃)
- ⑦日韓請求権協定無視(昨年7月19日)
- ⑧日韓GSOMIA破棄通告(昨年8月22日)
- ⑨対日WTO提訴(昨年9月11日)
このうち⑤を除く各項目については韓国が日本に対して仕掛けて来たものですが、⑤だけは例外的に日本が韓国に対し、積極的に講じた措置です。ただ、日本政府がこの措置を講じるきっかけを作ったのは韓国ですので、やはり究極的には韓国の行動がすべての原因であるといえます。
(なお、個人的な仮説としては、低価格品を中心に日本産のフッ化水素などを横流ししていたのではないかとの疑念が払拭できないのですが、これについては『韓国外相「日本の態度次第ではGSOMIA終了」』もご参照ください。)
そして、⑧と⑨については、韓国政府が実質的に全面敗北する形で終了し、また、⑤については昨年になって、やっと政策対話が始まったものですが、それ以外の問題については、いっさい解決していないのです。
だからこそ、当ウェブサイトとしては、「日韓関係が最悪期を脱した」といわれても、「それではこれらの諸懸案をどう解決するつもりなのですか?」と聞き返したい気持ちでいっぱいになってしまうのです。
もっとも、韓国の言う「問題解決」とは、「これらの問題において日本が一方的に韓国に譲歩すること」、なのかもしれませんが…。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
なお、個人的には日韓関係はこれから「二番底」「三番底」があり得ると思いますし、状況次第では日韓関係がさらに疎遠になったり、日本から韓国に対する経済制裁が適用されたりする可能性もあると見ています(これらについては次の記事でも議論していますので、適宜ご参照ください)。
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えっ?!
韓国側の騙る『課題解決に、問題解決』とは、
これからも韓国が問題を巻き起こすけども、日本国側が、全ての罪と責任を持って、率先して解決に、あたるように・・・。
っつ~、意味ダロウ・・・。
毎日の更新お疲れ様です。多分ですが【語る】を【騙る】にしていますので騙そうとしてるの副音声が聞こえます。
この時期、2Fさんが1000人引き連れて訪韓するなど、正気の沙汰とは思えませんが・・・。
韓国側の希望的クソ記事であればよいのですが、記事のとおりだとすると、我が国がこれまで苦しめられてきた理不尽で異常な関係を正常化している過程(歴史のねつ造歪曲を許さず、ゆすり、たかりのヤクザ行為を排除する)を損なうものであり、中長期的にみて国益を大きく毀損することになると思います。
幹事長とはいえ二階氏が一人でそんなこと勝手に決めていいのかとか、
それだけの人数の訪韓費用はまさか税金から出るのかとか、
言いたいことはたくさんありますが、
最大の疑問は「なぜ千人も行く必要があるのか」ですね。
今のところ韓国とは断行状態になっていませんから話し合いをするなとは言いませんが、なぜそんな人数が必要なんでしょうか?
千人全員が韓国の要人相手に中身のある会合を行うのでしょうか?
自己レスです。
ニュースをよくよく見ると二階氏が千人引き連れて訪韓するのは夏なんですね。
その前に3月の徴用工()現金化で日韓関係は潰滅しているのでは・・・
良いと思いますよ。単なる議員訪問だけで韓国の苦しい状況が変わるわけではないので。
日本の離韓の為には韓国に夢を見させとくのも必要です。
勘違いされて困るのはあくまで韓国を自由主義陣営に留める場合限定ですから。
いろいろと踏まえて表面上で「話し合い」重要という人と、利権が絡んでいるのかどういう理由かある意味本気でいっている人もいますからね。○○とハサミは使いようと言いますが、あえてとぼけて泳がしているのであればいいんですけどね。
>安倍総理にとっての韓国とは、いまや「日米韓」、つまり「米韓同盟」の存在を前提にした、非常に細い糸でしか繋がっていない相手国なのです
何が問題なのか判らない(困惑)。
そもそも、日米同盟、米韓同盟の従属としてのお付き合い(国交)であるはずで、それを先方(韓国)が問題視する根拠が判らない。
それに、私たち一般人と違って、安倍内閣の閣僚は、感情を横に置いた実務者集団ですから、感情論で韓国を外している訳じゃない。実務的観点において不要だから外しているに過ぎないと思います。
>読み辛いことこの上ありません。というのも、話があっちに飛び、こっちに飛び、
確認ですが、文在寅大統領は、弁護士であられたのですよね。そのような論理展開能力で、よく裁判を戦えたなぁと。
>近く「1000人規模で韓国を訪問する」と話したのだそうです
1000人って(絶句!)、国会議員ではないと思われるので、ツアー旅行ですかしら(笑)。
お客さん集まるといいですね。
心配性のおばさん さま
>お客さん集まるといいですね。
だんな さんの受け売りですが、ハーメルンの笛吹き男 みたいに、反日の皆さんを引き連れて半島に行ってもらい、そのまま永住していただくことがよろしいかと。
向こう(地上の楽園)で、面白おかしく暮らしていただければ、我々にとっても喜ばしいことです。
訪韓より和歌山IR誘致、頑張ってください。棒
https://biz-journal.jp/2019/12/post_135461_2.html
和歌山のカジノ運営立候補に米国企業が無いようですが(?)。
日韓議連が、日韓関係に影響しない事は、文3号の徴用工解決法案で立証済みだと思います。
日韓首脳会談前には、あれほどマスコミが騒いでいましたが、今年になって審議が、進んだ様な話は有りません。
今回二階氏が面談したのは、首脳会談が行われて国民感情が大丈夫だから、俺も面談しても大丈夫だと考えたんでは無いでしょうか。
会談後の声明の内容は、過去の韓国側の嘘発表を思い出せば、訪問団の韓国国内向けの、総選挙用アピールにしか過ぎ無いと思います。
本日夕方配信の中央日報日本語版。
韓日議員連盟会長のカン・チャンイルとやらが、「韓日関係改善すれば日本企業の資産現金化も延期に」といった趣旨のことを述べたらしいです。
どこまでも上から目線。
自国の経済状況が逼迫していることから、自称徴用工訴訟に係る判決もカードに使おうとする反日種族主義者の姑息なやり口に強い憤りを感じます。
まさに、ヘル朝鮮・韓国ですな!!
日本国民の大多数は、額賀さん河村さんが考えていることと反対側にいると感じます。
つまり額賀さん河村さんがやってることは、日本の敗戦であり降伏であるとおもいます。
絶対に反対。
ウソの反日で動かない韓国と、ウソは受け入れられない日本とは、当面平行線でよいとおもいます。