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産経報道「日韓首相が24日に会談」をどう見るか

すでにインターネット上でも話題になっているようですが、産経新聞は昨日、安倍晋三総理大臣が即位礼正殿の儀に合わせて来日する李洛淵・韓国首相と、24日に会談を行う、と報じています。産経はこれについて「日韓関係改善に向けた提案がなされるかが注目される」と述べていますが、『韓国首相訪日に対し、異常に高い期待を寄せる韓国政府』などでも報告したとおり、当ウェブサイトとしては韓国側から何らかの有益な提案がなされるかどうかを巡っては極めて否定的です。

李洛淵氏との会談が実現へ?

産経新聞は昨日、安倍晋三総理大臣が24日、韓国の李洛淵(り・らくえん)首相と会談を行う、と報じました。

日韓首相、24日会談で調整 即位礼正殿の儀参列で来日(2019.10.16 23:17付 産経ニュースより)

といっても、これは「政府公式発表」ではありません。産経ニュースはその情報源として、「複数の日韓両政府関係者が16日、明らかにした」と述べているため、単なる「観測気球」という可能性があることは否定できません。

ただ、安倍総理自身、16日の参院予算委員会で、日韓関係を巡って「常に対話を続ける」と述べており(※次の日経電子版等の記事参照)、22日の天皇陛下御即位に関する即位礼正殿の儀にあわせて来日する李洛淵氏との会談に含みを持たせています。

首相、日韓関係「対話、常に続ける」 参院予算委が終了(2019/10/16 18:07付 日本経済新聞電子版より)

このため、産経ニュースの報道は、あながち不自然なものとはいえないでしょう。

ただし、李洛淵氏が来日したところで、正直、現状の日韓関係を打開するのに役立つ話ができるとも思えません。

第一に安倍総理が50ヵ国前後の国家元首・首脳級の外国賓客との会談をこなすことが予定されているなど、安倍総理自身がきわめて多忙であり、李洛淵氏との会談にどれほどの時間を割くことができるのか、はなはだ疑問です。

また、当ウェブサイトとしては、現在の日韓関係の膠着状況について、究極的には

  • ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
  • ③韓国が国際法を破り続け、日本が原理原則を貫き続けることで、日韓関係が破綻する

のいずれしか選択肢がないと考えているのですが、菅義偉(すが・よしひで)内閣官房長官を始め、日本政府関係者はこれまで、「韓国が作り出した国際法違反の状況を解消する責任は韓国自身にある」と述べ続けています。

このため、この3つでいえば①、つまり韓国が国際法や約束をきちんと守ることをコミットしない限り、日韓関係の改善はあり得ない、というのが日本政府の(公式的な)立場、というわけです。

「日本の譲歩」?無理!

ただ、韓国政府のこれまでの態度を見る限り、①を期待するのには無理があります。産経ニュースは「日韓関係改善に向けた提案がなされるかが注目される」と述べていますが、個人的にはそのような提案がなされるとはまったく考えていません。

というのも、先ほど示した3つの選択肢については、韓国側では②、つまり日本の譲歩が当然視されているからです。

たとえば、東亜日報は以前、「韓国首相の訪日で日本国民の心を掴むことができる」などとする論考を掲載していますが(『東亜日報「韓国首相訪日で日本国民の心をつかめる」』参照)、これを読むと、「首相がわざわざ訪問するんだから、日本も譲歩しろ」といった期待を感じ取ることができます。

また、韓国政府も李洛淵氏の訪日に対し、異常に高い期待を寄せているようであり(『韓国首相訪日に対し、異常に高い期待を寄せる韓国政府』)、韓国ではそれこそ官民挙げて、「日本の譲歩」を期待していると考えて良いでしょう。

自称元徴用工問題、レーダー照射事件、上皇陛下侮辱事件、慰安婦財団解散事件、日韓GSOMIA破棄、旭日旗騒動、対日WTO提訴など、数多くの不法行為を日本に対して仕掛けて来た以上、わが国としてはただの一歩たりとも譲歩してはならないことは言うまでもないでしょう。

また外務省が余計な仕事をしているのか

ただし、ここで気を付けなければならないのは、じつは日本側でもこの②の選択肢を取ろうとしている勢力がいるのではないか、という疑いです。

その典型例が、外務省でしょう。

報道を読む限り、現在、対韓外交の主導権は首相官邸がかなり握っているようですが、外務省としてはさまざまなルートでこれを取り返そうと画策しているように見受けられます。

個人的にはウラが取れていない憶測は好きではないのですが、今朝の『「日韓GSOMIA破棄は安倍外交の失敗」という珍説』でも触れたとおり、「保守派の論客」と思しき勢力から「アベの対韓外交は失敗だ」といった言説が出て来ているのがその間接的な証拠でしょう。

もちろん、こうした「外務省陰謀論」には確たる根拠はありません。

しかし、外務省のこれまでの所業を振り返ると、また土壇場で、自称元徴用工問題(朝鮮半島で戦時徴用工だったと自称する者たちが日本企業を続々と訴えている問題)で「基金構想」を受け入れると発表するなど、2015年12月の「日韓慰安婦合意」の轍を踏む可能性は否定できません。

実際、「内なる敵」こそが最大の敵である、という可能性には、十分な警戒が必要です。

日韓関係破綻のプロセスのひとつ

ただし、あくまでも現時点における個人的な印象を申し上げるならば、安倍総理が李洛淵首相と会談すること自体に意義があるとしたら、「日韓関係はもうどうしようもない」ということを、日韓両国民、あるいは全世界に対して示すことができる(かもしれない)、という点だと思います。

ただでさえ安倍総理が多忙であることを踏まえるならば、李洛淵氏との会談は短時間に終わる可能性が高いと思いますし、それでも直接会って話した結果、「日韓両国は見解がどうしても埋まらない」という現状を確認してお終いでしょう。

もちろん、「ウソツキ外交」が大好きな韓国のことですから、安倍総理との会談内容を後日、韓国側が勝手に捏造し、「日本政府が徴用工財団構想に理解を示した」などと言い始める可能性もあるため、十分な警戒が必要であることはいうまでもありません。

しかし、日本のような「コンセンサス型社会」だと、いくら安倍総理がトップダウンで日韓関係破綻に備えようと思ったとしても、外務省などが面従腹背し、結局は安倍総理が退任後に、日本政府内で「日本が譲歩して韓国との関係を改善しよう」といった意見が頭をもたげてくるのではないでしょうか。

そうであるならば、「日本から何度も何度も韓国に対して現状の改善を求めた」、「最終的には日本の総理大臣が韓国の首相と直接話をした」、「それでも韓国が現状の自分たちの不法行為を改めようとしない」、という「事実」を積み上げる、というのは、決して非合理な話ではありません。

(※個人的にはそこまでやる必要があるとも思えませんが…。)

もちろん、現時点でこれについて断定的なことを述べるのは尚早ですが、その「狙い」については、案外、安倍総理なりの深謀遠慮があるのではないか、と思いたいところです。

新宿会計士:

View Comments (43)

  • 今回は韓国側から相当強いネゴがあったんでしょう。
    手土産持参はないでしょうし、また1+1+αなる提案が
    なされると思われ、前外務大臣のようにテレビカメラの
    目の前で阿部総理が叱責するというシーンが目に浮かびます。
    今回は阿部総理の方が格上の為、外交欠礼には当たらないかと……
    国民が外務省をグリップするにはどーしたらいいのでしょうね?
    内調トップに警察官僚が就いていることから、官僚の身辺調査も
    行われていると思いたいですが。

  • 何も起こらない。サプライズは。

    そう簡単にサプライズが起きても困りますけどね。それががポジでもネガでも。すでに安部首相が約束を守れと言っている。韓国首相はにやけた顔してモゴモゴと韓国の考えはこうこうと言うだけ。それ以上でも以下でもないだろう。つまり何も起こらない。無風。

    世の中に Kの法則があると信じられているんだが、それは政界にもかなり浸透していると思うよ。会って話しをするだけでエンガチョと空を切らないといけないわけだ。笑わせる話しだが深刻な話しでもあるな。

        • でも今時、「あべしゅしょう」で正しい変換ができないIMEってなんなんでしょうか。
          LinuxのAnthyでも未だに使っているのでしょうか。
          WindowsのMS IMEですら今時クラウド辞書でちゃんと変換してくれますし。
          Macは今、手元にないけど、iPhoneはちゃんと変換してくれます。

        • タナカ珈琲様、りょうちん様。
          わたくしも、苦笑がw
          MSならIME、MACならATOKでしょう。
          両方とも、ちゃんと更新していれば、誤変換は減少しますよね。
          (MACは20年以上触っていないので、現状が不明です)
          @りょうちん様への直レスが不可能なので、タナカ珈琲様への表記です。
          どうしても突っ込みたくてWW

  •  会談するのは良いのですが、後になって有る事無い事を吹聴するのが嫌です。

     李洛淵韓国国務総理は辞任するとの噂もあります。現在の韓国の状況で文在寅大統領や共に民主党に従うことは政治生命を失う危険性があります。そこら辺は計算しているかも知れません。

     小生は李洛淵韓国国務総理は居ても居なくても困らない、逆に言えば毒にも薬にもならない人物だと思っております。判断力も決定力もないので、「約束まもれ」だけで十分かと思います。会談は1分あれば事足りますね。

     駄文にて失礼します。

    • > 後になって有る事無い事を吹聴するのが嫌です。

      手ブラで来て会談しようと言うのですから、後になって無い事無い事を吹聴するつもりなのは見え見えです。

      他の方の発言へのコメントを混ぜて申し訳ないですが、、、

      > 慶事の儀礼での会談に込み入った話はあり得ないと思いますけどね。

      韓国側にすれば、それを配慮して、「わざわざ別の日にしてやってるんだ。」でしょう。

      鈴置氏も仰って居られた様に、韓国側としては「GSOMIA修復に最後迄努力したんだけど、アベガー。」に持込むのが目的ですから。

      終了を決断したのが韓国単独なんだから、終了撤回したけりゃ、単独に行えば良い話で、日本は無関係。

      まあ、文在寅としては、「アベガー」で終了できれば、一石二鳥・万々歳と思っているでしょうけど。

  • 慶事の儀礼での会談に込み入った話はあり得ないと思いますけどね。これからも意思疎通はしましょうはい終わりその次の方〜って感じですよ。

    何も発言ないこと要求したことに会談後なってる可能性がありますね。願わくば記者たちを退室させず最後まで完全公開で会談して欲しいものです。

  • 会談するとしたら、さすがに総理が相手を怒鳴りつけるなんてことはせずに、
    「安倍総理からは国際法違反を解消するための韓国政府の努力を促し、李首相からは輸出管理についての韓国政府の立場が伝えられた。いまだ互いの溝は大きいものの、対話を継続することを確認した。」
    くらいにはなるんじゃないかな?

    それにしても偉い人が会えばなんとかなる、だから会わなきゃいけないってな、発想がどこから出てくるのか不思議なのです♪

    普通は、相手がこれを望んでるからこうしようとか、自分の望みを通すためにはあっちは我慢しようとかを考えるものだと思うのです♪

    それとも安倍総理は口では「約束を守れ」って言ってるけど、本当は別の何かを欲しがってて、それを探りに来るって考えなのかな??

    • そんな感じでしょうね。

      会うのは日本にとって別に悪い事じゃない。今までと同じ様にちゃんと主張して、手ブラで帰って貰えば良いだけです。

      そして対外的には「日本は対話を拒絶してる訳じゃない」とアリバイ作りもできますし。

      会って、ピシャリ

      今はこれが最善だと思います。

  • 追い込まれているからこその会談要請でしょう。
    十分な時間が取れそうになくとも、また、慶事にふさわしくない内容であるか等も理解の上、マトモな会談などできないことも承知の上だと思いますよ。

    私なんぞも、部下がやらかした粗相などに対し、とりあえず先方に突撃してまずは謝ることに意義を見出そうとする、なんてことがありますが似たようなものでしょうね。

    勿論、彼の国は自国が悪いなんて思っちゃいないでしょうけど、色々な仕掛けをしても日本がこれまでどおりのリアクションをしてくれないもんだからもの凄く焦っていて、まずは上のレベルでコンタクトを持つということが重要である、みたいな稚拙な作戦だと思いますね。

  • これが本当なら、不愉快ですね。
    先に、トランプが、わざわざ韓国からホワイトハウスを訪ねた文在寅に対してやったように、あしらえば良いでしょう。記者が同席していれば、韓国側も、言ってもいない事をさも言ったようにはできないでしょうから。

  • 日本の外務省は古くから外国語が話せるというのが第一で、国益を考えたタフな交渉ができるかどうかは問わず、国益のためには交渉決裂も辞さないという態度よりも、国益無視して譲歩してでも交渉をまとめることが成果と考えてる官庁です。
    外務省は局長級協議で国益無視して余計な事をしたんだろう。

    • コリアスクールメンバーが一生行ってきた仕事が、まったく意味がなかったということは、プライドの高い外務官僚にとって、絶対に認めることができないことなのでしょう。そのためにには、国益がどうであろうとも、意味があるのだというところを見せることになるということです。ですから、韓国に批判的な元大使ですら、保守派に大統領が変われば状況は変わる、国民と大統領は違うといったデマを拡げています。失敗すれば左遷させられるということを外務官僚にも味合わせることが必要だと思います。

  • 他人の家の慶事に、恥知らずな人物が物乞いにやってくる。
    「おめでたいことで、大赦もあるくらいなので、我が国にもお恵みを。」と。
    総理としては、国内外に示してきた筋を変えることは許されないけど、陛下即位の祝賀に泥を塗りたくない。
    宮内庁か外務省か知らないけど、あなたがたの軽い仕事の後始末です。
    ここは、ご提案ですが、二国会談ではなく、数か国間でのレセプションはいかがですか?
    何の回答もお持ちじゃない、訪日後辞職される人物と会うだけでも、間違ったメッセージを発信してしまいます。

    なんでも、報道陣と大挙しておいでになるということなので、(韓国のメディアですよ!)
    レセプションで煙に巻き、あれよあれよとお帰りいただくというのはどうかしら。

    • 「泣き女」の文化が残っているところですから。
      あと招待しないと、茨姫のように祟る可能性もw

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