河野太郎氏が歴代外相のなかでもとくに良い仕事をしています。「河野談話」で知られる河野洋平の息子でもある河野氏を巡っては、当ウェブサイトとしては最初、河野氏が外相を務めても大丈夫かと心配したのですが、ふたを開けてみれば、この2年間、河野氏の事績は素晴らしいものだったと言って良いでしょう。こうしたなか、河野氏が外相から外れるとの観測もあるようですが、さすがに閣僚人事については安倍総理の専権事項であり、その狙いも含めて現時点でなにか憶測を述べるのは不適切でしょう。
タロー・コーノではなく、コーノ・タローです
河野太郎外相が外国メディアに対し、「日本人の名前を呼ぶときには、名・姓の順ではなく、姓・名の順で読んで下さい」と依頼したという話題については、以前、当ウェブサイトでも『シンゾー・アベじゃなく、アベ・シンゾーと呼んでください』で取り上げました。
外国のメディアの報道を読んでいると、たとえば安倍晋三(あべ・しんぞう)総理大臣については、 “Shinzo Abe” と表記されることが一般的ですし、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相も英語などでは “Viktor Orban” と表記されるケースが多いです。
しかし、同じアジア系の国でも、中国人や韓国人は原文どおりに表記されます。たとえば中国の場合だと習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は “Jinping Xi” ではなく “Xi Jinping” 、韓国の場合だと金正恩(きん・しょうおん)は “Jong-un Kim” ではなく “Kim Jong-un” と表記されることが一般的です。
(※ちなみにマイク・ポンペオ米国務長官が就任直後、金正恩の名前を間違えて「ミスター・ウン(=ウン・キムジョン)」と呼んだ、というエピソードについては、『【昼刊】「ウン・キムジョン」とシンガポールでの米朝会談』で取り上げていますので、興味があれば是非、ご参照ください。)
このように考えてみれば、日本人が外国人に対し、姓名をひっくり返して自己紹介するというのもおかしな話かもしれません。
もちろん、河野外相の「日本人の人名は姓・名で呼んでほしい」という呼びかけは、日本国内ではまだコンセンサスが得られているとはいえないかもしれませんが、この考え方には個人的には賛同しています。実際、私自身はたとえば電子メールの末尾の署名欄に実名を表記する際、
麻生晋三<Shinzo Aso>
ではなく、
麻生晋三<Aso Shinzo>
と表記しているのはここだけの話です(※名前は仮です)。
ブルームバーグへの寄稿
こうしたなか、河野太郎氏は本日、米Bloombergにこんな記事を投稿しています。
The Real Issue Between Japan and Korea Is Trust / Japan’s foreign minister says the question is whether promises between two nations will be kept. By Kono Taro (2019年9月4日 6:00 JST付 Bloombergより)
署名欄には Taro Kono ではなく Kono Taro とあります。
タイトルは「日韓の真の問題点は信頼だ」というものであり、韓国が昨年秋の自称元徴用工問題を皮切りに、国際法違反、約束違反を相次いで発生させていることについて、事情を何も知らない外国人に対しても「1965年の日韓請求権協定」から詳しく説明している、非常に良い記事です。
河野氏の主張の要諦は、次のとおりです(※英文記事を英文で要約する力量はありませんので、邦訳したうえで紹介します)。
- 第二次世界大戦中の旧朝鮮半島出身労働者問題を最近の日本の韓国向け輸出管理体制見直しと絡める人もいるが、両者はまったく別の問題であり、問題の核心は両国が1965年に取り交わした条約が守られるかどうかという点にある
- 1965年の協定で日本は有償・無償あわせて5億ドルを韓国に提供し、このなかでは「大韓民国から日本への8項目の要求」も含まれており、これをもって両国の全ての問題は「完全かつ最終的に」解決されたが、これは1965年協定の議事録上も明らかだ
- 日本側は旧朝鮮半島出身労働者らに対し、未払賃金を個別に直接清算するとの申し出を行ったが、韓国側はこれを国内問題として処理し、5億ドルから支払うと述べたし、40年後の2005年8月、韓国は日本からの無償支援金3億ドルに賠償が含まれていると明らかにしている
- しかし、昨年、韓国の最高裁が日本企業に対し、旧朝鮮半島出身労働者らに「損害賠償」の支払を命じたことは、明確に1965年の協定に違反している
…。
いかがでしょうか。
客観的事実を淡々と述べていて、日韓問題を何も知らない人から見ても、「何が問題なのか」が非常によくわかる文章です。私が知る限り、日本の外相のなかで、外国メディアに対し、ここまで明確に日本の立場を淡々と主張した人物は、さほど多くありません。
ちなみに河野氏の論考は日本語版でも読めます。
【寄稿】日韓間の真の問題は信頼-河野太郎外相(2019年9月4日 8:33 JST)
いちおう、私自身、英語版に目を通してから日本語版を読んでみたのですが、英字メディアにありがちな、「日本語版と英語版で違うことを主張している」というトリックは、少なくとも私がざっと通読した限りは発見できませんでした。
河野氏の功績
河野太郎氏といえば、同じ「河野」の名前を冠した1993年当時の官房長官・河野洋平がなかば独断で発した「河野談話」と紛らわしいのですが、少なくとも「1993年河野談話」についての父親の大失態を回復したわけではないにせよ、十分にそのミスを挽回する、良い仕事をしたと思います。
こうしたなか、韓国の日韓請求権協定違反が確定した7月19日に河野氏が出した「新・河野談話」は、「法律を守る国・日本」と「法律を破る国・韓国」を対比させた、非常に良い文章ではないでしょうか(『「河野太郎、キレる!」新たな河野談話と日韓関係』参照)。
ところで、河野外相が外務省に駐日韓国大使を呼び出して、マスコミのカメラの前で叱りつけた件については、韓国メディア『中央日報』(日本語版)にこんな記事が出ていました。
韓経:「無礼な発言」河野外相の交代が有力…韓日関係の影響「触覚」(2019年09月04日11時39分付 中央日報日本語版より)
中央日報(元記事は韓国経済新聞)によれば、「韓国に無礼な発言を吐きだした河野太郎外相が来週の内閣改造で交代すると見られる」としていますが、この「韓国に無礼な発言」という下りに、韓国の深い恨みが垣間見える気がします。
現在、一部のメディアを中心に、河野氏が外相を退任して茂木敏充経済再生担当相が後任に就任するとの見方が広まっていることは事実であり、また、閣僚人事は安倍総理の専権事項であるため、これについては当ウェブサイトとして何らかのコメントをすることは控えたいと思います。
しかし、河野氏が外相を退くにしても、それは「韓国に対して無礼な発言を吐きだしたから」ではなく、おそらく、将来的に自民党総裁・総理を目指すならば、外相以外にも要職を経験するというのも、河野氏自身にとっては重要でしょう。
閣僚から外れて自民党の党務を担当するのかもしれませんし、あるいは、現在は副総理兼財相を務める麻生太郎総理の後任として財相に就任するのかはわかりません(※もっとも、麻生総理は副総理兼財相として留任するとの見方が強いようですが…)。
こうしたなか、思わず笑ってしまうのが、次の下りです。
「政権の3大柱である財務相、外相、官房長官の中で外相だけが交代の対象に取り上げられているのは河野外相が韓日葛藤の過程で国内政治的立場だけを考慮して妄言を繰り返したためという指摘が多い。河野外相は7月、南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使を招致した席で南大使の話を遮って『(韓国が)極めて無礼だ』と強い口調で話した。当時日本国内でも河野外相の発言が侍のように『上の人』が一般民である『下の人』に使う言葉を国際関係で使ったという批判が多かった。」
「『上の人』が『下の人』に使う言葉」?
「日本国内でも批判が多かった」?
少なくとも私が知る限り、私の周囲で河野氏に対し、そんな批判をしている人はいませんでしたよ?韓国経済新聞社さんはいったいどこから取材してそのように述べたのでしょうか?意味が分かりません。これだと、ろくに取材をしないで記事を書くことが多い日本の新聞のことを笑えないと思います。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、現段階ではまだ閣僚人事などが見えていないため、憶測をベースに議論することは不適切ですが、それでも改造後の内閣とその後の安倍政権の動向については、少しまとめて議論したいことがあります。
とくに、10月以降は消費税の増税が実現してしまいますが、憲法改正やNHK改革、財務省改革を含め、「日本の敵対峙」はまだまだ道半ばと言わざるを得ません。引き続き、当ウェブサイトでは議論すべきことが山のように残されていることだけは間違いないでしょう。
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早速更新ありがとうございます。
もはや日課となった「韓国」24時間以内ウェブ検索したところブルームバーグ記事見つけて驚いた所でした。
政府も情報戦で動いているようです。
https://www.asahi.com/articles/ASM937D5PM93ULFA02H.html
しかし朝日新聞でしか報じていないのはなぜだ?
自己レス連投申し訳ない。公式出てました。
https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190903005/20190903005.html
河野外相の投稿は簡潔明瞭で素晴らしいと思います。特に簡潔なのがいいですね。何も知らない人に長々と説明しても逆効果ですからね。
ここ最近の日韓関係の問題は何か、がこの河野氏の寄稿に集約されてる。
是非国民全員が読むべきものと思います。
韓国政府が解決すべき問題であるということが明確。
韓国政府が関係ない韓国の民間、企業まで煽ったせいで現在の混乱を招いているのでは?
日本で韓国とのイベントが中止になるニュースを見るが、どれも韓国側から中止してきていませんかね。
明治の時代から坊ちゃん、お嬢さんしかいない外務省は、田中真紀子(小泉内閣)外務大臣(当時)をもって「伏魔殿」と言わしめた、いわくつきの省庁で、彼らの活動を見るにつけて、彼らの頭の中は国益を誘導することよりも、仲良しこよし、忖度することとお金をばらまくことしかない。
強く国益を考え、毅然と対応する河野大臣はとてもやりにくかったと思います。
私個人的には、是非続投をお願いしたい。
仕事するって言ってんだから飛行機くらい買ってやれよって思いますけどねw
(買ってやったのかな?)
田中真紀子の場合、「お嬢ちゃんvsお坊ちゃん」の闘争でしかなかったですね。
しかし、専用機はどうなんでしょう。
毎回民間機のファーストクラスを取るのとどっちが経済的なんでしょうか。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
内閣改造で外相が、どうなるか分かりませんが、大臣には(英語なら文
句はないですが、せめて日本語を英語に翻訳してもらって)国外の新聞に
寄稿できることを条件にすべきでは、と思いました。
駄文にて失礼しました。
特に大きな失点もありませんし、むしろ仕事をしっかりとしている印象がありますね。
今の安倍内閣支持率の何割かは、彼の功績ではないでしょうか?
(言い過ぎですかね?)
他に期待する候補が見当たらない状態ですし、交代してしまうより、続投して欲しいと個人的には思います。
外国人参政権賛成の茂木議員よりは河野太郎外相の続投して欲しいところです。
一つ気になることは河野太郎議員の秘書にまだ韓国人はいるのか?どうかです。
更新ありがとうございます。
河野太郎大臣には留任して欲しいという思いと、他の重量閣僚を経験して、ポスト安倍というルートを経て貰いたい、というふたつの思いがあります。
ついでに韓国行った河村、出来れば領袖の二階(この人は叩けばいくらでも埃出ますが、冷遇は難しいだろな)の役職剥奪。
【「韓国に無礼な発言」という下りに、韓国の深い恨みが垣間見える気がします】(会計士さんより)。そう、笑ってしまいますね。
武士は食わねど高楊枝ならぬ、プライドだけはエベレスト山級に高い韓国人は、日本には【食わさねば嘘を触れ回る成り】です。
本当にダニか寄生虫のような連中。正直言って韓国マスコミも大学教授もジャーナリストも一般人も、物事を深く考えないようです。自分らが甲だ!から始まる。
よくよく考え抜いて慎重に行動を起こし、相手を立てる日本人とは、1mmもウマが合わないと確信します(笑)。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
めがねのおやじ様へ
河野太郎外相には、内閣改造で「経済産業相 兼 韓国担当特務大臣」
という手もあると思うのですが。
駄文にて失礼しました。
河野さんが無礼?
それならムン・ヒサン議長はなんなんでしょう?
ムン・ジェイン大統領も8月15日より前は日本に対し相当侮蔑的なこと言ってましたよね。
河野大臣は、精力的に外国を訪問し、外相に相応しい行動をしており、評価が高いと思います。
中国の報道官とも仲良く写真を撮ったり、ツイッターを上手く利用した、とてもセンスが良い政治家だと思います。
個人的には、茂木さんも地味なところがありますが、優秀なのは分かっていますので、どちらか外相を務めても日本の国益にマイナスは、ないと思います。
おんなじ河が付く、河本さんは、酷い話しで同じ国会議員とは、思えません。
さて、この寄稿に対して韓国は、反応するでしょう。
予想される反応は、いくつかあります。
1、妄言など非論理的な反論で、事実を大声で否定する。
2、日帝の支配は、酷いもので、一度の合意で解決する様な事ではない。両国関係のより一層の発展には、新たな合意が必要である。
3、徴用工判決とホワイト国からの除外が、関連している事は明らかであり、日本政府も認めている。
4、日韓協定には、違法殖民地支配の賠償は、含まれておらず、違法な強制労働に対する個人の請求権は、残っている。
などなどてすか。
思い付かれた方は、レスお願いします。
だんな様
「韓国に愛は無いのかニダ」
が抜けていると思います。🐧
しかし、私の意見は「韓国にくれてやる金も情けも無いニダ」です。🐧
駄文在寅で失礼しました。🐧
だんな様
はぁ…
全部言ってきそうですね。1〜4と見ていて何故奴らのこんな詭弁に付き合わなければならないのか?とウンザリしてしまいました。
4に加えて、「個人請求権は残っている」「中国には認めたのに韓国には認めないのは不条理だ」は有りそうですね。それに対する日本の反論はこんな感じでしょうか。
「個人請求権は残っている」
日韓請求権協定2条1項において、消滅したのは財産的価値が認められる権利だけだと請求権協定の議事録には明記されている。つまり、請求する権利という財産価値を含まない権利は消滅していない。
しかし、請求権で相手国や国民(法人含む)に請求しても、協定により財産的権利が相互に消滅しているので、請求に応じる義務がなくなっている。だから「請求権はあるが、支払う法的義務が無い(賠償を受け取る事は出来ない)」
「中国には認めたのに韓国には認めないのは不条理だ」
中国は国交正常化の際に賠償請求権を放棄し、日本から金銭を受け取っていない。だから、日本法人が、法的責任はないが道義的責任はあるとして、和解に応じたという対応は理解できる。しかし韓国は、元徴用工への補償金の意味合いを含む巨額の経済支援を日本からすでに受け取っている。中国と韓国への対応が異なるのは当然だ。
ただ、大前提としてこのアホな反応にさらに反論する必要は無いと考えます。彼奴等と話をする時は公の第3者の目が届く所でやらなくてはダメです。どちらの言い分が正しいかは第3者に委ねるべき。同じ土俵に乗っては絶対にダメです。
その意味でも先にコーノ・タロー氏がパブリックに乗せたのは素晴らしい対応でしたね。頼りになる男です。セコー・コーノは留任して欲しいなぁ。
今日は、プライムニュース、出演者が揃ってます。
ただいま視聴中です。
河村元官房長官、やはり子どもの遣いでしたね。
二階俊博幹事長の密命でもあったのでしょうか?
武藤元駐韓国大使、ずいぶん本音で語られるようになりましたね。
黒田産経韓国駐在客員論説委員、韓国との関係が深いようで、見方によっては、韓国側の代弁者とも受け取れます。
高弁護士、スタンスがいまいちはっきりしません。
誰かの妄想はてなブログのような正体不明の在日系法律事務所による反日ブログが全開であることに留意する必要があると思います。
ただ黒田氏の発言で耳目をひくのは、韓国の根深い問題、左翼もお互い面倒を見合う、脱法or不正な手段での「左翼カルテル」というのがあるということ。
正義を振りかざす文在寅政権も、糞まみれということになりますね。
まあ、今夜のプライムニュース、途中ですが、結構、週刊誌ネタ多くて、おもしろいです。
武藤元大使は、年末とか年初くらいまでは結構お行儀のいい話し方だったんですが、最近は「あの人たちにはわかんないんですよ」とか、吐き捨て調のセリフが多くなってきたのが、愛らしくて結構好きです。(笑)
日韓関係を大事に思っているが故に、今の状況に、ほんとにオコなんだろうなーという気がします。
駄文でございました。