最近の当ウェブサイトではやたらと某隣国の話題を取り上げていますが、こうしたなか、本稿では日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)を巡る、韓国メディアの報道ぶりを紹介したいと思います。韓国メディアはきちんと理解していないのかもしれませんが、日韓GSOMIAは日韓間の問題というよりも、どちらかといえば日米韓3ヵ国連携をうまく機能させるための基盤の1つです。このため、日韓2ヵ国間の問題と日米韓3ヵ国間の問題を関わらせること自体、韓国が米韓同盟をためしているのと同じことなのです。
目次
だから、外交カードじゃないってば!
昨日の『日韓関係を壁にぶつけた張本人が「現状打破」主張』では、今週、日韓関係が大きく動くイベントがいくつかある、という話題を紹介しました。その1つが、日韓包括軍事情報保護協定(日韓GSOMIA)です。
こうしたなか、当ウェブサイトでしばしば好んで引用する『中央日報』(日本語版)や『聯合ニュース』(日本語版)などを含めた韓国メディアでは、今月24日に破棄通告期限を迎える日韓GSOMIAに関する話題が頻繁に掲載されるようになってきました。
関連する記事をいくつか紹介しましょう。
韓国青瓦台、「韓日軍事情報包括保護協定の延長の有無は未定」(2019年08月20日06時46分付 中央日報日本語版より)
韓日軍事情報協定の延長可否「決まっていない」=韓国大統領府(2019.08.19 18:56付 聯合ニュース日本語版より)
(※中央日報記事のタイトルにある「青瓦台(せいがだい)」とは韓国大統領府のことだそうです。)
これらの記事によると、韓国大統領府は19日の記者会見で、日韓GSOMIAの延長の有無に関して「まだ決定されていない」「現在検討中」などと述べたそうです。
また、聯合ニュースの方の記事では、
「日本が『ホワイト国(優遇対象国)』から韓国を除外する措置は28日から施行される」
などとしているのですが、早い話が「日本が輸出管理上の優遇対象国から韓国を外す決定をやめること」と「日韓GSOMIAの破棄」を取引材料にしようとしている、ということでしょう。
ただ、日韓GSOMIAは「日韓間の軍事情報の共有」という意味だけでなく、米軍のオペレーション上必要なものでもあります。よって、韓国が日韓GSOMIAを破棄すれば、米軍を困惑させ、いずれ米韓同盟を危機に陥れるであろうことは、当ウェブサイトでもこれまで何度も予想して来た点です。
もし韓国が本気で米韓同盟を死守したいと思っているのであれば、ここで日韓GSOMIAを破棄するということ自体が「あり得ない」と即答するはずですし、逆に、少しでも「日韓GSOMIAを破棄するかもね」とにおわせること自体、米韓同盟を試していることにもなりかねないのです。
日韓外相会談でGSOMIAが話題に?
一方で、今朝の中央日報にはこんな記事も掲載されています。
康京和-河野両氏、あす北京会談…GSOMIA期限3日前の談判(2019年08月20日06時43分付 中央日報日本語版より)
中央日報によると、日本の河野太郎外相と韓国の康京和(こう・きょうわ)外交部長官(※外相に相当)は21日、北京で開かれる第9回日中韓外相会談(20~22日)の機会を利用して日韓外相会談を行う予定なのだそうです。
中央日報はこれを「日韓GSOMIAを延長するかどうかについて決める前の、両国外交当局者間での事実上の最後の談判」、「冷却機に入った韓日関係の分岐点」などと評しています。
ただ、こうした韓国メディアの報道を眺めていていつも思うのですが、自分たちが「日韓GSOMIA破棄」を外交カードにしている(つもりになっている)からといって、すべての情報を自分たちの関心事である日韓GSOMIA破棄につなげるというのも不思議です。
日韓間で話し合うべき課題はいくらでもあるからです。
その筆頭格は、韓国側が日韓請求権協定を無視し、自称元徴用工問題を巡って日本からの協議要請や仲裁手続に応じなかった問題でしょう(余談ですが、現在の韓国は国際条約を一方的に破棄した格好となっており、その意味で韓国はすでに立派な「無法国家」です)。
ちなみに中央日報は、
「文在寅(ムン・ジェイン)大統領が光復節(解放記念日)の祝辞を通じて『今からでも日本が対話と協力の道に出てくるなら、我々は喜んで手を握るだろう』と強調したことも、対立がこれ以上激化する前に外交的解決法を模索しようというメッセージだった。」
と述べているのですが、これは今まで外交的解決法を無視して来たのが韓国の側であるという事実を無視した記述であり、実に厚顔無恥であると言わざるを得ません。
日韓GSOMIAは「交渉材料」ではない!
さて、日韓GSOMIAは「自動的に日韓間で軍事情報を交換する」という性質の協定ではありません(おそらく、日米ともに「本当に重要な情報」は韓国に渡していないと思います)。
ただ、それと同時に、日韓GSOMIAは米軍のオペレーション上、必要な協定であり、これがなくなれば、米軍の任務遂行が制限され、支障が生じかねないという資質のものです。その意味で、日韓GSOMIA破棄は「日韓間の交渉材料」にはならないものです。
ところが、冒頭で紹介した中央日報の記事には、こんなくだりがあります。
「今回に開かれる韓日外相会談で、韓日両国がどのような解決策を議論するかによって韓日軍事情報包括保護協定の延長の有無などが最終的に決定されるものと見られる。」(※下線部は引用者による加工)
「日韓両国がどのような解決策を議論するか」、とありますが、くどいようですが、これは「問題解決」という性質のものではありません。
このような議論が出てくること自体、韓国でGSOMIAが酷く誤解されている証拠ですし、また、米韓同盟とGSOMIAを有機的一体のものとして認識できていない証拠でもあると思います。
「安倍がトランプに日韓問題を直訴へ」?
こうしたなか、とくに酷いと感じたのが、次の記事です。
トランプ大統領に会う安倍首相、韓日葛藤めぐり米国を説得か(2019年08月20日07時41分付 中央日報日本語版より)
今月24~26日にかけてフランス・フランス・ビアリッツでG7サミットが開催されますし、このサミットの場を利用して日米首脳会談も開かれます。
安倍晋三総理大臣とドナルド・J・トランプ米大統領の両者がさまざまな課題(米中貿易戦争、ホルムズ海峡有志連合、北朝鮮の短距離弾道弾)などについて率直な意見交換をするであろうことは間違いありませんが、その一方、日韓問題に割く時間があるとも思えません。
それなのに、中央日報はこの日米首脳会談を巡って、
「韓国に対する日本の輸出規制が韓日間の外交葛藤にまで広がった中、外交関係者の一部では、安倍首相が今回の会談をトランプ大統領に日本の立場を伝える機会として活用するという見方も出ている。」
と評しています。
「トランプ大統領に日本の立場を伝える」という言い回しは、韓国メディアにはよく出てくるものですが、早い話が「直訴する」、ということです。それも、「あいつが悪いんだ」といった具合に、ときとして感情を交えつつ、相手に対する「告げ口」がセットとなることもあるようです。
はて、安倍総理がそんなことしますかね?(笑)
自分たちが告げ口外交をしている(『なぜ日本政府は韓国にペナルティを与えないのか?』参照)からといって、日本も「自分たちと同じ告げ口外交をするに違いない」と決めつけるのは、非常に短絡的ではないでしょうか。
だいいち、「韓国に対する日本の輸出規制が韓日間の外交葛藤にまで広がる」という書き方は、きわめて不正確です。なぜなら、そもそも韓国が日本に対し、条約違反、約束破り、天皇陛下侮辱など、さまざまな不法行為を仕掛けて来ている、という事実が完全に欠落しているからです。
GSOMIA破棄はあるのか?
さて、日韓GSOMIA自体は、米軍のオペレーション上、「日米韓でスムーズに情報を共有するための法的基盤の1つ」だと考えればわかりやすいと思いますが、その一方で、日韓GSOMIAが破棄されたからといって、ただちに米韓同盟が終わる、というものでもありません。
ただ、韓国が日韓GSOMIAを破棄すれば、そのこと自体、「日米韓3ヵ国連携」が韓国の非協力的態度によって機能不全に陥る、ということを意味しますし、その破棄をにおわすこと自体が「気に入らないことがあったら日米韓3ヵ国連携を人質にして交渉するぞ」、という韓国政府なりの宣言でもあります。
つまり、もし韓国政府がGSOMIA破棄を決断したならば、それは韓国が「日米韓3ヵ国連携を破棄する」と決断したと受け取られかねない行為でもありますし、さすがに現在の韓国政府にそこまでの決断はできないと信じたいところです。
ただ、ここまでしつこく「GSOMIA破棄」が報道され続けているという事実を見る限り、現時点においてGSOMIA破棄が韓国政府内で選択肢として残っているという証拠でもありますし、最後の最後まで予断を許さない点であることは間違いないでしょう。
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チキンレースでは、さんざん虚勢を張っておきながら土壇場でヘタれるのが韓国人の常なので、GSOMIAも結局は継続になると覚悟して?おりますが、文在寅という人は突き抜けた行動力をお持ちですので、もしかしたら… という期待を捨てきれません。
それでも文なら・・・文ならきっと何とかしてくれる
http://imgcc.naver.jp/kaze/mission/USER/20120306/56/523206/15/370x567xa2f5d4c8bc9cd76fb0892463.jpg
あぁ~、不安だ。🐧
韓国はちゃんと日韓GSOMIAを破棄してくるのかなぁ~?🐧
ちゃんと破棄して「GSOMIAの再締結を検討してやらなくもないニダ♪」と言う外交カードを手に入れる事が出来るか不安だぁ~。🐧♪
ハゲ親父どの、待ち焦がれておいでなのは私も同様ですが、そんな相手を警戒させるようなことを何度も言ってはいけません。
GSOMIA破棄されたら日本は困るな、大変なことになるな、国家存続の危機かも。
絶対にそれだけはやめて欲しいな。そんなことされたら日本は単独で国家防衛しなきゃいけなくなるし、日本を助けてくれって永遠に韓国に謝罪賠償しなくてはならないから経済危機で世界の最貧国になってしまうかも。
現政権は崩壊してしまうし、アメリカに怒られて国土崩壊だし、GSOMIA破棄だけは維持してもらえないと日本人は地球上から絶滅してしまう。
だからGSOMIA破棄だけはしないでね。
韓国側は、本気でカードだと考えていると思います。
外相会談では、噛み合わない会話となるでしょう。
韓国側が破棄する場合は、何かとこじつけて日本のせいにするでしょう。
破棄しない場合には、慰安婦合意と同様に無効化するでしょう。
日本が譲歩したら、これからもカードとして使えると思って、何度も同じ事をするでしょう。
それ以前に、文政権の政治的志向として、離米(を隠すために反日)が大黒柱となっていますので、国民が同盟瓦解で恐慌を起こさなければ破棄したいのですよ。タイミングの問題です。
GSOMIA‥‥私は破棄してくるものと考えています。
文政権は既に司法は左派勢力で固め。軍部も掌握
残る立法の野党勢力と財閥。今月中にサムソンの
副会長への判決が出ます。
北朝鮮は執拗に軍事演習の中止とGSOMIAの破棄を
主張しています。北朝鮮にすれば、敵対的な行動を
しておきながら南北融和などありえないことでしょう。
文大統領の南北朝鮮の統一が目標である以上、何時(いつ)
決断するのがBESTなのか、の一点に集中しているのでは
ないでしょうか。
文大統領にとって一番まずいのは時間が過ぎて支持率の
下落です。支持率が下がってしまっては、南北統一は
はかない夢に終わってしまいます。今50㌫以上の支持
のある間に仕掛けてくると考えています。
十分にありえますね。
現実として、南主導の統一が難しい状況の中、在韓米軍が北主導での統一の邪魔になりますので、良い機会とすら考えているかもしれません。
りょう様の仰っているように、時期を探っているのでしょう。
専門家に話を聞けば直ちに判るはずなのに、政権に掌握されている韓国のメディアが正確な情報を発信せずに破棄を主張しているのを見ても、意図的に政権が破棄の方向に誘導している証左ではないでしょうか。
日本は、上手くこの流れに乗りましょう。
あぁ、饅頭怖い・・・。
渋いお茶も怖い・・・。
GSOMIA破棄も怖い怖ぃ・・・。
いま 台湾 香港情勢が緊迫していて
中国政府も軍事行動も辞さないといいはじめています
台湾 香港情勢次第ですが
あと4日なので
更新となる確率が高いかと思います
毎々の執筆、ありがとうございます。
>もし韓国政府がGSOMIA破棄を決断したならば、
>それは韓国が「日米韓3ヵ国連携を破棄する」と決断したと受け取られかねない行為でもありますし、
>さすがに現在の韓国政府にそこまでの決断はできないと信じたいところです
どうでしょうか。
恐らく文大統領は北の顔色しか見ていないような気がします。
その将軍様が以前の御発言で破棄しろと仰っていたような気がしますので、
滞りなく破棄すると宣言する気がしてなりません。
仕事多忙で少し目を離すとあっという間に置いて行かれてしまいます。
時代の記録に残る変化点を、しっかりとこの眼で見ていきたいと思います。
ドイツ銀行も危険度が高そうですし、韓国のデリバティブも危険そうな報道を目にしましたし、
そういう意味でも目を離すのは危険だと再認識した朝でした(苦笑)
失礼いたしました。
記事の更新ありがとうございます。
さすがに期限内での破棄宣言、つまり90日後の破棄は、米国にとってのメリットが見つからないので、方法はともかく、それはさせないと考えています。
それでも、もしかしたらと思わせるところが、さすが韓国です。
もし米国の手を振り払って破棄宣言したら、事態は急展開ですね。日米韓の合同作戦が事実上不可能になるので、自然と韓国が外れます。
しかし、それでは収まらない韓国は、期限が過ぎてから有形無実化するぞと言い出す可能性はかなり高いと見ています。馬鹿らしいとは思いますが、これまでの思考パターンからすれば、そうなるでしょう。
日本は粛々と手続きを踏むだけなので、28日の時点で振り上げたこぶしを降ろせなくなり、日本への情報提供を停止すると宣言します。
途中でごにょごにょと言い訳してうやむやにする確率は……二割ぐらいはあるかも知れません。
そうは言っても、米国へ提供した情報を日本へ回すな、なんて筋の悪いことを言い出すとは思えず、大きな影響は無いだろうと予想します。韓国からの情報提供が信用できないなら同じことですので。
逆に日本からの情報提供をどう扱うか、というカードが増える気がします。
GSOMIAを破棄するにしてもしないにしても、日本側は「どっちでもいいよ」の姿勢を貫くことが大事ですね。
今のところ「日本のせいでGSOMIAが破棄される」と日本メディアが騒いでないことだけが救いです。
日本のメディアも、流石にそこまで馬鹿じゃなかったのは、一安心です。
こういった一連の流れを嫌った中国共産党筋から、韓国(韓半島国家)自体が中華思想圏内から外される、無視される、冷遇される、略奪を無視される、というのはどうでしょうか?
毎度の妄想です。
日韓の現在の問題ですが、非常に残念ながら情報戦、世論戦では日本が一方的に負けてるように思います。
ロシア政治経済ジャーナルの北野さんが8月18日づけのメルマガ「★対韓国、予想通り【戦術的ミス】の影響がでてきました」で解説されていますので、皆さん読むことをおすすめします。
といっても、バックナンバーを読む方法がわからないのですが、とりあえずメルマガの URL を載せておきます。
https://www.mag2.com/m/0000012950.html
ポイントは以下の2つです。
* 「徴用工問題」の報復として「輸出規制を強化す
る」というのは「とてもまずい」
-> 筋が通らない。後になって「報復ではない」といい出したが、もはや誰も信じていない。
* 「安全保障上の管理の見直し」とか「不適切
な事例があった」
-> 第三者にとっては意味不明。日本政府は明確に、韓国がイランやシリアに横流ししたことを明確に公表するべきだった。
この非常にまずい戦術の結果、アメリカでもドイツでも「第二次世界大戦で人権を踏みにじった日本は、現代になっても謝罪しないばかりか、弱い韓国を理不尽に虐めている。」とマスコミで散々宣伝されてしまっています。
アメリカやヨーロッパでの世論は、政府の対応に大きく影響しかねないので非常に重要です。
日本は少なくともアメリカ政府から圧力をかけられれば抵抗することは非常に困難です。
私達は、今回の韓国との戦いは有利どころか、情報戦、世論戦では今の所一方的に負けているということを意識しなければいけません。
情報戦、国際世論戦はわが外務省のウィークポイントというより、残念ながら官邸はじめ外務省内にもかの国の「エージェント」的な役人がいる印象。いずれにしても国民の強い支持があっての国益最重視外交が可能。注視とともに支持(後押し)も広げる必要あり。
マイナンバー様、
そもそも日本には情報機関がありませんからね。
戦う以前の問題なのですが、現状を覆すのは容易ではなさそうですね。
アメリカからの圧力は無いですね。なぜなら今回の経産省の行動はアメリカからの「要請」によるものだと思います。イランなどへの韓国経由の不適切な事案をアメリカが示して経産省が腰を上げたのだと思います。
自民党政権は制裁等やる気もないし出来はしませんよ。