共同通信の報道によると、韓国人の自称元徴用工らが日本企業を訴えている問題で、原告側の弁護団が「被害者救済のための基金ないし財団の設立案」を年内に取りまとめ、日韓両国政府に提示する予定だそうです。「あれ?差し押さえた株式の売却は数ヵ月以内に実現するんじゃなかったっけ?」と思った方も多いと思いますが、以前『時間もカネもかかる 非上場株式の競売が困難である理由』で指摘したとおり、現実には非上場株式の競売手続は非常に困難です。その意味で、どうせ原告側は「財団設立」を持ち出すに違いないと踏んでいたのですが、まさかここまで早くその報道が出て来るとは思いませんでした。
自称元徴用工らの訴訟加熱
自称元徴用工らが日本企業を相次いで訴えている問題は、当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』でもかなり以前から取り上げて来ましたが、とくに昨年10月30日に大法院(※最高裁に相当)が新日鐵住金(現・日本製鉄)に約1000万円の損害賠償を命じて以降、過熱しています。
日本企業に損害賠償を命じた判決は、大法院でほかに三菱重工に対する2件の確定判決が下されているほか、高裁・地裁レベルでは日本企業に対する敗訴判決がいくつも出ており、日本企業側は控訴・上告しているようですが、いずれの件でも最終的に大法院で敗訴するのは時間の問題でしょう。
ただ、大法院で判決が確定した日本製鉄と三菱重工の2社に関していえば、いずれも原告側(自称元徴用工やその遺族ら)に対する賠償金の支払いには応じていませんし、とくに日本製鉄については、原告側の代理人である弁護士を門前払いにしているほどです。
こうしたなか、昨年末から今年にかけて、韓国側の弁護士らは日本製鉄、不二越の2社については韓国国内の合弁会社の株式を、三菱重工に関しては特許権と商標権を、それぞれ差し押さえており、また、今年4月に入り、それらの一部については強制売却手続が開始されたとの報道もありました。
株式差押えの本当の目的は「2+2基金」
しかし、『時間もカネもかかる 非上場株式の競売が困難である理由』で説明したとおり、現実には非上場株式の売却はきわめて困難です。
なぜなら、売却価格を鑑定するためには株式発行体である合弁会社の財務諸表などのデータが必要ですが、今回のような事件では合弁会社側による財務データ提出などの協力が得られるとも思えないからです。
また、競売を行い、落札者が出たとしても、譲渡制限株式の場合は株主としての権利移転に会社の承認が必要ですし、承認が得られなければ結局は株式をその会社自身に買い取ってもらうしかないため、合理的に考えれば、合弁会社株式の落札者が出現するとも考え辛いところです。
こうしたなか、当ウェブサイトの『徴用工判決問題:非上場株式の換金はサラミスライスの一環?』や『「売却するぞ、売却するぞ、今度こそ本当に売却するぞ」』などで提示した仮説は、結局、韓国側原告団側には本気で差し押さえた株式の売却をするつもりはない、というものです。
つまり、株式を差し押さえ、「我々との交渉に応じなければ売却するぞ」と脅すことで日本企業を交渉のテーブルに着かせる狙いがあると見るべきなのです。
そのうえで、彼らの最終的な目的は、たとえば「2+2基金」(日韓両国政府や日韓両国企業などが参加する基金)を設立し、日本企業などからカネを出させたうえで、自称元徴用工が名乗り出たら自動的におカネをもらえる仕組みを作ることだと考えるのが自然でしょう。
予想どおり過ぎて驚いた!
こうしたなか、先ほど「梅干」様からのコメントで教えて頂いたのですが、共同通信の報道によると、日本企業を訴えている韓国人自称元徴用工側が「被害者救済案」を検討し、日韓両国政府に提示するのだそうです。
元徴用工側が「被害救済案」検討/日韓両政府に提示へ(2019/5/19 09:25 JST付 共同通信より)
共同通信は
原告側関係者によると、原告や原告側の弁護団、支援団体が18日に会合を開き、元徴用工(※)の被害救済の具体的な方法を独自に検討し、日韓両政府に提示する方針を決めた
としつつ、その具体的な内容については「日韓両国の政府・企業などが参加する基金や財団を創設する案などが考えられる」としています(※なお、共同通信の記事にいう「元徴用工」とは、自称元徴用工のことをさすと見られます)。
手前味噌ながら、まったく予想どおりで驚いてしまいました。
今後、韓国国内で日本企業敗訴の確定判決は次々と増えるでしょうし、そうなれば、資産を差し押さえられてしまう日本企業も続出するでしょう。ひと昔前だと、日本企業側でも「事なかれ主義」が蔓延していて、「カネで済むなら払ってしまえ」、とばかりに、賠償に応じてしまう企業も出現したかもしれません。
これこそまさに韓国側の狙いでしょう。
瀬戸際外交大好きな民族
もっとも、韓国側がこのような揺さぶりを掛けて来るのは、日本政府にも責任があります。日本政府側は
- 日本企業に不当な不利益が発生したら、何らかの対抗措置を講じる(ただし、具体的にいかなる対抗措置を検討しているかについては、当方の手の内を明かすことになりかねないため、言及しない)
- 日本政府としては韓国政府が李洛淵(り・らくえん)首相を中心に検討しているとされる韓国政府なりの解決策が出てくるまでは「次のステップ」(仲裁手続?)を踏むことを猶予してやる
という姿勢で一貫していますが、ここで、「不当な不利益が生じたら対抗策を取る」と述べてしまったこと自体、やや軽率だったのではないでしょうか。
なぜなら、「日本企業に『不当な不利益が生じる』状態」とは、「日本企業の資産が売却された場合」を指す、との認識を与えてしまったからです。ということは、「日本企業の資産の売却」が実現するまでは「ギリギリセーフ」、という意味に受け取られかねません。
その意味で、当ウェブサイトとしても「ここまでであれば日本側は対抗措置を取らない」と誤解されかねないラインを示してしまったことは、自分で韓国に対する経済制裁の道を閉ざすことにつながりかねないため、間違いだったと考えているのです。
ただし、この「ギリギリセーフのラインを示してしまった」という点を除けば、今のところ、日本政府の過失はゼロに近いと言って良いでしょう。というのも、「判決自体が国際法違反である」とする日本政府の姿勢はブレておらず、また、日本企業ともよく連携が取れているからです。
そして、韓国側も「日本政府が許容(?)するギリギリのライン」を攻めてくるのは、今月上旬に短距離ミサイルを発射した北朝鮮が、いつも米国に対し「ギリギリのライン」を攻めて来るのと同じ文脈で理解するのが正しいでしょう。
北も南も、しょせんは「瀬戸際外交」が大好きな民族なのです。
瀬戸際外交には無視も有効
ただし、瀬戸際外交を行う国にとって、一番困るのは、「無視」です。
端的に言えば、「やれるものならやってみろ」、というスタンスが一番良いでしょう。
先ほどの共同通信は、原告側は資産売却手続と並行して、「救済方法の内容を検討し年内にまとめる方針」と報じていますが、裏を返して言えば、年内に売却手続が終わらない、という意味でもあります。
いや、むしろ非上場株式の売却手続をどうやって進めるのか、お手並み拝見と行きたいところですが、日本法をコピーしただけの韓国法に基づいて、非上場株式の売却などの手続ができる人がいるとも思えないのです。
日本政府が韓国に対する積極的な対抗措置・経済制裁に踏み切らないことが正しいとは思いませんが、少なくとも日本企業に過失は一切存在しないのも事実ですので、現状で考える限り、本件は放置が一番良いでしょう。
そして、放っておけば国際法に違反した徴用工判決が続々と出て来ることは間違いなさそうですし、そのこと自体、結果的に韓国側が自分で自分の首を絞め、最終的には「セルフ経済制裁」や「消極的経済制裁」が実現するのではないかと思うのです。
View Comments (61)
慰安婦基金の記憶が生々しく残ってるのに別の基金の設立を持ちかけられてもね。
その基金でケリがつく保証を韓国が示さないといけないと韓国はわかってない。
日本の信用を木っ端微塵に粉砕してしまったことを早く誰か教えてあげないと!
知ったからといって信用回復しようとは思わないのが彼らだけれど。
ヤクザと同じなんだよね
一回でも払ったらあとは付け込まれるだけ
最初からなにもしないに限る
そろそろ日本も学ばないとね
民間企業を訴えているのに、日韓両政府に提示するとか意味不明。
日本が折れるのを待っているんでしょうね。
2➕2で韓国企業にもっていうのも意味がわからないですがが?
被害者もどきさん達は高齢で、さっさと資産売却するって言ってたのに、早速日和ってますね。
役立たずの日韓議連メンバーのみなさん韓国に行かれるみたいですけど、どう対応するのか聞いてみたいです。
日韓議連18日から訪韓 関係改善へ意見交換も
https://www.sankei.com/politics/news/190517/plt1905170028-n1.html
これですね。議連の名前は、よりわかりやすくかつ正確に『日韓役立たずの議連』とすべきですね。役立たず程度ならまだしも、余計なことすんなっつうの。
室谷さんがWTOのお話の中で言ってました。K国のロビー活動はもろ「現金」だそうです。こいつら、いくら「ロビー活動」されてるんだろう?もしそうなら、まさに売国奴の面々ではありませんか。
匿名様。
日韓議連が前回訪韓した際に韓国から竹島で訓練というおもてなしがありましたねW
https://www.dreamlifecatcher.com/2018/12/18/japanese-korean-parliamentarians-2018/
暴走は、何処かに突っ込んで車体が破壊されるか燃料切れしないと止まらないよ、運転手交代ってのも有かな?、米中戦争とそっくりですね。
HNうっかり 非野阿礼
と書いて「うるさい」と読むのでしたね。ホントこの民族はうっとおしい。五月にかぎらず文、文、文。
孫子の兵法『謀攻篇』に、『故に上兵は謀を伐つ』とあります。
敵の謀計を看破し、露見させて、対策をあらかじめ練った上で、その謀計を無効化させることを、孫子は最上の策としてあげています。
敵の謀計を看破し、露見させることはできています。その対策は『日本は交渉には応じない。資産を売却すれば、対抗措置を講じる』というものですが、果たして本当に有効な対抗措置を出せるのかどうかが問題でしょう。
まあ、韓国側も無策ではありません。
出来れば自称元徴用工たちも慰安婦問題のような『性奴隷』の立場にランクアップさせて、全世界のメディアで扱って欲しいでしょう。日本を無類の人権侵害国に仕立てあげたい。そうすれば、パク・クネ元大統領のように日本を責めたてる立場に立つことも可能です。
ですが、この道はすでに塞がれています。世界のメディアは応じようとしませんし、各メディアにいるコリアン系の記者も記事を出してこれません。
あとは日本企業の中で、最後まで抜け駆けするところが出ないことが肝要でしょう。韓国側も当然、抜け駆けする企業が出てくるように懐柔工作を仕掛けて来ているはずです。
この徴用工問題は根本は、日韓請求権協定のみならず、日韓基本条約の破壊に最終的な目的があるのでしょう。
日韓基本条約では、戦後補償の賠償金の受け取り手に韓国だけを相手にしています。北朝鮮の分は韓国があらかじめ受け取り、朝鮮半島の正統政府は韓国であることを認めた条約です。
このことに我慢ならないのは北朝鮮であり、北朝鮮と韓国従北派が主体となって攻撃を仕掛けて来ていることに焦点があります。北朝鮮と日本の北朝鮮シンパは表面に出ないようにして、サポートする体制になっているようです。
名無Uさん様
>この徴用工問題は根本は、日韓請求権協定のみならず、日韓基本条約の破壊に最終的な目的があるのでしょう
いやあ、普通ならそう思うよね。だけどそこまでご立派な信念をもった上でやってるんなら、ちょっと最近の腰の引け具合はあまりにも情けないんじゃないですか。麻生大臣が報復制裁のメニューなるものをチラッと漏らしてみせただけで固まってしまって、ずるずる後退を続けてるようにしか見えないもの。「最終的な目的」が、言われるようなものだとしたら、日本国政府と正面切ってけんかになるのは覚悟の上。今頃は世界に向けて例の調子で罵詈雑言の嵐を吹きまくっているはずでしょう。下工作をした上でじっと時期が来るのを狙ってるなんてのは、カノ民族の最も苦手とするところ。実際のところは頭の中お花畑のパー翼運動家が日本をなめきって仕掛けてみたところが、思いもよらない強硬な対応を喰らって、周章狼狽してるのが本当のところじゃないかと思うんですが。「誰がこんな悪手やるなんて言いだしたんだ」と、青瓦台、大法院、「人権」弁護団の間でこれから内ゲバが始まるとしたら、面白いことになりそうですが。
伊江多様へ
≫いやあ、普通ならそう思うよね。だけどそこまでご立派な信念をもった上でやってるんなら、ちょっと最近の腰の引け具合はあまりにも情けないんじゃないですか。
徴用工問題の発端は、朝鮮大学校の教員だった朴慶植(パク・キョンシク)が『朝鮮人強制連行の記録』 という著作を出したことに始まります。 これが1965年で、その種本は、平壌から出された『朝鮮民主法律家協会の声明』(1964年)とされています。
北朝鮮が日韓基本条約締結の動きに不満を持ち、強制連行の嘘八百話しを組み上げて来ていたことがわかります。ですが、あまりにも無理筋で、韓国で従北政権が立ち上がるまでこの捏造問題を提起できなかった背景があります。問題を立ち上げた盧武鉉政権下でも、『元徴用工の個人請求権は解決済み』と政府見解を出しています。また、韓国外交部も『補償義務は韓国政府が負う』と声明を出しています。
とにかく無理筋が過ぎて、50年以上も喧嘩を売れなかった事案です。その突破口として、『韓国司法が勝手に出した判決であり、三権分立であるから、韓国政府は関与できない』という詭弁を用意したのでしょう。
これで日本を屈服させる道が見つかった、と韓国従北政権は喜んだでしょう。
で、韓国従北政権の目論みはことごとく看破された。向こうも腰が引けて来るのは当然でしょう。(笑)
また聞きでなんですが、何とかというエラい人(なんじゃそりゃ)が、「ロシアは戦略を除いてすべてダメだが、 中国は戦略以外はすべて上手い」と言ってるそうです。返す刀で「韓国には戦略という概念すらない」と。
>まあ、韓国側も無策ではありません。
本当でしょうか?(笑)にわかには信じられません。
すいません。
『伊江多様へ』ではなく、『伊江太様へ』です。
大変、失礼しました。
原告団 日本政府出して
↓
日本政府 解決済み韓国政府なんとかしろ
↓
韓国政府 司法には介入できない
基金ってこんな流れにしかならないから、ダメなんじゃないの?
まぁ 弁護士さんは、なんかしてれば、周りから応援貰えて、カンパなんかもあるだろうから、進もうが進まなかろうが、いいんでしょうね
(自己レスでした)
(もひとつ自己れすです)
それにしても、なん羅かの形で活動資金得てるんだと思うけど、そういうのを集めて、運用なんかでお金作って、自称なんとかの人を助けようって動きはないのでしょうか?
時間がないってなら、経済家支援と名誉回復のための活動を、まずは行うべきだと思うんだけど、聞こえてくるのは、強請り集りの類いだけってのは何故なんでしょうか?
そういう地道な活動は取り上げられることが少ないせいだと思いたいけど、きっと違うんでしょうね
もともと自称徴用工を救いたいわけじゃなくて
日本に嫌がらせがしたいわけだから
日本が絡まない形での救済なんか眼中にないんじゃない?
韓国人の目的は、日本にマウントすることで自己の上位性・優位性を確認することです。慰安婦だの自称徴用工だのは、そのための手段として利用するだけです。彼らを救うことなんかどうでもいいのです。実際、慰安婦がお金をもらおうとしたら妨害されたりしました。解決してしまうと困るのです。
自称徴用工の件も、財団を設立したら、頃合いを見て解散させ、次の裁判に取りかかりますよ。きっと。
元レスの匿名ですm(_ _)m
匿名さんや阿野煮鱒さんのおっしゃるとおり何でしょうね 慰安婦保護してた人が補助金だったかを横領してたって記事をみた覚えもあるし・・・・
「可哀想な人を助けたい」ってのが出発点じゃなくて、「良さげな儲け話がある」は言い過ぎにしても「邪悪な日本を懲らしめたい」ってのが出発点である限り、分かり合えることはないのでしょうね
で、元なんちゃらの人たちも、そんなもんだとわかってても、名前を貸せば、おこぼれにありつけると思ってるのかな?
意地の悪い見方とは自覚はあるのですが、そうとしか思えないのも正直なところなのですm(_ _)m
慰安婦財団解散した時点で詰んでるよね。こんな話誰も乗ってくれないよ。
かの国の連中なら、もう都合良く忘れてると思う。あと「それはそれ、これはこれ」が当然だと思ってるよ。
被害妄想患者に対する様に行動しないとね。彼の国には明確に発言しないと通じない。勝手な解釈をさせてはならない。
心配です。
とっても心配です。
日本が韓国と手打ちをしてこれまでの韓国の無礼を不問に。2+2基金の提案に乗り、お土産として日韓スワップまで。
考えただけで虫唾が走りますが、そんなことには絶対ならないと、どなたか力強く言い切っていただけませんかね。
┗虫唾┓
┏┗ 三
日本は言霊の国ですから、そんな縁起でもない言葉は口にしてはダメです
悪霊退散!
毎日拝読してます。
予測的中、お見事です。
いっそニセ徴用工はアサヒとかを訴えれば面白くなるのに、と思いますが、いかがでしょうか。