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待ち遠しかった「鈴置論考」の最新版と分水嶺の米韓首脳会談

金曜日に『デイリー新潮』に韓国観察者である鈴置高史氏の最新論考が掲載されています。また、同じく金曜日にBSフジ『プライムニュース』に、鈴置氏と、愛知淑徳大学教授の真田幸光氏が出演され、韓国経済の原則と対韓制裁について言及されています。私自身「鈴置ファン」を公言していますが、本日は備忘録的に記事や番組のリンクを紹介するとともに、私自身の主観についてもつれづれに綴っておきたいと思います。

待ち遠しかった鈴置氏の議論

私自身、昨日は人間ドックで某病院に出掛け、待合室に置いてあった某オピニオン誌をパラパラめくっていたのですが、「日本企業は韓国との結び付きも強いため、日韓断交に踏み切れるわけがない」といった特集記事が組まれていて、正直、議論のレベルの低さに呆れてしまいました。

こうしたなか、韓国論といえば、やはり日本経済新聞社の元編集委員にして日本を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏の韓国論が秀逸です。金曜日には『デイリー新潮』に、その最新稿が掲載されています。

文在寅の“ピンボケ政策”で苦しむ韓国経済、米韓関係も破綻で着々と近づく破滅の日(2019年4月5日付 デイリー新潮より)

韓国といえば、半導体やスマートフォンなどで全世界に圧倒的な存在感を示していますが、世界的な半導体需要の低迷に加え、韓国独自の事情として、米中貿易戦争の余波を受けた対中輸出の急ブレーキにも大きな打撃を受けている格好です。

リンク先の記事については、ウェブのページ数で3ページに及ぶ長文ですが、おそらく一気に読めてしまうと思いますので、是非、直接読んでみてください。

それよりも、私自身が気になったのは、鈴置氏が以前提示された、「韓国のベネズエラ化」という予言が成就に向けて着実に歩みを進めている、という点です(『鈴置氏「韓国のベネズエラ化」 ベネズエラと韓国の符合とは?』参照)。

これを私自身の文責でごく簡単に振り返っておけば、本来ならば石油の輸出国であり、豊かであるはずの南米のベネズエラが、現在、経済の崩壊状態にあるという状況が、将来の韓国と符合する、という指摘でしょう。

ベネズエラ経済が壊滅状態にある理由は、同国が法治主義や米国との友好関係を否定したという点も大きいと思いますが、「法治主義の否定」「米国との関係の否定」といえば、まさに現在の韓国そのものでもあります。

今は1人あたりGDPが3万ドルにも達する韓国経済が、ベネズエラのように壊滅状態になる、といえば、「それは極論だ」などと反論を受けるかもしれませんが、歴史的に豊かな国が没落したケースは枚挙にいとまがありません。

BSフジの番組をみて「セルフ経済制裁」を意識した

一方で、鈴置氏と愛知淑徳大学教授の真田幸光氏は、金曜日にBSフジ『プライムニュース』に出演しました。

これは非常に見ごたえのある番組だと思いますが、『ハイライトムービー』についてはおそらく期間限定で同番組のウェブサイトで視聴可能です(『韓国経済「減速」現状 どうする“対韓制裁”』参照)ので、時間のある方は是非、視聴してみてください。

このなかで、真田氏が「韓国に対するカントリー・リスク」に言及されたのですが、この下りを聞いて、私がまっさきに思い出したのは、「セルフ経済制裁」です(といっても、この「セルフ経済制裁」という用語はあくまでも私の用語であり、鈴置氏や真田氏がこのような発言をしたわけではありませんので、ご注意ください)。

この「セルフ経済制裁」とは、『「韓国に対する経済制裁の在り方」についてまとめてみた』でも申し上げたのですが、韓国の反日的な動きを嫌い、日本企業などが結果的に韓国からビジネス拠点を撤収する、韓国企業との取引を控える、といった状況になることです。

冒頭に紹介した某オピニオン誌には「日韓経済の結びつきは深く、日韓両国は切っても切れない関係にある」、という趣旨のことが記載されていたのですが、おそらく現実には、日本企業ははるかにシビアにカントリーリスクを評価しているのではないでしょうか?

今後の焦点は?

さて、デイリー新潮の記事には、次のような下りが出て来ます。

今、韓国の経済界が最も恐れる「文在寅リスク」は、米国との対立である。(中略)米朝首脳会談が物別れに終わり、米国が制裁を維持しようとしているのに、北にドルを渡すための事業である開城工業団地と金剛山観光を再開すると言い出したからだ

まったくそのとおりでしょう。

おりしも、半導体不況や中国経済減速の影響を受け、韓国の貿易黒字が急減している状況にあります。こうしたなか、今月11日に文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領は訪米し、ドナルド・J・トランプ米大統領とワシントンで米韓首脳会談に臨むのですが、鈴置氏は

この場で文在寅大統領が開城工業団地と金剛山観光の再開を言い出せば、米韓関係は破局に至る可能性がある

と指摘します。

この点、私自身、米国が遅かれ早かれ韓国を見捨てるのは間違いないと見ているものの、それと同時に、「韓国を見捨てる」にしても、それなりの準備も必要です。そして、米国のことですから、韓国を見捨てるまえに、一度、「通貨危機」で韓国の国力を削ぐくらいのことをやっても不思議ではありません。

今月11日の米朝首脳会談でどこまで進展するかはわかりませんが、当ウェブサイトとしては明日以降、もし余裕があれば米朝首脳会談までの期間を使って、改めて韓国の外貨ポジションなどについての数字を振り返ってみたいと考えています。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • 言うに事欠いて・・開城工業団地と金剛山観光の再開・・。北朝鮮の代弁者ですから当然その話を出すでしょう。それ以外に言うことないはず。場が持たない。

  •  文在寅は制裁部分解除を要求するでしょうね。先に制裁解除することで北の核廃棄は確実に進むと言い張るでしょう。

     もはや首席広報官ですらないパシリが金正恩に褒めてもらうためには、忠実なイヌになるしかない。韓国保守メディアもそれを懸念してるようです。

     つい先日、米政府高官から開城興業団地と金剛山観光事業の再開に「ノー」と言われたばかりですが、マジキチなストーカーには警告も意味がないようで。

    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190406-00080011-chosun-kr
     今月11日に開かれる韓米首脳会談を前に、韓国政府がいわゆる「初期収穫(early harvest)論」を積極的に持ち上げている。非核化のロードマップをめぐる合意は包括的に行うが、北朝鮮が具体的な措置を取ったら制裁緩和など補償を与えることができる、というものだ。韓国大統領府(青瓦台)の文正仁(ムン・ジョンイン)外交・安保特別補佐は4日、ある学術会議で「(北朝鮮が)査察・検証を通して(豊渓里核実験場の廃棄を)証明できれば、前向きなシグナルになるだろう。北朝鮮がそうした行動を示してくれれば、当然、米国側は相応の措置、すなわち制裁緩和をしてやるだろう」と語った。

  • 自分も鈴置高史氏の論考の価値をそんなに軽くは観ていません。アメリカのシンクタンクから出されるものと同様の『脅し』が入っているものと観ています。
    表面上は『この場で文在寅大統領が開城工業団地と金剛山観光の再開を言い出せば、米韓関係は破局に至る可能性がある』と警告しています。
    これの真意は『もし言い出したなら、韓国をベネズエラにする』との脅迫が入っているものと観ています。しかし、鈴置氏にそれだけの力があるのか、と多くの方は思われるでしょう。自分はある、と観ています。
    しかし、これを韓国は読み取れるのか、甚だ心もとないものがあります。まあ、残念ながら(残念なことなのか?)、読み取れないでしょう。

  • 首脳会談で米国は、韓国のこれまでの不行状(制裁違反等)を
    責め立てたうえで、ムン大統領にCVID前の制裁解除ナシという
    自身の方針に賛同すると明言させるつもりと考えます。

    去年のG20時の米韓会談と同様に、多分韓国は表面上はこれに従う
    と思います。拒否出来たらある意味見上げたものですが、米韓関係
    の破局を満天下にさらすことになりますから。制裁が怖いし、
    韓国の国内世論(支持率)的にも無理でしょう。

    会談後、北朝鮮は韓国を激しく非難、南北関係が更に悪化するもの
    と予想します。追い込まれた韓国がどう動くか?

    国連制裁違反ではないと屁理屈をこねてケソン再開するのか?
    南北関係悪化を甘受して、しばらく北支援を自重するのか?

  • 見捨てる前に通貨危機かますって、さすが米国。エグいな。ま、レッドチームだしな。

  • 北への擦り寄り以外、上手くいっていることが一つも無いですからドンドン北に擦り寄る発言を連発するでしょうね。とは言え、北への擦り寄りも上手くいって無いのですが、逃げと責任転嫁力で精神を保っているようです。

  • 米国が共和党政権で韓国が親北左派政権の組み合わせというと、ブッシュJrと盧武鉉の会談が思い起こされます。

    盧武鉉が訪米の際、北朝鮮への制裁緩和を訴えてライスとゲイツの二人の国務長官から「何を考えているかわからない」「反米的で少しクレイジー」と呆れられ、ブッシュから「This man」呼ばわりされ、酋長棒を贈らてご満悦でした。

    あの頃のホワイトハウスは盧武鉉について多くの事前情報を持っていなかったようですが、文在寅については悪い意味で十分な情報を得ていますので、盧武鉉以上のエンターテインメントが観られるものと期待しています。

    マジで4月11日が楽しみです。

  • Web主様がご紹介のデイリー新潮の鈴置氏による記事は、私も拝見しておりました。

    韓国に対する政策については、各論ありますが、最近の私は、政治(国益、国防)は、経済や民意に優先される。と考えるように、至りました。
    そして、この日本の政治(国益、国防)ですら、大きな歴史の流れの中には、翻弄されていきます。

    今月11日には、米韓首脳会談がワシントンで開かれまが、韓国メディアの報道を覗いていると、空恐ろしくなりました。

    <大統領府国家安保室2次長「韓米首脳会談で良い結果出るだろう」>
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190406-00033179-hankyoreh-kr

    記事は、韓国政府の機関紙ともいうべきハンギョレ新聞ですが、

    >キム2次長は、開城(ケソン)工業団地や金剛山(クムガンサン)観光の再開については、今回の訪米で取り上げておらず、首脳会談で協議することになるだろうと述べた。

    彼は、11日の米韓首脳会談の議題を調整するため、訪米したはずですが、事前に韓国の主張したい事項に対するアメリカの感触も確認せずに帰国したということですよね。
    決まってしまった歴史(韓国崩壊)の秒読みを聞いている気がします。

  • 更新ありがとうございます。

    しかし今月11日に米韓首脳会談やって、何の意味があるのでしょうか。今更また、開城工業団地再開や金剛山観光などを言い出したら(と言うか事前に議題にしたいと言った時点でNOかも)、トランプ大統領の逆鱗に触れるの間違い無しッ。

    『文、ええ加減にせいよ!』と言いながら縁切り進めるに違いありません。結局北東アジアは日米のタッグしかまともな同盟の選択は無いです。さて、今日は統一地方選開票日、夜はパソコンでボチボチ見させて貰いますか。愉しみィー(笑)。

  • 鈴置氏の言説に異論は無い

    でも、実績として当たってないんだよね

    もっと事態が進行してからの予測だから、
    まだ未達だ、とも言えるけど

    何かが、不足してる気がするんだよ

    ソレが何かは、分からないけど

    • > 実績として当たってないんだよね

      そうなんです。

      鈴置氏は多くの事実を元に精緻な分析を行い、説得力のある予想を立てていますが、逃げ水を追いかけるように、現実との距離が縮まりません。

      『米韓同盟消滅』も現時点で読み返すと、内容が旧聞に属し新鮮味がないせいか、異論はないものの今ひとつ慧眼に触れた感動がありません。

      「韓国経済は今にも破綻する」論と同じく、我々が見ている現実と予想の間に何かが足らないと思います。韓国人が決して日本を正確に分析できないように、日本人には見えない「何か」があるような気がしてなりません。貴方が仰るダークマター(韓国に存在する)なのか、あるいは、日本人の特性の問題(日本に存在する)なのか、それも分かりません。分からないからコリアウォッチャーをやめられないのです。

    • 私もプライムニュースを視ました。鈴置氏は、今後の朝鮮半島情勢について、いくつかの前提の下、民族性等も踏まえた上で、また、氏独自のネットワークも駆使しながら、考えを述べておられたようにお見受けしました。突き詰めると、こうなるのではないかと・・・。ですが、不確定要素も多いことから、必ずしも予測どおりにはならないと思います。とは言え、限られた情報の中での分析・洞察能力は、やはりジャーナリストの中では抜きんでており素晴らしいと思います。韓国は、日本の国論に留意しながら、また、氏のような有識者の言説にも注意しながら、さらに裏をかく方策を講じてくるのではないでしょうか。なにしろ、他国へ誇ける文化など持ちあせていない分、国力不足を補う他国への工作、戦略性に富んだ国です。だから、歴史のねつ造、・・・等々まったく意に介さない。

    • 同感です。鈴置さんの書く記事はすごく理論的な文章展開で、いつもなるほどと感心するのですが、「それはさすがに裏を読みすぎなんじゃないの?」と感じることも多くて、ちょっとどうなんだろうと思うようなところもあります。頭のいい人って、やたらと裏を読みたがる傾向がありますけど、もっと単純に考えてもいいような気がしますけどね。まあ、自分が頭が悪いので、そう思うだけかもしれませんが。

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