『文春オンライン』によると、住宅設備メーカー「LIXIL」の潮田洋一郎会長兼CEOはシンガポールに生活拠点を移すかたわらで、「いずれ国債は暴落し、日本は破綻する」と述べたのだそうです。実は、潮田氏がこのように発言したと報じられたのは、初めてではありません。『FACTA』という雑誌のオンライン版でも、同じようなレポートが出ているからです。もちろん、日本の資金循環構造や法制度などに照らし、日本国債がデフォルトする可能性は限りなくゼロに近いというのが実情ですが、では、なぜ大企業の経営者という社会的な重責を担う立場の人が、軽々しく「日本破綻論」を口にするのでしょうか?
大企業経営者の「日本破綻論」
少し気になる記事を発見しました。
今朝の『文春オンライン』の記事によれば、住宅設備メーカー「LIXIL」グループの潮田洋一郎会長兼CEOが「日本は破綻するだろう」と述べた、というのです。
「日本は破綻するだろう」 リクシル潮田会長が日本嫌いの理由(2019/02/04 07:00付 文春オンラインより)
文春オンラインの報道によれば、潮田氏は現在、自身の生活拠点をシンガポールに移しているそうですが、その潮田氏の口癖は「日本で納税するつもりはない。いずれ国債は暴落し、日本は破綻するだろう」なのだとか。
この「国債暴落」「日本破綻」というセリフが、売上高1.6兆円という大企業の経営者の口から出て来ること自体も驚きですが、私自身が気になるのは、なぜ同氏が「国債暴落」、「日本破綻」と唱えているのか、という点にあります。
ちなみに、「現状の日本の資金循環構造や法制度などから考えて、日本国債がデフォルトする確率は限りなくゼロ%に近い」というのが、当ウェブサイト『新宿会計士の政治経済評論』などを通じて私自身が一貫して表明して来た持論です。
(※なお、国債デフォルトに関する詳しい議論については『日本は財政危機ではない!数字で議論する日本経済と資金循環』や『日本国債の不都合な真実:ハゲタカは日本にとって格好のカモ』あたりもご参照ください。)
相続税に腹が立った?
ところで、『文春オンライン』記事は同社の成り立ちや前任CEOの解任劇などについても言及していますが、当ウェブサイトでは基本的に、何か事件でもない限り、マスコミ各社を除く個別企業の経営状況や株価、「お家騒動」などについて触れるつもりはありませんので、これらの下りについては割愛します。
当然、潮田氏の経営者としての手腕が優れているか、劣っているか、同社の株価はどうなるか、といった点についても議論するつもりは一切ありません。
あくまでも私が興味、関心を抱いているのは、なぜ潮田氏が「日本国債が暴落して日本が破綻する」と考えているのか、というその1点です。
文春オンラインによると、同社関係者は「潮田家が国税当局との長年にわたる確執を抱えている」などとしたうえで、次のように話したそうです。
「潮田家は93年、健次郎氏の兄・猪一郎氏が亡くなった際の相続で33億円の追徴課税、さらに14年には健次郎氏が亡くなった際の相続で60億円の追徴課税を命じられています。いずれも受け皿の資産管理会社に相続資産を移すなどして評価額を引き下げるスキームでした」
相続をめぐる評価額は、相続税法において、常に問題となる部分です。
「資産管理会社に相続財産を移すことで評価額を引き下げるスキーム」とやらが、具体的にどういう仕組みなのか、この記事を読んだだけではよくわかりませんが、いずれにせよ瀬田氏が国税当局に対して強い不満を抱いている、ということが言いたいのでしょう。
まさか、潮田氏が「いずれ国債が暴落して日本が破綻する」と考える原因が、「高額の相続税を取られて腹が立ったから」、というものなのでしょうか?もしそうだとすると、そのように短絡的な思考の人物が上場会社の経営者で問題はないのでしょうか?
他人事ながら心配になってしまいます。
容赦ないFACTA
なぜ潮田氏が、「国債暴落」「日本破綻」を持論としているのか。
この点について、もう少し詳しい情報が知りたいと思って調べてみたところ、『FACTA』という雑誌のオンライン版にも、似たような話が掲載されていました。
LIXIL潮田の逆噴射(FACTAオンライン2018年12月号より)
『FACTAオンライン』は先ほどの『文春オンライン』よりも踏み込んで、潮田氏を「潮田洋一郎(64)」と呼び捨てにしたうえで、このあたりの事情について、次のように報じます。
「14年12月、父親の健次郎の遺産相続を巡り、長女の敦子が東京国税局から申告漏れを指摘され、約60億円の追徴課税を命じられた。健次郎が保有していたLIXIL株を洋一郎と分けた敦子は、株を自らが代表を務める資産管理会社に移管し、評価額を下げて税務申告した。芸術家のパトロンとして知られる敦子は文化事業に資金を投じるために、こうしたやりくりをしたのだが、国税局は問題視した。」
ただ、残念ながら『FACTAオンライン』を読んでも、同氏が「国債暴落」「日本破綻」を信じる根拠らしい部分は、ここくらいしか見当たりません。
先ほどの『文春オンライン』と比べて目新しい点があるとすれば、同氏が「芸術と風流を愛する」という下りに関して、昨年6月に「LIXIL住生活財団が公益財団法人から一般財団法人に移行した」というエピソードを紹介している点でしょう。
「財団の主な活動は、建築家志望の大学生を対象に設計コンペを開き、優秀作品は十勝平野に持つ広大な敷地で実際に建設させるというもの。未来の建築家を育成するものなのか、潮田の道楽なのかは判断の分かれるところではあるが、文部科学省は「公益性がない」、つまり道楽と結論付けた。」
現在の公益法人制度では、財団法人は「一般財団法人」と「公益財団法人」に分けられ、両者のおもな違いは税制優遇措置にあります(ちなみに「公益性がない」からといって「道楽と結論付けた」という『FACTAオンライン』の記述も短絡的です)。
「日本破綻論」はよくわからないが…
いずれにせよ、私自身が一番知りたい、「なぜ潮田氏が『日本破綻』」を持論としているのか、という点については、結局のところ、よくわかりません。
ただ、私の個人的な知り合いのなかにも、「日本はいずれ破綻する」と漠然と信じている人はいます。しかも、「日本破綻論」を信じている人は、大企業の役員一歩手前の部長など、野心的な人(要するに「サラリーマン経営者」)に多い気がします。
おそらく、その根拠は、「俺はこんなに仕事ができるのに、政治家や官僚どもは大した仕事もできていない」という、一種の優越感にあるのではないでしょうか?
もっとも、一度、冷静に尋ねたことがあるのですが、彼らの「日本破綻論」のロジックは、きわめて貧弱です。
「国の借金が膨らみ続けている」「国民1人あたり800万円を超える借金」「少子高齢化で社会保障費が膨らみ続ける」、といったマスコミ報道の受け売りばかりです(ただし、まじめに論破しようとすると、彼らも逆ギレして来ますので、注意が必要です)。
このような人たちがやがて経営者になり、経団連のような組織に入り込むことで、「日本破綻論」という誤った観点から日本経済に迷惑をかけるのでしょうか?
View Comments (44)
家計資産、企業資産が日本国債で吸収されなかったら
何処に行くのでしょうか?
金融機関経由で、海外の資産を購入すると思います。
表現として、「日本国債で吸収しきれない部分は、海外へ」ですかね。
更新ありがとうございます。
LIXILは住宅建材や浴室・トイレメーカーなど大手5社の集合体でしたね。潮田会長は何故『日本で納税するつもりは無い』とか『日本が破綻する』とか『国債が暴落する』とか言ってるかは知りません。
しかし経営者というよりも趣味人や芸術愛好家なら、競合厳しいメーカーのトップは離れて欲しいですね。そこの従業員、家族が可哀想だ。父親が大きくした会社で、更に長兄の跡を継いだのが、この潮田氏。やっぱ二世は、、(笑)かな。
シンガポールに既に移っているなら、日本でのビジネスから手を引くべきでしょう。相続税で腹が立ったのでしょうが、それで日本が潰れる発言はちょっと問題だな。
以前、DHCの吉田嘉明会長が『会社を一から作った人は本物。二世、三世はただのボンボンで偽物』『本物、偽物、似非は区別するべき』『但し叩き上げ経営者は在日が多い』と辛辣に言ってましたっけ(笑)。
ところで、我が家はリフォームでトイレをT社にしました。あ〜良かった。ココにしなくって(笑)。
リクシルの魅力は、ラインナップが豊富で、選ぶ楽しみがあるところですね。
ですけど、どの商品も2ラインあって迷ってしまうんですよね。
台所は、トステム・サンウェーブ・INAX
水まわりは、トステム・INAX
サッシは、トステム・新日軽
外装は、トステム・INAX
外構は、東エク・新日軽
ですね。〔集まるだけじゃなくて、少しはまとめた方がメリットが出そうな気がします。〕
台所や水まわりは、価格設定がやや高めで、値引による値ごろ感が出やすかった印象があります。
デザインと値ごろ感で選ぶなら、リクシルはオススメですね。
でも、品質重視でデザインが不可でないのなら、タカラとかTOTOの方がいいのかもしれません。
オリジナルクオリティの老舗メーカーの商品には、おカネには代えられない価値がありますから。〔10年も使ってると違いが判ると思います。〕
ですので、トイレを検討されるなら、断然あの企業です。めがねのおやじ様は、とても良いお買い物をされたと思います。〔わたしでも、そうします。〕
個人的な感覚ですが、経営者というか、我の強い起業家気質の人間はマクロ経済が苦手な人が多いような気がします。
それも「勉強してないから苦手」というよりも「そもそも本質的に理解ができない」というタイプの苦手さというか。
そういうある種の「視野の狭さ」がチャレンジ精神を生む面もあるのかもしれない、と感じています。つまり、マクロ的な視野を持っていればおよそ挑戦しないような無謀なことを衝動的にやれてしまうが故に成功したタイプ、とでも言えばいいのか。
経営者のインタビュー記事などを読んでいると、日本の経営者の多くが日本のビジネス環境の悪さに不満を持ち、このままでは日本企業が国際競争で遅れを取りかねないというような発言をしています。
この潮田会長の記事は読んだことが無いので完全な憶測になってしまうのですが、この方も現状の財政状態について言っているというより、将来的に日本企業が競争力を失うことで日本経済も衰退し、財政破たんに至るといいたいのではないかという気がするんですが、どうでしょう。
私には経営に関して専門的な知識などないのでこれが事実なのかどうかも判断しかねるのですが、実際に海外の「経営のしやすい国ランキング」のようなものを見ても日本はかなり低い順位を付けられていたりもしますし、本当に日本はビジネス環境が悪いのか、企業にとって経営がやりにくい国なのかについて、お時間がありましたらぜひ新宿会計士さんのお考えも記事にしていただけたらと思います。
FACTAの記事を読むと、極端なグローバリズム主義者で
なにかを一からコツコツ育てようと言うような感じの人ではなさそう
でもその反面風流人で、学生相手に建築コンペとか
なんか矛盾した記事なのか、本人がホントにそうなのか。
破綻の行はよくわかんない人の戯言かなぁ。
まぁ、金持ちの気持ちは平民の自分にはわかんないです(笑)
この人物がどういう人なのか一切知らないまま書くこと失礼になるか
もしれませんが、自社社員を信頼できているのでしょうかね。この企業
の社員さんたちの鋭気はどうなんでしょうかね。本サイト主様のいう国
民の敵の多くと同じく、自信の思想を語っているのではないでしょうか。
この人物の企業の収支等々知りませんというか興味なく話題それますが
弊社の代表者のこと書きます。
弊社の代表者は到底企業経営者の資格ない奴です。二言目には弊社は
財政危機ではないのかです。弊社にも立派な会計士おり、またかと代表
者の戯言無視しお金管理している。暇な会計士もどき(今技術屋)の私
が代表者に、日本経済、日本国債、弊社の資金循環数値をもとにして、
議論相手し、代表者は俺は楽観主義者だと意味不明な言葉を残し、自席
で仕事に戻る。代表者は人の話を良く聞き理解が早く臆病故に代表者に
は向いている。弊社は、取引先の85%が海外企業様、社員の80%は
帰化人です。日本のカンジニアリング通用せず困ること多く何事も数値
で話すので愛嬌なくつまらんですが、企業存続60年の要因かも。
こういう代表者も悪くないと思うというより経営しかできないと本人に
言っております。本人も納得のようで、毎日無駄なこと一所懸命です。
どうでもよいこと書いてすみません。
この人物、破綻するなら自分の企業だけにしてほしいですね。日本に
納税されないとのことですがご自由だし。少なくとも、弊社全員は日本
に納税します。皆日本が好きです。
失礼しました。
左翼なのになぜか経営能力が高く、資本家になってしまう人はいるものです。潮田氏もそういう人なのではないでしょうか。
芸術家には理想主義の“love and peace”な人が多く、左傾化しがちです。坂本龍一が「たかが電気」と発言して顰蹙を買いましたが、音楽家としては優れた人なんですよ。イデオロギーに関わることは思うだけにして、本業に専念していれば尊敬される人なのに残念と思います。
経営者もイデオロギーはタブーにすべきですが、経済政策に関する意見は本業に近い分野だけに微妙ですね。経済音痴なのに有能な経営者って、何なんだろう。
成功する経営者って、案外、動物的感で経営しているのかも。経営学を学んできているであろう、2世や3世が失敗するのも、経営は理論じゃないからかも。シンガポールに会社の拠点を移すことも、実は利益極大化のためかも。普通の日本人なら外国にはなかなかいけませんからね。言葉の問題もあるし。そのうちLIXILの社員の半分が外国人となるかもね。過去のしがらみのない人たちで会社を運営していけば、利益は大きくなると思う。そのうちルクセンブルクとかに本店移転とかもね。
この潮田氏。
7-8年前に、当時TBSの傘下だったプロ野球団横浜ベイスターズを買収ということで、メディアを賑わせており、実際、交渉成立寸前まで行き、破談となりました。
交渉内容が公開されているわけではないので、報道をもとにした記憶によると、この潮田氏が本拠地移転にこだわったのが、破談の主因だったとか。
TBS側は、売却はしたいものの、歴史的なしがらみや無責任な形は避けたかったのか、横浜ホームにこだわり、潮田氏側は新潟や静岡移転を考えていたとか。
素人目に考えて、人口規模で横浜市で350万超、神奈川県で900万超のエリアと静岡、新潟では潜在的な集客に大きなギャップがあると思いましたので、潮田氏の考え方は理解できませんでした。
当時、極めて弱体球団であり、そのためかTBS側も球団経営に情熱を失い、確かに集客は酷かった。
ただ、これは工夫や集客努力により回復の可能性はあると思っていましたが、案の定、新興ゲーム企業であるDeNAが買収後、短期間で常時満員のスタジアムとなり、球団経営も黒字に転換、スタジアムまで買収し、球団所有となりましたので、潮田氏の経営手腕、先見性に疑問を持ちましたね。
TBSと交渉が持てると言う事は、相当な左翼人脈つながりなのが判りますね。
日本に納税したくないというのは、在日企業と発想が瓜二つで、反日思想からは至極当然に思えます。
左翼思想であり、安保闘争以来の活動家社長ということでしょう。
同じ流れでは、堤清二氏や若いときに共産党系の思想にかぶれていた団塊世代氏は数多くおられます。
破綻の定義でしょうな。
国債暴落はマクロ経済もミクロ経済も微妙な理解しかないなら思い込めるかと。
借金が返せなくなる前に円自体が暴落、はあり得るでしょう。
外貨稼げている限りはプラザ合意前に戻るだけ。
LIXILには仕事柄毎日お世話になっていますがこの経営者の一族の評判は最低です。
顧客との取引方法を一方的に変えたりなどして現場で混乱を起こし、シェアを他のメーカーに取られ天敵のTOTOにも取られたりして縮小する国内市場で更に利益を減らしています。
少なくなるパイの奪い合いになってる住宅市場でシェアを取られると現時点で奪還はかなり難しいものです。
恐らく少なくなる国内市場とその奪い合いにウンザリして東南アジアに軸足を移そうという考えなのでしょう。しかし国内で投資を行わない、販路拡大を目指さないでは日本企業ではありませんし、それ以前に国内での収益を一方的に海外にでは国税庁に目の敵にされ、取引企業との信用問題や市民意識により淘汰されるのが関の山です。
海外市場など価格勝負ですから勝ち続けるのは至難の技かと。
LIXILって聞いてサッシや住宅設備を思い出す方が多いんですが、住宅設備の方は高額な物が多いのでいざという時の保証をする国内の大企業のを皆さん選びます。サッシは適当かな。