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台湾加油!戦略的互恵関係に基づく日中関係構築を目指すべき

日本が来年4月、中国で開かれる国際観艦式に自衛艦の派遣を検討しているという話題が、1週間前に報じられています。最近、レーダー照射騒動などに持って行かれてしまい、なかなか触れる機会を逸していたのですが、これについて冷静に考えると、日米韓、日中韓という、それぞれの三角形が形を変えつつあるという姿を見ることができるように思えてなりません。東アジアの安全保障は、中国を「仮想敵国」として受け入れつつも、その仮想敵国の暴発を防ぐための相互信頼醸成という形で、新秩序の形成に向けて歩んでいるのかもしれません。

海自の中国観艦式への参加は歓迎すべき

最近、韓国の話題に「持って行かれて」いたため、取り上げる機会を逸していたのが、この話題です。

日本政府、海自艦の派遣検討/中国海軍、4月に観艦式(2018/12/25 17:33付 共同通信より)

ちょうど1週間前の共同通信の記事によると、「中国海軍」(※)が創設70周年に当たる来年4月23日に山東省青島沖で国際観艦式の開催を計画し、これに日本の海自艦艇の派遣が検討されているのだとか。

(※余談ですが、共同通信は記事の中で「中国海軍」と呼称していますが、正しくは「中国人民解放軍 海軍」のことではないかと思います。)

共同通信はこれについて、「今年10月の日中首脳会談で申し合わせた海自と中国海軍の艦艇相互訪問の一環で、防衛交流を促進させ、信頼醸成に取り組む」という目的があるとしています。

中国が日本の「仮想敵国」であることは事実ですが、だからといって敵対するだけでなく、友好的な式典に参加することで相互の信頼醸成に取り組むという姿勢は非常に大切です。

今回の報道が確かなら、私は自衛隊の中国への艦隊派遣を全面的に歓迎したいと思います。

観艦式といえばあの国でしょう

ところで、「観艦式」という単語で思い出すのは、今年10月11日に韓国・済州島(さいしゅうとう)の韓国海軍基地で行われた国際観艦式です。

旭日旗騒動と観艦式の振り返り「全世界に恥をさらした韓国」』などでも触れたとおり、日本は結局、自衛艦の派遣を見送ったのですが、艦艇の派遣を見送った国は、じつは日本だけではありませんでした。

事前の報道によれば、韓国が国際観艦式で招待状を発送していた国は14ヵ国、ないし15ヵ国だったそうです(ただし、正確な国の数と国の名前に関する情報は、結局は見当たりませんでした)。

しかし、事前に招待状を受け取っていた国のうち、実際に観艦式に参加した国は9ヵ国であり(※ただし、観艦式ではなく別途行われたパレードに参加したインドネシアを含めれば10ヵ国)、参加しなかった国は次の5ヵ国だそうです。

  • 日本:「旭日旗騒動」のため参加見送り
  • 中国:理由は定かではないが事前に参加をキャンセル
  • マレーシア:当日ドタキャン?
  • フィリピン:当日ドタキャン?
  • 英国:当日ドタキャン?(ただし、招待状を受け取っていないとの情報も)

(ただし、英国が招待状を受け取っていたのかどうかについては、正直、報道も錯綜していてよくわからなかったので、いちおう「そもそも招待状を受け取っていない」という可能性を含めておく必要があります。)

また、観艦式に参加した国も

  • 7ヵ国は韓国政府の事前要請を無視して艦旗を掲げる
  • シンガポールは韓国国旗を半旗にし、タイは韓国国旗のサイズを小さくする
  • いくつかの国はメインマストに艦旗を掲げる(「戦闘中」の宣言とも受け取れる)

といった、韓国に対する地味な嫌がらせをしたそうですが、これらを見る限りは、観艦式のホスト国として韓国が著しく礼を失していた証拠だとも思えます。

ひそかに、中韓間の関係は悪化中?

ただ、私がこの中で気になったのは、なぜ、人民解放軍・海軍が韓国の観艦式に参加しなかったか、です。

考えてみれば、中韓関係は昨年10月~12月にかけて、朴槿恵(ぼく・きんけい)前政権が決めた高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の朝鮮半島配備を巡り、中国が韓国に対してそれを撤回するように圧力を加えていたという事情もあり、非常に悪化していました。

たとえば韓国観光公社が公表する観光統計を見ても、中国人の韓国入国者数が激減していたこともわかります(図表)。

図表 激減する中国人韓国入国者数

(【出所】韓国観光公社統計より著者作成)

さらに、昨年10月には「三不の誓い」(韓国は米国のミサイル防衛システムに参加しない、THAADを拡充しない、日米韓3ヵ国協力を軍事同盟に発展させない)を中国に対して立てさせられました(『「三不協定」の衝撃:米韓同盟崩壊が視野に入った』)。

そして、昨年12月には「国賓」として中国を訪問したはずの文在寅(ぶん・ざいいん)大統領は、異例の「ひとりメシ」を余儀なくされるなど、中国と韓国の関係悪化(というよりも中国が韓国を一方的に制裁している姿)は露骨でした。

もっとも、中国が求めたTHAADの撤去は実現していないにもかかわらず、最近になって、中国人の韓国訪問客も少しずつ回復する傾向にありますし、どうも最近の中国の対韓制裁は緩んでいるようにも思えます。

しかし、中韓関係が「好転した」とまでは言えないのが実情であるという点は間違いないでしょう。

これからの「新秩序」とは?

もちろん、国際関係を読むうえでは、さまざまな国のさまざまな視点、利害、価値観がぶつかり合うため、これらの変数をすべて考慮に入れながら慎重に読み解いていく必要があることは間違いありません。

しかし、それと同時に、国といってもしょせんは人間の集合体でもありますし、人間関係は「好き」「嫌い」という、意外と単純な要素で大きく動くこともまた事実です。

日中両国は、次のとおり、驚くほど、基本的な価値をまったく共有していません。

自由主義と全体主義。

民主主義と独裁主義。

資本主義と共産主義。

平和主義と軍国主義。

法治主義と人治主義。

人権尊重と人権軽視。

ただ、日中はお互いにここまで徹底的に価値観で対立しているからこそ、むしろお互いを「仮想敵国」としつつも、「戦略的互恵関係」を目指す、という観点から協力できるのだと思います。なまじっか価値観を共有しているかに見えて共有していない韓国と異なり、中国の方がいっそのこと付き合いやすいのです。

最近だと、インターネットを中心に「中国のことはなんでもかんでも大嫌い」という人が、「中国を攻め滅ぼせ」「日中断交」などと叫んでいるようですが、私はこうした姿勢には共感しません。

先日の『「外交に関する世論調査」2018年最新版レビュー』でも触れたとおり、日本人の中国に対する親近感は非常に悪いのが実情ですが、気に入らないからといって相手国に攻め込んで滅ぼしてしまうようなことが許される時代ではありません。

ただ、その一方で「日中友好」を叫ぶあまり、中国の蛮行(人権弾圧、環境破壊、国際通商ルール無視、為替操作など)に目をつぶるべきだと主張する人もいますが、これも大きく間違っています。日中が共存するためには、中国に対し、主張すべきことはハッキリと主張すべきでしょう。

人間関係でいえば、日本と中国は絶対に「お友達」にはなれない関係ですが、しかし、それと同時に、「利害が対立する分野においては対立が先鋭化しないようにお互いに調整しつつ、利害が共通する分野では協議する」、そんな関係を目指すのが正解です。

それよりも、味方のふりをしながら後ろから弾を撃ってくるような国との関係の方がはるかに厄介だと考えています。それが具体的にどこの国を指しているのかは申し上げませんが(バレバレですが)、そのような国との関係を清算することもまた、日本外交が正常化するうえでは必要なことではないかと思うのです。

オマケ:「日本人は台湾が大好きです」

ついでに、数日前に共同通信が報じたこの記事についても紹介しておきましょう。

日台関係良好、台湾が日本人調査/74%「親しみ感じる」(2018/12/28 19:10付 共同通信より)

これは、「台北駐日経済文化代表処」、つまり台湾政府の事実上の駐日大使館が日本人を対象に実施した意識調査によると、「台湾に親しみを感じる」と答えた人が74%に上ったとする話題です。

台湾といえば、東日本大震災でまっさきに支援を申し出てくれた国でもありますし、また、気候温暖のためか、人々も親切であり、日本に対しても親近感を抱いているとされる国でもあります。ちなみに私自身も台湾には何度か行ったことがあるのですが、人々が本当に親切です。

また、台湾は総統や国会議員を直接選挙で選んでおり、中国本土と異なり、明らかに民主主義国でもあります。日本は中国とは基本的価値を共有していませんが、台湾とは非常に重要な価値を共有する関係にあります。

そして、どんな相手国であっても、その国と仲良くするかどうかは「価値」と「利益」という観点から議論すべきですし、台湾は間違いなく、「基本的価値」「戦略的利益」の両方を共有できる、日本にとって最も重要な隣国です。

私は個人的に、日本は中国に遠慮することなく、是非、台湾を国として認め、将来的には日台基本条約や日台安全保障条約などを締結するような関係になれればよいのに、と思っているのです。

新宿会計士:

View Comments (16)

  • South Koreaは来年、(自称)建国100周年。
    Communist Party of Chinaよりも歴史があるって言い張って殴られたい変態なのだろうか。。。
    しかし・・・自称ばっかの国だなぁ・・・自称〇〇は詐欺師の常套手段?・・・ボソッ

  • 私が望むのはたったひとつ。
    どこかの国で拒絶された艦旗を堂々と掲げて入港して欲しい。今はこれだけです。
    中国ほどの国がまさか近所の小童のような恥ずかしい振る舞いはしないとは思いますが。

    ただ気がかりなのは、過去の環太平洋合同演習中、海自が中国海軍からやたら攻撃的な気概を見せつけてきていたことがあったという点ですかね。あとはファーウェイ製品制限の影響でしょうか。

    私自身に反中意識はありませんが、油断できない相手という印象ですね。しかし自力で技術を産み出せないがゆえ、やり方次第では利害関係で上手に付き合える国であるというのは会計士様と同じ意見です。経済面と軍事面でお互いに切磋琢磨しながら磨いていける関係になれれば・・・・・というのが自分の理想ですね。

  • 「台湾加油!」と記事名のトップに書いておきながら、最後の段の「おまけ」で、台湾が出てくるのは
    あんまりな扱いだと笑いながら思いました。台湾も前回の選挙で、与党の力が及ばず、各所で国民党に逆転を許していますので、今後を心配しています。
    さて、上でも、にゅるす様が書いていますが、艦旗は堂々と上げていただきたいですね。
    中国と韓国の反日の比較ができそうです。もっとも、どうみても中国の方が、腹黒そうですが。

  • 「旧枢軸国の巻き返し」
    ドイツ 
    EUでの経済、政治的主導権を握り勢力拡大中

    日本 
    TPP環太平洋パートナーシップ協定発効、
    大東亜共栄圏とは看板はかわったが
    自由貿易、同価値観共栄圏実現へ

    新秩序、感慨深い。

      • PIGSの一角イタリア。
        欧州連合の問題点は新宿様のバックナンバーで確認されたし。

        台湾加油、そしてTPP台湾加盟~希望
        日本、脱亜入洋(インド・太平洋、海洋同盟)

  • 更新ありがとうございます。

    私も台湾との関係は改善して欲しいです。今の中途半端といえば語弊がありますが、日本台湾と国交を正式に樹立して頂きたい。

    中国になぜそれほど気を遣うのか。1972年の日中友好(条約締結は78年)、それも米国 ニクソン大統領の訪中で、(電撃的に決まったと言われる)米中関係改善に乗り遅れまいとする当時の状況は身を以て知ってますが、今のように忖度するものでは無かったです(やっぱ角さんみたいな小卒では無理だったか。学歴を言ってるのでは無く経験値が低い。視野が狭い。考えが浅はか。ゼニ勘定で動く)。

    アジアの覇権を独り占めする魂胆の非常識な中国には、一定の歯止めが必要です。低コスト(今は違うが)で経営さえ上手くいけば、なんでもいいと判断した日本企業、経営者らは、今こそ考え直すラストチャンス。

    シナの膨張主義、覇権主義には素直に応じず、日本を封じ込めようとする国家の主権についても考え直して貰いたい。中国製品クラスなど、東南アジアで幾らでも調達出来る。

    はっきり言って、中国共産党政権は敵国です。いや、そもそも日本が開国以来、良好な関係だった事など、中国の無政府状態も一因だが、ほとんどありません。まだ今のほうがマシなぐらい。

    中国はウマが合うとか、なかよしではないが、利益は共有出来る一つのパートナー。もし台湾との友好で制裁を科すなら、日本も同様に対応しましょう。

    • 公式に戦ってもいないのに戦勝国面する中共には呆れさせられますよね
      自分は中華人民共和国の事を中国とは呼びません、中共で通してます
      中華民国台湾も中国ですからね。

      台湾は自分もここ10年ほど年3回ペースで遊びに行っております
      民宿を中心に友達も沢山できました。
      都会は別として、田舎に行けば日本統治時代の面影が沢山残ってて
      人柄、食べ物等(特にコメ)、非常に似通ってるなぁって思います。
      台湾東部の食堂なんかにフラッ立ち寄ると、焼き魚定食とかもありますからねぇ。
      田舎の割と高齢の方は独立志向が強いように思えます。
      反対に都会は中年以下の若い人たちは宥和指向が強いようですね。
      日本とは人的文化的に融和したい、でも経済では中共に…ですね。
      パスポートには中華民国と書いてあるんですけどね。

      ただ台湾は、蒋介石に岸信介が国連残留を勧めたのに
      大望捨てきれず脱退しちゃいましたからねぇ。
      蒋介石にしてみれば文革で中共は終わるとでも
      思ってたんでしょうなぁ。

      散文失礼しました。

  • 台湾って国なんですか?地域なんですか?

    どこかで、「サンフランシスコ講和条約において日本は台湾の施政権のみ放棄したのであり、所有領土権は放棄していない。従って、台湾の国土を防衛する義務は日本にある」って記事を読んだ気がします。

    そんなだから、昔の世界地図には、樺太・千島・台湾・沖縄ほかの白塗り地域が存在したのですね。

    沖縄は、アメリカの統治から復帰しました。
    それならば、台湾も住民投票等を経て日本に編入復帰される可能性もなきにしもあらずなのでしょうか?

    中国からの執拗な干渉から解き放たれ、一日でも早く、周辺諸国と平和国交を樹立できる日の訪れを願います。

    • カズ様
      読まれた記事とは異なると思いますが、元になる内容は以下と思われます。
      【台湾民政府(中華民国桃園市にある政治団体:Wikipediaより)】のページリンク
      http://usmgtcg.ning.com/forum/topics/6473745:Topic:128673
      冷戦時代は仕方がなかったのかも知れないが、中共を甘やした米国の過失・・・とまでは言いませんが、将来展望の見誤りがこのような状況を作ったと個人的には思ってます。

    • きゅ 様 にゅるす 様

      レスポンスありがとうございました。

      現状では、米国・台湾が呼吸を合わせ、独立に向けて本気で立ち上がる。又は、中華人民共和国が民主化するのを待つより仕方ないのですね。

      理解しました。

  • 台湾は国ではありません。香港と同様、一応中国の統治下ということになっています。
    日本も中共のその言い分を受け入れてしまってますので今さらひっくり返せません。

    中共は台湾を自分の統治国だとして「ひとつの中国」を謳い、台湾は独立を訴えて現在も紛争下にあります。そのため日本が台湾を国として認めてしまうと中国との関係が大きくこじれる上、台湾本土が中共による実効支配を受ける危険を孕みます。もしそれが原因で台湾で大量の血が流れる事態になれば、当然日本は国際社会からの非難の的になることでしょう。メリットとデメリットを考えた時、台湾は今のままが一番なんですよ。

    香港にも独立派がいましたが、中共を恐れた香港政府によって動きを封じられてしまいました。
    カズ様の(私もですが)願いが叶うには、少なくても中国が民主主義化するまで待つしかなさそうです…
    台湾加油!(涙)

  • >最近だと、インターネットを中心に「中国のことはなんでもかんでも大嫌い」という人が、「中国を攻め滅ぼせ」「日中断交」などと叫んでいるようですが、私はこうした姿勢には共感しません。

    私も共感しません。
    ただ考えてみると、私が物心ついた1970年台後半は全国的に中国ウエルカムな雰囲気であったと思います。
    パンダ、日テレドラマ西遊記、NHKドキュメンタリーシルクロード、YMOを筆頭にドリフターズが声優をやった人形劇やその他、中国モチーフのものが人気を博していて日々接していました。

    なので私の対中国感の遷移は、
    文化的に興味深いが経済は眠れる獅子
    →経済が好転してきてるようだ(万元戸のころ)
    →経済が爆発しアメリカのライバルに。反日も爆発(21世紀)
    こうなります。
    なので「中国のことはなんでもかんでも大嫌い」とはなりません。(もちろん反日行為や尖閣諸島問題含めそういうのは大反対です)

    他方、10代20代の方は中国の悪いイメージしか体験してないので、「中国のことはなんでもかんでも大嫌い」となってもまぁ不思議じゃないだろうなと思います。

    • 中共嫌いな私にも、唯一あの国で尊敬できる人物がいます
      もちろんとうに亡くなってますが、名を周恩来と言います。
      もっとも名前くらいはご存知でしょうが。

      史料は玉石混淆ですが、ネット上にあらゆる言語で沢山あります
      戦中、戦後、そして文革、大陸の事が台湾も含め同時に勉強できますよ。

      • おそらく気分を害されたんですよね。
        反論されているのでしょうが、私は10代20代の方は「かならず」中国全てが嫌いと断定しているのではありません。
        もっとも私の書き込みを読んでご理解はいただけているでしょうが。しかし怒りのほうが先に来て書き込まれたのでしょうかね。
        尊敬する人物を持てることはとても素晴らしいことだと思いますよ。

  • 台湾に関しましては、中国の立場も考慮しつつ民間レベルでは非常にうまく回っています。
    ここで、台湾を中国の別国として日台基本条約など結んでも誰も得しません。
    中国を敵に回し、安全面、経済面で大打撃です。
    ゆえに、残念ながら日台基本条約などは中国との仲が断交レベルにならないかぎりあり得ないことなのです。

    もちろん個人的な感情だけで言えば、台湾を正式に国として認めてあげたいですが、中国の影響があるかぎり台湾を国と認める国は今後も減って行くことでしょう。悲しいことですが。