これはさすがに「筋が違う」と思います。週末、産経ニュースと共同通信が、「韓国政府が日韓合意に基づく慰安婦財団を解散すると発表したことを受け、米国政府が日韓両国に協力を促した」と報じたのですが、文句を付けるべき相手は日韓合意を一方的に反故にしようとしている韓国政府であり、合意を100%履行した日本政府の方ではないからです。もっとも、これらの報道については、現段階で米国務省のホームページ上、原文を確認することはできませんでしたが、それでも安倍政権におかれては、韓国だけでなく米国に対してもキッチリと牽制するという努力をお願いしたいと思います。
2018/11/26 13:30 追記
①記事を改題しました。
- (改題前)産経・共同「米国が日米に歩み寄り促す」、韓国に言うべき
- (改題後)「米政府、日韓に歩み寄り促す」?それは「韓国に」言うべき
改題前だと主語、目的語が間違っていて、不適切なので、題名自体を変更しています。
②記事本文中で、「日韓」と書くべきところを「日米」と書いている箇所がありましたので修正しています。
推敲が足りないと、どうしてもこうなります。「猫好きおやじ」様、匿名のコメント主様、ご指摘を賜り大変ありがとうございました。
産経と共同、「米国が日韓協力促す」
週末、産経ニュースと共同通信に、相次いで気になる報道が掲載されています。
米政府、慰安婦財団解散で日韓の協力促す 対北朝鮮での連携弱体化を警戒(2018.11.24 11:02付 産経ニュースより)
米国務省、日韓に連携促す声明/慰安婦財団の解散で(2018/11/24 06:57付 共同通信より)
産経と共同で報じ方はやや違うのですが、共通点があるとすれば、どちらも韓国政府が慰安婦財団を解散する方針だと発表したことを受け、米国務省報道官が23日、「日韓両国に対して協力・連携を促した」とするものです。
産経ニュースでは「米国務省報道官」が「日韓政府が協力して慰安婦問題の解決に向け対処していくことを促す立場を改めて打ち出した」としつつ、次のような内容の「声明を発表」したとしています。
「米政府は長きにわたって全ての当事者に対し、歴史上の繊細な問題に関して癒やしと和解、相互信頼を促進する方向で取り組んでいくよう働きかけてきた」
一方、共同通信は「米国務省の報道担当者」が23日、「日韓両政府に連携して対応するよう促す声明」として、次のような声明を明らかにしたとしています。
「機微に関わる歴史的な問題に、癒やしと和解を促進し、相互の信頼を高めるような方法で取り組むよう全ての当事者に働き掛けている」
これについて、どう考えるべきでしょうか?
米国は「韓国政府だけに言え」
正直、米国務省が本当にこんな内容の発表をしたのならば、失望を禁じ得ません。
日本が慰安婦問題という「やってもいない罪」を事実上認める形で、韓国に対して譲歩したのが2015年12月の日韓慰安婦合意です。そして、その合意の裏には米国からの強い圧力があったという報道もあります(たとえば次の東洋経済オンラインの記事など)。
日韓最終合意の裏で米政府が進めてきたこと/米国は日韓の和解へ向け努力を重ねてきた(2016/01/10 6:01付 東洋経済オンラインより)
米国側に「日韓の和解に向けた努力」とやらがあったことは事実でしょうが、百歩譲ってその努力を認めるにしても、今回の動きは明らかに、韓国側が一方的にこの「日韓の和解へ向けた努力」を反故にするものです。文句は「日韓双方」に対してではなく、「韓国に対して」言うべき筋合いのものでしょう。
そして、そもそも論として、慰安婦問題は朝日新聞が捏造した記事をベースに、主に韓国側で
「①1941年12月8日から1945年8月15日の間、②日本軍が組織としての意思決定に基づき、③朝鮮半島で少女20万人を誘拐し、④戦場に強制連行して性的奴隷として使役した問題」
という与太話に仕立て上げられたものであり、その本質は過去、現在、未来に及ぶすべての日本人に対する誣告(ぶこく:ウソの罪の告発)であり、名誉棄損でもあります。
米国がこの問題でこれ以上、日本に譲歩を迫るなら、米国みずからが日米同盟を破壊しているのと同じことになります。
米国務省のウェブサイトに該当記事なし?
ただ、なにごとも原文を見て確認するのが理想的ですが、不思議なことに、米国務省のホームページを読みに行ったところ、これに該当する「声明文」(press release)のたぐいは確認できません。
産経と共同の2メディアによれば、日付は23日、発表者は米国務省の報道官、あるいは報道担当者と記載されています。
このことから、ヘザー・ナウアート(Heather Nauert)報道官が発言したのかと思い、プレス・ブリーフィングのページを読みに行ったのですが、ナウアート報道官による23日付の発言は確認できません。
もっとも、週末を挟んでいることと、現時点でまだ米国は日曜日の夜であることから、国務省のウェブサイトには該当記事がアップロードされていないだけかもしれませんが…。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、以前から当ウェブサイトをご愛読いただいている皆様であればお気付きだと思いますが、日韓関係の見直しには米国との話し合いが必要です。
今回、韓国政府が慰安婦財団を解散すると発表したこと自体、日韓関係に深刻な打撃をもたらしたことは事実ですが、それと同時に、日本の方から「日韓断交だ!」などと叫ぶことはできません。建前上は、日米韓3ヵ国連携が重要だとされているからです。
もっとも、韓国政府は38度線上の哨戒所を撤去するなど、北朝鮮に対する武装解除の作業を勝手に進めており(『北朝鮮に呑まれる韓国:本気で日韓の往来制限も検討すべき?』)、こんな国は北朝鮮と対峙するうえで信頼できる相手ではありません。
私自身、米国政府がマトモならば、すでに韓国を「連携相手」とは見ていないはずだと信じたいところですが、ただ、現在の米国政府(あるいはドナルド・J・トランプ大統領)の行動を見ていると、いまだに韓国を同盟相手として信頼している節があるのが気がかりな点です。
いずれにせよ、日本政府は現在、慰安婦合意を巡っては韓国政府に対して「合意の着実な実施が必要だ」と言い続けている状況ですが、いつでも経済制裁措置を発動できるように準備するとともに、米国に対する根回しもしっかりとしてほしいと思います。
View Comments (27)
アメリカの立場からしたら、仲立ちしたとはいえ第三者だしね。
あの性質でもって反日のエネルギーを反米に持ってこられても迷惑だし面倒だしね。
韓国に逆ギレされてとばっちり受けたくない、でしょ。
アメリカがちゃんと韓国を叱れよってのは甘えよね。
韓国をなだめようと日本に大人の対応を迫ることをしなかっただけで感謝。
オバマを思えば。
日本だって、国益害してまで先生役やりたくないよ。
原爆の正当性の件もあり、アメリカとしては日本の主張する歴史は肯定し難いのでしょう。
もう一つ恐らくは、韓国側の長年の周到なロビーの積み重ねにより
アメリカ政府内にも韓国の主張する捏造史を支持する人の方が多いんじゃと思われます。
よってアメリカの言い草には、『お前が悪いんじゃ、頭下げて金払って許しを請わんかい』
という意味もかなりこもってると思います。
アメリカは一枚岩ではありません。
民主党(日本に原爆投下)は仰る通りかもしれませんが、共和党は日本への原爆投下に反対した政党です。
アメリカ国内の様々な意見を考察する必要はありませんか?
いやいやどうも^^
気が短いせいか、煮え切らん我が政府みてると
イライラが募って感情的になり、キーボードに
叩きつけがちです。
私もおっしゃるとおりだと思いますよ。
ただ、日本政府も頑張ってロビーするべきだと思います。
そういう連中の地道な努力(彼らにとって)が
今実を結んでるからこそ、膠着状態が続いてるのでは?
と思ってる次第です。
韓国系の場合、たとえ一般人であっても韓国政府の肝いりってのが多いです
日系人と違って、積極的にアメリカの政治に関わろうとします。
日系人はアメリカでは、WW2の敵性移民扱いもあり
未だに政治に積極的ではないと聞きます。
毎々の執筆、ありがとうございます。
結局、米国は米韓・日米韓 関係をどうしたいのでしょう?
想像することしか出来ないのですが、韓国に米軍(=国連軍)を駐留させ続けるために、
韓国へ甘い反応せざるを得ないのかな。とも思えますし、
撤収の準備待ちなのかな。とも思えます。
撤収させるには、恐らく日本の憲法改正(9条問題)が絡んでくるでしょうし、
その上で国境警備のあり方を変えていかなければならないでしょう。
失礼しました。
その通りだと思います。米国は韓国を何としてもブルーチームに留めて置きたい、そのためには少々の負担や犠牲はやむを得ない、それらは日本に被せるのが一番楽だし、いということでしょう。
この辺り、しつこいくらい書いてきたのでもう書きませんが、憲法改正、早く実現させたい! とだけ叫びます。
更新ありがとうございます。
例えば米中軋轢について、日本は当然アメリカサイドにいるわけですが、もし何か声明を出すとして一方的かつ名指しで中国を責めるようなことができるかといえば、否です。
それが外交というものではないでしょうか。
アメリカが韓国を疎ましく思っているであろうことは様々な状況証拠から推測できますが、現段階では一方的に関係を切るということはないでしょう。アメリカにとって韓国は「いざとなればどうにでもできるレベルの国」であるからこそ、鬱陶しいことは適当にあしらいつつ、「関係しておくこと」によって得られるメリットを簡単には手放さないと思われます。
1951年に、ダレス国務長官を通じてアメリカから再軍備の強い要請を受けたとき、日本はきっぱりと拒否しています。もちろん、ここで拒否したことが後々複雑な状況を生んでいくわけですが、それはともかくとして、日本はアメリカにけっして「NOと言えないわけではない」と私は思うのです。
韓国との様々な関係の裏にアメリカからの圧力があったのかどうか、あったとしたらどのようなものだったのか──そのあたりは今後歴史が詳らかにしていくでしょう。しかし、日本がその圧力を甘受したのだとすれば、それはただ圧力に負けたということではなく、日本にもメリットがあるとの判断が働いたからでしょう。あるいは別な形で「そうすべきだ」との判断があったからでしょう。あくまでも日本自身の責任においてそうしたわけです。これでアメリカを責めるとしたら、まるでお隣の国と同じになってしまいます。
アメリカでも、ルトワック氏のような戦略的頭脳にあたる人々は、日韓の「構図」を理解しています。わかっている人はわかっているということです。それさえ、こちらから期待すべきことではないと思いますが、ただ、「頭脳」というべき人の推論や判断と、国としての対外的な声明とは別のところにあると考えるべきでしょう。
アメリカの公式声明による「韓国成敗」を期待すべきではないと私は思います。
歴史の真実がどうあれ、
最終的かつ不可逆的に解決済みであることは事実で、
この合意を履行することにあたっては、アメリカは韓国に履行を求めるべき立場のはず。
最終的かつ不可逆的→納得できないからムービングゴールポスト
ってなんやねん…。
日本はもう、何の約束も合意も韓国とはできない。たとえアメリカの圧力があろうとも。
だって無駄だもの。
どうせゴールポスト動くし。
産経新聞の記事によると、
米国は「歴史上の繊細な問題に関して癒やしと和解、相互信頼を促進する方向で取り組んでいくよう働きかけてきた」とあり、今までの日韓2国に対する米国の対応について述べているだけです。
ところが、中央日報の記事を見ると、書いている内容は産経とそれほど変わりがないのに、米国が韓国側の肩を持っていると思わせるようなタイトルになっている点に非常に違和感があります。
「米国務省、韓日に和解・癒やし財団解散に協力して対処するよう要求」
https://japanese.joins.com/article/470/247470.html?servcode=A00§code=A10
中央日報2018年11月26日06時34分
日本は韓国に和解・癒やし財団解散に協力するなどと一言も言っていません。中央日報による意図的な情報歪曲です。
こうやって誤った情報を擦り込んでいく韓国メデイアの姿勢にいつもあきれます。
新宿会計士様
記事の何ヵ所か「日韓」と書くべきところが「日米」になってます。
それはそうとして、このニュースがフェイクでなければ日韓両国に対して「合意を破棄するようなことだけはくれぐれもしないでくれよ」くらいのニュアンスであって欲しいですね。
それでもやるべきことをやっている日本が言われる筋合いはありませんよね。
今後も日本の対応がぶれないことを祈るばかりです。
匿名のコメント主様
コメントありがとうございます。また、貴重なご指摘、大変ありがとうございました。
さっそく修正致します。
引き続きご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
他の投稿にも書いていますが、いつもだったら、日本に一方的に歩み寄れというアメリカが、今回は双方に歩み寄れなので、十分日本よりの回答です。アメリカさんに韓国を叱ってもらおうと期待するとは、日本の甘えです。
今回はアメリカが不干渉宣言をしているので、日本はフリーハンドで解決すべきです。
本当に声明発表があったかどうかは別として、余所から見ると所詮は他人の喧嘩ですので、「また日韓がなんか揉めてるなあ」くらいにしか感じないのかもしれないですね。
政府はアメリカをあてにせず、かつ対外的にも、きっちり言うべきことは言ってほしいですね。
すみません表題ですが
産経・共同「米国が日米に歩み寄り促す」、韓国に言うべき…でしょうか?
産経・共同「米国が日『韓』に歩み寄り促す」、韓国に言うべき…?
匿名のコメント主様
コメントありがとうございます。また、貴重なご指摘、大変ありがとうございました。
さっそく改題致します。
引き続きご愛読並びにお気軽なコメントを賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。