昨日は朝日新聞の植村隆・元記者が外国特派員協会で記者会見を行いました。正直、とうてい正視に耐える代物ではありませんが、それでも「言論の主張を訴訟に持ち込むことの愚かしさ」について考えたいと思ったので、頑張って視聴してみました。結論的には、まさに乾いた笑いしか出てきませんが、そもそも論として「言論」とはいったい何なのか、「文章」とはいったい何なのかについての考察にお付き合いくださると幸いです。
2018/11/16 18:49付 追記
文中に誤植がありましたので修正しております。
- (誤)それは植村元記者が改憲で自身を「植村」と呼称している
- (正)それは植村元記者が会見で自身を「植村」と呼称している
読者の皆様、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
目次
植村元記者の外国人特派員協会での記者会見
植村隆・元朝日新聞記者が櫻井よしこ氏や出版社3社を相手取り、名誉棄損で起こした訴訟で敗訴した件は、すでに先週、当ウェブサイトでも『【速報】慰安婦問題・植村元記者の「捏造」主張を地裁が却下』で取り上げています。
この裁判を受けて、植村元記者側が昨日、櫻井よしこ氏側が本日、いずれも東京都千代田区の「外国特派員協会」で記者会見を行っています。いずれの記者会見についても『THE PAGE(ザ・ページ)』というサイトが、動画サイト『YouTube』で会見の模様をライブ配信しています。
ただ、本日取り上げるのは、植村元記者の方の会見です。
これについては文字の全文書き起こしが『Yahoo!ニュース』にも掲載されているので、読んだという方もいらっしゃるでしょう。
元朝日新聞記者・植村隆氏が記者会見(全文1)言論の戦いに勝ち、判決で負けた(2018/11/15(木) 18:09付 Yahoo!ニュースより)
元朝日新聞記者・植村隆氏が記者会見(全文2完)元慰安婦の証言は#MeToo運動の始まり(2018/11/15(木) 18:34付 Yahoo!ニュースより)
植村元記者は、いったい何を話したのでしょうか?
乾いた笑いしか出てこない
植村元記者の話した内容のなかで、私が気になった部分をいくつかピックアップし、文意を変えない範囲で文章を整えると、次のとおりです(なお、文中「植村」と呼び捨てになっている箇所がありますが、それは植村元記者が会見で自身を「植村」と呼称している部分に対応しています)。
- 今回の判決は不当判決であり、私は高裁で逆転を目指す
- 私が1991年に執筆した朝鮮人元慰安婦の記事を櫻井(よしこ)氏が捏造とレッテル張りした結果、内定していた大学教授の就職の道を絶たれ、非常勤講師として勤務していた別の大学への攻撃や、娘を殺害するなどの脅迫状が送られるようになるなど、植村への激しいバッシングが起きた
- 9日の判決では、櫻井氏が私の社会的な評価を低下させたと認定したし、私の記者が捏造だという認定はしていないが、(それでも植村元記者が)捏造を行ったと信じても仕方がないという判断で櫻井氏の責任を免除した
- 櫻井氏は私の記事を捏造と書くにあたって、私への取材も、当時の私の勤務先である朝日新聞社への取材も、朝鮮人元従軍慰安婦の聞き取り調査をしていた韓国側団体への取材もしていない
- 私は言論人、ジャーナリストとして、言論の自由が最も大切だということを認識しているが、それは事実に基づく、事実に基づいた取材を土台にしたものであることが当然であり、ウソやインチキを基にして一方的に他人を攻撃する言論の自由があるべきではないと思っている
…。
正直、読んでいて頭がクラクラします。
植村元記者はまた、1993年8月4日に、当時の内閣官房長官だった河野洋平が独断で発出した、いわゆる『河野談話』を根拠に、「慰安婦問題には軍が関与していたということを、日本政府も認めている」などと述べています(※残念ながら、この部分は事実です)。
ただ、植村元記者は、肝心の「軍による強制性」がウソであるという事実については、徹底的に逃げています。それどころか、植村元記者は櫻井氏の言説を間接的に「ウソやインチキ」と呼んで攻撃しているのですが、もはや乾いた笑いしか出て来ません。
慰安婦問題は捏造である!
改めて繰り返しておきます。
国際社会における慰安婦問題とは、
「①1941年12月9日から1945年8月15日の期間、②日本軍が組織としての意思決定に基づき、③朝鮮半島で少女のみ20万人を誘拐し、④戦場に強制連行して性的奴隷として使役したこと」
です。この①~④のどれが欠けても、「慰安婦問題」は成立しません。
ところが、自称元慰安婦の証言を辿って行くと、まず①の部分で著しい不整合が発生している証言(たとえば、「ジープで連れて行かれた」だの、「1948年に従軍慰安婦にされた」だのといった証言)が多数存在するという事実を忘れてはなりません。
次に、②については、日本軍が組織として意思決定を行ったのであれば、なぜ命令書がただの1枚も残っていないのでしょうか?なぜ米軍側にも「日本軍が組織としての意思決定を行った証拠」が1枚も押収されていないのでしょうか?
さらに③については、不自然を通り越して奇怪です。少女20万人といえば、当時の朝鮮半島の人口(2000万人)の1%に相当しますし、少女20万人が誘拐されるのを、当時の朝鮮の男たちは、父は、兄は、弟は、むざむざ見過ごしていたのでしょうか?
そして④については、戦況が次第に悪くなる中で、日本軍が20万人の性奴隷を戦地に運ぶために、貴重な輸送手段を使ったとでも言うのでしょうか?
以上、慰安婦問題については自然に考えて与太話のたぐいだとわかります。
取材しないと反論してはならない?そんなわけないでしょう!
植村元記者の主張には、深刻な問題点がほかにもあります。たとえば、櫻井よしこ氏が「私にも朝日新聞社にも取材をしないで捏造だと断定した」と批判していますが、この主張は、植村元記者が新聞記者出身でありながら言論の基本を理解していないという証拠です。
言論空間では、いちど世に出した文章は独り歩きします。そして、その文章に書かれてある内容がすべてであり、その文章が間違っていると思えば、「その文章に書かれてある内容をもとに、その文章が間違っている根拠」を指摘すればそれでお終いです。
極端な話、わざわざ書いた本人に確認を取る必要などありません。
逆に言えば、その文章を批判するときに、いちいち、「あなたが執筆した内容は、こういう意味ですね?」「あなたの記事を批判しますけど、良いですか?」といった確認を取る必要などありません。植村元記者が主張しているのは、「批判するならいちいち事前承諾を取れ」という、非常に無理筋な要求なのです。
もちろん、批判する側が論拠もろくに示さず、感情的に反発しているようであれば、それは反論になっていません。また、自分が執筆した文章が批判されれば、その批判に対し、言論空間で再反論するのも自由です。これが「言論の自由」の本当の意味です。
だいいち、植村元記者も新聞記者を務めていたのであれば、そんな基本的なことも理解していないはずがありません。言論人ならば、自分が主張した内容が批判される可能性に、もう少し意識を向ける必要があったでしょう。だからこそ、「物書き」であればなおのこと、文章や言葉を大切にしなければなりません。
言論を裁判で封殺しようとする愚劣さ
いずれにせよ、植村隆元記者の主張、要求にはかなりの無理があります。今回の訴訟では植村元記者の側に100人を超える弁護士が付いたのだそうですが、それでも裁判所が「名誉棄損」を認めなかったことを私は素直に評価したいと思います。
あくまでも私見ですが、訴訟では植村元記者の要求は基本的に退けられましたが、これは別に「櫻井よしこ氏の主張が正しい」「植村元記者の主張が間違っている」という意味ではありません。
「言論の世界の話を、裁判に持ち込むな」、という裁判所からの要求でしょう。
普段から「言論の自由が大切だ」と騙る朝日新聞の出身者が、自分が言論で敗けそうになっているときに、裁判という国家権力にすがるのもどうかと思います。
それに、名誉棄損が成立するとしたら、たとえば、一般の社会生活を営んでいる人に対し、インターネット掲示板などで「XX市に住むXXという人物は妻子ある身でありながら浮気をしている」といった根も葉もない噂話を書き込むようなケースです。
しかし、植村元記者は、当時は新聞記者という立場にあり、新聞記事を書くことを職業としていた人物です。つまり、言論空間に身を置いている時点で、自身の言論活動を批判されることには、「名誉棄損」はそもそも成立しません。
もちろん、櫻井氏が植村元記者に対し、その言論活動とまったく関係がない私生活に関する根も葉もないウソを垂れ流したのならば話は別ですが、私が見る限り、おそらくそのような事実はありません。
したがって、札幌地裁の「植村元記者の記事が事実と異なると櫻井氏が信じたことには相当の理由がある」という結論付けは、「言論の世界で主張されている内容が、事実か、事実ではないか」、ではなく、「言論の世界のルールで戦っている限りは司法としては介入しませんよ」、という宣言と見るべきでしょう。
ただ、まだ控訴審が控えています。万が一、控訴審で櫻井氏が敗北すれば、それは「自由な言論」を「法律」で弾圧するという悪しき実例になりかねません。
本件訴訟については引き続き注視したいと思います。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ちなみに、もし櫻井氏の植村元記者に対する「名誉棄損」が成立するのならば、櫻井氏を呼び捨てにしたうえで「捏造した」と批判する次の『リテラ』の記事など、あきらかに櫻井よしこ氏に対する「名誉棄損」が成立して然るべきでしょう。
捏造したのは櫻井よしこのほうなのに…「慰安婦報道を捏造」と攻撃された元朝日記者・植村隆の名誉毀損裁判で不当判決(2018.11.11付 リテラより)
植村元記者を擁護する人たちは、このリテラの記事を一斉に攻撃しているのでしょうか?私が知る限り、植村元記者を擁護する勢力が、この『リテラ』の記事を批判したという話は聞きません。
世の中の「リベラル」だの、「サヨク」だの、ときとして「パヨク」だのと揶揄されるような人たちは、平気でこうしたダブル・スタンダードぶりを発揮します。
ちなみに私自身は世の中からは「保守派の論客」「嫌韓派」と思われているようですが、自分が納得できない記事については、できるだけ論拠を明らかにしたうえで、公然と批判することもあります。
たとえば、比較的「右派」と見られている産経ニュースに掲載された記事を批判したこともありますし(『通貨スワップと為替スワップを混同した産経記事に反論する』)、世の中の嫌韓ブログを批判することはしょっちゅうあります(『「震度ゼロ」での崩落が相次ぐ韓国社会の病理と嫌韓ブログ』参照)。
「他人のふりみてわがふり直せ」ではありませんが、私もウェブ言論の世界に身を置いている以上は、手前勝手なダブル・スタンダードにだけは陥らないように気を付けたいと思います。
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いつも拝見させていただいています。
簡単に
言論の自由には関与しませんという言葉には目から鱗です。
その通りです。
書いてあることをその通りだと信じるに値するものなら、書き手側の不手際です。
それをもって名誉毀損を訴えてはいけません。
指摘を受けたらすぐに訂正すればいいだけです。
櫻井氏はとるに足らないことも間違っていたと訂正したときいております。
日々の更新ありがとうございます。
植村氏と櫻井氏の会見を観ましたが、正直疲れました笑。
会計士様が
「言論の世界の話を、裁判に持ち込むな」
と言い放つのはごもっともな事でしょう。
また、海外特派員協会による司会者の、櫻井氏の紹介がまた酷いものでした。「歴史修正主義者」失笑。
それに対しての櫻井氏の冷静な返しが、
「歴史を書き換えようとしているのは、朝日新聞であり植村隆氏」。
私のTwitterの、博識フォロワーさんのお言葉を借りれば、
「 「歴史修正主義者」はrevisionist の日本語訳で、言葉が持つニュアンスが全然違いますね。
英語の「revisionist」は「ホロコースト否定論者」の事であり、欧米では絶対悪。日本の保守にrevisionistのレッテルを貼る外国人記者は、慰安婦問題をホロコーストと同列に並べようと企んでいるわけですね。 」
まぁ、酷いものです。
最近は、南朝鮮関連の話題が尽きず、日課の情報収集が手一杯になる程なのは、会計士様も閲覧される方々も同じ様ですね。
そんな折りに、本日の夕方、あの田村記者が相変わらず張り切って、日中「通貨」スワップ を懲りずに夕刊フジに記載された様で。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181116-00000009-ykf-soci
まさに執念です。
< 更新ありがとうございます。
< 植村隆氏、サイテーだな。言論人、新聞記者として。自分こそ、ええ加減な取材で得た物書き人の話と、韓国の嘘つき婆の言うことを元に記事をでっち上げたくせに。
< 朝鮮で20万人の若い女性を無理やり連行し、性奴隷にさせた旧大日本帝国陸軍、とやらの嘘っぱちを仕立てたのはオマエだろが。その当時、今は忸怩たる思いだが、私は朝日新聞を購読していた。それも大阪版だから、一番早く出ていたよッ。今でも横組みで細長い記事をよく覚えている。『何や?コレッ?本当か?』が最初に口から出た言葉。でも、やっぱり、大嘘だった。
< 「言論の自由が大切だ」と言うなら、言論で櫻井よしこ氏らに立ち向かえ。裁判に訴えるのは、方法が違う。もう、今はその顔の画像を見る限り『老いぼれ』で手記、反論など書けないんだろ。それと、日本国を貶めた罪、許しがたい。無国籍にしてやるから、北でも南でも好きな方に行け(笑)。
植村さんの顔つきの印象が以前とすごく変わられたのに驚きました。
慰安婦こと戦地売春婦問題で、否定派の最大の大物は元日大教授の秦郁彦ですが、植村隆も韓国人も全く彼には沈黙しているところを見ると、学術的な証拠を根拠に語る敵には手が出ないようですね。