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韓国が南北鉄道連結事業着工を強行したら米国はどう動くのか

いい加減、同じ国の話題ばかり取り上げるのもいかがなものかと思うのですが、それでも、どうしても取り上げておきたい話題を発見してしまいました。それは、韓国の文在寅(ぶん・ざいいん)政権が、米国の反対を押し切って、南北鉄道の連結工事の着工式を強行する構えを見せていることです。はたして韓国はこれを強行するのでしょうか?そして、かりに韓国がそのようにした場合、米国はいったいどういう対応を取るのでしょうか?日韓関係と並び、米韓関係についても目が離せない展開が続きそうです。

韓国政府、制裁違反の着工式を「準備中」

くどいようですが、当ウェブサイトは「韓国ウォッチング専門のサイト」ではありません。

『新宿会計士の政治経済評論』とあるとおり、政治、経済、金融など、幅広い話題を取り上げようという趣旨の「独立系ビジネス評論サイト」です。

それなのに、最近、韓国や朝鮮半島に関する話題が相次いでいます。見る人が見ると「韓国ウォッチング専門のサイトではないか」との疑いを抱いてしまうかもしれません。

ただ、「現実は小説より奇なり」という諺にもあるとおり、現在、朝鮮半島情勢が猛烈に動いているという状況にあります。つまり、ちょっと目を離している隙に、どんどんと状況が変わってしまうのです。

これに加えて、朝鮮半島情勢は、わが国の安全保障にも重大な影響を与えかねません。

こうした事情を考えるならば、「独立系ビジネス評論サイト」を名乗る当ウェブサイトとしても、どうしても朝鮮半島情勢に関心を払わざるを得ないのです。

さて、こうした前置きはどうでも良いとして、本日、米韓関係を破壊しかねないビッグ・ニューズをもう1つ発見してしまいました。

米朝協議延期 南北鉄道連結の着工式は「合意通り準備中」=韓国(2018/11/08 12:27付 聯合ニュース日本語版より)

リンク先は韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の記事ですが、これによると、韓国統一部の当局者は8日、南北の鉄道・道路の連結・整備に向けた着工式について、「(9月の南北首脳会談での)合意どおりに実施するよう準備中」だと記者団に明らかにしたそうです。

米国は韓国をも制裁すると警告していた!

この「南北鉄道連結」という話題については、当ウェブサイトでは『文在寅フランス訪問は大失敗 南北鉄道という新たな「火種」』という記事のなかですでに紹介した論点ですが、今回の記事はその続報だと考えて良いと思います。

聯合ニュースの報道を簡単にまとめると、概要は次のとおりです(※ただし、箇条書きに改めたほか、日本語表現については修正しています)。

  • 南北朝鮮は9月に平壌(へいじょう)で開いた首脳会談で、鉄道・道路の連結事業の着工式を年内に行うことで合意していた
  • また、10月に行われた南北閣僚級会談で、鉄道事業の現地共同調査を10月末から11月初旬の間に開始し、着工式を11月末から12月初旬までの間に行うことを取り決めている
  • もっとも、現地共同調査自体はまだ開始されていないが、米朝高官会談の日程が調整中であることとの前後関係で結びつけられるものでもないと当局者は述べている

では、これのいったい何が問題なのでしょうか?

実は、この「南北鉄道着工式」に先立って、先月、米国政府は「南北関係の改善は北朝鮮の核放棄と切り離して進展させることはできない」と述べ、韓国政府を強く牽制しています。

米国、南北鉄道着工合意に「制裁履行」(2018年10月17日07時21分付 中央日報日本語版より)

中央日報の報道によれば、南北朝鮮両国が10月15日における高官級会談で着工式を開くことに合意した当日、米国務省の報道官室関係者は、

我々はすべての加盟国が国連安全保障理事会決議によって禁止された分野別製品を含めた国連制裁を完全に履行することを期待する

と述べたのだそうですが、ここで、「すべての加盟国」が韓国を指していることは明らかです。

つまり、言い換えれば、「北の核放棄が実現していない段階で南北関係を進展させようとするのであれば、米国としては韓国に対してセカンダリー制裁を適用する可能性が高い」と警告した格好です。

また、実際、韓国政府(統一部や外交部)当局者は、今回の着工式に米国の了解が取れているのかどうかについて「回答しなかった」そうですが、「回答しない」とは、「米国の了解は取れておらず、韓国が一方的にそれを強行しようとしている」、という意味です。

米国で中間選挙終了!

ところで、米国では昨日、中間選挙が終わりました。

結果はすでに報じられているとおり、上院では改選後で共和党が過半数を維持したものの、下院では共和党が過半数を失うことで、上下両院で多数党が異なる「ねじれ議会」となったようです。

ただ、議会制民主主義を採用する日本と異なり、米国は大統領制の国です。

下院で過半数を失ったことで、ドナルド・J・トランプ大統領にとっては政権運営が厳しくなったことは間違いありませんが、それと同時に、米国では大統領就任後の中間選挙で政権党が敗北することはよくある話ですし、今回の選挙によってトランプ政権が退陣を余儀なくされるというものではありません。

むしろ、中間選挙が終わったことで、トランプ政権としては当面、選挙を気にしないでさまざまな政策を打ち出していくことができます。

(※余談ですが、メディアによっては共和党を「与党」、民主党を「野党」と呼んでいる場合もありますが、そもそもトランプ氏は共和党の「党首」でもありませんし、議会においても党議拘束などはほとんどありません。日本でいう「与野党」という感覚は正しくないでしょう。)

ということは、米朝関係を巡っても、中間選挙というタガが外れたため、今後はさまざまな動きが出て来る可能性がある、ということでしょう。

韓国に対する経済・金融はあるのか?

もちろん、現時点において北朝鮮の核問題をめぐって、米国が韓国に対し、何らかの制裁(セカンダリー・サンクション)を発動しているという事実はありません。

しかし、韓国は、外貨調達への依存度が高く、とくに通貨という面で脆弱な国でもあります。実際に米国が経済制裁を加えなくても、米国が「韓国を制裁するかもね」といえば、それだけで韓国から外貨が逃げていく可能性もあるでしょう。

実際、すでに米国政府は、財務省のウェブサイト上に設置された北朝鮮に関する警告サイトにおいて、わざわざ韓国語のPDFファイルを掲載していますが、これは韓国政府、韓国企業が国を挙げて北朝鮮制裁を破っているということを米国が問題視している証拠でしょう。

また、韓国が北朝鮮制裁を公然と破るのは、別に今回が初めてではありません。今年8月には、『韓国の北朝鮮産石炭密輸事件、韓国メディアの苦し紛れの説明』でも紹介したとおり、韓国が北朝鮮産の石炭を密輸入したという事件も発覚しています。

私自身は、米国は当時、あくまでも様子見をしていたにすぎないと考えていましたが、中間選挙も終わったので、もしかしたら近いうちに米国政府から何らかの動きがあるのかもしれません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

日韓関係を巡っては、10月11日の「旭日旗騒動」、10月30日の「徴用工判決」、そして近いうちに懸念されている「慰安婦財団解散」など、さまざまな動きが相次いでいます。

私は安易な「日韓断交論」に与するつもりはありませんが、それでも、日韓関係が韓国の不法行為のために断絶してしまう可能性には注意が必要だと考えています。

一方で、米韓関係を巡っても、これからさまざまな動きが予想されます。日韓関係と並んで米韓関係についても、しばらく目が離せない展開が続きそうです。

新宿会計士:

View Comments (12)

  • もしかして、ムンさん、9月のピョンヤン訪問で、ハニトラもしくは、それに準することをやられていないですか?ムンさんの行動がますます支離滅裂になったのはその頃からです。ピョンヤンに二泊もしていますからね。

  • 私は以前に「米国はどこまでも韓国を甘やかす。最終的に北朝鮮は中距離弾道ミサイルと小威力の核兵器の保有を許される」と書きました。

    遅ればせながらジェイソン・モーガン博士の著作を読んで、どうやら私が見る米国の対韓・対中姿勢は、ピューリタンに端を発するリベラル勢力の特徴であるようです。源流はピューリタンながら、その傲慢な独善的思想は、やがて資本主義の強欲な解釈を進め、反宗教・反国家・グローバリズムへと変容し、それにより共産主義とも共鳴し、ソ連の共産主義に抵抗し続けた日本を嫌悪し、中国・朝鮮には肩入れした、という説です。

    トランプの「アメリカ・ファースト」は反グローバリズム宣言であり、奇矯な言動にも関わらずトランプ大統領が保守層から強い支持があるのは、リベラルの危険性に保守層が気づいているからだという見立てには納得します。

    レーガン&中曽根、ブッシュ&小泉、トランプ&安倍と、米国が共和党政権の時に日本の政権は高い支持率で長期安定します。表面的には激しい経済摩擦があっても、根底のところで日本に対する親和性が強い共和党の方が日米関係が上手く行くのでしょう。

    その中韓に厳しいトランプ政権が、中間選挙を乗り切ってレームダック化を回避できた今後、米国は従来どおり厳しく中国の覇権国家への野望を阻止し、北朝鮮の非核化を推進するでしょう。そうなると、韓国が北を支援する行為も厳しい制裁対象になります。

    その辺りを文在寅が読めるとは思えません。徴用工裁判でも、事前に日本政府から散々警告を受けたのに無為無策でいたように、南北鉄道連結の着工式に関しても、米国からの事前警告を厳しく受け止めていないと思います。なあなあで既成事実化してしまえばこっちのものと考えているでしょう。民主党政権下の米国であればそれを許したはずです。

    もし文在寅が南北鉄道連結の着工式を執り行えば、いよいよ米国からのセカンダリー・サンクションが発動すると予測します。予測と言うより願望かもしれませんが、このカシオミニを賭けても(略)

    • トランプの狙いはセカンダリーサンクションじゃなくて、実は貿易赤字削減かも。理由はセカンダリーサンクションで実は韓国に対する貿易赤字削減策。韓国の銀行がドル交換を停止されたら貿易決済ができなくなり、必然的に対米輸出は不可能に。トランプ、とっても頭がいいのかも。

  • 中間選挙の結果を受けて、国の分断を防ぐ為にイランや北朝鮮と一戦交える可能性を考えてしまうのは浅はかでしょうか。いずれにしても韓国の立場は国際的に危うさを増す一方になりそうですね。

  • 何か、NBOの鈴置さんの記事通りに動いている気がします。日米との連携を破壊したいと言う文氏の思いが行動に表れている気が。

  • 文大統領は、今度はロシアとの会談で、北制裁解除の協力依頼ですね。そして中国との会談ですね。

    この会談の結果は、成否にかかわらず、「韓国崩壊への道標」となりそうです。

    統一コリアは「夢〔実体のないもの〕」だと、どうして気付かないのでしょうか?
    たとえ、形ばかりの連邦が成立したところで、武力とカネ〔経済〕を比べたら、武力に支配されるのは目に見えてると思うんだけど…。

    *****

    肝心の経済も、サムスン電子をはじめ、グローバル企業や銀行の資本を外資に握られているんだから、株主総会で企業分割や、本社移転が決議されたら、韓国には何が残るのでしょう?

    おそらく、自らの過ちを顧みることもなく、ただひたすらに非難を拡散させるばかりの「恨」が残るものと思われます。

    *****

    反米〔安全保障〕、反日〔経済問題〕に余念がない状況により、そろそろコリアリスクの回避を本気で考えるべきときなのでは…。

    事業投資の抑制、縮小、移転、譲渡、廃業等によるかかわりの清算は、言うまでもありませんが、何よりも優先されるべきは、「在韓邦人の生命」です。

    有事では無くとも、在韓邦人が暴動などの事件に巻き込まれるような事態があってはなりません。
    そのためには、韓国とのかかわりを冷静かつ確実にフェードアウトさせる必要があると考えます。

    在韓邦人〔4万人+旅行者2万人〕の皆さん。
    年末年始は、家族全員で里帰り〔帰国〕して、新年からはパパに単身赴任て頑張ってもらいませんか?

    これからのコリアはどんな事件でも発生し得る、危険な事態が予想されるので…。

  • 「韓国の親北・左派団体、ソウル都心で金正恩氏をたたえる集会」朝鮮日報
    http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/11/08/2018110800893.html

    Netflixで韓国版の「人狼」を見たんですけど、「諸外国に対抗するためには朝鮮の統一が必要云々…」なんて言ってるんですよね、韓国の国内情勢を見ていると現実がSFに追いついてしまうかもなんて妄想してしまいますね。

  • < 南北鉄道着工式をやろうとしたら、式当日に破壊工作が起きるよ。米国は北の工作員の仕業だと、声明出す(笑)。何とか事業を勝手にやらせたくない米国は、それぐらい秘密裡にやる。平成の盧溝橋事件だな〜(大笑)。案外、顔風貌の似ている日本人も関与してたりして(笑)。日米の勝利!

  • 中国は経済力を拡大してきて自信を付けている。ソ連が崩壊した後ロシアも経済力では中国以下に成り下がったし、オバマ政権を見ていて米は世界の警察官を止めたとも勘違いしている。
    戦後を縛って来た米ソの衰えを見て、あわよくば戦後体制制を引っ繰り返して、自分こそが盟主にと思っているのだろう。
    同様に韓国も対日本の戦後体制を引っ繰り返せる実力が付いたと思っている。
    どちらも既存の勢力に取って代わって新体制を築こうしていると言う意味では、革命を目指しているのかもしれない。
    従ってこのような革命勢力と日米欧のような旧体制勢力とが相容れることは難しいと思う。