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中央日報、「日韓が欧州で外交戦」?まさか!

本日、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、安倍晋三総理大臣と韓国の文在寅大統領が、あたかも欧州で「外交戦」を繰り広げたかのような記事が掲載されています。ただ、実情をきちんと分析すれば、そもそも欧州で行われたのは「外交戦」とは言えませんし、それどころか、ASEMが北朝鮮に対する最大限の圧力の維持で合意するなど、一方的に韓国が国際社会から嘲笑されて終わったという側面が強いように思えるのです。

2018/10/22 14:30 追記

この記事の末尾に、中央日報の最新記事を紹介する記載を追加しております。

欧州「外交戦」の戦果

「欧州を舞台に日韓外交戦」?まさか!

韓国では「欧州を舞台に日韓の外交戦が繰り広げられた」ことになっているようです。

文大統領と安倍首相、欧州で「対北制裁緩和vs強化」外交対決…成績は?(2018年10月22日07時30分付 中央日報日本語版より)

私自身の文責で要点をまとめてみれば、次の2点に集約できます。

  • 19日にベルギー・ブリュッセルで閉幕したアジア欧州会合(ASEM)の議長声明に、北朝鮮に対するCVID(※)方式の非核化を要求する文言が含まれたが、21日付の産経新聞は「日本の安倍晋三総理大臣が独仏首脳に協力を呼びかけるなど、緻密な働きかけがあった」と報じた
  • 一方、読売新聞は21日付の記事で、EU消息筋の情報として「北朝鮮を巡る温度差から、EU・韓国間で予定されていた共同声明の採択が見送られた」と報じたが、韓国大統領府関係者はこの報道を「明確な誤報」と否定している

(※CVIDとは、「完全な、検証可能な、かつ不可逆な方法での廃棄」(Complete, Verifiable and Irreversible Dismantlement)のこと。)

「日韓首脳対決」を伺わせる記事のタイトルであり、日本の産経、朝日、読売などの報道を引用し、韓国大統領府の関係者のコメントを付け加えたものですが、要約するとたった2行になってしまうほど中身がスカスカな記事でもあります。

それはともかく、この2行のポイントは、「ASEMが韓国・北朝鮮の主張ではなく、日本の主張を全面的に受け入れた」という点と、「せっかく韓国大統領が訪欧したのに、目に見える成果はほとんどなかった」という点にあります。

いずれにせよ、中央日報の記事のタイトルは、まるで欧州を舞台に日韓外交戦が繰り広げられたかのように誤読を誘発しますが、実態は日本側がつつがなく、引き続き北朝鮮に対するCVIDと引き換えにした最大限の圧力の継続を取り付けたというものが正解です。

ローマ教皇の訪朝?正気ですか?

その一方で、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の唯一の「成果」(?)といえば、北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)によるローマ教皇の北朝鮮訪問要請を伝達したことくらいでしょうか。ただ、それにしてもローマ教皇庁は現時点でコメントを控えているそうです。

ローマ法王、訪朝要請について検討 金委員長から招き受け(2018/10/19 10:09 JST付 CNNより)

もちろん、現在のローマ教皇フランスシスコは、多少変わった人物であるとも伝えられています。したがって、教皇が今回の文在寅氏のメッセージを真に受けて北朝鮮を訪問する可能性はゼロではありません。

ただ、常識的に考えて、宗教の自由も許されておらず、カトリック教会も事実上、存在していない北朝鮮を、カトリック教会のトップである教皇が訪問することは、全世界に対し誤ったメッセージを与える行動となりかねません。実際、リンク先のCNNも、

米シンクタンク、戦略国際問題研究所のマイケル・グリーン氏は、北朝鮮を「最悪の宗教抑圧国」と位置付け、「北朝鮮を訪問して金委員長と面会すれば、宗教の自由にとって世界最大の敵である指導者を正当化することになりかねない」と危惧する。

としており、また、最大で5万人のキリスト教徒が北朝鮮国内で強制収容所や再教育施設などに拘束されているとの見方もあるそうです。

北朝鮮は犯罪国家です!

麻薬、覚醒剤、拉致、大量破壊兵器

そもそも北朝鮮はいったいどういう国家なのでしょうか?

端的に言えば「犯罪国家」です。それも、国家ぐるみで非人道的、反社会的な犯罪を繰り返す無法集団です。

考えてみれば、北朝鮮による日本人拉致事件とは、北朝鮮の工作員が日本国内に密入国し、罪もない日本人を暴力的な方法で誘拐し、北朝鮮に拉致して返さないという組織的な誘拐であり、とんでもない犯罪行為です。しかし、北朝鮮による犯罪は、これに留まりません。

北朝鮮は昔から麻薬や覚醒剤を製造しており、とくに、「瀬取り」(小型船などを使い日本近海に近付いて、日本国内の暴力団関係者らが小型遊漁船などを使ってそれらを受け取り、日本に密輸するなどの手口)はあまりにも有名です。

また、ニューズウィーク日本語版によれば、北朝鮮は国家ぐるみで保険金詐欺を繰り返しており、数百人が死亡するような大規模な事故を多発させることで、海外の保険会社から毎年数十億円を荒稼ぎしている手口が紹介されています。

さらに、北朝鮮は核兵器だけでなく、さまざまな生物・化学兵器を開発して所持しているとの疑いもありますし、弾道ミサイルを使えば、核ミサイルだけではなく、生物・化学兵器を搭載して日本を攻撃することも可能です。

つまり、北朝鮮が核兵器をCVID方式で廃棄すれば問題は解決、ではないのです。

そもそも金正恩という残虐非道な独裁者が君臨している時点で、北朝鮮とは、自由と平和を愛する私たち人類にとっての敵なのです。

日本も中国もロシアも心もとない

そのように考えていけば、もし私たち世界の人類が本当に自由と平和を愛するならば、本来ならば北朝鮮に対する「最大限の圧力」でも生ぬるすぎます。人類の正義にかけて、北朝鮮、とくに金正恩という存在を地球上から除去しなければなりません。

ただ、残念ながら、現在の世界情勢は、必ずしも人類の正義に味方するとは限りません。

たとえば、日本は世界に冠たる自由・民主主義国家であり、石油などのめぼしい天然資源がないにも関わらず、平和主義を掲げて国民レベルでの高度な教育と努力により先進工業技術を磨き、世界第3位の経済大国として世界から尊敬されています。

しかし、そんな日本であっても、憲法第9条第2項などの制約もあるため、「北朝鮮を成敗するための戦争」というものを実施することが非常に困難です。

また、いまや世界第2位の経済大国となった中国は、自由・民主主義国家ではありません。

1991年に滅亡した旧ソ連と同じ、「共産党一党軍事独裁国家」です。金正恩は習近平(しゅう・きんぺい)政権とは仲が悪いようですが、それでも北朝鮮を「自由と民主主義の名において成敗する」という資格がある国ではありませんし、そうすることもないでしょう。

さらに、旧ソ連の後継国家であるロシアにしたって、見た目は民主主義国家ですが、実際にはプーチン大統領による事実上の独裁国家です。そして、ロシアは北朝鮮の核開発などを、特段、咎めるでもなく、むしろ公然と支援している節もあります。

韓国に自由民主主義国家を名乗る資格がないわけ

このように考えていけば、本来、

  • 軍事力の行使に制約が少ない
  • 自由民主主義国家陣営である

という意味で、北朝鮮の暴走を抑える最大の責任がある国とは、韓国です。

実際、大韓民国憲法を読むと、「大韓民国の領土は韓半島及びその付属島嶼とする。」と明記されています(同憲法第3条)。北の片割れが行っている国際的な犯罪行為を咎め、それをやめさせる責任は、本来ならば韓国にあるのです。

だいいち、法的にみれば、北朝鮮は韓国から見て、「わが大韓民国の北半分を不法占拠する犯罪者集団」であって、国家ではありません。ということは、法的な話からいえば、日本人拉致事件についても、これを解決する責任は大韓民国にあります。

では、日本人拉致事件の解決に向けて、韓国が少しでも日本政府に協力してくれたことがあったでしょうか?

たとえば、日本人拉致にかかわったとされる北朝鮮のスパイ・辛光洙(しん・こうしゅ)は、韓国国内で収監されていたものの、時の韓国大統領・金大中(きん・だいちゅう)が実施した恩赦により釈放され、信じられないことに、2000年9月に韓国から北朝鮮に送還されています。

北朝鮮では辛光洙の記念切手が発行されているという情報もありますが、この辛光洙釈放事件1つとってみても、韓国が日本人拉致事件を「大韓民国国民である金正日一味が発生させた犯罪である」と認識していないことは事実でしょう。

私に言わせれば、そんな韓国に「自由民主主義国家」を名乗る資格はないと思います。

「自由統一朝鮮」を幻想にした反日の罪

もっといえば、現在の韓国は北朝鮮に対し、軍事力でも経済力でも圧倒的な差を付けています。その気になれば、北朝鮮を軍事的に脅してでも吸収・統一すべきですし、「民族自決の原則」に従い、さすがに中国・ロシアなどの国際社会も、韓国による北朝鮮の統一に反対できません。

それなのに、統一しようと思えばできるはずの韓国が、なぜ北朝鮮の統一に踏み切れていないのでしょうか?

その理由は、「反日」で国を統合して来たという、韓国の罪深い歴史にあります。

本来、韓国がもっとも深刻に対決しなければならない相手は北朝鮮であり、日本ではありません。それなのに、韓国の歴代政府は、「日本を」最大の敵と位置付け、反日を煽ってきた節があります。日本は韓国に対し、何ら危害を加えないにも関わらず、です。

こうした歪んだ反日思想が、結局のところ韓国にとっての「敵」「味方」をきちんと区別する能力を、国民レベルで歪めてきたのだと思います。

しかし、いまさら韓国の反日を責めたところで意味はありません。ただ、事実として、現在の韓国が、間違いなく、「北朝鮮のCVID方式による非核化」という日本の利益を邪魔する勢力でしかないという点については、きちんと認識しておく必要はあるでしょう。

「半分の成功」(2018/10/22 14:30付追記)

ここから先は、2018/10/22 14:30付の追記です。

中央日報によると、文在寅氏の欧州歴訪は「半分の成功」だったのだそうです。

【社説】半分の成功にとどまった文大統領の欧州歴訪(2018年10月22日13時08分付 中央日報日本語版より)

私が追記前の本文で述べたとおり、どうもローマ教皇の北朝鮮訪問の招致が、「成功」なのだそうです。

今回の歴訪は文大統領が伝えた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の招請にローマ法王フランシスコが肯定的な反応を見せたという点では成功だ。

中央日報がそう思う理由は、この人物が米国とキューバの国交正常化などで大きな活躍をしたから、なのだそうです(ちなみに米国でオバマ前大統領が退任し、トランプ政権下で米国とキューバの関係が再び悪化しているという点を無視しているのはなぜでしょうか?)。

私に言わせれば、文在寅氏が欧州で北朝鮮への制裁緩和を訴えて、ほぼ無視された点を見るだけで、今回の文在寅氏の欧州歴訪は、良くて「成果なし」、下手すると「欧州諸国から韓国に対する不信感を持たれた」という意味で「マイナスの成果」だった可能性すらあります。

中央日報はこれについて、「(文在寅)政府の誤った状況認識のせいだ」、「韓国が引っ張っていけば北核問題はうまく解決するだろいうという考えは勘違いで傲慢だ」などと文在寅政権を批判していますが、果たして中央日報に現在の韓国政府を批判する資格があるのか、私には疑問です。

いずれにせよ、今回の文在寅氏の訪欧は、「半分の成功」というよりも「ハーグ密使事件の再来」のようなものであり、惨めな失敗というイメージが強いように思えてなりません。

新宿会計士:

View Comments (9)

  • アジア欧州会合(ASEM)と言う絶好のチャンスに、安倍晋三総理大臣が、これから行われる米国の韓国に対する経済制裁前の完璧な地ならしの役目を果たした、と理解しています。

    トランプさんも喜んでいるのでは?

  • わざわざバチカンに行き、韓国のことは全く話さず、ローマ法王が(ソウルではなく)平壌訪問に肯定的だった。それが韓国大統領の成果? ローマ法王が平壌行って朝鮮半島が平和になる、風邪吹けば桶屋が儲かる式だな・・・。

    もう一つ、北朝鮮への制裁緩和で日本と外交戦って、そんなことを報道してその意識が国民に浸透していけば、反日感情から制裁緩和の声が大きくなるだけでは? 

    中央日報って左派系でしたっけ? まあ、どっちでもいいけど。

  • 独断と偏見かもしれないとお断りして、コメントさせていただきます。

    韓国の文大統領にとって、今回のアジア欧州会合(ASEM)は(ある意味)
    少なくも失敗ではなかったのではないでしょうか。それは今回の目的が
    文大統領支持者の間で、「外交の天才の文大統領祭り」を続けるための
    もので、祭りの最中は(一時的でも)現実を忘れることが出来るからです。
    中央日報も祭りの熱気に配慮して、「半分の成功」と書いたのかもしれ
    ません。
    文大統領としても、朴前大統領を弾劾で(任期途中で)失職させたことで、
    自身も「任期途中で失職させることが出来る」との前例ができてしまっ
    たので、 祭りを続けるしかないのかもしれません。
    しかし、やがて経済問題という現実に直面せざるを得なくなります。そし
    たら、鳩山由紀夫と現職総理時代に、「韓国に、無条件、無制限の援助を
    行う」との秘密条約を結んだと言い出すんではないかと、考えるのは考え
    すぎでしょうか。(あの人なら、 目の前の文大統領に喜んでもらいたくて
    認めそうな気がします)

    駄文にて失礼しました。

  • < 韓国中央日報は、ASEMで『安倍 対 文』なんて構図は元々無いのに、無理やり引っ付けてニュース仕立てにしたんですね。なるほど、それで?結論は?

    < 【アジア欧州会合(ASEM)の議長声明に、北朝鮮に対するCVIDの非核化を要求する文言が含まれた】。日本側安倍首相の完勝やん。産経新聞は「日本の安倍晋三総理大臣が独仏首脳に協力を呼びかけるなど、緻密な働きかけがあった」と報じたそうですね。いったい韓国の特派員はドコを見て記事を書いてんの?妄想か。

    < 文は北朝鮮のことしか考えてません。フツ―の感覚ならこれだけ自国経済が地滑り、崩落しているのなら、一言でも欧州首脳に土下座外交して、緊急対策の一つや二つは打ちます。ところがノコノコ欧州旅行(大笑)。言った事は北朝鮮の段階的圧力を認めろって(笑)。文は『もう、来ることも無いから要人に会ってやろう』位の気持ちですか。

    < しかし、、愚劣な民族でありトップだな。こりゃ、あと何百年かはまだまだ大国に引っ付いて離れない民族のまんまですよ。国民に何とかしようという度量ナシ!あ~しょうもな。シッ!シッ!シッ!。近寄るな。

  • 成果が全く無かったはずですが、そうでは無いとの事実歪曲記事ですね。中央日報は得意ですから。

  •  > 北朝鮮の暴走を抑える最大の責任がある国とは、韓国です。

     ブログ主様のお言葉は全くその通りです。しかし、韓国人(あるいは北を含めた朝鮮人かも知れません)はその責任を全く理解していません。責任の存在は他者にあり、自ら責任を取ることはないのです。基本的に他人任せで、おいしい所だけを持っていく。「部下は俺の出世のためにいる」などと平気で吐く連中がゴロゴロいます(さすがにこのような輩は人心を失い孤立しますが、往々にしてしぶとく会社に居続けます)。
     ある時、不良品が流出してしまい、会社の責任問題に発展した時、上層部は一社員の首を切って責任を押し付けて解決したことがありました。日本人から見ると、少なくとも監督責任が存在するはずなのに、なぜにこの役員は平穏に会社に居るのか理解が出来ませんでした。小生から見ると「事業部長以下減給」程度の懲戒はあって然るべきであり、一社員全てに被せるのはあり得まえん(顧客の方もそれで納得したのは解せません)。日本では捺印の習慣があり、責任者か誰なのか明確になります。ここでは、決済をする人間はいますが、それは社内だけの事であり、社外に決済者の名前が出ていくことは殆どありません。しかし、良いことがあれば、その社員の上司は自分だとしゃしゃり出てくる。下の者はやってられません。
     ここは職位が下に行けば行くほど、安月給で働きながら責任を取らされるという悲惨な状況になります。あの三星ですら平均勤続年数が5年程度であることを考えると、皆耐えきれないと感じんているのだと思います。

     駄文にて失礼いたします

  • この記事も面白かったです。

    https://japanese.joins.com/article/287/246287.html?servcode=A00&sectcode=A10
    政権変われば追及されるかも…「志願者ゼロ」ジャパンスクールの没落=韓国

    >外交部内で「ジャパンスクールの花」と呼ばれてきた北東アジア局長出身幹部が慰安婦合意に参加したり韓日軍事情報保護協定を担当したりしたという理由で、相次いで人事上の不利益を受けているところを目撃しながらこのような傾向は一層強まった。

    欧米では、”Shooting the messenger”というのは愚かな行為の表現であるとされています。
    https://en.wikipedia.org/wiki/Shooting_the_messenger

    An early literary citing of "shooting the messenger" is in Plutarch's Lives states: "The first messenger, that gave notice of Lucullus' coming was so far from pleasing Tigranes that, he had his head cut off for his pains; and no man dared to bring further information. Without any intelligence at all, Tigranes sat while war was already blazing around him, giving ear only to those who flattered him".
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    今の文大統領にはまさにこんな感じの取り巻きしかいなさそう。
    ローマ時代より現代の韓国は本当にヘルだぜ!!ってところでしょうか。

  • いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    >文大統領が伝えた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の招請にローマ法王フランシスコが肯定的な反応を見せたという点では成功だ。

    罪を許す事を知らない国の親玉から好き勝手に言われるとは・・・。

    ローマ教皇に心から同情申し上げます。
    ローマ教皇が隣人愛もなく、贖罪とも程遠い国である北朝鮮を訪問して何も意味はないでしょうに。