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北朝鮮石炭輸入問題、米国は「とりあえず様子見」なのか?(※2訂版)

韓国が国連安保理決議に違反して北朝鮮産の石炭を輸入していた問題を巡り、本日は、昨日の『北朝鮮石炭輸入問題受け、最悪、韓国の銀行への金融制裁も?』で言及しなかった記事、情報などを引用し、あらためてこの問題について状況を整理しておきたいと思います。

2018/08/12 12:15 追記

この記事についてはさきほど、全体的に見直しをし、表現の欠落・不足を補うなどしています。したがって、この記事はさきほど改題し、末尾に「2訂版」と銘打っています。

韓国政府の謎の言い訳

韓国による北朝鮮産石炭輸入事件

韓国で金曜日、韓国電力公社の子会社が国連安保理制裁決議に反し、北朝鮮産の石炭を輸入していたことが判明した話題については、当ウェブサイトでは昨日も『北朝鮮石炭輸入問題受け、最悪、韓国の銀行への金融制裁も?』のなかで報告しました。

この事件をごく簡単に振り返っておくと、韓国国内の業者が、北朝鮮産の石炭など3.5万トン(日本円換算で約6.5億円分)を、「ロシア産である」などと偽って違法に韓国国内に輸入し、韓国電力公社の子会社に販売していたとされるものです。

ただ、問題の石炭を購入していたのは、事実上の韓国政府の国有企業である韓国電力の子会社であり、韓国政府、韓国電力がこのことを感知していないとは考え辛いところです。これについて私は昨日の論考の中で、

韓国電力という、事実上の韓国の国有企業の子会社が、北朝鮮産であるという事実を知らずに石炭を購入するということは考え辛い。よって、北朝鮮産の石炭をロシア産と偽装して購入したことは、韓国が国ぐるみで行ったものである可能性が極めて濃厚だ

と主張。あわせて、今回、韓国関税庁が摘発した業者も、いわば、一種の「トカゲのしっぽ切り」である可能性を指摘しました。つまり、全責任を一部の業者に覆いかぶせ、韓国が国として米国から制裁を受けるということを避けようとしたものではないか、という仮説です。

本日はこの事件について、昨日拾いきれなかった情報を紹介しておきます。

韓国企業の謎の言い訳と「関与した企業」の範囲

最初に、金曜日に時事通信が報じた、次の記事を眺めてみましょう。

北朝鮮産石炭を不法輸入=業者摘発、6億円相当-韓国(2018/08/10-18:51付 時事通信より)

この記事には、次の下りが含まれています。

韓国関税庁は、北朝鮮産石炭の輸入は決議違反だと指摘しつつ、「積極的な捜査で制裁違反を確認した韓国を決議違反国と呼ぶことはできない」と主張した。

韓国関税庁が本当にこのように述べたのならば、私の予想は、極めて正解に近いと思います。要するに、「積極的な捜査で制裁違反を確認した」と言いながらも、事実上、韓国当局が摘発したのは「石炭を輸入した業者」に限られており、肝心の「石炭を購入していた韓国電力公社の子会社」については、一切「お咎めなし」だからです。

ただ、韓国政府のこの説明と、韓国電力の子会社に何1つとしてペナルティを与えなかったことに対し、米国側が納得するかどうかは、不透明です。

米国としては、北朝鮮の核・ミサイル関係での制裁は非常に広くとらえており、たとえば、国連安保理決議が採択する前の昨年8月の段階でも、中露両国の広範囲な企業、個人に対し、追加制裁(セカンダリー・サンクション)が科せられていることを忘れてはなりません(これについては次の日経の記事などもご参照ください)。

中ロ企業・個人に追加制裁 米、北朝鮮ミサイル関与で(2017/8/23 2:30付 日本経済新聞電子版より)

一方、今回の石炭密輸事件を巡っても、韓国が金曜日時点で「摘発」したのは、韓国人の個人3人と法人3社であり、また、運搬に関連した船舶に対する入港禁止措置などを発動したとしていますが、韓国電力の子会社に対しては何も制裁が科されていません。

この処分を巡って、私は大きく2つの疑問を感じます。

1つ目は、言うまでもなく、この3個人と3法人が単なる「スケープゴート」だったのではないか、という点です。実際には、韓国電力の関連法人がその石炭を購入していたわけですから、韓国電力グループともあろう組織が、「自分が買っている製品が北朝鮮産である」という事実を知らなかったことはあり得ません。

2つ目の疑問点は、北朝鮮産品を輸入したのは、今回摘発された業者だけではないのではないか、というものです。今回摘発された密輸案件は、金額ベースで日本円換算して6億円少々ですが、現実には、もっと多額の北朝鮮産品が輸入されている可能性は否定できません。

その意味で、私自身は今回の韓国政府・関税庁の発表については「単なる言い訳」に過ぎず、実は北朝鮮産品の密輸については、国ぐるみで、もっと大がかりに行われているのではないか、との疑念を強く抱いているのです。

米国の反応

ナウアート氏と記者との丁々発止

一方で、数日前には、米国務省(U.S. Dept. of State)のウェブサイトに、ヘザー・ナウアート報道官と記者との質疑が掲載されています。

Department Press Briefing – August 9, 2018(2018/08/09付 米国務省ウェブサイトより)

このなかで私が興味を感じたのは次の下りです。

QUESTION: Thank you, thank you, Heather. On North Korean and South Korean issues.

MS NAUERT: Okay.

QUESTION: And – recently, South Korea imported North Korean coal. What is the U.S. position on the smuggling of North Korean coal into South Korea? Is that – do you think this is the – South Korea has violated sanctions?

MS NAUERT: I think – we’d say this: that we have a great relationship with the Government of South Korea. My understanding is that they are looking into reports of this. We encourage all countries to maintain sanctions, and to not skirt sanctions and make sure that sanctions are adhered to.

QUESTION: But two days ago, John Bolton, national security advisor, and South Korean national security advisor Chung Eui-yong, they had telephone conversation and John Bolton said that he trust or believe in the South Korean Government. What does it mean that you trust the South Korean Government, so —

MS NAUERT: Well, the Government of the Republic of Korea is an ally and longstanding partner of ours, and we closely coordinate with that government.

QUESTION: But allies – but they do something behind the United States is smuggling something else, so how you going to trust them?

MS NAUERT: Look, we trust when they say that they will investigate that they will investigate. We closely coordinate with them. They’ve been longstanding allies and partners, and we have a strong relationship with them.

QUESTION: Are you still investigations or waiting —

MS NAUERT: I don’t have anything more for you on that, okay?

QUESTION: All right, thank you.

MS NAUERT: Thanks.

あえて臨場感を出すために、気になった下りをすべて抜粋してみましたが、この中核の部分に参考訳を付すと、次のとおりでしょうか。

(問)最近、南朝鮮が北朝鮮の石炭を輸入していたことが明らかになった。北朝鮮の石炭が南朝鮮へ密輸されていたことに関する米国の立場は?南朝鮮が制裁違反を犯したということか?

(答)米国政府は南朝鮮と緊密な協力関係にある。私の理解では彼らはこの詳細をこれから報告しようとしている。我々としてはすべての国が制裁を維持しなければならないと考えており、制裁逃れは許されない。

(問)2日前、ジョン・ボルトン大統領補佐官は南朝鮮の鄭義溶(てい・ぎよう)国家安全保障室長と電話会談を行い、ボルトン氏は南朝鮮政府を信頼していると述べた。南朝鮮政府を信頼するという意味は…

(答)南朝鮮政府は長年の同盟関係にあり、我々は彼らと密接な協力関係にある。

(問)しかしいくら同盟関係にあったとしても、彼らが合衆国に内緒で何らかを密輸していたとしても、彼らを信頼するのか?

(答)彼ら自身がこの問題について捜査を行っていることがその証拠だ。我々は彼らと緊密に協力する。彼らは長年の友好国であり、我々は彼らと強い関係を持っている。

これをどう見るべきでしょうか?

「同盟国」を繰り返した理由

ナウアート報道官の回答を読むと、やたらと「我々の長年の同盟国であり、パートナーだ (“an ally and longstanding partner of ours”) 」といった言葉が目につくのですが、これは、ナウアート氏が韓国(英語の原文では “South Korea” 、つまり「南朝鮮」)を友好国と見ている証拠でしょうか?

たしかにナウアート氏は韓国を「同盟国だ」と述べましたし、記者からの「ボルトン氏が南朝鮮(=韓国)政府を信頼していると述べたことはどう考えるべきか」といった質問に対しても、正面切って否定したりしていません。

しかし、これについては額面どおりに受け取るべきではありません。なぜなら、法的には米韓両国は同盟関係にあるため、「国務省の報道官」という重責を担っている以上、公式の立場としては「同盟国」「友好国」「パートナー」といった言葉を繰り返すより方法がないからです。

もちろん、ドナルド・J・トランプ米大統領が日本を「友人」と呼ぶのは、おそらく本心からでしょう。しかし、外交の現場においては、ときとして、政治家らが発言する内容を額面どおりに受け取るべきではないこともあります。

今回のケースはまさにその典型例だと私は思います。

もし私自身が米国務省や米財務省の担当者だったとすれば、実際に韓国に対する制裁を加えるとしても、いきなり大々的に制裁対象に指定するようなことはなく、最初は警告し、相手国の出方を見極めるのが自然でしょう。

制裁の可能性が否定されたわけではない

何より、韓国の場合は、すでに複数回、米国側から北朝鮮制裁違反を指摘されています。ということは、可能性としては、

  • ①完全に様子見をする
  • ②いきなり大々的に制裁するのではなく、牽制の意味も込めて、手始めに実質的な打撃が少ない形で象徴的に制裁を加える

という2つが考えられます。

たとえば、直接、北朝鮮産の石炭を購入していたのが韓国電力本体ではなく、あくまでもその子会社であることから、米国が「セカンダリー・サンクション」を科すとしても、最初はその子会社に対して適用される(つまり上記②でいう「実効性がない牽制」に留まる)という可能性は高いと思います。

ただ、何度も申し上げているとおり、韓国電力自体が韓国政府の事実上の子会社のようなものです。その韓国政府の強い影響下にある会社が、「北朝鮮産であることを知らずに石炭を購入した」ということは考え辛いのです。

このように考えていくならば、韓国電力自体に対して何らかの制裁措置が発動される可能性はゼロではありません。いや、昨日も指摘しましたが、もっと端的に、韓国電力の親会社である韓国開発銀行(KDB)に対して、遅かれ早かれ、金融制裁が科される可能性はあります。

この場合、韓国全体に対する影響は甚大です。下手をすると、1997年、2008年のような通貨危機が韓国に襲い掛かる可能性だってあります。

このように考えたら、米国側は政治決着として、「今回はお咎めなし、次回からは有無を言わさずセカンダリー・制裁」とするのかもしれません。

「通貨」という武器を持つ日米

「外貨ショック」に極端に弱い国

ただし、言い換えれば、米国としては、韓国の「通貨危機」を人為的に発生させることができることになった状態でもあります。

昨日の繰り返しですが、韓国電力の株主には韓国開発銀行(KDB)がいます。そして、KDBを含めた韓国の金融機関は、米国などで債券を発行し、外貨を調達しているのです。仮に韓国の銀行をドル債市場から追放すれば、韓国の銀行のなかには、たちまち資金繰りに窮するところもあります。

つまり、米国としては、「北朝鮮との取引」を理由に、いつでも韓国の銀行に対するセカンダリー・サンクションを発動することができることになった、ということです。

この、「韓国を資本市場から締め出し、人為的に通貨危機を作り出す能力を持っている」という点では、日本も同じです。いや、もう少し正確に言えば、「日米が連携して韓国の銀行を債券市場から締め出す」ということをやれば、韓国はほぼ間違いなく、通貨危機に見舞われるでしょう。

ただ、冷静に考えてみれば、韓国はOECD加盟国であり、そのような国の一部の銀行が外国の債券市場から締め出されただけで通貨危機になるとは、「何を大げさな!」と思う方もいるかもしれません。

しかし、韓国が自国通貨「韓国ウォン」の国際化を怠って来たという事情を無視してはなりません。主だった企業は外貨(とくに米ドルや日本円)がなければ生産活動すらままならず、そして、韓国の銀行が外貨調達できなくなれば、韓国経済全体の死を意味するのです。

したがって、韓国経済は米国(と日本)に「生殺与奪の権」を事実上、握られている格好なのです。

韓国が北朝鮮との密貿易をやめるのか?

ただ、米国に生殺与奪の権を握られているからといって、韓国が北朝鮮への制裁破りをやめるのかと言われれば、それはそれで疑問です。やはり、「バレてない」と思いながら北朝鮮制裁破りを継続し、ある日、いきなり米国から致命的な制裁を科せられる、というのが、可能性としては非常に高い気がするのです。

こうした私の見方が正しいかどうかは、意外と早く判明するかもしれません。そして、この問題を巡っては、しばらく関心を持って追いかける価値がありそうです。

新宿会計士:

View Comments (3)

  • この記事、不正確な記述が多々含まれていて、一読して文意が伝わらない箇所もあります。全体として何が言いたいのかよくわからない、という印象を受けます。

    やはり、推敲が足りないとこうなってしまうようですね。

    後ほど時間が取れた段階で、この記事については修正したいと思います。読者の皆様には申し訳ないのですが、後ほどもう一度、この記事を読んで下さると幸いです。

  • 素人の質問なんですが、米国政府が他国の米ドル外債の発行を差し止める権限って持っているのですか?
    アルゼンチンがサムライ債でデフォルトかましてくれたのを記憶しているのですが、第三国が勝手にそこの通貨で債権を発行するという現象はその通貨がハードカレンシーになった通過儀礼なのかと思っていました。

  • 石炭は産地によってカロリーが違うので,発電所や製鉄所で使うものを見知らぬ場所から,輸入することは考えられません。カロリーによっては発電所側の燃焼設定を変える必要があるため,納入者側だけで,産地を決定することはできません。韓国電力は産地が何処か知っていただろうし,これまでも使用してきた可能性があります。