あの「放送法遵守を求める視聴者の会」が実施した世論調査が、いまさら、産経ニュースに紹介されたようです。
目次
「視聴者の会」が産経に登場
産経「7割がテレビ報道に不満」
本日の産経ニュースに、こんな記事が掲載されました。
「テレビ報道に不満感じる」7割 放送法遵守を求める視聴者の会が調査(2018.7.10 10:37付 産経ニュースより)
この記事によれば、一般社団法人「放送法遵守を求める視聴者の会」が「今年3月30日~4月1日の2日間」、全国の18歳以上の男女1000人を対象にRDD方式で電話調査を行った結果、約7割が「偏向報道がある」と答え、「報道に不満を抱いていることが分かった」、としています。
これについては、既存のマス・メディアがいっせいに無視するような話題であるにも関わらず、大手マス・メディアの一角を占める産経ニュースが報じたという事実については、非常に大きな意義があることは間違いありません。ところが、この記事には、ツッコミどころがたくさんあります。
まず、「3月30日~4月1日」は「2日間」ではなく「3日間」でしょう。次に、調査は「テレビに偏向報道があるかどうか」を尋ねているだけなのに、産経ニュースは「報道に不満を抱いている」と、勝手に情報を付け加えています。報道するならば正確に報じて欲しいものです。
さらに、同会の調査結果は、ちょうど1ヵ月前の6月11日に公表されており、これを1ヵ月も経過して、いまさら報じたこと自体が、非常に不自然です。もしかすると、産経新聞社自体もテレビ局であるフジテレビと同一資本系列に属しているため、フジテレビに「遠慮」して報道しなかった、ということかもしれません。
オリジナルの記事を読むのが早い
実は、この調査については、私を含めた「ウェブ評論家」の間では、かなり前から存在が知られていたものです。そして、その詳細については、すでに同会のホームページにおいて、公表済みです。
偏向報道に対する意識は年齢別で大きな差。60代以上は、約4割の人が「スポンサー商品を買いたくない」と回答。(2018年6月11日付 放送法遵守を求める視聴者の会HPより)
詳細のレポートについては、同会の会員にならないと入手できないようですが、調査の概要であれば、リンク先の記事で大まかな内容を知ることができます。同会によれば、
「現在のテレビでは、内容が偏った報道、いわゆる偏向報道があると思いますか?」
という質問に対し、「たくさんあると思う。」(25.7%)、「それなりにあると思う。」(48.0%)を足せば、一般視聴者の7割以上が偏向報道の存在を認識している、と結論付けています(ただし、公開内容には、産経ニュースが報じた「報道に不満を抱いているかどうか」という質問項目は見当たりません)。また、
「偏向報道をしている番組があった場合、あなたはその番組のスポンサー企業の商品を買いたいと思いますか?」
という質問に対しては、「絶対に買いたくない」(7.2%)、「買いたくない」(22.5%)を足せば、約3割弱が、そのスポンサーの商品を買いたくないと答えていることが判明した、としています。
マスゴミ改革はどうあるべきか?
調査は有益なのか?
私自身は、この「放送法遵守を求める視聴者の会」の活動内容には深く敬意を払いたいと思いますし、また、多忙な日本国民に代わって、偏向報道を行っているテレビ番組の実態を調査し、公表してくれていることに、日本国民の1人として感謝したいと思っています。
ただ、残念ながら、私自身はこの団体の活動方針には、全面的に賛成していません。その理由は、「テレビ局に対して放送法を遵守するよう働きかける」、あるいは「テレビ局に偏向報道をやめさせる」という、同団体の目的自体に無理があると思うからです。
同会は、「加計学園関連報道」については「歴史上最悪に属すると思われる偏向報道」と批判しており、この点については私もまったく同感ですが、ただ、偏向報道自体をやめさせること自体には、少々無理があると思います。
実は、マス・メディアが「マスゴミ」などと揶揄され、蔑まれるのには、理由がいくつかあります。もちろん、報道内容自体が酷いということもありますが、それだけではありません。彼らマス・メディア(テレビ局だけでなく、新聞社も含めて)の取材態度が非常に悪いからです。
たとえば、6月18日には大阪府北部で大きな地震がありましたが、『【夕刊】傍若無人な振る舞いをするから「マスゴミ」と呼ばれる』では、共同通信の力丸将之(25)記者がマンションに侵入して強引な取材をした件を取り上げました。
また、今回の西日本における豪雨災害でも、取材をしていると思しき朝日新聞社の報道ヘリコプターが被災地の上空を旋回し、助けを求めている人々や支援活動を行っている消防隊などの姿を撮影して去っていく、という映像を公表しているようです。
これに加え、フジテレビでは、「自動車に乗った人が濁流に飲み込まれそうになっている姿」を延々と映し続けるという事件を発生させているようです。これについてSNS上では、「カメラマンが救出を手伝わず撮り続ける」と強く批判されています。
私など、地震、水害などの被災地でマス・メディアが取材活動を行うことを禁止しても良いと思うのですが、マス・メディアは折に触れ、「報道の自由」が大切だ、などとうそぶきます。しかし、現在のマス・メディアの振る舞いは単なる横暴であり、「報道の自由」において許される範囲を遥かに超えています。
ある阪神淡路大震災の被災者によれば、爆音を立てて被災地上空を我が物顔で飛び回る報道ヘリに殺意を抱いたのだそうですが、少なくとも、災害救助には何の役にも立たない報道ヘリについては、被災地上空への侵入を禁止する法律を策定すべきです。
自由競争の徹底を支持する
もちろん、いまこの瞬間、偏向報道が行われていることと、その偏向報道に多くの人々が騙されていることが、大きな問題であることは間違いありません。マス・メディアが事実でない内容を報じ、その結果として選挙での投票行動に影響を与えれば、政権交代が発生しかねないからです。
その意味で、私は一連の「もりかけ報道」については、マス・メディアによるクーデターであるとすら思います。そして、こうした問題意識を抱いているのは、同会も同じだと思います。だからこそ、同会は「物言う株主」として、スポンサーに意見を述べようとしているのではないでしょうか?
ただ、私自身は、迂遠な方法かもしれませんが、まずは日本国民一人ひとりが賢くなることの方が先だと考えています。具体的には
- 変な報道を続ける新聞は解約する。
- 変な報道を続けるテレビは見ない。
- 選挙にはきちんと行く。
という3点を、日本国民の多数がきちんと実践することだと思います。
これに加えて、立法上、あるいは制度上の取り組みも欠かせませんが、それは、「放送局に放送法を遵守させること」ではありません。「うんとたくさんの放送局の市場参入を許し、自由競争を促すこと」、です。
現在、放送免許は総務省が勝手に決めた放送局に対して交付されていますが、そうするのではなく、電波オークションを実施し、最も高い値段を提示した業者に、順次、電波帯を売却していくべきでしょう。
もちろん、「そんなことをすれば外国資本が電波帯を買ってしまうかもしれない!」「日本の世論が特定の外国に乗っ取られてしまうかもしれない!」などと懸念する人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。
それを指摘するくらいならむしろ、現段階でTBSやNHKなどに外国人が従業員として大量に入り込んでいて、日本を貶める番組が制作され続けている点を問題視すべきでしょう。
それよりも、現在の日本の問題点は、『RSFランキング最新版と倒産に向かうマスゴミ』で指摘したとおり、事実上、わずか8社・グループが日本の主要なメディアを支配している現状です。これに対し、たくさんの放送局が参入し、地上波のチャンネル数が100とか200とかに増えていけば、競争原理が働きます。
偏向報道を続けている番組を垂れ流しているテレビ局のなかには、経営難に陥るところも出て来るでしょう。
是正ではなく退場が正しい
私自身、1人の日本国民として、情報を受け取る側でもありますが、それと同時にウェブ評論家として、ささやかながらも情報を発信する側でもあります。インターネット時代になれば、私のようなごく普通のビジネスマンが、気軽に情報発信することができるようになるのです。
ただ、ネット時代になったとはいえ、依然として、マス・メディアが果たす社会的な役割は大きいと考えています。なぜなら、私を含め、世の中の多くのウェブサイトの運営者は、ジャーナリストや官僚、政治家などではなく、「自分自身が入手した情報」に従った情報発信しかできないからです。
逆に言えば、マス・メディアにはマス・メディアとしての存在価値がある、ということです。
私はしばしば、マス・メディアを「マスゴミ」と呼び捨てることもありますが、これは「現在の日本の」マス・メディアにゴミのような取材態度を取り、ゴミのような情報を垂れ流している媒体が多いからであり、真摯で丁寧に取材し、質の高いコンテンツを流すメディアが存在したならば、そのようなメディアを蔑むことはありません。
ということは、現在存在している「マスゴミ」を更生させるのではなく、どうしようもない「マスゴミ」を倒産させて、新しいメディアの新規参入を促すという、いわゆる「競争原理」を導入するのが、唯一の解決策なのです。
もちろん、電波オークションという制度自体にもさまざまな問題がありますし、また、マス・メディアという「経営者」を変えたとしても、コンテンツの「提供者」(制作会社など)が同じであれば、結局のところ、短期的には偏向報道という問題は解決しないかもしれません。
しかし、メディアの数が多くなればなるほど、競争原理に従い、「本当に人々が欲しがっている情報」を真摯に発掘し、良質なコンテンツを提供しようとするメディアが出現する確率も上がります。
だからこそ、報道法第4条第1項の改正と電波オークションの実施(ついでに言えばNHKのスクランブル化)などの制度改正が必要なのです。
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ちなみに、新聞についても、「新聞の偏向報道を糺す会」などもあるようですが、私に言わせれば、新聞にはすでに、強力過ぎる競争相手が出現しています。それが、インターネットです。
テレビと違って新聞の場合、「紙に文字情報を印刷する」という媒体であり、「ブラウザに文字を表示させる」という意味で、ウェブサイトとは完全な競合関係にあるのです。そして、新聞社も「直ちに潰れる」ということはないと思う反面、個性を打ち出していかなければ、やがてはネットとの競合に敗れる運命にあります。
誰も読まなくなれば、あの朝日新聞ですら廃刊に追い込まれるかもしれません。
その意味では、当ウェブサイトがささやかながらも少しずつ読者を獲得し続ければ、まわりまわって、朝日新聞を廃刊に追い込むことができるのかもしれません。とはいえ、やや遠大な夢ですが…(笑)
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論評、ありがとうございます。
今回の水害ではご高齢の方々が多く犠牲になってしまいました。以前から繰り返し言われる「災害弱者」とされる人々です。
ところで、方々で言われていることですが、若い人たちはTVや新聞といった旧来のメディアを捨ててネットの情報を情報源とし、そうでない人たちはそれら旧来のメディアが主たる情報源になっているとされています。
それを考えると「旧来のメディアを主たる情報源としている人たちが犠牲になった」という可能性に辿り着くことができます。
東日本大震災の時は予告なしに大地震が発生し、大規模な津波が時を置かずして襲来しました。避難にも時間的な限界があったと思われます。それに対して今回の水害では、気象庁が大雨の可能性を予報して避難を促すアクションをしていたようです。このような状況になったときに旧来のメディアが「キケンダー、キケンダー、ニゲロー、ニゲロー」と安倍首相を叩くように機械的に連呼するだけでも情報弱者とされる人たちも含めて今回の被災地の方々の避難の一助になったことでしょう。
しかし実際にはそうなりませんでした。その原因としては
1)旧来のメディアには気象庁が訴えた危機を理解できなかった
2)旧来のメディアは危機を理解していたが敢えて報道しなかった
3)そもそも災害弱者とされる人たちは既に旧来のメディアを見ていなかった
といくつか考えられます。
1と2については今や否定できないほどに旧来メディアの劣化が進んでいますし、3についても昨今の偏向報道ぶりにふれた人たちが旧来のメディアを捨てたことを否定できません。今や旧来のメディアには正確な報道をする能力に欠け、信用も失っているといっても良いでしょう。
旧来のメディアのみを情報源にしていると、他国の脅威に晒される「ごく近い将来の危機」への意識がなくなるばかりか、予測された大雨水害にも対応できない「目の前の危機」への意識までなくなってしまい、命を失う可能性を高めてしまう段階に至った、という私の考えを最後に挙げておきます。