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【夕刊】消滅に向けて順調に歩みを進める米韓同盟

日本時間の金曜日夜、米WSJが「韓国側の要請により、米韓合同軍事演習が取りやめられていた」と報じました。私の目には、米韓同盟が消滅に向けて、順調に歩みを進めているようにしか見えません。

またしても米韓演習中止か?

WSJの気になる報道

米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が日本時間の金曜日夜、少し気になる記事を配信しています。それは、米国が韓国側の要請を受けて、「B52爆撃機」を用いた軍事演習を取りやめていた、とする話題です。

英語版の記事はその後、少し加筆されて、米国時間の金曜日夜(日本時間の土曜日朝)時点であらためて公表されていますが、調べてみたところ、これについてはWSJ日本版でも同じ内容のものが掲載されているようです。

U.S. Scrapped Training Exercise With South Korea Involving B-52s(米国夏時間2018/05/18(金) 19:20付=日本時間2018/05/19(土) 08:20付 WSJより)
米韓、B52使用の軍事演習取りやめ 米朝会談控え韓国が要請(日本時間2018/05/19(土) 02:25付 WSJ日本版より)

英語版の方はWSJオンラインに契約していないと閲覧できませんが、日本語版の方はどうやら無料で読むことができるようです。また、文章についてざっと見比べたところ、日本語版はかなり意訳が入っているものの、内容としてはほぼ同じです。興味があれば、日本語版の方のリンクを直接読んで下さい。

さて、問題の記事は、米国が「韓国の要請を受けて」、軍事演習を中止していた、とするものです。英語版の記事の冒頭部分を私自身が直訳すると、

米国の当局者は、今週初めに予定されていた米国のB52爆撃機を用いた南朝鮮との合同軍事演習が中止されていたことを明らかにした。この当局者は、ドナルド・トランプ大統領と北朝鮮のリーダーであるKim Jong Unとのサミットを控え、南朝鮮政府が「緊張を生じかねない」との懸念を表明したためだとしている。

というものです。Kim Jong Unとは北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)のことですが、英語の記事ではこれがKim Jong-unとなっていたり、Gim Jong Eunになっていたりして、表記は統一されていません。ちなみに日本語版だと、この下りは

米韓の空軍が今週、核兵器を搭載できるB52戦略爆撃機を投入した軍事演習を取りやめていたことが、米当局者の話で分かった。米朝首脳会談を前に緊張を生む恐れがあるとして、韓国側が懸念を示したという。

と、すっきり意訳されていますが、だいたい意味は同じです。

(※余談ですが、英語の原文では「韓国」とあるのは「南朝鮮」(South Korea)となっています。日本のメディアが「南朝鮮」と表現すれば烈火のごとく怒る韓国ですが、英語版だとSouth Koreaと表記されていることについて、どうしてWSJなどに対して抗議しないのでしょうか?不思議でなりません。)

北朝鮮に忖度する韓国

この記事が事実かどうかはわかりませんが、私は「さもありなん」と思います。なぜなら、韓国は今年1月に、北朝鮮との板門店での高官級協議を控え、米国に対して米韓合同軍事演習の延期を懇願したという「前科」があるからです。

今回のWSJ記事についても、(あくまでも「報道が事実ならば」という前提ですが、)韓国が北朝鮮に「忖度(そんたく)」して合同軍事演習の実施が中止されていた、ということです。これを米国側から見れば、「米韓同盟廃棄」に向け、また一歩、前進した格好です。

米韓同盟が何のためにあるのかといえば、その最大の目的は、北朝鮮の南侵を防ぐためにあります。逆に言えば、韓国自身が北朝鮮の脅威から自国を守る意思と能力を放棄してしまえば、米軍(あるいは国連軍)としても、韓国に進駐する意味が失われます。

そして、今回の件も、

韓国が北朝鮮に忖度して「北を刺激するな」と注文を付け、米国は「韓国がそこまで言うならば韓国との合同演習は実施しない」と反応する

――、という流れにしか見えません。ということは、今のところ、米韓両国は「米韓同盟消滅」に向け、順調に歩みを進めているようにしか見えないのです。

民族自決の原理とパワー・バランス

これは、一見すると非常に危険な話です。

以前、『緊急更新「朝鮮半島の6つのシナリオ」仮定版』でも申し上げたとおり、韓国は北朝鮮に飲み込まれるか、中国に飲み込まれるか、それとも南北朝鮮が統一されたうえで中国に飲み込まれる可能性が高まっていると私は考えています。

こうしたシナリオが実現する前提とは、米韓同盟が消滅することであり、現実に米韓同盟は消滅に向けて歩みを速めているようにも見えるからです。

もちろん、米国側としても、これまでに韓国軍に軍事機密を渡したうえで、さまざまな装備品を売却し、技術などを伝授して来たという事情もあるため、そう簡単に米韓同盟が崩壊することはない、との見方があることは事実でしょう。

しかし、現実には、韓国政府自身が米韓同盟の解消を望んでいるようにしか見えません。極端な話、韓国が北朝鮮に対し、「無条件降伏」してしまえば、民族自決の原則に従い、朝鮮半島は北朝鮮主導で統一されます。日本や米国には、このことを防ぐ術はありませんし、それを防ぐ義理もありません。

朝鮮半島核問題の解決の在り方

結局は中露を巻き込むしかない

もっとも、統一朝鮮が核武装するとなれば話は別です。

韓国と北朝鮮を「対等な交渉相手」と見るな』や『【夕刊】日米中露は朝鮮半島の「猿芝居」に騙されるな』でも主張したとおり、南北朝鮮が周辺国を相手に危険な猿芝居を演じるようであれば、周辺国が責任を持って、南北朝鮮(あるいは統一朝鮮)から核兵器を取り上げることも必要です。

最悪の場合、彼らから「独立国としての地位」を奪うことも必要となるでしょう。これが、私が何度も主張している、「周辺国が責任を持って朝鮮半島を管理する」というプランです。

私自身は、朝鮮半島は長年の宗主国である中国がメインの責任者として管理すべきだと考えていますが、北朝鮮を作った国がソ連である以上、その後継国家であるロシアが北朝鮮の国家運営に責任を持つということも考えられると思います。

また、中国とロシアは、米軍の支配地域と境界線を接することを、極端に嫌がります。これが「地政学的要因」です。韓国に米軍が駐留したままで、北朝鮮が中国やロシアの支配地域となることが考え辛いのは、この地政学的要因に基づくものです。

逆に言えば、韓国から米軍が撤退すれば、中国やロシアとしても、北朝鮮をわざわざ存続させておく必要はなくなります。なぜなら、中露両国から見て、北朝鮮は単なる緩衝地帯であり、韓国が米軍の支配地域でなくなった瞬間、緩衝地帯は必要なくなるからです。

要するに、朝鮮半島問題とは「オール・オア・ナッシング」です。究極的には、中露の反発を覚悟で米軍が北朝鮮に軍事侵攻し、南北朝鮮の全域を米軍が支配するのが良いか、朝鮮半島は中露に任せて米軍は対馬にまで撤退するか、そのどちらかしかありません。

その意味で、中露を巻き込まなければ、北朝鮮核問題は解決しないのです。

日本に「最前線」としての覚悟が求められる

ところで、このように議論すると、「いかなるコストを払っても、朝鮮半島に中国人民解放軍に拠点ができることは絶対に避けねばならない」、と言い出す人が出てきます。

確かに、朝鮮半島に中国人民解放軍やロシア軍の拠点ができることは、日本の安全保障にとっては非常に大きな懸念です。しかし、何かを取れば何かを失うのが国際社会の鉄則であり、私はむしろ、日本が対馬海峡を死守するという覚悟を決めることの方が重要だと考えます。

仮に、中国人民解放軍の朝鮮半島駐留を阻止したければ、南北朝鮮が中国になびかないようにしなければなりません。そのためには、仮に米軍が朝鮮半島から撤退したとしても、朝鮮半島が中国の勢力圏に入らないよう、まずは南北朝鮮(あるいは統一朝鮮)という国家を存続させなければなりません。

極端な話、日本が朝鮮半島情勢に積極的に関与し、日本の血税から南北朝鮮のために巨額の経済支援を捻出しなければならなくなるかもしれません。しかも、日本がそのように巨額の経済支援を与えたところで、南北朝鮮が中国側になびかないという保証などありません。

それであれば、南北朝鮮(や統一朝鮮)に巨額の経済支援を与えるよりも、いっそのこと、対馬海峡の国防に巨額投資をした方がはるかに有意義です。要するに、台湾海峡と対馬海峡を「新・アチソンライン」とし、ここを死守する覚悟を持つしかないのです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

当ウェブサイトではこれまで、「現実的にはこうするしかない」、「現状はこうなっている」、といった「現実の分析」に力を割いてきたのですが、冷静に考えてみると、「本来はこうあるべきだ」、といった「理想論」の提唱が弱かったような気がします。本日のこの記事を執筆しながら、そう痛感しました。

そこで、もし余裕があれば、近日中に、「米国にとっての理想の朝鮮半島情勢」、「日本にとっての理想の朝鮮半島情勢」、「中国にとっての理想の朝鮮半島情勢」などをテーマに、「理想論」を考えてみたいと思います。

新宿会計士:

View Comments (9)

  • 中国って周辺を地域大国に囲まれてて政策が複数あるわけですが、唯一それが無い東南アジアだけは筋が通っていると思います。

    ただ世界覇権への挑戦を習近平が宣言した以上東西南北のいずれの政策も段階を上げて少しずつ成功させようとして来る筈ですから中国にとっての理想を書くのはかなり大変だと思います。

  • なんだか日清日露か征韓論かの時代まで逆戻り
    西郷どんや諭吉たちの悩みを今また悩むのか
    もりかけセクハラより憲法改正だよなあ
    野党に工作員多すぎだろどう見ても

  • < 更新ありがとうございます。
    < 『 またすぐ、ヨイショのコメントを書くめがねのおやじ!』と思われるのを承知で書きます。新宿会計士様のおっしゃる通り。半島に日本は関わってはいけません。よく『朝鮮に関与して緩衝地帯を作れ』『釜山に人民開放軍が赤旗立てたら日本のノドに匕首突きつけられるのと同じだ』『対馬では守れん』という意見をこちらでも他のサイトでも見ます。
    < でも、それって護る価値がある版図だったらでしょ?むかしっから朝鮮人は、日本統治時代も八路軍や国民党軍の掃討に、日本に手を貸すフリしながら、闇夜にシナとつるんで惨殺したり、婦女子を見殺しにしたり。日本軍大部隊が来ると『ご主人様〜』。ある意味、ナチスより酷い振る舞いしてますよ。
    < あれだけインフラや教育、衛生にチカラを入れても真逆に裏切る国。基本、戦後も変わってないです。いや、基本条約締結後、反日、侮日はあからさまに酷くなった。韓国が日本の栄養分を吸って、力を付けた為です。
    < いま、文も国民も夢に酔ってます。いずれ主敵は日本、そこをマトにして来る。そんな民族、いっその事、中国の属国になり、厳しい躾けを守らせたらいいんです。緩衝地帯なんて思うから、日米が脚引っ張られる。
    < 主敵は中国。しかし、前面は済州島、釜山、京城。ここに圧をかけ続ければ、シナも属国の世話に手を焼く。日本が憲法改正で攻撃可能になれば敵は更に日本海に乱入するでしょう。しかしシナとは睨み合いで済ませたい。すがるわけではないが、米国には同盟として、また環太平洋、インド洋の自由主義国友邦で鎖を繋げましょう。シナの走狗など小心者、日本の主敵ではない。
    < 失礼します。

  • これだからシロートは困る。朝鮮半島がイラつく相手だってことは分かるがここが中国やロシアの版図に入ると日本にとっては悪夢だ。ここのブログ主は金融には詳しいようだが地政学はシロートだね。それに日韓国交正常化以来日本は韓国に巨額の投資をしてきた。みすみすそれを中国様に献上するなどあり得ない。アメリカだって同じことを考えているはず。日本は日本人拉致問題にいつまでもこだわってないで、さっさと日朝国交正常化して中国を牽制すべきだろう。

    • < タカ様
      < 日朝正常化交渉は、拉致被害者救出後しかありえないです。貴方こそ、会計士様やシロウトの私らに珍説を披瀝して、詳しい訳も知らず、名指しで攻撃するのは間違ってますよ。
      < いま北と何の意味で交渉するのかな?核?たかられるだけです。もうちっと相手の書き手の思いも汲みなさい。 以上。

    • 本来なら俺達日本人が北朝鮮に軍事侵攻して拉致被害者救出作戦と拉致を指示した金ファミリーを全員捕え、
      日本に移送し人道に対する罪で射殺ないし死ぬまで獄に入れてやらないといけない訳だが解ってるのか?

      そう言えば拉致被害者なんて居ないとか言って被害者家族や警察、国に心無い批判をしてたメディアが有ったよな、そこの回し者か?それとも朝鮮総連?統一教会?在日韓国会館の回し者?炎上を狙ったクズ?君はどれかな。

  • 緩衝地帯の維持のために朝鮮半島に積極的に支援を行った結果どうなるかは、20世紀に十分教訓を得ることができたはずです。
    やはり、属国根性が骨の髄まで染み込んだ連中は、宗主国が管理するのが一番軋轢が少ないでしょう。勿論、地政学的には、それに伴い日本海の防衛を強化する必然性については言うまでもなく。

    憲法改正含め、防衛力強化の議論が時期尚早(つまりマスゴミの影響力をもっと殺いでから)ではないか、という懸念は重々承知です。しかし、日本人は古来、本当に追い込まれたら死にものぐるいで本気を出せる民族です。
    却って、対岸に虎視眈々と海洋進出を狙う中国が迫ってくれば、平和ボケを醒ます薬になるのではないかと期待しています(荒療治ではありますが)

  • 「拉致問題にこだわってないで」は聞き捨てなりません。同胞を攫われても取り返しに行く事が出来ない現状は、我々日本人全体の責任であると思います。

  • 南北朝鮮がベトナムのように、かつて中国の侵攻を(一時的に屈服しても)何度も跳ね返して来た伝統がある国なら朝鮮半島問題も少しは希望が持てると思うのですが。
    もし、彼らに気概があれば、朝鮮戦争後幾らでも北なり南なりが戦争を再開させ統一後、返す刀で東西両陣営を追い出す選択肢も有ったことでしょう。
    私はベトナム戦争を東西代理戦争と捉えず、ベトナム独立戦争だったとかねてから思っています。そしてベトナム人には、その気概があったが朝鮮人には無い上に事大するので国民として纏まりようも無いのではないかと思います。
    彼らがベトナム並みに焦土戦を敷いてまで、他国の干渉を跳ね除けた事実こそ結果的に国際社会で認められた歴史となったと思います。まあ、共産主義国家で統一されたため腐敗や一党独裁やら弊害も大きいですが東南アジアの他国民にとっては、北から迫る中国の拡大路線に共同戦線を張るには頼もしい存在に違いないでしょう。
    よく言われる事ですが、かつての中華思想からはみ出した国家が日本とベトナムと言う事を考えると、事大主義・儒教原理主義・小中華思想と最悪の国民感情を持った朝鮮人が作る「新国家」に何ら期待も信用も持てませんが。