【ショートメモ】韓国の徐薫氏来日の意味

非常に珍しいことですが、本日は3本目の記事を配信します。「森友文書改竄問題」の影に隠れていた、当ウェブサイトとしては重要な報道について、今日のうちに取り上げておきたいからです。

韓国の徐薫氏の来日に思う

日本政府の中で韓国の存在感が低下

昨日夕方、韓国の徐薫(じょ・くん)国家情報院長が来日し、河野太郎外相と会談と夕食会を行っています。

河野外務大臣と徐薫韓国国家情報院長との会談・夕食会(2018/03/12付 外務省ウェブサイトより)

外務省ウェブサイトから情報をまとめておくと、事実関係は次のとおりです。

  • 3月12日午後6時から約2時間50分間、河野太郎外相と徐薫・韓国国家情報院長が会談と夕食会を行った。
  • 冒頭、徐薫院長から、先般の韓国の特別使節団と北朝鮮との間のやり取りや訪朝後の3月6日の韓国政府による発表について詳細な説明が行われた。
  • 河野大臣からは、詳細な説明に感謝するとともに、現在に至る徐薫院長を始めとする韓国政府の努力に敬意を表する旨述べた。
  • 両者は、今後、南北首脳会談、そして米朝首脳会談において北朝鮮から意味のある成果を引き出すべく、あらゆる機会を通じて、米国も含めた三か国で綿密なすり合わせを行っていくことで一致した。
  • また、拉致問題解決に向けての日韓連携についても確認した。

3時間近くも会談が行われたにしては、報道発表はこれだけです。河野外務大臣、佐藤外務副大臣などは、最近、韓国の当局者と頻繁に会談を行っていますが、プレス・リリースを見ても、どうも表面的な話題しか出て来ていません。

とりわけ、昨年12月19日の康京和(こう・きょうわ)外交部長官(外相に相当)の訪日時にも、日韓外相会談が3時間も行われた割に、プレス・リリースはじつにそっけないものでした(『ツートラック外交以前の問題』参照)。

いわば、日本政府の中で、韓国という国自体の存在感が低下している証拠に思えてなりません。

空虚に響く、「日米韓3ヵ国連携」の裏で…

それはさておき、先ほどの河野大臣と徐薫氏の会談では、いつものお決まりの「日米韓3ヵ国連携」にくわえ、「拉致問題解決に向けての日韓連携」を確認したとしています。ただ、韓国自身が日米韓3ヵ国連携を乱している張本人でもあるため、こうした言葉は空虚に響きます。

わが国がこの期に及んで「日米韓3ヵ国連携」と言い続けることに、いい加減、国民も不信感を持っているのではないでしょうか?(もっとも、日本政府・河野外相が本気で「日米韓3ヵ国連携」と主張しているとは、さすがに私も思いませんが…。)

とくに、この徐薫氏といえば、鄭義溶(てい・ぎよう)韓国大統領府国家安保室長とともに、金正恩(きん・しょうおん)の発言を、一生懸命メモに取っていた人物です(『米韓当局者会談を前に:韓国を「見透かす」米国』の『象徴的な属国外交』参照)。河野外相ほどの人物であれば、おそらく、徐薫氏が北朝鮮のエージェントか何かだと見抜いていることでしょう。

それはさておき、外務省の報道発表に含まれていない情報についても、確認しておきましょう。

韓国・徐氏、訪朝時「拉致議論せず」=河野氏、査察費用支援も(2018/03/12-23:59付 時事通信より)

時事通信によると、河野外相は

北朝鮮が核開発を放棄して、国際原子力機関(IAEA)の査察を再び受け入れる場合に言及し、日本政府が機材などに要する初期費用を支援する

という意向を明らかにしたのだとか。

これは、実は非常に重要な情報です。インターネット界隈では、「どうして日本がおカネを負担するのか!」「日本はどこまでもお人よしだ!」といった反応も出ているようですが、私はそうは思いません。というのも、北朝鮮が言い出した(とされる)非核化に向けて、日本が外堀を埋めている動きだともいえるからです。

慰安婦合意で韓国にくれてやった10億円と比べると、おカネの使い方としては断然賢いです。なぜなら、確実に北朝鮮の核放棄を達成するには、核査察がもっとも手っ取り早いからです。日本としては余った国防予算をすべて中国の脅威に振り向けることができます。

また、河野外相は

最近の北朝鮮の変化は、日米韓3ヵ国が連携して実施した最大限の圧力の成果だ

と述べていますが、これはある意味で、実情に近いと思います。なぜなら、確かに北朝鮮は、昨年の厳しい国連安保理制裁などを受け、経済的には相当に疲弊していると考えられるからです。

そうであるならば、韓国が北朝鮮の「エージェント」となっていることを見透かしつつも、利用できるものは何でも利用するというのが、賢いやり方です。日本外交も良い方向に脱皮しつつあるものだと思います。

韓国は「運転席」に座っているのか?

ところで、現在の韓国では、「韓国こそが問題をハンドリングするための『運転席』に座っている」とする、謎の「運転席」理論が蔓延しています(『理解に苦しむ韓国の「運転席」理論』参照)。今回の徐薫氏の訪日も、「まずは特使を北朝鮮、次いで米国、さらに日中露に派遣する」という一環であり、その意味では、韓国が「運転席」に座っているように見えなくもありません。

ただ、バスの運転はハンドルさばきが難しいのと同様、朝鮮半島非核化問題も、韓国ごときがハンドリングできるような問題ではありません。いや、もっと正確に言えば、北朝鮮自身、あるいは周辺の日米中露4ヵ国を含め、どの国も単独でイニシアティブを取れるような状況ではないのです。

当然、日米中露4ヵ国は、韓国が「運転席」に座っているというよりも、むしろ、「単なるメッセンジャー」だと見ているというのが実情ではないでしょうか?実際、韓国の特使たちは、金正恩名義の親書などを携えているわけではなく、あくまでも「口頭で」金正恩のメッセージを伝えているだけだからです。

この「口頭で伝える」という方式、朝鮮民族が好む手法なのでしょうか?ただ、外交の世界では、できるだけ行き違いがあってはならないとの考え方から、とくに敵対国に首脳会談を呼び掛ける場合には、親書を作成することの方が多いことは間違いありません。

いずれにせよ、北朝鮮当局はいまだに不気味な沈黙を続けており、金正恩はイザとなったら「それは韓国が勝手に言っていることだ」と逃げることができる、という状況にあることは間違いありません。その意味で、韓国は北朝鮮と日米中露の計5ヵ国を、敵に回しかねない危険な状況にあるとも言えます。

そんな韓国がこの難局をどう乗り切るのか、「お手並み拝見」といったところでしょうか。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. むるむる より:

    ああ例の北に行って黒電話の言葉を口頭で聞いてアメリカとか各国回ってる酔狂なエージェント日本にも来てたんですね。
    しかし三時間も会食して北のこと以外に両国関係の話題を一言もしないなんて珍しいですねww
    まぁTPP加入の嘆願されるよりかはマシなのでその調子で反日親北に勤しんでいてくださいって思っちゃいますね。

  2. めがねのおやじ より:

    < 珍しい!第3刊発信ありがとうございます。
    < 徐薫氏が金正恩総書記の指示を克明にメモを取っていた姿には笑いが込み上げました。社長と部長、いや部長と一担当者ぐらいの絵でしたね。北朝鮮はそれだけでプロパガンダの甲斐がある。上と下、甲と乙、勝ちか負けしかない民族、平等や一同なんて感覚分かりません。南は北の下位と印象づけた。
    < 河野外務大臣との会談でも、内容は金正恩が言わなかった事まで尾ひれを付けて、嘘てんこ盛りの報告したんでしょう。あの韓国の事だから、「アレは冗談」で済まします。信用ゼロの国、河野外務大臣も安倍首相も全員ご存知です。
    < 車のハンドリングですが、間違いなく握ってないのが韓国(笑)。くだらん例えですがラーメンのもやし程度。いらなかったら捨てればよい、無くても何も感じない。え?もやし、要らんわ。
    < 会計士様仰る通り、米朝会談まで或いは会談時に、一悶着あると思います。その時、『そんな事言ってない』と金正思に言われ、オドオドする役どころが韓国。イヨッ待ってました!ダイコン役者!ってな感じ。半島情勢で一番風見鶏宜しくクルクル回って、存在感がない国。
    < 多分、シナの属国か、北に併呑される。どっちにころんでも主体性ないです。椅子の高さで中国は見下したとか言ってる場合じゃない、本音で下の下、門の中に入るな、外から声掛けせよが中国の本心でしょう。さて、日本は中国とは正面敵とはいえ、おおっぴらにコトを構えるのは控え、いちおう握手外交、EEZを侵したらシバくぞ、でいいのではないでしょうか。
    < 失礼します。

  3. 新宿会計士 より:

    読者コメント欄お目汚し失礼します。

    さきほど米WSJが「ティラーソン国務長官更迭」と速報を出しました。個人的には「ポンペオ新長官」のスタンスが気になるところです。
    https://www.wsj.com/articles/trump-replaces-rex-tillerson-with-mike-pompeo-as-secretary-of-state-1520945422

    以前からトランプ大統領とティラーソン国務長官の「不仲説」が噂されてきただけに、今回のWSJ報道が正しければ、米国の北朝鮮攻撃の可能性にも少なからず影響を与えるのではないかと思います。

    以上、読者コメント欄をお借りしての報告です。早ければ明日の「夕刊」ででも取り上げてみます。記事本文と関係のない自己コメント、大変失礼しました。

    1. 非国民 より:

      なんとなく予兆は感じてましたが。トランプ大統領、普通の大統領なら核戦争なんて恐ろしくて考えないのでしょうが、トランプなら「なに、核の20発ぐらい北朝鮮にぶち込めば全ては解決するじゃん。」と考えそう。日本と韓国には少々放射能が降っても、アメリカは関係ないからねなんてなりそう。北朝鮮の難民だってトランプだと「皆殺しにすればそもそも難民はでないだろう。」とかなりそう。素人すぎて恐ろしい。

      1. むるむる より:

        特定の季節ならなら放射線は中国やロシアに行くんですがねww

  4. めがねのおやじ より:

    < ティラーソン長官が実際は解任、更迭ですか。穏健派と見られていたし、発言も緩かった。トランプ大統領にすれば短気そうだし、『もういい!』でしょう。後任のポンペオ氏はCIAの元トップ。こりゃ大統領、本気だね。それなら、会社経営者のティラーソン氏をなぜ最初に持って来たのか?この辺が政治のシロウトらしいですな。ま、ちゃんと仕留めてくれたら文句言いません。
    < 失礼しました。

  5. 歴史好きの軍国主義者 より:

    いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    >「北朝鮮が核開発を放棄して、国際原子力機関(IAEA)の査察を再び受け入れる場合に言及し、日本政府が機材などに要する初期費用を支援する」

    一日待ったのですが・・・まことに残念ですが、日本は大チャンスを逃したと思います。

    この発言を公式文章として日韓共同で作成し、その文章に併せて以下の内容を盛り込むべきだったと思います。

    ・かつて日米韓は北朝鮮の核武装阻止のため金銭を供出した。
    ・その金銭は核兵器の開発に流用され失敗したことを日韓は本文書にて確認する。
    ・今回日本はは北朝鮮の核武装放棄のため国際原子力機関(IAEA)の査察を再び受け入れる場合に言及し、日本政府が機材などに要する初期費用を支援のための金銭を供出する。
    ・将来北朝鮮が再度核武装を行い今回の金銭供出が核放棄に役立たなかった場合、これ以上同様の失敗を繰り返さないように日本は「核放棄に対し武力の行使を含む「あらゆる解決」を行うことを日韓は了承・確認する」。
    ・この文章は北朝鮮に対する「最終的かつ不可逆な核放棄」に関する解決策として日韓双方が合意する。

    以上の宣言文章を作成し、発表した後、米中露台およびASEANに説明の特使を送るべきだったと思います。
    もちろん了承に関して文章を作り各国の合意として「国際社会に公式発表」しておくのです。

    その結果として「核放棄に対し武力の行使」を「連合国憲章敵国条項を発動させることなしに行う」前例ができると思います。

    国際社会が容認して日本が武力行使した(または武力行使を容認する環境をつくった)前例があれば、以後他国が日本に対して「連合国」憲章の敵国条項を発動するのは格段に困難になります。

    北朝鮮が核放棄の合意を「必ず裏切る」ことを見越せば、これって大チャンスですよね。

    その大チャンスを逃したのは・・・日本にとって本当にもったいなかった。
    つくづく思います。

    以上です。性悪説に立った下劣な駄文でした。本当に失礼しました。

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