【速報】非核化と南北首脳会談と謎の運転席理論
本日は途中まで執筆した原稿をいったん中断し、緊急で入ってきた、「北朝鮮非核化対話に応じる」とするWSJなどの記事を「速報」として紹介するとともに、これに関する見解を申し上げておきたいと思います。
目次
非核化と南北首脳会談
緊急で差し替え
当ウェブサイトでは、「似たような話題」を連続して掲載するのは控えたいと考えています。そして、連日のように朝鮮半島問題について取り上げているので、本日はまったく違うテーマで記事を執筆し、あらかた完成しかけていました。ところが、先ほど、北朝鮮について、いくつかの重要な報道を発見しました。
North Korea Says It Is Open to Talks With U.S. About Abandoning Nuclear Weapons(米国時間2018/03/06(火) 07:53付=日本時間2018/03/06(火) 21:53付 WSJオンラインより)
【南北会談】/北と韓国、首脳会談開催で合意 4月末、板門店で 北朝鮮は「米国とも対話の用意」(2018.3.6 20:22付 産経ニュースより)
さて、私が現時点で発見しているのは、英語版だと米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)による記事、日本語版だと産経ニュースの記事です。ただ、一読したところ、どちらも情報源はほぼ同じです。
『【夕刊】どうして南北特使報道が出てこないのか』でも触れたとおり、韓国政府は韓国大統領府の鄭義溶(てい・ぎようChung Eui-yong)国家安保室長らから構成される「特使」を、月曜日から2日間の日程で、北朝鮮の首都・平壌(へいじょう)に派遣しました。
そして、双方のメディアの報道は、この「特使団」らがソウルで記者会見に応じた内容を記事に仕立てている、ということのようです。
そこで、本日は急遽、記事を差し替え、南北会談についての所見を報告したいと思います。
WSJ記事は「米朝対話」に焦点
まず、WSJの記事については「北朝鮮が非核化を巡り、米国との対話の意思を持っている」という点に焦点があてられています。記事の書き出しは、次のとおりです。
“North Korean leader Kim Jong Un told a visiting South Korean delegation that he was willing to hold talks with the U.S. about giving up nuclear weapons and normalizing relations with Washington, and would halt weapons tests during any negotiations, officials in Seoul said Tuesday.”(北朝鮮のリーダーであるキム・ジョング・ウンは同国を訪問した南朝鮮の使節団に対し、北朝鮮の非核化や米朝国交正常化を巡って米国と対話する意思を持っていると明らかにし、また、交渉中のいかなる武器実験も停止する準備があると述べたことを、火曜日にセオウルの当局者が述べた。)
(※余談ですが、文章中の “Kim Jong Un” とは北朝鮮の独裁者・金正恩(きん・しょうおん)のことであり、 “Seoul”「セオウル」とは韓国の首都・ソウル市のローマ字転写なのだそうです。私にはどうみても「セオウル」としか読めませんが…。また、 “South Korea”、つまり「南朝鮮」という用語についても、原文どおりに訳している点についてはご了承ください。)
それはともかく、WSJの記事は、北朝鮮から帰国したばかりの鄭義溶氏らの記者会見をベースに組み立てられており、て鄭義溶氏の発言を信じるならば、金正恩が自ら「非核化」に言及した格好です。
また、WSJは3段落目で、
”Mr. Kim also said he would be willing to meet South Korean President Moon Jae-in in late April, in what would the third-ever summit between leaders of the two Koreas, Mr. Chung said.”(チュング氏によれば、キム氏はまた、南朝鮮のモオン・ジャエ・イン大統領と4月下旬に会う意思があると述べた。これが実現すれば、2つの朝鮮のリーダーがサミットを開催するのは史上3回目となる。)
としており、これが産経ニュースの方のタイトルとなっているものです(※余談ですが、 “Moon Jae-In”とは「文在寅(ぶん・ざいいん)」の朝鮮語読みのローマ字音写だそうですが、それにしてもよくぞここまで発音とかけ離れた表記を採用するものだと呆れてしまいます)。
産経記事は「南北首脳会談」に焦点
一方、産経ニュースの記事では、タイトルに「4月末に板門店で南北首脳会談」としたうえで、冒頭にこの話題を持ってきました。それだけで、同じ題材を取り上げているにも関わらず、WSJとはずいぶんと違ったニュースに見えてしまうから不思議です。
また、情報量としてはWSJの報道に圧倒的に軍配が上がります。というのも、WSJの記事に含まれていて産経ニュースの記事に存在しない情報が、いくつかあるからです。たとえば、次のような項目です。
- 鄭義溶氏らは今週、米国を訪問するとともに、近日中にモスクワ、東京、北京を訪れ、近隣国に交渉の内容について説明する予定だ
- 米韓合同軍事演習の再開については金正恩が「理解を示した」としている
- 南朝鮮にとっての敵地である平壌ではなく、より南朝鮮の首都に近い場所である板門店での首脳会談は、南朝鮮側に地の利があるため、いわば南朝鮮の政治的勝利だ
これに対して、産経の記事にあって、WSJの記事にないのは、
「金正恩政権がどこまで核・ミサイル開発を中止する意思を示したかは依然不明だ」
という、産経新聞独自の見解の下りくらいなものでしょう。
ところで、すべてのニュースは、記者、新聞社が「重要だ」と判断する内容から順番に記載されます。産経ニュースは「南北首脳会談」を最初の段落に持ってきましたが、WSJはこれを第3段落に持ってきました。このことから、産経ニュースは「非核化」よりも「南北首脳会談」を、WSJは「南北首脳会談」よりも「非核化」を、それぞれ「より重要だと考えている」、ということでしょう。
もちろん、「非核化」と「南北首脳会談」は、いずれも、北朝鮮のしたたかさと韓国の危うさが、同時に示されていると思います。しかし、私に言わせれば、今回の報道に関していうならば、むしろ重要な情報は「非核化」の方でしょう。
これをどう読むべきか?
前提は「運転席理論」
ところで、今回の発表は、あくまでも北朝鮮を訪問した韓国当局者が述べたものです。このため、北朝鮮が本当に「非核化」と「南北首脳会談」を提示してきたのかどうかという確証は持てません。ただ、私は今回の情報については、相当に確度が高いと考えています。
その理由について申し上げる前に、前提条件として頭に入れておく必要があるのは「運転席理論」です。詳しくは『理解に苦しむ韓国の「運転席」理論』でも申し上げましたが、簡単にいえば、「韓国自身が朝鮮半島問題をハンドリングする」という、非常に思い上がった考え方です。
考えてみればわかりますが、韓国はこれまで、周辺大国に翻弄(ほんろう)される歴史を辿ってきました。自分たちの運命を自分たちで決断したことがないのです。いや、厳密に言えば、「最悪のタイミングで最悪の決断をして来た結果」が、現在の朝鮮半島の歴史でもあります。
そんな韓国人にとって、「朝鮮半島問題で文在寅(ぶん・ざいいん)氏が『運転席』に座り、米中日露などの周辺大国に対して主導権を示す」ことは、積年の憧れだったとしても、不思議ではありません。なにより、先ほども紹介したWSJ記事にあった、「特使が日米中露4ヵ国を訪問して交渉の内容を説明する予定だ」とする下りも、こうした「運転席理論」に基づく自尊心を刺激する材料としては最適です。
そして、文在寅氏が北朝鮮核問題を「解決」すれば、「史上最高の指導者だ!」とばかりに、韓国国民は歓喜することでしょう。いや、もう少し厳密に言えば、別に「解決」する必要などありません。「解決に向かっている」かのように装うだけでも十分です。
北朝鮮は一枚上手
つまり、北朝鮮は特使に対し、最高のタイミングで最高の手土産を持たせた、と考えられるのです。
考えてみれば、平昌(へいしょう)冬季五輪以降、文在寅氏に対する政権支持率は、それまでの80%台から60%台に低下した、との報道がありました(※ただし、調査によっては支持率にかなりのバラツキが見られますが…)。
しかし、北朝鮮がこの「運転席」理論を熟知し、韓国国民のプライドを少し満たしてやったとしたら、キレイに辻褄が合います。というのも、北朝鮮にとっては「手下」である文在寅政権が継続することが、北朝鮮自身の国益に合致しているからです。
また、北朝鮮が最終的に、本当に非核化に応じるという保証など、ありません。「非核化の用意がある」と言いながら交渉を引き延ばし、その間、核・ミサイルなどの開発を継続するというのは、北朝鮮のこれまでの常套手段だからであり、金正恩らの発言など、一切信頼に値しません。
そう考えるならば、先ほどのWSJ記事にあった、「交渉中は武器実験を中断する用意がある」という発言も、単なる時間稼ぎと見るべきでしょう。ただ、こうした「カード」を提示することで、米国が北朝鮮攻撃に踏み切り辛くなるという効果が生じることも事実です。
このように考えていけば、金正恩の発言には、次の2つの狙いが込められていると見るべきでしょう。
- 「非核化」というカードを提示することで、さらなる時間稼ぎを狙うこと
- 韓国を「仲介役」にすることで、文在寅政権に「花を持たせる」こと
文在寅政権が続けば続くほど、北朝鮮にとっては「赤化統一」という目標に近づきます。経済大国であるわりには、国家としての軸もなく、ふらふらしている韓国(南朝鮮)は、北朝鮮にとっては格好の餌食なのです。そのことに気付かず、能天気に「運転席に座った」などと歓喜する韓国の様子は、むしろ滑稽ですらあります。
韓国側で「反動」は生じ辛い
今回の北朝鮮の提案が事実だったとしたら、これは米国に対してだけでなく、韓国に対しても強力な牽制となります。なぜなら、文在寅政権の急激すぎる北朝鮮への擦り寄りを修正する動きを封じ込める効果があるからです。
たしかに最近の文在寅政権の対北擦り寄りは急激すぎますし、このまま文在寅政権が続けば、早ければ5年以内に赤化統一が完成してしまいかねません。ただ、以前から当ウェブサイトでは、「急激すぎる動きには必ず反動が生じる」と申し上げて来ました。
万に一つ、文在寅政権に対する支持率が低下し、韓国名物の「ローソク・デモ」で引き摺り下ろされる可能性がないとは言えません。このため、私は恒例の「朝鮮半島の6つのシナリオ」のアップデートを先送りにしていたのです。
しかし、今回の北朝鮮の動きで、「反動」が封じ込められる可能性が出て来ました。要するに、1948年の韓国建国以来、初めて韓国大統領が朝鮮半島問題の「運転席に座った」からです。もちろん、本当に運転席に座っているのではなく、「運転席に座っていると思っているだけ」の可能性もありますが…。
米国はこれに応じるか?
ただし、ここでもう1つの重要な論点があります。それは、肝心の米国が、韓国経由で北朝鮮が提案してきた内容に応じるかどうか、です。
仮に米国がまともな判断をするならば、韓国経由での米朝交渉の提案を、何らかの理由を付けて却下するはずです。なぜなら、この提案に乗ってしまえば、北朝鮮による韓国に対するコントロールがさらに進んでしまいますし、また、米国としても、米朝交渉の期間中は、北朝鮮攻撃に踏み切れないからです。
ただ、それと同時に私は、昨年暮れから米国の朝鮮半島問題に対するハンドリング能力に対して、深刻な疑義を抱いています。北朝鮮攻撃にあたっての絶妙なタイミングを逃してしまいましたし、今年の1月には、韓国の申し出に応じて米韓合同軍事演習を延期してしまいました。
さらには、平昌五輪の開会式や閉会式で、ペンス米副大統領やイヴァンカ大統領補佐官らを北朝鮮の代表者と同席させられた様子を見ていると、どうも米国は韓国の「扱い方」を理解していないのではないかとの懸念まで感じてしまいます。
このため、米国を初めとする周辺大国が「韓国ごときに朝鮮半島問題のハンドリングを許すか」という論点については、あと1~2週間程度、見極めが必要です。なお、少なくとも私は日本の有権者の1人として、日本政府は絶対にこれを許してはならないと考えています。
この問題で、日本政府はおそらく、少なくとも米国政府、中国政府とは連携を取ることになるでしょう。安倍政権が2015年12月の「日韓慰安婦合意」以来、ケチがついている対朝鮮半島外交の失点を挽回することができるかどうかも、私個人的には重要な注目点なのです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
< 今日も配信ありがとうございます。
< 韓国の一方的な発表ですが、「ここに来て韓国はついに裏切り者のベールを脱いだか」と感じました。「あまり北朝鮮との直接対話をするな」という日米の狙いを踏みにじる行為です。だから、いわんこっちゃない、文大統領は舞い上がってますよ「オレが半島のキャスティングボードを握っているんだ、車の運転席はオレだっと。
< 五輪直前に北は参加表明、そこから一気に首脳会談まで間髪を入れず攻めてきました。これを『南北統一』『民族同胞』と思っているのは文以下左派系のグループだけ。板門店で会談しようが、ゆくゆくは高麗統一国になろうが、経済援助はただでさえ苦しい韓国の経済を注入することになる。北の2000万人の栄養不良の人民を喰わせていくのは、統一より難しい。また最貧国に成り下がる。まともに考えたら統一高麗国は破綻する可能性もある。、今の韓国資産は北に搾り取られる。文など左派、リベラル派などは経済不振の責任をを取らされて失脚n除去されるだろう。
< 日本はじめ自由主義連合が北朝鮮、韓国にできる事、それは運転席に調子に乗ってステアリング(ハンドル)を握っていると勘違いしている文を引きずりおろすことだ。できないなら、車のガソリンを抜けばいい。つまり韓国に対して、安保関連法案で対北朝鮮の制裁を入れているのに、平気で破っている事。慈善事業と称して500万ドルも800万ドルも注射する。これには、対韓国への経済制裁で日干しにして、車の運転手がガス欠になるよう、仕組むべきです。太平洋、日本海、東シナ海での瀬渡しを見張り、警告、発砲も可能なように改める。抵抗が酷ければ砲撃、撃沈させる。
< これを実行したら日干しになる。
< 続きです。
< もう危機はスグそこまで来ています。韓国は絶対に信用できない。北と統一してさらに反日侮日をヒートアップさせる。日本はまず、アジアの自由主義圏と悪4カ国の勢力地図が塗り替えられる事を心に叩きこむ。そこを忘れず、とにかく自分で守れる国造りが必要です。日本から見たら韓国、北朝鮮などホントは敵ではない。正面敵は中国です。憲法改正を進め、朝鮮半島の悪だくみ、反日、侮日、卑日する中華、朝鮮半島国にハリネズミのように防衛し、擦り寄ったり近づいたら発砲発射やむなしと心に決め、東アジアの唯一の自由で民主主義の国として、高い評価を得ようじゃないですか。
< 失礼します。
やはり韓国左派大統領ですね。結局、金大中大統領の時の焼き直しになる予感しかしません。文大統領も親類が北に居ることもあり、北の核を手に入れて統一し、(北の貧困とか犯罪率とかは無視で)世界に名だたる先進国へってのが伺えますし。
どの様な形にしても統一すれば米軍撤退は必至でしょうし、そろそろ緩衝地帯などと寝惚けた不安定要素の高い平和論より、TPP、ダイアモンド安保等、抑止力になる軍備等の現状の外交政策を加速して進める必要が高くなったと感じる次第です。個人的には韓国の地政学上の緩衝地帯論など、米国にとっての緩衝地帯なだけであり、反日活動が著しい現状は他の中露のような社会主義国家と何ら変わらないと思ってます。
故に韓国が好き勝手外交政策を実施して隣国から敵国になってくれた方が、日本の国内世論統一にはプラスになりそうですよね。米国自体も同盟国で安保があるとはいえ、韓国に騙されないとも言えませんし、必ずしも血を流すとも限りません。
米韓を探りつつ、日本の国益重視で多角的な外交政策がとれている政府に期待するしかなさそうですね。
破局に終わった六ヶ国会議を思い出しますね。金正恩さんは父親の金正日氏に倣って時間稼ぎを行うとしています。オバマ大統領ならば即座に拒否したと思われますが、ディールが好きなトランプ大統領はどう動くか見ものです。ただ、金正日氏のときは核開発を始めたときでしたので有効でしたが、現時点で時間稼ぎをしても肝心のICBM開発が行き詰っているので無意味となります。きちんとアメリカ合衆国の例えばワシントンに着弾せるには複数の偵察衛星、自前のGPS、太平洋を自由に又は隠密に行動できる海軍、ミサイルを制御するアクチュエータ等の部品を製造できる技術力等が有りませんし、輸入することも出来ません。核実験にしても爆縮レンズを設計・製造・維持できる生産基盤がありません。手作りしか能が無ければ実験して確かめるしかありませんが、そう何回も行うことは出来ません。と言って世界23位の北が世界12位の南+在韓米軍に敵う訳ありませんから、現状維持しか打つ手はないことになります。後は韓国だけが頼みになると思います。