【夕刊】韓国メディア「米国が南北対話を歓迎」のウソ

当ウェブサイトではここ数日、連続で朝鮮半島の話題を取り上げていて、いいかげん、読者の皆様も辟易しているかもしれません。ただ、そうこうしているうちにもダラダラと続報が入ってきてしまっています。そこで、本日以降は開き直って、徹底的にこの問題をフォロー・アップしたいと思います。

南北会談の余波は続く

本日私は、『慰安婦合意という「地雷」を踏んだ韓国大統領』という記事を、連日の朝鮮半島分析の集大成として執筆したつもりでした。

しかし、その後も隣国からは、変な情報がダラダラ、ダラダラと断続的に流れて来ています。

何日も何日も、同じ話題ばかり取り上げるのは、私の本意ではありません。しかし、北朝鮮の核開発問題や慰安婦合意破棄問題の評論に首を突っ込んだのは私自身ですから、これについてはもう開き直って、徹底的にフォロー・アップしようと決めました。

そういいうわけで、本日も「夕刊」として、いくつかの話題をお届けしたいと思います。

ウソツキ国のウソツキメディア

韓国メディア、「南北協議を米国も評価」との印象報道

韓国メディアが相次いで、文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領がドナルド・トランプ米大統領と電話会談を行ったことを報じています。

ここでは、韓国を代表する「保守メディア」である中央日報と、韓国を代表する通信社である「聯合ニュース」のリンクを紹介しておきましょう。

韓米首脳「北朝鮮の平昌五輪参加、米朝の非核化対話につながる可能性」(2018年01月11日08時04分付 中央日報日本語版より)
韓米首脳 南北対話を評価「米朝対話につながる可能性」(2018/01/11 00:40付 聯合ニュース日本語版より)

両メディアともに、1月9日の南北高官級協議が「米朝の対話につながる可能性がある」と評しているという共通点があります。

なお、細かい話かもしれませんが、中央日報の記事では末尾に

トランプ大統領は4日の電話会談で平昌五輪の期間に韓米合同軍事演習を延期することで合意し「米国は100%文大統領を支持する」と話した。

と述べていますが、これはホワイトハウスの報道発表にはなく、韓国大統領府が一方的に発表した誤報である可能性が極めて高いものです。

さりげなくウソを紛れ込ませるのは韓国メディアの常套手段ですが、いずれにせよ、中央日報や聯合ニュースの記事を読めば、

文在寅大統領はトランプ大統領に対して南北対話につき説明し、トランプ氏はこれを高く評価した

かのような印象を持つ可能性は高いでしょう。

またしてもウソが紛れていた!

では、これに対応するホワイトハウス側の発表を読んでみましょう。

Readout of President Donald J. Trump’s Call with President Moon Jae-In of the Republic of Korea(2018/1/10付 ホワイトハウスHPより)

リンク先はもちろん、英語です。ただ、比較的簡単な言葉で綴られているので、英語が得意な方であれば、原文を直接、読んでいただくことができるでしょう。

ここでは、一行ずつ私の文責で仮訳を充てながら、報道発表文を紹介します。

  1. President Donald J. Trump spoke today with President Moon Jae-in of the Republic of Korea.(ドナルド・J・トランプ大統領は本日、朝鮮共和国のモオン・ジャエ・イン大統領と電話会談した。)
  2. President Moon briefed President Trump on the outcomes of the discussions between North and South Korea on January 9 and thanked President Trump for his influential leadership in making the talks possible.(モオン大統領はトランプ大統領に対し、南北朝鮮が1月9日に行った協議の結果の概要を説明するとともに、この協議を成功裏に導いたトランプ氏の影響力に謝意を示した。)
  3. The two leaders underscored the importance of continuing the maximum pressure campaign against North Korea.(2人の首脳は、引き続き、北朝鮮に対する最大限の圧力の重要性を確認した。)
  4. President Trump expressed his openness to holding talks between the United States and North Korea at the appropriate time, under the right circumstances.(トランプ大統領は合衆国と北朝鮮が適切な時期に、正しい環境下で対話する準備があると述べた。)
  5. President Trump told President Moon that Vice President Mike Pence would lead the U.S. Presidential Delegation to the Pyeongchang Winter Olympics.(トランプ大統領はモオン大統領に対し、マイク・ペンス副大統領をピェオングチャング冬季五輪に派遣すると述べた。)

以上、米国側の報道発表は、この5行です ((※著者注:Moon Jae inモオン・ジャエ・インとは、文脈から判断して文在寅(ぶん・ざいいん)のことと思われます。また、Republic of Korea朝鮮共和国とSouth Korea南朝鮮という表現が出てくるが、これについては原文に忠実に訳しています。)) 。

あれ?おかしいですね。聯合ニュースの記事タイトルにあった「南北対話を評価」とする下りは、どこにもありません。

それどころか、3行目には、「米韓両国首脳が北朝鮮への最大限の圧力を継続することの重要性を確認した」とありますが、これについては中央日報、聯合ニュースいずれの記事にも言及がなされていません。

さらに、両メディアが報じた、「南北対話が朝鮮半島の非核化に向けた米朝対話につながる可能性がある」とする下りについても存在せず、あるのは「米朝両国が条件付きで対話に応じる可能性がある」とする下りであり、これは従来の米国政府の見解とまったく変わっていません。

韓国政府は1人で踊る

以上より、韓国メディアの報道を鵜呑みにすると、ウソがたくさん紛れているということが、よくわかっていただけたかと思います。

北朝鮮の核問題については、すでに日本と米国は、「韓国抜き」で解決することを、決断しなければならない局面にあります。今朝、私は「米韓同盟は事実上、死文化してしまった」と申しあげましたが、ホワイトハウスの報道発表からは、米国がそこまで腹を決めたかどうかは判断できませんが、少なくとも米韓両国のすれ違いは誰の目にも明らかになったとだけは言えるでしょう。

そして、韓国政府は日米から外され、中国からも軽んじられ、北朝鮮に利用されるだけ利用されて、結局は「1人で踊る」ことになるのではないかと私は予想しているのです。

オマケ「安倍総理、平昌不参加」報道

こうした中、産経ニュースは速報として、安倍総理が平昌冬季五輪の開会式を欠席する意向を固めたと報じています。

安倍晋三首相、平昌五輪の開会式欠席へ 慰安婦日韓合意めぐる韓国新方針で判断(2018.1.11 07:10付 産経ニュースより)

産経ニュースは「表向き」の理由として、1月22日に召集される通常国会の日程があるためとしつつ、実際には日韓慰安婦合意を巡る韓国側の対応を受けた措置であるとしています。

この報道は官邸がリークしたものなのか、それとも産経ニュースが独自取材で確認したものなのかは、私にはわかりません。しかし、産経ニュースが報じなくても、第三者から客観的に見て、安倍総理の平昌五輪参加は絶対にあり得ないだろうということはよくわかります。

そして、それを今の段階で明らかにする必要はありません。

外交カードは最後の最後まで保持すべきものであり、とくに、韓国のような不誠実な国に対しては、それこそ平昌五輪開会式の前日まで、参加するか、しないかの態度を留保しておき、結局は参加しない、というのが一番効果的でしょう。安倍総理としては、「国会日程が忙しいが、できるだけギリギリの調整を続けている」とだけ言い張っていれば良いだけの話です。

産経ニュースの報道が、官邸によるリークなのだとしたら、少し早まったことをしたかな、という気がしますが、決定自体は穏当だといえるでしょう。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. めがねのおやじ より:

    < 毎日の更新ありがとうございます。
    <嘘つき、妄想癖の韓国メディアは、会計士様指摘の通り、おもいっくそトバシてますね。ホワイトハウスの発言では米韓軍事演習延期のあと、「米国は100%文大統領を支持する」なんて1ミリも言ってませんよ。「南北会談を高く評価した」訳ではない。本当に一方的な誤報だらけです。はけ口を日本に求め、70年間も反日やっていりゃ5千万人皆未開人になりますわ。このツケは大きいよ。それと『夕刊』とサブタイトルに付いてましたが、いいと思います。1日2回更新お願いします(無理はしないで下さい。
    < 本日の産経の報道によると、安倍首相が平昌五輪を欠席すると報じてます。1社だけなんで、政府側のリークかもしれません。しかしさすがダボハゼの韓国マスゴミは早速食いついてきました。朝鮮日報、中央日報、東亜日報は「安倍首相が不参加表明」「慰安婦問題韓国側発表を踏まえて」「日韓スワップも停止」とか、反応してます。すぐ食いつく。何の検証もない(笑)。
    < 今日の首相官邸ホームページで菅官房長官は記者の質問に対し「五輪前にペンス米副大統領が来日することに対し、歓迎する」と表明、この流れですと首相との会談後、副大統領と誰か重鎮を開会式に出すことになりそうです。五輪は選手も欠場せよ!と思っている私ですが、どこか有力国(G7のうち最低一つ)が選手団欠場しないと、東アジアから遠い国からは韓国という卑怯国無礼国、北という魔界国愚連隊国がいる現実知らず、そして日本の真意が誤解されるかもしれないです。ですから、断腸の思いで選手団出場もアリかな、と思います。団長は河野外務大臣か、安倍氏と仲の悪いらしい野田総務相。避けて欲しいのが二階氏、森氏です(認知で何を言うか分からない為。国益を損なう恐れ大)。但し、政府としては公式に何も発表していません。「首相が五輪に行くかどうか」は、最長2日前まではシークレットにして、圧をかけっぱなしにしておいた方がいいでしょう。
    < 私は中進国が開催するしょうもない見栄張りの五輪よりも、安倍首相が日本の首相として初めて東欧6カ国訪問される方が内容的には重いです。1月12日から17日まで、エストニア、ラトビア、リトアニア、ブルガリア、セルビア、ルーマニア。どの辺かあとで地球儀見ときます。経済ミッション同行なので、いいビジネス、両国が共に栄える関係の土壌づくりを期待します。
    < 失礼いたします。

  2. きゃん’t⇔R より:

    いつも楽しみに拝読しております。昨日「米国が南北対話を評価」という記事を目にした際に強い違和感を感じましたが、やはりフェイクでしたか。一部のメディア報道に限定するのではなく、広く情報を取りに行くことの重要性をあらためて実感しました。情報発信ありがとうございました。

  3. poponta より:

    お疲れ様です。
    果たして南朝鮮がどの程度日米にとって戦略上重要な国・同盟国なのか・・・明らかにコスト的に合わない、時間の無駄と思います。日米共同で事に当たるのはいいのですが時に米国も日本の梯子を外すという事も警戒しなくてはならないと考え単独でも対応できる状況にしなくてはならないと思います。ヘタレなトランプ大統領です、電撃的に協議開始、適当なところで妥結、核保有暗黙の了解、ICBMはNo、中距離ミサイルOK、などなったら日本にとって最悪の状態ですね。トランプ大統領曰く大事な同盟国を守るため軍事的支援を惜しまない・・・USAからたくさん武器を買ってください、100%日本とある、何ら変わるところはない。となりかねないですね。文在寅大統領にすれば裏取引で、北からの攻撃はないとの担保が取れれば国内問題と称して米国の影響力を削いで立場の悪くなった日本を叩きに集中してきますね、強く出れば出るほど支持率は上がります。南は瞬間的に世界の避難を浴びるかもしれませんがロビー活動(嘘のばらまき・ジャパンディスカウントキャンペーン)で先行しているので沈静化も早い、遠くの国々にすれば東アジアのちょっとした揉め事ですまされてしまいかねません。え~と解決策はあれとあれとあれを持てばかなり違うな!・・・すいません、妄想でした。

    1. poponta より:

      追伸:文大統領と習皇帝が電話会談、指示が伝達されたようです。やっぱりこれは南・北・中+露vs米・日でしょう。それにしてもトランプ大酋長、頭越しにやられてますよ!いいのそれで?

  4. 憂国の志士 より:

    年明け早々に、怒涛の如く雪崩れ込んできたこの話題に、少々疲れてしまいましたので、小休憩。

    慰安婦問題についての2015年12月28日合意は、無論「日韓間」で取り交わされたものなのですが、その合意背景にはアメリカ:米国が大きく関わっていることは周知の事実でしょう。

    ところがこの件について当の米国からは一切の付言もなく静観、傍観に終始しているかに見えます。これは何故なのでしょう? 振り返れば日韓合意は忙しい年末の、その年も暮れようかという慌ただしさのなかで急遽、形成合意された感を思い出します。

    日本に対しては米国の後押し(=督促)があり、当然に当時の朴政権にも同様に通知・通達された結果が、かの「合意」ではなかったのでしょうか。

    10億円の裏に例の大宇の件があったから、とは邪推になるでしょうが、そうではあったとしてもとても「日韓両国のみで合意した」などとは思えないのです。

    朴政権の崩壊は、日本は当然として、かの米国もその影響下において「他山の石」では済まなかったはずです。合意の裏方として関与していたのであれば当然に「一言くらい文句言って欲しい」のだがトランプは何も言わない。

    「朴がやったことは俺(文)は知らないよ」的に「それはオバマがやったことで俺(トランプ)は知らない」なんちゃって事は、無いよね、きっと…。

    1. poponta より:

      憂国の志士様 あると思います。政敵に近い者のやった事を積極的に肯定するお人よしはいないと思います。トランプ大統領は独自の詰めで文大統領に物申すと思いますがあえて慰安婦問題におよんで日韓に係らないと思います。北朝鮮問題・中国関連の問題でも米国は日本の梯子を外すと私は考えています。

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