ウェブ時代の言論を考える

最近は、国内外の情勢の急激な動きを受けて、時事的な話題が続いていましたが、ここらで少し抽象的な話に戻ってみます。先日掲載した『保守言論にもいる、「デジタル」な人たち』の続編として、本日は、「現実を見ることの大切さ」について考えてみたいと思います。

現実を見ない人たち

安倍政権は有能なのか、はたまた無能なのか。

先日、『保守言論にもいる、「デジタル」な人たち』という記事の中で、日本国憲法の改正、北方領土の返還の2つを例に挙げて、「保守言論人」を自称する人たちの中にも、なにかと問題のある主張があると申し上げました。

現実を見ない理想だけの主張であれば、誰にだってできます。さまざまな抵抗勢力が存在する中で、少しずつでも着実に、理想に向けて進展することこそが重要です。

こうした中、最近私自身が読んだ論評、当ウェブサイトに頂いたコメントなどの中から、私自身の思うところを少々紹介し、あわせて「現実に即した解決」を考える重要性について議論したいと思います。

安倍政権の経済政策は失敗だらけだが…

アベノミクスの3本矢とは、「①大胆な金融政策」、「②機動的な財政政策」、「③成長戦略」の3つの柱です。

私は野田政権の末期だった2012年当時、「アベノミクス」を引っ提げて自民党総裁に再登板した、安倍晋三氏の政策に、深く共感しました。

私は資金循環統計や金利市場の分析を専門分野の1つにしています。そして、20~30年分のデータ(資金循環統計や金利・株価・為替データなど)から判断する限り、1990年代前半の日本がデフレに陥った原因は、明らかに大蔵省・財務省の増税原理主義と日銀のデフレ政策、さらには既得権益層の硬直化にあったと見ています。

その意味で、この3つの矢は、①が日銀に、②が財務省に、③が既得権益層(とくに経団連に所属する旧態依然とした輸出企業や、新聞社・テレビ局を中心とするマス・メディア)に、それぞれ対応するものです。具体的には、①デフレで硬直した日本経済に流動性を供給し、②金融緩和下で旺盛な財政支出を行うことで有効需要を創出し、③岩盤規制を壊して経済成長を起爆させる、という流れです。

その意味で、アベノミクスは日本経済のデフレ脱却と経済成長軌道に戻すうえで、極めて適切な処方箋だったはずです。

しかし、残念ながら、現在のアベノミクスはうまく行っていません。それはなぜでしょうか?

安倍政権が実現した公約は、3本矢のうち最初の矢(つまり金融緩和)のみであり、2番目の矢、3番目の矢については、今ひとつうまく機能していないからです。

とくに2番目の矢に関していえば、むしろ2014年4月の消費増税により、景気に冷や水をぶっかけた格好となっています。さらに、3番目の矢についても、デフレ政策・コストカット政策や外国人の需要に当て込んだ政策が多く(たとえば外国人単純労働者の受け入れの解禁、外国人観光客の受入推進など)、国民生活の側ではなく経営者の側に立ったものが目立ちます。

もちろん、安倍政権は岩盤規制を少しずつ切り崩して行っていますが、それでも切り崩したのは日銀だけであり、財務省、経団連型輸出産業、マス・メディアなどの既得権益層は、ほぼ残った状態にあります。

その意味で、「現時点の」安倍政権に経済政策を期待しない人が増えても仕方がない話かもしれません。

「デジタル思考」の間違い

実際、「もう安倍政権には期待しない」と公言する人もいます。

実名を出すのは控えますが、「リフレ派」的な立場で知られる著名な経済評論家は、安倍政権のことを徹底的に批判しています。私は当初、この経済評論家については期待していただけに、いまやすっかり「安倍叩き派」に転じてしまったことが残念ですが、しかし、それと同時にこの経済評論家が安倍政権を批判するのももっともだと思います。

というのも、安倍政権が現実に、3本矢のうち2本の政策目標を達成していないからです。

しかし、それと同時に、100点か0点か、そのいずれかで判断しようとする考え方も正しくありません。私はこれを「デジタル思考」と呼んで批判したいと思います。

この「デジタル思考」の間違いとは、現実を見ていないという点にあります。

誰しも、「僕が考えた理想の世界」「私が考えた理想の世界」というものを持っていると思います。問題は、その「理想」とする世界が、人によって異なっていて、しかも、現実は現実として厳然と存在している、という点にあります。

たとえば、憲法の問題1つとっても複雑です。

保守派の論客であれば、日本国憲法などまるっきり破棄して、一から条文を起草すべきだと主張するかもしれません。あるいは、左派系の論客であれば、日本国憲法を一言一句、絶対に変えるべきではないと考えているかもしれません。

しかし、北朝鮮による核危機、中国による領海侵入を初めとするさまざまな情勢に照らして、「日本国憲法を一言一句、絶対に変えない」という考え方が、もはや通用しないことは明らかですが、だからといって「現在存在している日本国憲法はGHQに押し付けられたものだから、さっさと無効宣言し、一から条文を起草すべきだ(あるいは大日本帝国憲法に戻すべきだ)」といった考え方は、それに輪を掛けて非現実的です。

私は憲法第9条については、第2項を削除すべきだと考えていますが、衆参両院で改憲に必要な3分の2を達成するためには公明党の協力が必須であり、その公明党は「改憲」ではなく「加憲」を主張しています。これが現実です。

ということは、100%自分にとって満足がいく結果にならなかったとしても、ゼロ%よりは「マシ」だと考え、少しでも前に進むことが重要です。

アベノミクスに話を戻すと、3本矢のうち、日銀による大胆な金融緩和が達成されたことは、素直に成果だと見て良いでしょう。そして、いちどヒビが入れば、どんな岩盤規制であっても、動くときには動きます。それに向けて、改革に向けた熱い気持ちを持ちながらも、冷静な頭脳で判断し、周到に準備することが求められます。

安倍政権の経済政策がいまひとつうまく行っていないことは事実ですが、安倍総理は別にスーパーマンでも何でもありません。自民党内の反対派、霞が関の外務省と財務省、日銀、マス・メディアなどの既得権益を同時に敵に回して改革を進めることなどできません。

うまく優先順位を付けて取捨選択をしている

その意味で、リソースが限られている以上、斬り込むべき問題については、うまく優先順位を付けて取捨選択をせざるを得ないのです。

こうした中、安倍政権は、外交政策については現状でほぼパーフェクトと言って差し支えないほどの成果を上げていることも事実です。

ここで、北朝鮮を例にとってみましょう。

一見すると、北朝鮮がミサイルを発射したときも、核実験をしたときも、「遺憾の意を示す」、「最大限の抗議をする」など、口先だけでがなり立てているようにも見受けられます。しかし、これは安倍政権の問題ではありません。わが国に敵基地攻撃能力も軍法も存在しない以上、北朝鮮の脅威に対し、直接、日本の自衛隊が北朝鮮に先制攻撃を行うということはできません。その意味で、「口先だけで抗議する」しかないのは、安倍政権の責任ではなく、憲法第9条第2項を放置し続けた、私たち日本国民の責任です。

ただ、安倍政権としては、うまく国際社会を巻き込みながら、徐々に北朝鮮を追い詰めていることも事実です。

例えば、北朝鮮に関する安保理決議は、1993年以来12本出ています。しかし、そのうちの7本は、第2次安倍政権が発足して以来のものであり、とくに直近の9月12日の決議は、全会一致で採択されています。

  • 1993年…安保理決議第825号
  • 2004年…安保理決議第1540号
  • 2006年…安保理決議第1718号
  • 2009年…安保理決議第1874号、第1887号
  • 2013年…安保理決議第2087号、2094号
  • 2016年…安保理決議第2270号、2321号
  • 2017年6月3日…安保理決議第2356号
  • 2017年8月6日…安保理決議第2371号
  • 2017年9月12日…安保理決議第2375号

これらの安保理決議には、保守派論客の中にも、「どうせ実効性などない」とおっしゃる方もいるのですが、それは間違っています。安保理決議を積み重ねれば、北朝鮮自身にとってはもちろん、北朝鮮を擁護する中国、ロシアに対しても、国際社会の牽制として機能するのです。

「決めつけ」と「思考停止」

北朝鮮絡みでパチンコ規制についても言及しておきましょう。

先日の『パチンコ屋の倒産は増加するのか?』という記事に対して、こんなコメントを頂きました。

コメント主:ちばにゃん 様(コメント日時:2017/09/19 09:17)

安倍が風適法改正させて北朝鮮に打撃を与えたと思ってるならお人好しもいいところですよ。

過去の自民党とパチンコ業界の繋がりだけでなく安倍と里見の個人的関係を調べてみたら?

もちろん民進党などの野党も大差ないので、自民党のみが悪とか言いませんが。

ただし、

今回の改正はIR絡みで仕方なくやっている事であって、美味しい金ヅルをなくそうとか政治家も警察庁も一切思ってないから(ここ重要)。

だからこそ、業界と相談して依存症の客が逃げない程度の改正に止めたでしょ?

貴重なコメント、大変ありがとうございます。

この方のコメントに言及されている「IR」とは、おそらく野党側から「カジノ法案」と批判された統合型リゾート(IR)整備法のことを指すのだと思います。また、「安倍と里見の個人的関係」とあるのは、安倍晋三総理大臣と、セガサミーホールディングスの里見治会長兼社長のことでしょうか?

安倍総理と里見氏の関係については、ビジネスジャーナルなど、いくつかのメディアでたびたび報じられていることは事実です。ただ、安倍総理と里見氏が個人的な親交関係を持っているという報道が事実であったとしても、パチンコ規制の本質とは全く関係ありません。だいいち、セガサミーHDはパチンコ・パチスロのメーカーであるサミーだけでなく、大手ゲーム会社のセガとセットで成り立っている会社です。

「ちばにゃん」様は、「ここ重要」と強調されたうえで「美味しい金ヅルをなくそうとか政治家も警察庁も一切思ってないから」と断言されていますが、出玉規制が強化されていることは事実であり、「業界と相談して依存症の客が逃げない程度の改正に止めたでしょ?」という文章と全く繋がりません。

これに加えて、安倍政権はギャンブル依存症対策を着実に進めています。「ちばにゃん」様は、私が紹介した安倍政権による「ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」を完全にスルーされているようなので、改めて紹介しておきます。

ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議について(2017/08/29付 首相官邸ウェブサイトより)

「ちばにゃん」様、菅義偉(すが・よしひで)内閣官房長官の次の発言は、少し長いですが、非常に重要なので、頑張って読んでみてください。

まず、既に実施しております、出玉規制等の遊技機の射幸性抑制を始め、全国における治療・相談拠点の整備、適切に対応できる医師等の人材育成、自助グループ等の民間団体への支援を推進していくとともに、学校教育・消費者教育における指導・啓発を推進することといたしております。さらに、今後は、公営競技における一元的・専門的に対応できる共通相談窓口の設置や、インターネット投票等における本人・家族申告におけるアクセス制限措置の実施、ATMのキャッシング機能の廃止等に新たに取り組んでいきたい。ギャンブル等依存症により不幸な状況に陥る人をなくし、健全な社会の構築に向けて、今後とも、政府一体となって、必要な取組を徹底的かつ包括的に実施してまいりたいと思います。

安倍政権は現在、まさに真綿で首を絞めるように、徐々に出玉規制を強化するとともに、ギャンブル依存症患者を治療する体制を構築することで、パチンコ業界の縮小と健全化を図っているのです。

いずれにせよ、コメントを頂けるのは非常に嬉しいのですが、残念ながらその程度のコメントでは、当ウェブサイトをご愛読頂いているほかの読者の皆様を納得させることは難しいと思います。

もっといえば、「どうせこうだ」「絶対~に違いない」といった思い込みは、最近「パヨク」と呼ばれて揶揄されているような左翼崩れの人たちと姿勢が似ています。結論を決めて、論拠も示さずに断言するのは、「ちばにゃん」様ご自身にとって、非常に危険です。

それでももし、異論があるのでしたら、ぜひ、ウェブサイトのコメント欄に書き込んで下さい。ただし、当ウェブサイトの読者レベルは相当に高いので、読者のみなさんを納得させるようなコメントを期待しております。

洗脳と説得

マス・メディアとウェブ・メディアの違い

以上、アベノミクス、憲法、北朝鮮、パチンコを例に挙げてみましたが、これらには共通点があります。それは、理想は理想として掲げることが重要であるものの、現実から乖離した解決などあり得ないということです。

そして、もう1つの重要な点は、議論をするときに結論を押し付けない、ということだと思います。

私自身のウェブサイトがそうですが、本文部分では、私なりに主張したいことを記載しています。しかし、それに賛同しない方であれば、どなたでもご自由に、コメント欄に書き込んで頂くことができます。逆に言えば、説得力のない文章、独り善がりな主張を書けば、多くの方々から批判されるのです。このため、私自身も根拠なしに勝手な思い込みで記事を書くわけにはいかないのです。

そして、最近は多くのウェブ・メディアで、読者コメントの投稿が自由となっているのです。というよりも、私の様な無名な社会人評論家の場合、読者コメントが投稿できないウェブサイトには、そもそも読者が集まって来ません。

そうなると、ウェブ・メディアは必然的に、「結論ありき」での主張ではなく、論拠をきちんと示した上で、「私はこう考えるのですが読者の皆様はいかがでしょうか?」と呼びかけるスタイルとならざるを得ないのです。あるいは、「説得」とでもいえば良いのでしょうか?

こうしたスタイルは、マス・メディア(とくに新聞とテレビ)の報道スタイルとは真逆でしょう。

とくに、今年2月以降、マス・メディアが報じた「もり・かけ『問題』」は、まさに常軌を逸していました。森友学園問題、加計学園問題は、いずれも、

安倍総理が内閣総理大臣としての地位を悪用し、お友達が経営する学校法人に特別な便宜を図った

とする印象を有権者に刷り込もうとした事件であり、ここまで来ると「捏造報道」と呼んでも誇張ではありません。そして、これらの問題の正体は、もともとが印象操作であるため、ろくに論拠などありません。マス・メディアは、まともに論拠もないこれらの「問題」を「問題だ」と捏造し、大騒ぎしたのです(ちなみに、ありもしない問題を捏造し、大騒ぎするという手法は、旧共産圏における人民の洗脳と、やり口がそっくりです)。

もちろん、とくに加計学園「問題」の方は、首相官邸側も初動にいくつかのミスがあったことも事実でしょう。とくに、前川喜平・前文科省事務次官による首相官邸に対する攻撃に対しては、安倍総理側も「事実無根である」と力強く断言して反論すべきでした。その意味で、首相官邸側に全く落ち度がなかったとは言えません。

しかし、やはりマス・メディアの在り方に一番問題があることは間違いありません。

もともとマス・メディア(とくに朝日新聞と在京テレビ)には、自分たちが決めた結論を押し付けてくるという傾向がありました。しかし、そして、とくに加計学園「問題」は、ありもしない問題を捏造して、一般の有権者を「洗脳」しようとしたという意味で、マス・メディアが「一線」を越えてしまった事件だとも言えます。

「もり・かけ『問題』」とは、マス・メディアと私たち国民の間の信頼関係が決定的に壊れたという意味で、ある意味「歴史に残る事件」だったのかもしれません。

なぜ「もり・かけ『問題』」が発生したのか?

では、なぜマス・メディアは「もり・かけ『問題』」という捏造報道事件を起こしたのでしょうか?

私はこれについて、2つの仮説を抱いています。

1つ目の仮説は、「まだ自分たちに世論操作を行う能力があると証明しようとした」、というものです。

1980年代から90年代にかけて、

テレビ局の超売れっ子キャスターには内閣の1つや2つを潰す力がある

と言われたこともあるようですが(※情報源不詳)、実際、『ニュースステーション』(テレ朝)や『筑紫哲也NEWS23』(TBS)のような人気番組が社会的影響力を持っていたことを、私自身も記憶しています。

ただ、昔の新聞・テレビには、まだ「矜持」のようなものがありました。少なくとも、同業他社の捏造報道についてはきちんと報じるなど、真実を伝えようとする気概のようなものは(不十分ながらも)存在していたように思えます。

たとえば、私自身がよく覚えているエピソードは「沖縄KY事件」です。

これは、朝日新聞社のカメラマンが、沖縄県のサンゴ礁を傷つけ、「KY」という落書きを自分自身で作成し、さも誰かがサンゴ礁を棄損したかのように報じたという、一種の報道犯罪です。これが判明した日に、久米宏氏がキャスターを務める『ニュースステーション』は、この話題を番組の最後の1分間ほどで、さも「緊急ニュース」であるかのごとく報じて逃げたのに対し、『筑紫哲也NEWS23』の方は、冒頭からじっくりと報道しました。

この時代、新聞とテレビを中心とするマス・メディア以外に、情報を伝達する媒体が存在しなかったため、国民の多くはマス・メディアの報道犯罪を知るすべがなかったのです。

しかし、現代は違います。インターネットを通じて、人々は自由に情報を伝達し合うことができます。同じ朝日新聞のネタでいえば、1980年代から30年以上放置された「従軍慰安婦報道」が捏造だと判明したのも、「真実が知りたい」と思う人々の情熱が、インターネット空間で結実したためです。

つまり、現代社会では、捏造報道を行っても、インターネットを通じてすぐに証拠付きで論破されてしまうため、マス・メディアが人々の世論を操ることができなくなりつつあるのです。

そこで、今回の「もり・かけ騒動」は、マス・メディアが昔からの力をまだ失っていないことを見せつける目的で仕組んだものだとするのが、私自身の最初の仮説です。

事実、マス・メディアは最大瞬間風速で25~30%ポイント程度、安倍政権の支持率を落とすことに成功しています。この仮説は、あながち見当違いではないでしょう。

改憲を阻む最大の既得権益層こそマスゴミ

しかし、「なぜマス・メディアは捏造・偏向報道を行ったのか」とする点について、私が立てている仮説は、もう1つあります。

それは、「加計学園報道」が激化したのが、安倍総理が自民党総裁として「憲法改正」に言及した、今年5月以降のことだ、という点です。

憲法といえば第9条が最も注目されやすい個所ですが、それと同時に、改憲にはもう1つの重要な意義があります。それは、戦後70年以上、いっさい手を加えられずに存続してきた憲法に、1箇所でも改正が加えられる、という点です。

それを、1度でも、あるいは1箇所でも改憲に成功すれば、それは歴史的な意義があります。そして、ある意味で「戦後の脱却」を象徴する出来事でもあります。

戦後のGHQによる「WGIP体制」に乗っかってきたマス・メディアにとっては、憲法改正が成立してしまえば、自分たちが立脚して来た既得権益に、象徴的であるとはいえ、ヒビが入ることを恐れているのではないでしょうか?

もちろん、これはあくまでも私の仮説です。憲法第9条を修正したところで、表現の自由について定めた第21条を触らなければ、報道の自由が侵害されるということはありません。このため、

マス・メディアが改憲を阻もうとしている

という仮説は、いま1つピンとこないという人は多いでしょう。

しかし、憲法は戦後最大の岩盤規制であり、それに1行でも、あるいはヒトコトでも改正が加えられようものなら、それはまさに「山が動いた」瞬間です。

産業界最大の既得権益階層であるマス・メディア産業の人間にとって、これは脅威に他ならない―のかもしれません。

すでに既得権益は崩れ始めている!

ただ、マス・メディアが改憲を全力で阻止しようとしていることは事実ですが、すでにマス・メディアの既得権益は崩れ始めています。

それは、インターネットの急激な普及です。

私たち一般国民は、いまや、その気になれば、誰だってインターネットを使って情報発信をすることができます。私自身も「評論家」としてはほぼ無名ながら、レンタルサーバを調達し、ドメインを取得すれば、自分だけのウェブサイトを、せいぜい年間1~2万円程度で持つことができます(※私の場合は会社のウェブサイトと同居しているという事情もありますが…)。

あるいは、大手ブログサービスを使えば、無料でブログを持つことも可能です。

さらに、ウェブカメラとマイクさえあれば、動画配信もできます。有名「ユーチューバー」の中には、チャンネル登録会員が数十万人にも達している人もいます。

私などは仕事を持ちながら情報発信していますが、中にはブログ・動画配信を仕事にしている人もいます。ひと昔まえだと、テレビや新聞を個人が運営するなどあり得なかったのですが、いまや、インターネットを使えば、誰でも格安で普通に情報発信業を営むことができてしまうのです。

当然、ウェブサイトを運営すれば、広告料収入を得ることも可能です。ウェブサイトへのアクセスが増えれば広告収入も増えます。広告主からすれば、新聞・テレビ向けの広告を減らし、インターネット向けの広告を増やすのは当然の判断なのです。

現実はどんどんと先を行く

以上、本日はとりとめもない話でしたが、私が申し上げたい内容とは、現実が一番大事だ、という点です。

保守・右翼的な性向を持つ人々の中には、現行の憲法に対して一言一句、ケチを付けたいという気持ちを持つ人もいらっしゃると思います。これに対し、左派・リベラル的な性向を持つ人々は、憲法については一切変更してはならない、と思っているかもしれません。

ロシアに占領されたままの北方領土については、2島先行返還論、経済協力先行論など、さまざまな立場があるでしょう。

北朝鮮の核開発は急激に進んでおり、待ったなしで日本に脅威が高まっています。

マス・メディアがいかに偏向報道を続けようが、インターネットを通じて真実がすぐに広まってしまう時代になってきました。

何を考え、何を理想にしていたとしても、現実に対応できなければ、全く意味がないのです。その意味で、「理想」を大切にしつつも、現実に即した解決策をどのように提示していくかについては、ジャーナリストではない「ビジネスマン評論家」である私の、腕の見せ所だと考えているのです。

本文は以上です。

読者コメント欄はこのあとに続きます。当ウェブサイトは読者コメントも読みごたえがありますので、ぜひ、ご一読ください。なお、現在、「ランキング」に参加しています。「知的好奇心を刺激される記事だ」と思った方はランキングバナーをクリックしてください。

にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ

このエントリーをはてなブックマークに追加    

読者コメント一覧

  1. Tombi より:

    新会士さま(長いので、勝手に省略させて頂きました)

     《連絡事項》企業会計で探しましたが、見つかりません。まさか女性じゃないし・・・。
           もう少しだけヒントを頂ければ幸いです。
           (本社HPっていうのも謎でした。検索能力には結構、評価も高かったのですが・・・。)

     これだけ書いて『はい、では失礼します』ではすまないので、多分、新会士サマには
    唾棄されるであろうことを覚悟しつつ。

     パチンコ業界のハナシはホントに怖いほど警察(風紀課?)と業界との関係は
    ズブズブであることは確かです。
     30年程前に読んだ、講談社文庫の『日本警察の研究』(?)という本を読んで以来、結構、
    興味を持ってWatchしてきたのですが・・・(パチンコって新台を入れる度に検査が
    必要で、その検査料が、交通安全協会などの免許更新の際本の利権と同等に莫大
    だとか。)

     当初は、お台場カジノ、街のパチンコ屋廃止だったのが、そんな議論はいつの間にか
    飛んでしまいましたし・・・。

     今回の出球規制についても、依存者が逃げない程度の規制という線がまことしやかに
    ささやかれています。つまり、勝てば一日の暮らしには困らない程度がどこか、規制を
    かけても極端な客離れが起きない線はどこか、で決まったとかいうハナシもあります。
    (多分、嫌われる発言。根拠を出せないところが痛すぎると自分でも感じていますので、
    何卒お許しを。)

     ネット言論の件についても書きたかったのですが、頭がオーバーヒートしてしまったようです。
    (箱根の山を超えられないシトロエン2CV級の頭なもので・・・)

     ただ、反論されるのを嫌がるところは、自社HPに投稿欄を置いても、外部には置かないという
    顕著な傾向があることは確かですよね。

     間違った記事にコメント入れたいときに限って、コメント欄がないという、ある意味、言論封殺
    、反論禁止という立場ですよね。言論機関ともあろうものが・・・。

     余分な書き込みご容赦を。

     子育てがんばってくださいね。5ヶ月位だと夜泣きとか結構大変なのでは?

  2. 埼玉県民 より:

    毎日拝読させていただいております。 保守リフレ派で反安倍になった言論人は朝のラジオで聞くM橋さんを思い浮かべました。 デジタル保守に対する管理人様御意見に同意です。 安倍首相は第一次政権の反省より、財務省他の官僚機構を360度完全に敵に回してサボタージュや倒閣運動にあわないように相当に注意していると思います。 青山さんも日韓合意や北方領土で、主張は違っても、最も現実的な対応していることを高く評価しております。 安倍首相は相当な戦略感より、中国流のサラミスライスで着実に理念の最終実現に近づけていると思います。 パチンコの出玉規制もサラミの薄い1枚と思います。 消費増税の目的を財政再建から将来世代への教育福祉に変更も対財務省のサラミの1枚で、選挙に買って倒閣サボタージュができなくなったら延期か凍結という戦略を予測しています。 対北朝鮮の真綿制裁もサラミの結構厚い1枚ではないでしょうか。

    小職はネット系の仕事をしておりますが、1wayのHPの時代は、せいぜい2chでオタクが騒ぐだけでしたが、BLOG SNSでインターラクティブにコミュニケーションがしやすくなり、それ以上に拡散力が高まったと思います。フェイクも簡単にばれて大炎上となります。 動画はYoutubeのこのはげーやピコタローのようにさらにインパクトありますね。 最近は既存メディアがtvでネット映像を放映する逆転現象も多いです。ところでTBSのサンデーモーニングの反日偏向もひどいですが、早朝で若い人が見ていないのでネットで話題にならないですが、時事放談もひどいです。 親中親北むき出しで小沢や仙谷、自民でいうと野中あたりがでてきて、売国しまくりです。 いまだに森加計疑念はれずで情弱の年寄りが騙され続きます。 御詠歌か能の反日伝統芸能番組になってしまったようです。

  3. きゃん’t⇔R より:

    いつも楽しみに拝読しております。
    国連総会演説にて安倍総理が北朝鮮への圧力を呼び掛けました。動画も確認しましたが、日本のリーダーシップが伺える内容であったと思います。しかしながら、当の日本は工作組織である朝鮮総連への制裁や締め付けを進めているように見えません。昨今の状況下においては、もっと大胆且つ迅速に問題の根幹にメスを入れるべきだと感じています。また、正に愚の骨頂を地で行く大韓民国は800万ドルの北支援を決定しました。朝鮮半島は北も南も敵性国家です。朝鮮学校、パチンコ含め、我が国の危機に関わる伏線全てに規制をかけていく必要があると思います。

  4. ぎしん より:

     はじめまして会計士様。毎日の更新お疲れ様です。
    いつも楽しく拝読しています。

     私も、三橋さんの批判はもっともだと思いますよ。
     安部政権の外交、安全保障は素晴らしくても、経済政策については残念すぎます。
     政権始動前は、三橋さんは安部さんを応援してました。財務省の財政均衡主義や、各種の妥協を裏切りだととらえても自然なことかと。
     
     民主主義とは実にもどかしいですね。

  5. めがねのおやじ より:

    毎日の更新ありがとうございます。
    毎日コメントされる皆さんの内容について、大変失礼ですが、要旨が私にはまったく理解出来ないものもあります。自分の理解度が低く、込み入った世情にも疎いのでそのせいだと反省しますが、これに会計士様の個人のアドレスに直接投稿される方もいらっしゃるでしょう。それをひとつひとつ読んで行くと、見るだけで疲れるのではないでしょうか。私のことを先に申し上げます。いつもコメントさせて貰ってますが、必ず自分で手書きの乱筆の下書きを作成し、添削してから投稿します。あの誤字、数字の具体性のなさ、事件発生年の間違い、低レベル内容でか?と思われるでしょうが、自分の思っている最低ラインをクリアしとかないと、恥ずかしいし、皆さんからの指摘が怖いからです。
    会計士様のサイトは、自由に書き込み出来ますが、何が言いたいの?時間の無駄だろッて思う内容もたまにはあります。意味不明のコメント2、3行だけでピンポンダッシュの方も。だいたいレッドカードの方は①会計士様の当日の本題から遠く逸脱している②1回ならともかく、いつも自分の思い込みでコメントをする③世間に取り上げられてない方のことを紹介なしでいきなり話し始める(どこの誰?調べとこ)④話の要点、起承転結がない、ハッキリ言って文章の書き方が未熟⑤比較的若い層が多いのか、割とストレートな物言いが多く、サイトの会計士様へもタメ口、ぞんざいなコメントがある。会計士様がOKならいいですが、私は気になります。
    以上、失礼致しました。

  6. 左翼 より:

    最近ご無沙汰気味でしたが、相変わらずのご健筆ですね。

    以前から申し上げていますが、私はブログ主さんと全く違う主張を持っています。憲法もどちらかといえば護憲派ですし、原発も廃止すべきだと思っていますが、それと同時に、経済政策的にはここのブログ主さんと割と考え方が一致するところもあるので、(デジタル)ではないのが面白いですね。

    ところでブログ主さんは私の目から見たら極右的な思想も持っている一方で考え方は随分と柔軟だと思いますよ。ネトウヨのブログとかサイトとかを見ていると明らかに一方的過ぎて辟易することもありますが、それだと彼らが(パヨク)と批判するブログと態度は全く同じですからね。憲法9条についても、ここのブログ主は1項は保持しても良いという考え方で、2項を削除(又は実質無効化する3項を追加)という考え方ですから、色んな意見のある人がいる日本で現実的な解決策という意味では正解なのかもしれませんね。(誤解無きように申し上げますと私はブログ主の考えに賛成している訳ではありません。むしろ憲法9条は全くいじるべきではないと考えています。)

    保守派の経済評論家って三●貴明氏のことですよね?確かに彼はデジタル思考の持ち主ではないかと思います。私も自分と思想が違うながらも同氏には注目していた時期があるのですが、今や(反安倍)の急先鋒見たいなっちゃっていますからね。それだと情念司さんとか、あとここのブログ主さんの考え方の方がよっぽど柔軟で現実的だと思いますよ。

    (意見は自由に書ける)っていう点は大事にしてくださいね。私がこのブログに自由に意見を書き込んでいる時点でブログ主が異なる意見を排除する偏執的な人物ではないことは良くわかるのですが、右翼ブログでも気に入らないコメントを削除しまくってる場合があるようですから。

  7. 世情に疎い私 より:

    会計士様

    はじめまして。
    いつも拝読させていただいております。

    私自身、世情に疎いため的を射たコメントができるかどうかは怪しいですが、
    現安倍内閣は私自身としては着実に進んでいるものと思います。外交については素晴らしい結果を
    出していると思います。他の政策については難航していますが情勢をうかがいつつ期を待っているものと
    思考します。昨今の報道をみていると結果のみを追求し過程を見ていないと言わざる負えないと個人的には
    思います。もり・かけ報道については印象操作を目的とした報道であり、今の情勢下で議論(追求)するべきことなのか判断を欠いた風評被害的なものと思いました。改憲については時代に則して柔軟に変えていくべきと考えます。ぐたぐだになってしまいましたが、私個人としてはマスメディアの誤った報道に操作されず、思い込みに陥らないよう安倍政権の進む道を慎重に見ていきたいと思います。

  8. spaceman より:

    更新ご苦労様です。

    マスコミには、イデオロギー的な偏向もあれば視聴率狙いの無節操さもあるのでしょうが、最近、その問題の根っこには、関係者の知的な劣化があるのではないかと疑っています。

    例えば、福島の放射能問題がらみですが、つい先日、日本学術会議から「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題」という科学的に厳密な報告書が出ました。(結論は「胎児への影響はないし、公衆への健康リスクはほとんどない」)しかし、例によってこれをまともに取り上げたマスコミはほとんどありませんでした。

    マスコミの姿勢をずっと見ている我々からすると「あ、また報道しない自由の行使だな」とわかるわけですが、一方で、もしかするとマスコミ関係者はこの報告書の内容や意味を理解する能力がないのではないかという気もします。理解できないからどう受け止めてよいのかわからず、単に自らの目を塞いでしまうのです。

    これは改憲問題にせよ、安保/防衛問題にせよ、すべてにおいて言えることです。今の日本は、「科学」と「神話」の壮絶な戦いの中にあって、マスコミは知的退嬰とともに神話の伝道者になってしまっているということかもしれません。ガリレオを断罪した中世イタリアの聖職者達のように、聞く耳を持たないのです。そして民衆の多くも、まだまだ神話世界に住もうとする志向が強い。

    ところで、マスコミのフェイク報道問題について、こんな情報もありました。

    https://news.yahoo.co.jp/byline/fujisiro/20170917-00075830/

    なんと、テレビ局がネットからネタを拾って未検証のまま報道し、後からフェイクネタであったことが発覚して謝罪したということです。それだけならいいのですが、BPOの対応がまたすごい。

    ネットからネタを拾おうとするなら、その情報がフェイクでないかどうかを検証するのは当然です。自分の知識や思考力だけで、そのネタがフェイクかどうかを判断するのは非常に大変なことです。相当に博学で、かつその知識をリアルに更新し続けていないと、とてもそんなことはできない。──ということを自己認識できているかどうかで、こちらの主さんがいわれる「デジタル思考」かどうかがわかります。

    このニュースは、マスコミ自体が「デジタル思考」だったという笑えない話で、最低限のリテラシーさえ怪しかったというこです。これもマスコミの知的劣化の表れでしょうね。こんなマスコミが「ネットはフェイクだらけ」などと上から目線で宣うたところで、乾いた笑いしか出てきません。

    最後に余談を。
    パチンコ関係については私は非常に疎く、ほとんど何の情報も知りませんでした。こちらでエントリが出て以来自分なりにいろいろ調べてみたのですが、私の見た中では、この問題を継続的に追いかけている比較的若い元官僚の論客、宇佐美典也氏のブログがわかりやすいように思います。(パチンコというテーマだけでも相当数のエントリがあります。)

    このブログでは、パチンコに関わる具体的な問題や、警察と業界の癒着問題が、筆者自身の推測もあるにせよ、かなりよくまとめられています。こういう利権の絡み合った問題を解くのには時間がかかるでしょうか、継続的に追い込んでいくことが必要かと思います。

    http://usami-noriya.blog.jp/archives/cat_280428.html

※【重要】ご注意:他サイトの文章の転載は可能な限りお控えください。

やむを得ず他サイトの文章を引用する場合、引用率(引用する文字数の元サイトの文字数に対する比率)は10%以下にしてください。著作権侵害コメントにつきましては、発見次第、削除します。

※現在、ロシア語、中国語、韓国語などによる、ウィルスサイト・ポルノサイトなどへの誘導目的のスパムコメントが激増しており、その関係で、通常の読者コメントも誤って「スパム」に判定される事例が増えています。そのようなコメントは後刻、極力手作業で修正しています。コメントを入力後、反映されない場合でも、少し待ち頂けると幸いです。

※【重要】ご注意:人格攻撃等に関するコメントは禁止です。

当ウェブサイトのポリシーのページなどに再三示していますが、基本的に第三者の人格等を攻撃するようなコメントについては書き込まないでください。今後は警告なしに削除します。なお、コメントにつきましては、これらの注意点を踏まえたうえで、ご自由になさってください。また、コメントにあたって、メールアドレス、URLの入力は必要ありません(メールアドレスは開示されません)。ブログ、ツイッターアカウントなどをお持ちの方は、該当するURLを記載するなど、宣伝にもご活用ください。なお、原則として頂いたコメントには個別に返信いたしませんが、必ず目を通しておりますし、本文で取り上げることもございます。是非、お気軽なコメントを賜りますと幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました

自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。

【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました

日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。
関連記事・スポンサーリンク・広告