北朝鮮問題、米韓両国の事情

北朝鮮攻撃のリスクが高まっている――。そう報じられることが増えてきました。しかし、現実社会は、「米国が北朝鮮の核開発リスクを放置するためだけに北朝鮮を軍事攻撃する」、という、単純なものではありません。米国、日本、韓国のそれぞれに事情があります。本日はこの中でも、とくに米国と韓国の状況を簡単に取りまとめておきましょう。

北朝鮮攻撃が実現し辛い理由

北朝鮮情勢を巡り、軍事衝突のリスクが高まる中、昨日から米韓軍事演習が始まりました。

また、本日(8月22日)は新月であり、電力不足の北朝鮮は真っ暗になってしまう日でもあります。私は、読者の皆様がこの記事を読む頃には、軍事演習に参加している米軍がそのまま北朝鮮攻撃に踏み切っているという可能性も、全くのゼロではないと考えています。しかし、北朝鮮が挑発しなければ、今回の軍事演習は粛々と終了し、半島危機は、いったんは遠のくでしょう。

ただ、北朝鮮が米国本土に届くICBMの開発に成功したとされるなかで、米国が北朝鮮をこのまま放置すると考えるのも楽観的過ぎます。むしろ、それができるなら、米国はとうの昔に北朝鮮に攻め込んでいたはずです。

ということは、今まで米国が北朝鮮攻撃に踏み切っていなかったのには、理由があると見るべきでしょう。そして、私はその理由が、大きく分けて4つあると考えています。

1つ目は、同盟国である日本が、憲法第9条第2項の制約下で、日本が直接関わる戦争を起こすことが難しいこと。

2つ目は、米国内で、新朝鮮戦争の開戦に対する消極意見や意見の不一致があること。

そして3つ目は、当事国の1つである韓国(つまり南朝鮮)が、同盟国として信頼に値しないことです。

なお、「4つ目の理由」とは、そもそも米国は核保有国を絶対に攻撃しないという仮説であり、これはこれで非常に興味深いものですが、本日はこの「4つ目の理由」については議論しません。

また、これらのうち1つ目の理由については、日本国憲法の問題です。

簡単に要約して申し上げると、日本は憲法第9条第2項の制約があり、仮に外国から攻められても戦争をしてはならないと規定されています。日本政府としては「自衛のための戦争は憲法違反ではない」とする、相当苦しい見解を持っていますが、こうした見解に無理があることは、『70年間放置されてきた欠陥憲法』あたりもご参照ください。

ただし、この論点自体は当ウェブサイトでもこれまで散々、議論して来ましたので、本日は繰り返しません(また別途議論するかもしれませんが…)。

ところで、これらの理由のうち、2つ目と3つめの理由については、よく考えてみると、これまであまり考察して来ませんでした。そこで、本日は前半で米国の事情、後半で韓国の事情について、簡単に状況を取りまとめてみたいと思います。

心もとない米国の事情

バノン氏は解任されたが…

共和党のドナルド・トランプ氏は昨年11月の大統領選を制し、今年1月に米国大統領に就任しました。発足以来、すでに半年以上が経過した格好です。しかし、そのトランプ政権は、肝心の人事面で、大きく迷走しています。というのも、政権幹部の発言がブレまくっていることに加え、トランプ大統領本人と閣僚らの発言にも矛盾が多々生じているからです。

先週末、米国・ホワイトハウスで、ドナルド・トランプ米大統領の「右腕」ともいわれたスティーブン・バノン(Stephen K. Bannon)主席戦略官が解任されました。最近のバノン氏の発言にはいろいろ支離滅裂な部分も多く、そのうち解任されるのではないかとのうわさもあったようですが、どうやらその直接の引き金になったのは、「北朝鮮が非核化に応じるなら、在韓米軍を撤兵する準備がある」とする発言にあるようです。

Bannon and Dunford Remarks Muddle U.S. Strategy for North Korea(2017/08/16付 ニューヨーク・タイムズより)

ニューヨーク・タイムズ(NYT)から該当する箇所を抜粋すると、

Stephen K. Bannon, the nationalist ideologue who is Mr. Trump’s chief strategist, said in an interview that there was “no military solution” in the Korean Peninsula, and that he might consider a deal in which United States troops withdrew from South Korea in exchange for a verifiable freeze in the North’s nuclear program.(ナショナリズムの信奉者でトランプ政権の主席戦略官を務めるバノン氏はインタビューの中で、朝鮮半島問題の「軍事的な解決はありえない」と指摘。北朝鮮が核開発プログラムを放棄するとの確証が得られれば、それと引き換えに南朝鮮から米軍を引き上げることを考えても良いと述べた。)

というものであり、「米国は絶対に北朝鮮との戦争をしない」と断言した格好です。

ただ、この発言は、トランプ政権の他の主要閣僚らによる見解とは正面から矛盾しています。とくに、レックス・ティラーソン国務長官、ジェームズ・マティス国防長官が米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿した論文が、NYTが報じたバノン氏の発言と全く異なっていることがわかります。

We’re Holding Pyongyang to Account(米国時間2017/08/13(日) 17:37付=日本時間2017/08/14(月) 06:37付 WSJオンラインより)

この記事の末尾で両長官は、

“North Korea now faces a choice. Take a new path toward peace, prosperity and international acceptance, or continue further down the dead alley of belligerence, poverty and isolation. The U.S. will aspire and work for the former, and will remain vigilant against the latter.”(北朝鮮は今、岐路に立っている。それは、国際社会と協調して平和と繁栄に向けた道を歩み始めるか、それとも今の敵対的な路線を継続し、貧困と孤立の果ての死を選ぶか、だ。わが国は貴国が前者の道を進むことを望み、その実現を目指しているが、貴国が後者の道を取る可能性についても警戒し続けている。)

と述べており、いわば、軍事的オプションを排除しない姿勢を明確にしています。

とくにティラーソン国務長官は、かつてはバノン氏と同様、北朝鮮への軍事的オプションの行使に否定的でしたが、先週木曜日に行われた「日米2+2会談」の直後の記者会見で、米国としては北朝鮮への軍事攻撃を巡り、「すでに準備は完了している」と述べました。

Tillerson says US is prepared to use force against North Korea(日本時間2017/08/18付 FTオンラインより)

(余談ですが、昨日も『河野太郎外相、現時点での成果は?』で申し上げまたとおり、私は北朝鮮への軍事オプションの行使に否定的なティラーソン氏の背中を押したのが、他ならぬ河野太郎氏ではないかとすら思っています。)

いずれにせよ、北朝鮮攻撃ひとつとってみても、「軍事オプションはあり得ない」と発言する人がいるかと思えば「攻撃準備は整っている」との発言もあり、トランプ政権の幹部の発言はブレまくっているのです。

極論を主張するトランプ氏との違い

これに対し、ドナルド・トランプ米大統領は8月8日、北朝鮮が「炎と怒り」(fire and fury)に直面すると発言しました。また、後日、トランプ氏は「言い過ぎた」と撤回するどころか、「決して言い過ぎではない」と付け加えているほどです。

Trump reiterates warning to N. Korea: ‘Fire and fury’ may not have been ‘tough enough’(2017/08/10付 WPより)

ただ、トランプ氏がどれほど勇ましい発言をしていたとしても、トランプ氏以外の政権幹部の言動から見る限り、米国が北朝鮮攻撃に積極的であるとは思えないのです。

私自身、米軍の知り合いがいるわけではありませんが、あくまでも報道をベースに判断する限り、どうやら米国は北朝鮮攻撃を渋っているようです。というのも、米軍が金正恩(きん・しょうおん)の所在を掴み切れておらず、また、仮に米国が北朝鮮攻撃に踏み切った場合、朝鮮半島を中心に、米国人を含めた多くの犠牲者の発生が想定されるからです。

それだけではありません。日本にも米国にも、北朝鮮のスパイ・工作員が相当数、紛れ込んでいることは間違いありません。そして、工作員の中には、もしかすると、サリンなどの毒ガス、天然痘ウィルスなどの細菌兵器を所持している者もいるかもしれません。そうなれば、東京や大阪、ニューヨークなどの人口密集地帯、あるいはワシントンの政治の中枢で、北朝鮮の工作員がテロを起こす可能性も否定できません。

このように考えていくと、トランプ大統領本人の勇ましい発言とは裏腹に、米国は事実上、北朝鮮を攻撃し辛い事情を抱えているのです。

また、参議院議員の青山繁晴さんは、北朝鮮が既に核保有国だとしたうえで、仮に米国が北朝鮮攻撃に踏み切るとしたら、「史上初めて核保有国同士の戦争になる」と述べています。米国が北朝鮮を核攻撃したら、それがどれほど悲惨なものになるかということが世界中の目に晒されることになります。

そうなれば、1945年8月に、人類史上初めて核兵器を実戦使用した米国が、いかに非人道的な国だったかという事実が、改めて世界中に知れ渡ります。下手をすると、米国という国家の存立自体が危うくなるかもしれません。

米朝戦争があるとしても、少なくとも「米国が圧倒的な兵力差をあてにして、気軽に北朝鮮にすぐに攻め込む」、といった単純なものではないことだけは間違いないでしょう。

中国とロシアは中立を保つのか?

さらに、米国が北朝鮮攻撃に踏み切る場合、もうひとつの重要なポイントは、中国とロシアが戦争に介入するかどうか、です。

今世紀に入ってから米国が武力攻撃した相手国は、アフガニスタン、イラク、シリアです。この3ヵ国は、中国ともロシアとも、国境を接していません(※もっとも、厳密に言えば、アフガニスタンはほんの少しだけ中国と国境を接していますが…)。しかし、北朝鮮は中国と長距離の国境を接しており、また、ロシアとも短いとはいえ陸上で国境を接しています。なにより北朝鮮は両国とは地理的に近く、経済的にも軍事的にも密接な関係を保っています。

1950年代の朝鮮戦争では、米軍(あるいは国連軍)が朝鮮半島を制圧する直前になった時点で、中国が義勇軍を送り込み、一気に戦線が南に押し戻された、という経緯があります。韓国(南朝鮮)の首都・京城(けいじょう)は、北朝鮮に奪われ、国連軍に奪い返され、再び北朝鮮に奪われ、再び国連軍に奪い返されて、戦場として蹂躙されました。

米国はこの展開を恐れているのではないでしょうか?

要するに、中国とロシアが中立を保つかどうかという確証が得られない限り、米国としては北朝鮮攻撃に踏み切り辛い、という事情があるのではないかと考えているのです。

ぶれまくる韓国

優先順位が付けられない国民

一方で、仮に「新朝鮮戦争」が発生した場合、進軍の橋頭堡として、韓国(英語表記でSouth Korea=南朝鮮)の協力は必須です。しかし、その肝心要の韓国は、米国の「同盟国」として、まことに頼りない限りです。

韓国は1988年に民主化しましたが、それ以降、韓国の大統領は急速に劣化しています(※もっとも、民主化以前の韓国大統領が優秀だったとは申し上げませんが…)。そんな韓国の大統領の行動は、わが国からすれば、やたらと反日的な点が目につきますが、米国にとっても、中国や北朝鮮への擦り寄りが気になります。

その歴代大統領の中でも、とくに酷かったのが、「太陽政策」を開始した金大中(きん・だいちゅう)、それを継承した盧武鉉(ろ・ぶげん)の両名です。そして、北朝鮮が核武装に踏み切った最大の要因が、この時期の韓国から北朝鮮に対する巨額の送金にあったというのは、現在では「定説」となっています。

余談ですが、南北首脳会談を行った金大中は(なぜか)ノーベル平和賞を獲得しました。しかし、いわば、これは「カネで買ったノーベル賞」です。そして、ノーベル賞を獲得するきっかけになった北朝鮮への送金が、世界の平和と安定を脅かしているのですから、実に皮肉なことです。

(※さらに余談を申し上げれば、私はノーベル平和賞など害悪に過ぎず、さっさと廃止した方が良いとすら思います。)

ただ、金大中、盧武鉉の2代・10年間で韓国社会の左傾化が進んだためでしょうか、その後の政権でも「揺り戻し」はあったものの、韓国は順調に「中国化」「北朝鮮化」を進めています。

李明博(り・めいはく)政権時代には、米国との自由貿易協定(FTA)が締結されるなど、韓国はグローバリゼーションに乗っかる戦略で、輸出競争力を飛躍的に伸ばしました。もちろん、この競争力は、為替介入と日本に対する産業スパイで人為的に釣り上げられたものでもありますが、それでも韓国が左派政権から保守政権に代わったことで、経済的には大きく成長したことは間違いありません。しかし、それと同時に李明博政権は、経済面での中国への依存度を高め過ぎるという失態を犯しました。

その後発足した朴槿恵(ぼく・きんけい)政権は、対中傾斜をさらに露骨にします。これが「米中二股外交」です。米国が重ねて配備を要求し続けた高高度ミサイル防衛システム(THAAD)については、「中国を刺激する」として拒絶し続けましたし、2015年には米国の反対を押し切って中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加。朴大統領自身は、同年8月の中国・北京の天安門で行われた軍事パレードを閲覧し、米国・オバマ大統領(当時)を激怒させました。

結局、2015年10月の訪米で、米国側から徹底的に冷遇された朴大統領は、同年12月に日本との慰安婦合意を成立させ、翌2016年7月にはTHAADの受入れを表明します。しかし、朴大統領は極左暴力的市民集団の起こしたデモに負けて、今年3月に失職。

筋金入りの親北派・反日派政治家である文在寅(ぶん・ざいいん)氏が大統領に就任し、現在に至ります。

韓国の「真の国益」とは?

以上をまとめると、1998年に就任した金大中政権以降、歴代韓国の政権のスタンスは、究極的には、「親北朝鮮」か「親中国」かという違いに過ぎません。

  • 金大中政権…親北朝鮮
  • 盧武鉉政権…親北朝鮮
  • 李明博政権…親中国
  • 朴槿恵政権…親中国
  • 文在寅政権…親北朝鮮

私自身、韓国国民ではありませんから、韓国の「真の国益」について、議論しても、それほど実益はありません。しかし、仮に――あくまでも「仮に」、ですが――、私が韓国国民だったとすれば、「何が本当に韓国のためになるのか」について、韓国社会で問題提起をしていると思います。

韓国の「真の国益」とは、日米との友好であり、中朝から距離を置くことにあります。しかし、この20年、韓国の歴代政権は日米両国と距離を置き、中朝両国との関係を強化しつつあります。その意味で韓国は、順調に「破滅」に向かって進んでいるのです。

中国は歴史的に見て韓国の宗主国であり、韓国からの過酷な収奪を中心とした支配を続けてきました。また、北朝鮮は、一種の「劣化版大日本帝国」であり、過酷な圧政に朝鮮の人民は苦しんでいます。そんな中国や北朝鮮に近寄って、韓国はいったい何がやりたいのでしょうか?私個人的には、その点が不思議でなりません。

韓国が「世界20大国」(つまりG20)の一角を占め、最先端のスマートフォンをはじめとする電子製品や、(ややゴリ押しとはいえ)K-POPなどのコンテンツを世界中に輸出している国になった理由は、韓国が米国と日本の両国と友好国だったからです。ところが、その韓国は、現在、少なくとも日本を猛烈に敵視しているほか、場合によっては米国すら敵に回そうとしているのです。

慰安婦問題は神聖不可侵

こうした中、私が昨日、思わず1人で失笑してしまった記事が、これです。

被害者追悼コイン・腕輪…「少女像マーケティング」商業化?(2017年08月21日07時43分付 中央日報日本語版より)

リンク先のニュースは、韓国メディア『中央日報』日本語版が報じたもので、自称元慰安婦らの「追悼コイン」の発行計画を巡る混乱を紹介したものです。現在、韓国の首都では、慰安婦像を載せたバスが走り回っているそうですが、こうした報道を読んでいる限り、今や韓国社会において「慰安婦問題」は「神聖不可侵」なものとなってしまっているのです。

では、どうして韓国社会では慰安婦問題がここまで「神聖視」されてしまっているのでしょうか?そのヒントが、一昨日の中央日報の記事にあります。

【社説】「大韓帝国無知」が引き起こす「大韓民国建国」議論(1)(2017年08月20日13時05分付 中央日報日本語版より)

文在寅大統領が8月15日の演説で「2年後の2019年は大韓民国建国と臨時政府樹立100周年を迎える年」と発言したところ、韓国の国内で議論が巻き起こっているという話題です。

日本だと、国自体の正統性(あるいは「正当性」)が揺れることはありません。「初代の神武天皇が2700年近く前に即位した」という話を信じている人はあまりいませんが、天皇家は日本国民の深い敬愛を集めており、日本という国の正統性が議論になることはないのです。

ところが、韓国の場合は、「大韓民国臨時政府が抗日戦争を戦った」とされるウソを、公式に教え込んでいます。この「ウソを建前として教え込む」ということが、まさに韓国社会の病巣だと言えるでしょう。

慰安婦問題というウソがここまで韓国社会で広く信じられているのも、「大韓民国臨時政府」というウソをウソで塗り固めたことのなれの果てなのです。

ルトワック氏の指摘が鋭すぎる!

ところで、韓国社会の腐敗ぶりを示す議論として、最も優れていると私が考える議論は、米国・戦略国際問題研究所(CSIS)元上級顧問のエドワード・ルトワック(Edward N. Luttwak)氏が提示した「韓国論」です。

同氏は名著『自滅する中国』の「第16章」(P223~236)の中で、韓国に対して「これでもか」というほどの辛辣な評価を下しています。

まず、この書籍が執筆された当時、北朝鮮が韓国の潜水艦を沈めた事件や、北朝鮮に対面する韓国領・延坪島に砲撃を浴びせた事件を引用。その北朝鮮に対し、韓国が、

驚くべきことに、かなり大きな被害を受けた場合でも何も反応していない

と指摘します(同P227)。それだけではありません。韓国は相手が日本だと見ると、途端に高圧的で無礼に振る舞います。ルトワック氏の書籍から、もう1か所、重要な部分を引用してみましょう。

2011年12月14日には『従軍慰安婦』を表現する上品ぶった韓国人少女の像が日本大使館の向かい側で除幕された。(中略)これは韓国に全く脅威をもたらさない国を最も苛立たせるような行為であった。(中略)戦略面で現実逃避に走るのは(中略)、国際政治に携わる実務家たちの力や、同盟国としての影響力を損なうものだ。さらにいえば、これによって実際に脅威をもたらしている国に威嚇されやすくなってしまうのだ。」(同P234、ただし下線は引用者による加工)

つまり、韓国の行為とは、

  • 自国に最も脅威をもたらす国(=北朝鮮)に対しては怖気づき、
  • 時刻に最も脅威をもたらさない国(=日本)を最も苛立たせる、

という愚行です。これを私の言葉で言い換えるなら、韓国には、政府・民間を問わず、「敵」と「味方」を正しく峻別する能力が、著しく欠如しているのです。

ルトワック氏は、いわば、米国人の立場から中国を介して日韓関係を議論しているのであり、その議論は精緻、客観的かつ公正です。この議論、ぜひとも韓国人たちに読ませたい気がします(まぁ、どうせ読まないと思いますけれども…)。

韓国と赤化統一

私には、韓国がどうも国家破綻の方向に向けて驀進しているようにしか見えません。こうした中、今年の米韓軍事演習で、少し気になる報道もあります。

米軍首脳も次々と訪韓…韓米、有事での北朝鮮安定化訓練も(2017年08月21日08時24分付 中央日報日本語版より)

リンク先の記事によれば、

  • 演習に参加する米韓両国軍は67,500人
  • 内訳は韓国5万人、米軍17,500人
  • 米本土からの参加者は約3,000人で、昨年より500人増えた
  • 在韓米軍の参加兵力は7,500人減少し、14,500人

ということです。ということは、米軍の参加者は、差引7,000人減少した、ということです。

さらに、米軍の司令部は先月、ソウル南方の平沢(へいたく)に移転。トランプ政権の勇ましい掛け声とは逆に、米軍は、韓国から徐々に距離を置き始めているようにも見えます。

米陸軍第8軍司令部 ソウル南方の平沢で庁舎開館式(2017/07/11 13:53付 聯合ニュース日本語版より)

もちろん、現代の戦争は、兵隊が直接参加するというものとは限りません。自動化された機械が攻撃を実施するということも考えられます。しかし、米国は北朝鮮への攻撃に踏み切るというポーズを示す一方で、韓国との関係を徐々に薄めているようにしか見えないのです。

いずれにせよ、米国が北朝鮮攻撃を計画している中、米国としては米韓同盟を消滅させるわけにはいかないのが実情ではありますが、それと同時に、米国がホンネでは韓国との関係解消を意図しているのではないかと想定されるニュースが相次いでいることも事実です。この問題を巡っては、まだしばらく目が離せなそうです。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 非国民 より:

    アメリカは民主国家で国民の生命、財産は大事にすると思う。もし北朝鮮と戦争するなら、まず米軍関係者の家族をアメリカ本国に帰還させ、さらにアメリカ国民に対して韓国への渡航を自粛するように勧告するのではないかと思う。渡航自粛勧告を出しても韓国に行く人は何かあっても自己責任ということになる。今のところ、そこまでいっていないので当分はアメリカの先制攻撃はなさそう。しかし、お互いかなりヒートアップしているので、まさかの戦争はありうる。日本海にミサイルを落とそうとしたら、機器の故障などで東京のど真ん中に落ち、死傷者多数となったら、誰も望んでいない戦争になるかも。

    1. 団塊 より:

      >非国民さん
      東京にミサイルが飛翔してくるときは誤動作ではない、正確無比に狙ってのこと。何故なら現在の北朝鮮ミサイル発射は100%ロシアのミサイル実験だから。。。。根拠:感….個人的な感

      1. 非国民 より:

        団塊さん、コメントありがとうございます。機械の故障はよくあることで、まさかの最悪事態で意図せず東京に落ちることもあると思う。列車事故でも10段階ぐらいのどこかでちゃんとすれば事故にならなかったのに、事故になった例もある。ありえないほどの偶然が度重なって大事故になることがある。だから、東京に意図せず落ちる可能性もゼロではないと思います。

  2. spaceman より:

    更新ご苦労様です。
    また、日経BOに鈴置さんの記事が出ましたね。

    私は韓国の中立宣言というのは、彼ら視点からすれば誤った選択ではないと思います。深謀遠慮に基づいた判断というより、文在寅の北朝鮮偏愛によるものでしょうが、うまい逃げ口上ではありましょう。

    北朝鮮のターゲットは、韓国・日本・アメリカの3つです。ちょっと考えればわかることですが、韓国が中立宣言するということは、北に対して「ターゲットは日本だけにしてね」というのと同じです。北が本当にアホならいきなりアメリカに手を出すかもしれませんが、これは口だけで、実際には絶対にないでしょう。また、わざわざ尻尾を振って寄ってくる韓国を離反させる意味もありません。北の選択肢は日本しかなくなります。

    このように考えると、日本にとって都合がよいのは、韓国が北に対して敵対的姿勢をとってくれることなのです。朴槿恵はいろいろ問題の多い大統領でしたが、北に対しての姿勢は敵対的でした。北と南はどこかで通じているのだと思います。南には従北者もいれば北の工作員もいます。朴大統領に韓国社会の公敵という汚名を被せたのは彼らだという話がありますが、これはあながち空虚な陰謀論とはいえないでしょう。

    日本の周辺国──韓国も含めて──は、歴史的に見ても「優位に立って相手を恫喝すること」しか考えない国々です。自分たちに力がないうちは比較的しおらしくしていますが、力を持ったと思った瞬間にやたらと居丈高になります。自由主義陣営であるはずの韓国ですら、バブル崩壊後の日本の不況を目の当たりにして居丈高になり始めました。それは「いよいよ自分らが優位に立った」と錯覚したからだと言われています。(長期を見据えて虎視眈々と覇権を目指す中国とはちがって、韓国には現状把握能力の欠如という致命的な欠陥がありますが。)

    ●強大な力を示すこと。(具体的には核抑止力を持つこと)。
    ●恭順な姿勢を示すこと。(具体的には、第九条をアピールして朝貢的付き合いをすること)。

    たぶん多くの日本人はこの二つの間のどこかに、彼らに対応する良策があると考えているでしょう。その結果として、「第九条を掲げ、抑制的な自衛力を持ち、防衛の本筋はアメリカの核の傘に頼る」という現状になっています。しかし、よく考えてみると、これって「核の抑止力を肯定」していることにほかなりませんよね。
    見方によってはとてもずるい、不健全なやり方です。

    なぜ、「第九条の基本理念を堅持したまま、自前の核抑止力を持とう」と考えないのか私は不思議でなりません。
    こちらに、キッシンジャーの発言を紹介しつつ書かれた文章があります。私と立場はちがいますが、大いに頷けるものです。

    http://agora-web.jp/archives/2027879.html

  3. めがねのおやじ より:

    いつも拝読しております。
    いくら米国が準備OKやる気でも、よく考えると実際北への攻撃は現状困難でしょう。①当事者の韓国のスタンスが不明である。頼れない、裏切り。②急襲した場合、多少のミスが出る。金豚を瞬殺出来なければ、報復でまず南鮮が徹底的にやられる。在韓米国民間人や軍属、在韓日本人、他外国人の迅速で安全な保護が難しい。数万人以上が被災し、千人単位が死亡するとみる。③韓国民間人は我れ先に逃げまどうだろうが、ミサイルは38度線に大小何千台もの発射台を持つので、更に小型核でも京城狙えば被災者は一千万人に及ぶ。京城は首都機能を失う④日本佐世保、那覇、横須賀、厚木を米艦隊、航空隊の作戦本部、補給所とするだろうが、破壊工作員が潜伏し非道な破壊活動に出る(手軽に持ち運べる化学薬品、生物菌、爆薬箱、手榴弾、ダイナマイト等。都市でのテロも。実行は総連、一般在日、北諜報員、韓国人、日本人シンパ、日本人極左)⑤憲法第9条の為、米軍と連携した行動が取りにくい ⑥中国、露の出かたが読めない⑦米国も、ホンネは北と戦いたくない(敢えて南鮮を守る必要はあるか、という米世論)ーーで、現実的には難しいです。
    やはり、ここは中国の締め付けで資金ルートを断つことが前提。それで断ち切れなければ中国の責任だが、その段階で北がオモチャ遊びすると、電撃攻撃となる。無血和平となると中国の発言力が上がり、北と南は連邦国家、米軍は韓国から撤退、日本を最前線に再構築する。対馬、竹島、利尻島、波照間島、与那国島はハリネズミ化が必要です。いずれにしても半島はどんな国家になろうが、反日、侮日を貫きます。民族が変わらないから。もうマスコミも極東有事について、マトモな論壇をするべき。国が潰れますよ!くだらんモリカケやハゲ発言など三面記事やワイドショーは見たくないです。

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