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「文在寅政権」に対する官邸の反応

予想通り文在寅(ぶん・ざいいん)氏が韓国の大統領に選ばれました。安倍晋三総理大臣や菅義偉官房長官など、日本の官邸の「初動」は上々です。

非常に楽しみな日韓関係

結果は圧勝

昨日、韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領の失職に伴う大統領選の投開票が行われ、本日に入り、韓国の選管が最大野党「共に民主党」の文在寅(ぶん・ざいいん)氏の当選を認定。直ちに大統領に就任しました。

韓国大統領に文氏が就任 選管が当選認定(2017/5/10 8:22付 日本経済新聞電子版より)

日経の報道によると、投票率(暫定値)は77.2%で、文氏の得票率は41.08%であり、2位の洪準杓(こう・じゅんしゃく)氏の24.03%に大差をつけて圧勝しました。

選挙結果(敬称略、日経電子版より)
  • 1位 文在寅(ぶん・ざいいん)41.08%
  • 2位 洪準杓(こう・じゅんしゃく)24.03%
  • 3位 安哲秀(あん・てつしゅう)21.41%

もっとも、2位の洪氏と3位の安哲秀(あん・てつしゅう)氏の得票率を合計すると45.44%であり、文氏の得票率を上回ります。仮に、―あくまでも「仮に」、ですが―、洪氏と安氏が選挙協力をしていたならば、結果は変わっていたかもしれません。

ただ、終わってしまったことを「IF」で論じたところで意味はありません。事実は、強烈な反日・親北系政治家である文氏が、本日から「5年間」の任期に入ることになります。

※ただし、韓国の憲法の規定上、前任大統領が弾劾で罷免された場合、後任大統領の任期は前任大統領の残任期(2018年2月まで)とする、という解釈もあるようですが…。

また、私は以前から「2017年5月9日に後任大統領が決定され、即日、大統領に就任する」と申し上げてきましたが、現実には韓国の選管が認定した日付は本日にずれ込みましたので、正式には本日からの5年間となるようです。

菅官房長官「慰安婦合意の履行が重要だ」

菅義偉(すが・よしひで)内閣官房長官は5月9日午前の記者会見で、次のように発言しました。

  • 日本にとって韓国は戦略的利害を共有する最も重要な隣国だ
  • 一昨年の合意は日韓両国間での約束であり、国際社会でも高く評価されたものであるため、日韓両国が責任を持ってこれを履行していくことが重要だ
  • 政府としても粘り強く合意の履行を働きかけていきたい

一見何でもない、淡々とした見解ですが、ここにしっかりとした意思を感じるのは私だけではないでしょう。おそらく官邸側も、韓国の大統領選の情勢を掴んでいたはずです。菅氏のこの発言も、文氏をはじめとする有力候補者が、軒並み、日韓合意の破棄を政権公約に掲げていることを念頭に置いたものであることは間違いありません。

安倍総理「早期の電話会談を」

一方、安倍晋三総理大臣は昨日の参議院予算委員会で、平木大作議員(公明党)の質問に答える形で、「できるだけ早い段階で電話による首脳会談を行いたい」と述べました(動画の3:18:40~あたり)。

安倍総理にとって、2015年12月28日の「慰安婦問題に関する日韓合意」は、いわば日本国内の「盤石の支持層」を裏切ってまで形成した合意です。文大統領はこれを「破棄する」と公言しているわけですから、心中穏やかであるはずなどありません。しかし、それでも「できるだけ早い段階での電話会談を行いたい」と述べたわけですから、やはり、政治家としては一流です。

2012年12月に安倍政権が始動して以来、4年半が経過しました。その間に、諸外国でも政権交代が相次いでおり、G7諸国ではドイツの首相(メルケル、敬称略・以下同)を除けば、米国大統領(オバマ→トランプ)、英国首相(キャメロン→メイ)、フランス大統領(オランド→マクロン)、カナダ首相(ハーパー→トルドー)、イタリア首相(モンティ→レッタ→レンツィ→ジェンティローニ)と、いずれの国も大統領ないし首相が交代しています。

また、G20諸国の中でみても、ロシアの大統領(プーチン)、中国の国家主席(習近平)を除けば、主要国ではオーストラリア首相(ギラード→ラッド→アボット→ターンブル)、インド首相(シン→モディ)、インドネシア大統領(ユドヨノ→ジョコ)、ブラジル大統領(ルセフ→テメル)、アルゼンチン大統領(デキルチネル→マクリ)、と、いずれも政権が1回以上交代している状況です。

こうした中、韓国でも今回、政権が交代したことで、民主主義国家の中でも特に安定している安倍総理は、国際政治においても一種の「重鎮」となっています。

私が文大統領にアドバイスできる立場にあるならば、「悪いことは言わないから一度安倍総理と会っておきなさい」と申し上げるところですが…。

文大統領の出方に注目

文大統領の誕生により、気になるのは「日韓関係」と「韓国自体の将来性」です。

このうち、「日韓関係」を巡っては、2015年12月の「慰安婦合意」以降、全く変質したと私は考えています。つまり、「韓国が多少理不尽なことを主張しても、日本が折れてくれる」という異常な関係に終止符が打たれる可能性があるからです。

今後、韓国に妙な譲歩をすれば、日本側の国民感情がそれを許さなくなることだけは間違いありません。その意味で、文大統領が「慰安婦合意」の破棄を宣言することはほぼ間違いないと思いますが、本当の焦点は、それに対する日本側・安倍政権と日本国民の反応でしょう。

一方、韓国の将来については、まずは北朝鮮と統一するかどうかが大きな焦点になると考えてきました。

といっても、「北朝鮮と統一する」というシナリオにしても、①北朝鮮が仕掛けるのか(=赤化統一)、②中国が主導するのか(=中華属国化)、それとも③米国が指示するのか(=なし崩し的な救済統一)、その3つのシナリオに分かれます。ただ、今回の文政権の誕生により、仮に「北朝鮮と統一する」のだとしたら、「①赤化統一」の可能性が最も高くなったと考えられます。

また、「北朝鮮と統一しない」場合であっても、④米韓同盟を破棄して中国の傘の下に入る(=中華属国化)、⑤軍部が蜂起して文政権を倒す(=軍事クーデター)、⑥日米両国が韓国を見捨てて北朝鮮を国家承認する(=クロス承認シナリオ)、という3通りのシナリオがあり得ると考えています。

いずれにせよ、文氏が政権公約通り、「開城(かいじょう)工業団地事業」や「金剛山観光事業」を再開するのかどうか、あるいは「慰安婦に関する日韓合意」を破棄するのかどうかについては、私としても慎重に見極めたいと考えています。

新宿会計士:

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  • いつも拝読しております。アップされる記事ひとつひとつに「出来るだけ読み手に正確・公平な情報を」という意思が感じられ、感服しております。ブログ主様におかれましては、ご自身のお仕事や育児などで大変ご多忙かと存じます。陰ながら応援いたしております。いくつか前の記事にて、国家を個人に例えて論評なされておりましたが、私も同感です。日本が置かれる現状を自分自身に置き換えた場合、近所・近隣に危険因子が存在する事は紛れもない事実でありますから、己を鍛え、抑止力を働かせ、愛する家族や友人を守れるようになる事が重要だと思います。そういった当たり前の視点を国家に転用して、改憲論議を進めていくべきであると考えます。