異例ですが本日は3本目の記事を配信します。日本の「保守」と呼ばれる論壇に対する思いと、一部の方に対する「苦言」を書いておきたいと思います。
目次
インターネット空間と保守論壇と日本
まともな「保守論壇」がようやく整ってきた日本
本日は普段私が抱いている「雑感」を綴ってみたいと思います。
情報を広く伝達する媒体のことを「マス・メディア」と呼びます。インターネットが出現し、本格的に普及し始めるまでは、情報は「マス・メディア」が握っていました。具体的な媒体としては、新聞とテレビ、それに雑誌やラジオなどがありますが、日本国内では「記者クラブ」制度とあいまって、限られた数のメディアが「談合」し、一定の方向に誘導するような報道が横行してきたのが実情です。
その最たる例は、2009年8月に行われた衆議院議員総選挙でした。当時、日本国内の多くのメディアが結託し、「民主党への政権交代選挙だ」と偏向報道を行い、結果的に民主党が圧勝したのですが、単独政党で3分の2の議席数を獲得したのは、日本の憲政史上でも稀有な事例でしょう。
しかし、3年3カ月の民主党政権があまりにも酷かったためでしょうか、日本国民も反省し、2012年12月の総選挙では民主党が大敗を喫し、自民党が政権与党に返り咲きました。その時に成立した安倍晋三政権は、今年で5年目を迎えます。さらに、自民党の総裁の任期が延長されたことで、安倍政権は東京五輪(2020年)の翌年である2021年までの長期政権を視野に入れています。
その間、民主党、その後継政党である民進党、マス・メディアらも、自民党政権に対し、手をこまねいて眺めていたわけではありません。2013年には特定秘密保護法、2015年には安全保障関連法制を成立させるなどしましたが、民主党はこれらの法案に対し「ファシズムだ」「戦争法だ」などと強く反発。事実上の「民主(進)党応援団」である新聞各紙やテレビ各局も、これと同調して安倍政権に対する批判的な報道を繰り広げました。
ところが、これにもかかわらず、民意は新聞・テレビの思うように動いてくれませんでした。各種メディアの世論調査でも、安倍政権に対する支持率は50~60%台で高止まりし、民進党に対する支持率は10%台前半か、酷い場合は一桁台に落ち込んでいます。
私は、これについては2つの要因があると見ています。
1つは、多くの国民が2009年から3年3カ月の民主党政権に対し、痛切に反省し、「政治なんてだれがやっても同じだ」などとする無責任な感覚から脱したことだと思います。
しかし、それだけではありません。もう1つの理由は、インターネット言論空間を中心に、健全な保守論壇が育ってきたことにあります。
技術の進歩に伴い、動画サイトも以前より気軽に閲覧できるようになりましたし、少し意欲のある人であれば、プロフェッショナルのジャーナリストではなくても、インターネットで情報収集ができます。かくいう私も、金融規制の専門家であるため、日本の官庁や日本銀行のウェブサイトから統計データを取得して加工するということをよくやりますし、法令などについては新聞やテレビで入手するよりも、自分で「電子政府の総合窓口」などから原文を入手する方が早いという実情があります。
そして、現在のインターネット言論空間は、それこそ「百花繚乱」状態にありますが、こうした中でも健全で保守的なウェブサイトは、テーマによっては新聞社やテレビ局よりも遥かに多くのアクセスを集めるケースもあるようです。
「保守」の定義はさまざま
ただ、私は「保守論壇」と記載しましたが、ここでいう「保守」の定義もさまざまです。
あくまで私の理解ですが、「保守」とは、「日本のことを愛し、日本をより良い国にしていく」という思想性向のことを指すのだと思いますが、たとえば「外国人移民の受入れ」や「日本国憲法の改正」などの分野で、マス・メディアなどの主張と大きな隔たりが生じています。
たとえば、左派メディアなどは、外国人移民の受入れに積極的な論陣を張ることが多いようですが、不用意に外国人に対する入国ビザを免除すれば、日本に不法滞在する特定国出身者が増えるリスクもありますし、外国人犯罪の問題も無視できません。また、左派メディアや極左活動家らを中心に、現在の日本国憲法(なかでも第9条)については死守しようと必死に論陣を張る者もいますが、現行憲法には問題が多いことも事実であり、「憲法第9条を守れ!」と叫んで思考停止するのはいただけません。
しかし、私はこうした左派の主張の多くには同意しませんが、だからといって、「保守」を自称する人たちの主張に対しても、全面的に同意するものでもあります。たとえば、自称「保守派」の中には、外国人に対し口汚く「日本から出ていけ」と罵ったり、特定国を貶める発言をしたりする人もいます。さらに、皇室を敬愛するのは良いことですが、だからといって民主主義を否定し、「今すぐ日本国憲法を破棄し、大日本帝国憲法に戻せ!」などの極論を唱える人も、いないではありません。
こういう人たちは、正直、迷惑です。
まじめに「正当な言論活動や民主主義のプロセスの一環として、日本をより良くするための活動」をしている保守論客にとって、「外国人は出ていけ!」「大日本帝国憲法に戻せ!」などの極論を主張する人たちは、むしろ敵です。
当然、主張がわかれることもある
また、これほど極端な主張ではないにせよ、「保守派」の間でも議論が分かれる論点は、多々あります。例を2つほど挙げましょう。
1つめは「憲法第9条の取扱い」です。
私は、日本国憲法については、日本語としておかしな文言も多々あることを踏まえ、理想的には、きちんとした憲法を作成すべきだと考えています。ただ、現実には、日本国憲法の改正を巡って、議論が分かれている部分も多々あります。したがって、現実的には、「論争が比較的少なく、変えやすい部分」から変えていく、という形にせざるを得ません。
極端な話、憲法第9条については、第1項をそのまま温存し、第2項を次のように修正するのでも十分でしょう。
憲法第9条第2項の修正私案
- (現行条文)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
- (修正案)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、自衛のためのものを除き、これを保持しない。なお、自衛のための
戦略戦力は別途法律で定める。
(2017/05/09 17:55 追記:「自衛のための戦略は」となっていたのを、「自衛のための戦力は」に修正しました。ご迷惑をお掛けしました。)
報道によれば、安倍晋三総理大臣は憲法記念日に、この第2項を保持したまま、第3項に「自衛隊」について明記するという私案を提示されたのだそうですが、私はこれには反対です。自衛隊の存在自体、どう読んでも現行の憲法第9条第2項に違反していますから、この「違憲状態」を解消するためには、第2項を上のように変更する(あるいは可能ならば削除する)ことが必要です。
もっとも、私に言わせれば、自衛隊が憲法に反している状況は、自衛隊の存在が問題なのではなく、憲法第9条第2項の規定自体が人類の自然法に反していて、「憲法違反」なのだと見るべきですが…。
意見が違うからこそ議論が必要
もう1つ、「保守論壇」同士でも見解が分かれている点といえば、「日本と朝鮮半島との関わり方」ではないでしょうか?
私が個人的に尊敬する保守論客の方々は複数名いらっしゃいますが、ここ数日の朝鮮半島危機に際し、多くの方が次のように主張されています。
「日本にとって、朝鮮半島と関わるのは不快だが、地政学的には朝鮮半島と関わらざるを得ない。したがって、日韓友好は続けなければならない。」
私は、この認識についても間違っていると考えています。というのも、少なくとも現在の韓国は、明らかな衆愚政治に陥っており(この点は明日の当ウェブサイトでも議論します)、韓国とお付き合いすれば、日本がそれに振り回されてしまうからです。
もちろん、日本が韓国と「断交」でもしようものなら、貴重な「貿易黒字相手国」である韓国の市場を失うことにもなりかねませんし、軍事的には対馬海峡が「最前線」となることを、私たち日本人が覚悟しなければなりません。当然、「日米安全保障条約」と「米韓同盟」の存在を前提に構築されている現在の安全保障の枠組みは根底から覆されるリスクもあります。
ただ、それでも私は「日本国民の意思」として、日韓断交を「決断」することが必要であると考えており、そのように主張し続けてきましたし、今後もそう主張するつもりであることには変わりありません。
いずれにせよ、憲法の問題、日韓外交の問題なども含め、保守論壇同士でも議論が分かれていることは事実です。最終的には日本国民が納得する形で議論が収束することが望ましいものの、「保守論壇」といっても一様ではないため、全ての問題について意思を統一するのは難しいのが現実でしょう。
ただ、「意見が違うから議論が必要なのだ」、という言い方もできるのではないでしょうか?
明日の予告:「文在寅大統領」下の日韓関係
こうした流れもあり、明日は、「文在寅(ぶん・ざいいん)大統領」が誕生したと仮定した場合の日韓関係について議論します。実は、韓国の大統領選の結果についてはまだ明らかになっていませんが、私個人の都合により、明日当ウェブサイトに掲載する記事については、もうすぐ書き上げてしまう予定です。
したがって、私は「文在寅氏が韓国大統領に当選した」という前提で議論を構築する予定です。ただ、皆様が本稿を読む頃には、おそらく結果は判明していることでしょう。
なお、文氏以外が大統領に選出された場合であっても、この記事は取り消さず、後日、「訂正記事」にて対応したいと思います。あらかじめご了承ください。
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いつも拝読しております。憲法第9条2項は「自衛の為の国の交戦権は認める」とした方が、ストレートでより分かりやすいのではないでしょうか。何となくですが「これを」を入れると、旧態の文語調のような感じがするので。そして自衛隊から陸、海、空、海兵軍に名称変更を行う(至難の技でしょうが)。
日韓関係については「キライな国だけど仕方ない」「嫌やけどしょうがない」といった消極的な諦め派が私の周りにも多いです。でも「新宿会計士」様の言う通り、ここはまなじりを決して断交もしくは不交にすべきと存じます。経
済的には痛い目に遭いますが、それを斟酌しても日本の「負」が多すぎる。最前線が対馬、壱岐になるなら島民の方を説得の上、代替地を与え島自体は武装化する必要もあるでしょう。さらに踏み込めば沖縄県知事や偽装平和団体、左翼系、在留害国人が反対している米軍基地、日本基地も他県に振るのも一考。地理的に西日本が良いので、美保、山口、大分、長崎、神戸、名古屋、小松などの既存の空いた空港を使う。もちろん今まで沖縄県に回っていた迷惑料は減らして、新基地自治体に与える。特に産業のない沖縄が経済難で苦しもうと、自業自得と思います。ということで憲法の改正、ディフェンスフォースの強化を危急の課題として政府・自民党は取り組むべきと確信します。
安倍首相の自民党総裁としての発言の意図が徐々に報道されるようになってきましたね。
それに伴って、朝日新聞などは『野党と強調しながら憲法改正は9条以外から始めるという自民党の一部の勢力』を持ち上げる論調になってきたように見受けられます。スレ主さんが主張するように天皇の役割の項の主張にも確かに共感しましたが、私は憲法はまず9条を変えるべきだと思っています。そして、前にも書きましたが、自民党の憲法改正案は断固と反対なので、条項ごとに個別に改正の手続きを踏みそうだということには、少し安堵しました。
それはさておき、マスコミは野党との協調派とのことで石破さんを取り上げることが多くなりました。ただ、石破さんは嘗ては脱派閥で人気を博していたけど、鬼怒川の氾濫時に、地元の人たちが夜も眠れずに外国人窃盗団」の対応に追われていた時に、当時閣僚だったにもかかわらず、鬼怒川をそっちのけで、自分の派閥の立ち上げの会合に終始して、危機管理に対する判断能力の欠如を示した人物です。憲法改正を巡り、極左のマスコミ関係者は、民進党の次は自民党内の石破さんなどを持ち上げようとしているのかと思うと、うんざりします。