本日は、「時事ネタ」から離れ、「いまだからこそ読みたい力作」を紹介したいと思います。今から3年前に刊行された、「中韓両国が急接近する」という「予言」を示した名著があるからです。それは、『なぜ韓国は中国についていくのか: 日本人が知らない中韓連携の深層
』という書籍です。
目次
中韓接近の「予言の書」
力作『なぜ韓国は中国についていくのか』を読む
私は先月、某出版社を通じ、専門書籍を1冊刊行しました。ただ、専門書籍であるためでしょうか、アマゾンのウェブサイトで見る限り、売れ行きのランキングは決して順調ではないようです。
さて、それはともかく、自分自身も出版に関わることで感じるのは、「書籍を執筆するのは本当に大変だ」、という点です。こうした中、無名な人が執筆した書籍であっても、力作であれば非常に面白いということがよく分かる書籍を発見しました。それが、『なぜ韓国は中国についていくのか: 日本人が知らない中韓連携の深層
韓国の「日本軽視、中国重視」があらわになっている。就任いらい歴史認識をとりあげて日本批判を続ける朴槿恵大統領だが、夥しい血を流し合った朝鮮戦争を俎上にのせて中国を非難したとは聞かない。(…中略)「中国」という要素を加えて捉え直した瞠目の日韓関係論である。
私の手元にあるのは、2014年4月25日に刊行された「第1版第1刷」です。書籍によると、著者の荒木信子さんは1980年代後半に大学を卒業して就職する傍ら、独学で韓国語を学習。1989年に韓国の地域研究をするために会社を辞めて大学院に入学し、1990年には奨学金を得て韓国に留学したという経歴を持っていらっしゃいます(同P190)。
なぜ私がこの本を取り上げたのかといえば、この書籍が非常に「力作」だからです。とくに、巷間にあふれる嫌韓本と異なり、過去の政府要人発言や現地の新聞記事、各種統計など、「一次資料」を豊富に引用しています。それだけではありません。一般に、この手の「一次資料」を使い過ぎると、無味乾燥な書物となりがちですが、この書籍の場合、読者を飽きさせない工夫が随所にちりばめられています。それが、著者である荒木さんの主観です。
- 「私にも…(中略)…韓国経験がある」(P189)
- 「こうした傲慢ともとれる(韓国人の)発言を聞いて、韓国に好意を持ったり、仲良くやっていこうという気持ちになる日本人は少数派だったろう」(P163)
つまり、「一次資料(データや報道)」という「客観的な情報」をベースに組み立てられた議論に、荒木さんの主観・私見が織り交ぜられることで、ぐいぐいと議論に引き込まれていきます。
書籍の構成と「一貫したテーマ」
興味を持った方は、ぜひ、書店や通販などで書籍を入手し、直接お読みいただきたいと思います。ただ、せっかくの機会ですので、この書籍の構成と、個人的に感心した「見どころ」を紹介しておきたいと思います。
- 第一章 朴槿恵大統領の訪中履歴
- 第二章 中韓関係の節目、国交正常化
- 第三章 北朝鮮核危機と金泳三の訪中
- 第四章 江沢民との「歴史共闘」
- 第五章 日韓併合時代とはどういうものだったのか
- 第六章 韓国を見誤る日本人
- 終章
書籍が刊行された2014年といえば、朴槿恵(ぼく・きんけい)前大統領の時代であり、高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の導入や「日韓慰安婦合意」以前のことですので、情報が古い点は了解しておく必要があります。そして、その時点の「最新情報」である朴槿恵大統領の訪中履歴に始まり、中韓関係の交流再開や1992年の国交正常化時点、さらに現代に至る中韓両国の動きを丁寧に追いかけたうえで、最後の2章で日韓関係について議論しています。
本書のページ数は注釈を含めて300ページ余りですが、この6章の議論は極めて説得力があり、一気に読めてしまいます。そして、本書を通じて一貫しているテーマは、
「1992年以降の韓国には、常に中国の影が付きまとっている」
という点でしょう(書名からも当然といえるかもしれませんが…)。そして、こうした「対中接近」が一気に表面化したのが、朴槿恵政権の頃だったのです。
頑なな対日姿勢
朴槿恵氏の日本に対する姿勢は、2015年12月の「日韓慰安婦合意」以前まで、一貫していました。それは、「正しい歴史認識を日本に要求すること」と、「日本を国際社会で糾弾すること」です。こうした彼女の対日姿勢は、彼女以前の歴代の韓国大統領と比べても極めて厳しいものであり、また、彼女の姿勢は外国メディアの間でも有名で、(ときとして嘲笑気味に)報じられることもありました。
考えてみれば、朴槿恵氏が韓国大統領に就任したのは2013年2月のことですが、彼女の外交は「異例」ともいえるものです。というのも、韓国大統領の慣例を破り、日本を訪問しなかったばかりか、大統領に就任して以来、2014年3月の日米韓首脳会談が行われるまでの1年あまりにわたって、日韓首脳会談に一切応じませんでした。その意味で、韓国の外交・政治史は、「朴槿恵以前」と「朴槿恵以降」で全く異なってしまったといえるでしょう。
その朴槿恵氏が日本に代わって重視したのは、中国です。
荒木さんによると、朴槿恵氏が中国を重視する姿勢を示していたのは大統領就任前の時点からのことであり(同第一章)、大統領就任によって唐突に反日化したわけではありません。朴槿恵氏が罷免されてしまった現在、「朴氏がこれからどのような政策を採用するのか」について議論しても、もはや意味がありませんが、そのことを2014年時点で明らかにしていた荒木さんの慧眼(けいがん)ぶりには、改めて脱帽してしまいます。
圧巻は2章から4章の中国分析
考えてみれば、朴槿恵氏は大統領選の時点から「中国好き」で知られていたのですが、そんな彼女を韓国大統領に選出したのは、ほかならぬ韓国の有権者です。では、なぜ韓国国民は、「中国好き」の朴槿恵氏を大統領に選んでしまったのでしょうか?
これについては、プロフィールにも記載されているとおり、長年、韓国のメディアを眺めてきた荒木さんによる「1980年代から90年代の中韓関係」の分析が、まさに圧巻です。
第二次世界大戦後に往来が途絶えていた中国(中華人民共和国、あるいは中共)と韓国(大韓民国、あるいは南朝鮮)が、交流を再開してから人的・物的交流を急拡大させ、さらに1992年の国交正常化以降はこれが加速していく―。この様子が、手に取るようによくわかるからです。
荒木さんの書籍は描写が細かく、客観的な経済統計に加えて当時の中韓首脳の動きを丁寧にトレース。韓国がどのようにして中国の「事実上の属領」になっていってしまったかについて、深く知ることができるでしょう。
何より、類書を読んでいると、「韓国の中国傾斜」はこの数年で急加速したかのように感じてしまいますが、実態はそうではなく、韓国の中国シフトは、それこそ20年来の期間を掛けて進行してきたのです。
幸運な日韓運命共同体の終焉
さて、私が本書を読んで、もっとも感銘を受けたのは、次の文章です。
「かつて私は、日本人と韓国人には共通する感情、感覚があって、それが両者の近さの証(あかし)であり、よき関係構築の可能性であろうと考えていたが、それは思い違いだったのかも知れない。(中略)日韓の近さはもともとあったものではなく、一時期、その年代の人々が同じ国で生き、人生の一部を共有した結果出来上がったものであり、例外的な関係だったと考えるようになったのである」(P193)。
私なりに要約すると、「古来より中国の属国だった韓国が、中国と寸断されていた時代はむしろ例外である」ということであり、また、「中国と一体化したがる韓国人の心理は現代の日本人には到底理解できないものである」ということでしょう。
もちろん、本書を読んで、韓国という国をとらえ直すきっかけとなるか、ならないかは、読者次第でしょう。ただ、私が本書を読み返して、改めて痛感したことがあります。それは、日本と真に同盟に値する国は「基本的価値」―すなわち「法治主義、資本主義、自由主義、平和主義、民主主義」―を共有することができる国・民族であり、韓国には日本国の同盟国たる資格はない、ということです。
本書が刊行されたのは2014年4月のことですが、それ以降も日韓両国が「基本的価値を共有していない」と痛感せざるを得ない「事件」が、たくさん起こりました。
例えば、2014年8月には、セウォル号の沈没事件の記事を巡って、産経新聞の加藤達也支局長(当時)が「大統領に対する名誉棄損」の容疑で在宅起訴されましたし(※権力者を批判して刑事訴追されることは、先進国では絶対にあり得ません)、日本企業に対して「戦犯企業」と決めつけて、それらの「戦犯企業」に損害賠償を命じる判決が相次いでいることや(※日韓請求権協定に反しています)、さらには日本大使館・日本総領事館前に、全ての日本人を侮辱する目的で設置された慰安婦像を撤去せず、積極的に放置していることなどを見る限り、私の目から見て韓国が日本の「同盟国」どころか「友好国」となる資格すらないと考えざるを得ません。
また、セウォル号沈没事件の対応一つとってみても、韓国という国に、自らの独立国を運営するに足る能力があるようにも思えません。そして、米国の同盟国でありながら中国との同盟を志向するなど、日米の運命共同体からすれば危険極まりない存在です。そのように考えるならば、独立国の資格を停止し、朝鮮半島を非核化したうえで、南北そろって中国の管理に委ねる方が、よっぽど理にかなっているのではないだろうかとの思いを強くします。
韓国は中国の一部なのか?
この「名著」の刊行から3年が経過しましたが、少なくとも「日韓両国が価値を共有する」どころか、「日韓両国の心がますます離れていく」という状況は加速しているように思えます。こうした中、韓国のアイデンティティを揺さぶるニュースが出ているようです。具体的には、習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席がドナルド・トランプ米大統領に対し、「韓国は事実上、中国の一部だった」と語った、とされる報道です。
「韓国は事実上中国の一部だった」…習主席がトランプ大統領に衝撃の発言(2017年04月20日07時32分付 中央日報日本語版より)
リンク先のニュースの情報源は必ずしも定かではありませんが、「韓国は事実上、中国の一部だった」とする認識については、私はあながち間違いではないと思います。とくに、荒木さんの書籍を読むと、その思いを強くしてしまいます。
いずれにせよ、近い将来、朝鮮半島で大きな動乱が生じる可能性は、決して低くありません。また、5月9日(火)には韓国で大統領選が予定されています。こうした中、私たち日本人にとっては、韓国と「隣国だから」というだけの理由で仲良くするのか、それとも「価値を共有する相手」なのかどうかを見極めるのかは、大きな分かれ目となるのではないでしょうか?
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韓国は中国に属国化ですよね。たぶんこれは間違いないと思います。近い内にそうなると思います。今日の記事を読むと、そう思います。
私たちは、ある国に住むのではない。ある国語に住むのだ。
「祖国とは、国語である」(シオラン)
数学者の藤原正彦さんにも「祖国とは国語」という著書があります
さて、仮に我が日本が朝鮮民族の植民地下に置かれたらどうでしょう?
「公用語」は朝鮮語ですが、日本人の日常会話は日本語でも許されます
ニダ、スミダ、アニョハセヨじゃなくていいってことですね
慶弔電報などは日本語でも受け付けます
映画など見ると、日本人と日本語で会話する朝鮮人巡査が出てきます
日本人が日本民謡を歌い、それに朝鮮人がリズムを取って楽しんでたり
日本人の同僚をスズキさん、サトウさんと呼んでいるシーンもあります
シーソーという日本の遊具で遊ぶ子どもたちも出てきます
つまり日本文字、言葉、人名、風俗を映画に出しても無問題なのです
では以上の文の日本と朝鮮を入れ替えてみてください
どう思いますか?
「日帝は朝鮮語を抹殺したことはなかった」
『韓国・北朝鮮の嘘を見破る』文春新書520で「荒木信子」さんは
こうおっしゃっているんですが、正直私には違和感があります
くどいようですが「祖国とは国語」なのです
あたしゃ正真正銘、それも由緒正しい嫌韓ですが(笑)
こればかりは、それは違うだろうと言わざるを得ません