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韓国の闇「外為平衡基金債券」を斬る!

本日は、これまでも当ウェブサイトで触れてきた「外国為替平衡基金債券」という債券に焦点を当てて議論をしてみたいと思います。というのも、この「外国為替平衡基金債券」を巡って、「外貨建てで発行された」、という報道を見かけたからです。この「外貨建ての外国為替平衡基金債券」なる存在は、韓国銀行が公表する統計を見ても、よく分かりません。しかし、仮に韓国が発行した「外貨建ての外国為替平衡基金債券」がデフォルトしたら、韓国はアルゼンチンやロシアと並び、「外貨建てのソブリン債のデフォルトを発生させた国」の仲間入りすることになります。

「外貨建て」の外国為替平衡基金債券という「闇」

本日も、相当にマニアックな話題をお送りします。

疑問のきっかけは、先週金曜日の中央日報日本語版に掲載された、この「怪しげな話題」について、です。

韓国、成功的な外国為替平衡基金債券発行…経済の堅調ぶりを証明(2017年01月13日14時09分付 中央日報日本語版より)

あまり注目されていませんが、私はこの債券が「韓国に特有の債券」であり、かつ、韓国経済の「闇」を象徴するものではないかと睨んでおり、非常に特徴的なニュースですので、本日はこの「外国為替平衡基金債券」について「深掘り」してみたいと思います。

中央日報はどう報じているのか?

では、まず事実関係を確認しておきましょう。

先ほど紹介した中央日報日本語版の記事を要約すると、事実関係は次の通りです。

  • 韓国政府が米国NY時間1月12日(木)午前11時、「外国為替平衡基金債券(外平債)」を発行した
  • 発行条件は額面10億ドル、満期10年、発行利回りは2.871%
  • 外平債は為替安定を目的に運用している外国為替平衡基金の財源を確保するために政府が発行している債券である

つまり、韓国政府がニューヨーク市場でドル建ての債券を発行した、ということです。債券の世界では、韓国は「新興市場諸国(Emerging Markets, EM)」の一つに位置付けられており、EM市場の中では、たとえ一国の政府が発行した債券であっても、「社債」などと同列(つまり、「債務不履行(デフォルト)」が発生する可能性がある、という前提)で発行されます。当然、「リスク・フリー金利」(例えば米国債と同じ金利)で発行することはできません。

中央日報の記事には

「発行金利は米国国債(10年物)金利比55bp(1bp=0.01%p)増の2.871%と策定された。」(※ただし、引用に当たって数値の全角・半角については修正していません)

とありますが、これを債券の世界の専門用語で「ローンチ・スプレッドは同年限の米国債+55bps」と表現します。この水準は、一概に「高い」とか「低い」とかはいえません。ただ、一般に社債やEM国債は、発行する通貨の債券市場の営業時間中に発行され、多くの場合はベンチマーク金利(米国債の流通利回りやスワップ金利など)に対して「スプレッド」(上乗せ利回り)を加える形で利回りが決定されます。

韓国の格付は日本より上

ここで、「債務不履行」の可能性が高ければ高いほど、スプレッドは高くなりますが、この「スプレッド」自体もクレジット市場において変動します。ただ、債券市場では、一般的には、格付会社が付与する格付が高ければ高いほど、スプレッドも小さくなります。

グローバルな債券市場において、いちおう「スタンダード」とされている格付業者は、ムーディーズ、S&P、フィッチの3社です(もっとも、私に言わせればいずれの業者の格付も怪しいものですが…)。そして、政府に対して付与された格付(ソブリン格付)は、いずれの業者についても、韓国が日本を上回っています(図表1)。

図表1 主要格付業者による日韓両国政府のソブリン格付
格付業者 韓国 日本
ムーディーズ Aa2 A1
S&P AA A+
フィッチ AA- A

つまり、今やグローバルな債券市場においては、日本よりも韓国の方が、「信用力が高い」とみられているのです。韓国が困ったとしても、別に「格下」の日本が助ける必要などない、という意味でしょうか?

ただ、日本政府に対するソブリン格付が韓国政府に対するソブリン格付よりも低かったとしても、日本政府としては、全く問題ありません。なぜなら、

「日本政府は外貨建債券を発行していない」

からです。

日本政府の資金調達は、全額が円建て(つまり自国通貨建て)で行われています。そして、自国通貨建てで発行された国債は、基本的にデフォルトすることはありません。なぜなら、基本的に「日本円」という通貨も、「日本国債」という債券も、いずれも「日本国」という共通の主権下で発行されているからです。

しかし、逆に言えば、外貨建て(あるいはユーロ圏のように共通通貨建て)で発行された債券は、たとえソブリン債であったとしてもデフォルトする可能性は、ゼロではありません。そして、中央日報が報じたこの「外国為替平衡基金債券」は、まさに「外貨建てで発行されたソブリン債」の典型的な事例なのです。

謎だらけの韓国の債券市場

数値が猛烈に合わない!

では、この「外貨建ての外国為替平衡基金債券」の発行残高は、いったいいくらなのでしょうか?

結論から言えば、残高はよくわかりません。というのも、韓国国内の経済統計が矛盾だらけだからです。

私は今回の中央日報の報道をきっかけに、韓国の債券市場について、韓国の中央銀行である「韓国銀行」が公表するデータベースから債券市場のデータと資金循環統計のデータを入手して、改めて分析をしてみたのですが、数値が「猛烈に」合いません。債券市場のデータから判明する、韓国の債券発行残高は図表2、資金循環統計から判明する、韓国の債券発行残高は図表3の通りです。

図表2 債券市場データ・2016年9月末債券発行残高
原文 仮訳 残高(十億ウォン)
Treasury Bonds 政府債券 517,267
National Housing Bonds 住宅公社債券 64,117
Industrial Finance Debentures 産業金融証券 90,247
Corporate Bonds 社債 183,780
Monetary Stabilization Bonds 通貨安定債券 179,680
Seoul Metropolitan Subway Bonds ソウル地下鉄債 4,453
合計 1,039,543

図表3 資金循環統計・2016年9月末債券発行残高

発行体 種別 金額(十億ウォン)
中央銀行 債券 183,760
預金取扱機関 債券 319,865
外債 65,675
その他金融機関 債券 150,681
ABS 168,632
仕組債 98,832
一般政府 国債 724,290
地方債 20,483
外債 6,076
非金融法人企業 社債・CP 491,441
外債 43,319
その他 138,248
合計 2,411,302

この両方の統計から判明する、韓国国内の経済主体が発行している債券の金額は、

  • 図表2…103兆9,543億ウォン…①
  • 図表3…241兆1,302億ウォン…②

であり、差額(②-①)は、実に137兆1,759億ウォンにも達します。

「資金循環統計」は全ての経済主体の金銭債権債務を網羅的に捉えた統計ですが、「債券市場データ」は、もしかすると「公募債券」についてのみ、統計に上がっているからなのかもしれません。

私が最初にこの「債券市場データ」を引用した理由は、ここに「通貨安定債券(Monetary Stabilization Bonds)」なる項目が挙がっていたからです。しかし、そもそもこの統計自体が資金循環統計と整合していませんし、おそらく外貨建の債券も含まれていません。

「債券市場データ」上の「外国為替平衡基金債券」の残高は17兆9,680億ウォン(1円=10ウォンと仮定して、約1.8兆円)ですが、おそらくこの金額には「韓国通貨建ての外国為替平衡基金債券」しか含まれておらず、中央日報が報じた「外貨建の外国為替平衡基金債券」は含まれていないと考えるべきでしょう。

したがって、結局のところ「外貨建の外国為替平衡基金債券の金額」については、残念ながらよくわからないのです。

大きすぎる「その他の外国債権債務」

ただ、韓国が「国全体として」、外貨で調達している金額については、間接的な方法で知ることができます。それが上記でも引用した「資金循環統計」です。

ところで、その前提として、韓国の債券市場統計について触れるときに、無視できない論点がもう一つあります。それが、資金循環統計上の「その他の外国債権債務(Other Foreign Claims and Debts)」です。

この「その他の外国債権債務」という項目は、韓国の資金循環統計上、資産側(図表4)にも負債側(図表5)にも出てきます。

図表4 その他の外国債権債務(2016年9月末基準、資産側)
主体 金額(十億ウォン)
中央銀行 374,232
預金取扱機関 142,184
その他金融機関 18,074
その他 69,302
合計 603,793
図表5 その他の外国債権債務(2016年9月末基準、負債側)
主体 金額(十億ウォン)
預金取扱機関 112,305
非金融法人企業 42,019
その他 11,549
合計 165,873

この「その他の外国債権債務」、項目が不透明なことはもちろん、金額も大きすぎます。このため、以前から私は、この「その他の外国債権債務」という項目に、韓国経済の問題点が隠されていると睨んでいます。

例えば、資産側の「その他の外国債権債務」のうち、中央銀行が保有する金額(約374兆ウォン)という金額は、韓国が「外貨準備だ」と主張している金額(2016年9月末時点で3729億ドル)と似ています。また、次の記事でも触れている通り、米国政府が公表する「韓国が保有する米国債の金額」と、この外貨準備の金額があまりにも大きく異なっており、私は韓国の外貨準備の大部分は流動性のない不良資産である可能性が高いと見ているのです(詳しくは次の過去記事もご参照ください)。

一方、私は負債側の「その他の外国債権債務」にも、その金額の大きさや調達している主体などから考えて、165兆8,730億ウォン(1円=10ウォンと仮定すれば、日本円に換算して約17兆円弱)という金額の、かなりの部分が外債や外貨建借入金などで構成されていると推測しています。韓国銀行が正確な統計を公表していない以上、上記「外貨準備のウソ」と同様、あくまでも私の推測にすぎませんが、それでも、あながち「的外れ」とはいえないでしょう。

韓国の資金循環統計上、確認できる「外貨建債券(External Securities)」と「その他の外国債権債務」の合計は、288兆ウォン(1円=10ウォンと仮定すれば約28.8兆円)にも達します(図表6)。

図表6 韓国の外貨建の借入金試算値(2016年9月末時点)
項目 金額
外貨建債券 130兆8,850億ウォン(13兆0,885億円)
その他の外国債権債務 156兆7,610億ウォン(15兆6,761億円)
合計 287兆6,460億ウォン(28兆7,646億円)

おそらく、「ドル建ての外国為替平衡基金債券」の残高も、この288兆ウォンの中に紛れているのではないでしょうか?

なぜ「外貨建ての債券」が必要なのか?

さて、中央日報の記事を読んでいて、もう一つ疑問に感じるのは、

外平債は為替安定を目的に運用している外国為替平衡基金の財源を確保するために政府が発行している債券だ

という下りです。なぜ、外貨建ての債券をわざわざ発行しなければならないのでしょうか?

為替介入の2類型

まず、前提条件を踏まえておきましょう。教科書的には、為替介入には2通りのパターンがあります(図表7)。

図表7 為替介入の2つのパターン
種類 目的 備考
自国通貨買い 自国通貨が下落し過ぎることを防ぐ介入 外貨準備が尽きるとそれ以上介入することはできない
自国通貨売り 自国通貨が上昇し過ぎることを防ぐ介入 通貨を「刷る」ことで、理論上は無制限に介入ができる

これまでの韓国メディアらの説明によれば、韓国が発行する「外国為替平衡基金債券」とは、「自国通貨売りの結果発行される債券」だったはずです。そのロジックは、次の通りです。

まず、何らかの事情で自国通貨(韓国の場合は「韓国ウォン(KRW)」)の価値が上昇したとします。すると、韓国企業にとっての輸出競争力が低下します。これは当然ですね。韓国国内で1ドル=1000ウォンだった時に、1000万ウォンの自動車は外国に1万ドルで販売できます。しかし、1ドル=500ウォンになったとき(紛らわしいですが、「ウォン高・ドル安」になったとき、という意味です)、同じ1000万ウォンの自動車を外国に販売する時には2万ドルに上昇してしまいます。

そこで、中央銀行が韓国ウォンの価値を下げるべく、「ウォン売り/外貨買い」介入を行うのです。この介入は、韓国の中央銀行(韓国銀行)にとっては、自国の通貨を「刷る」ことで可能ですので、事実上、無制限に実施可能です。

ただし、金融市場に自国通貨・ウォンが溢れてしまい、このまま放置しておくと猛烈なインフレが発生します。これも当然の話です。特に、韓国の通貨・ウォンは韓国国内でしか通用しない「ローカル・カレンシー(あるいはソフト・カレンシー)」ですから、為替介入の結果生じた大量の自国通貨は、ダイレクトに韓国国内の株式市場や不動産市場に向かいます。

そこで、この通貨・ウォンを「回収」するために、韓国の中央銀行である韓国銀行が発行した債券が、「外国為替平衡基金債券」なのです。少なくとも、これまでの韓国メディアの説明はそういうことでしたし、私もそう理解していました。この理解に基づくなら、当然、「外国為替平衡基金債券」は、全額がウォン建てで発行されているはずです。

ところが、中央日報の記事には、「外平債は為替安定を目的に運用している外国為替平衡基金の財源を確保するために政府が発行している債券だ」とあります。つまり、この「伝統的な説明」と全く矛盾しているのです。

もう一つの「為替介入」

そこで問題になるのが、「もう一つの為替介入」、つまり「自国通貨が下落したときに買い支える行為」です。

先ほど紹介した、「自国通貨高に対する為替介入」については、実は、これを行わなくても「国家が破綻する」ほどのことはありません。しかし、自国通貨が「フリーフォール状態」に下落した時には、為替当局が「介入」することがあります。

では、自国通貨が「暴落」するような事態とは、どのようなケースでしょうか?

ずばり、これは「国家破綻の前兆」と見られるような場合です。投機筋が、ある国の通貨(この場合は韓国ウォン)を「売り浴びせ」ることで、韓国の通貨の価値が暴落します。この時、韓国の企業や政府から見ると、同じ1万ドルの借金をしていたとしても、たとえば1ドル=1000ウォンの時には1000万ウォンですが、1ドル=2000ウォンに下落すれば、1万ドルの借金の負担は2000万ウォンに倍増します。

そして、通貨が暴落したら、外国の銀行や投資家が、お金を貸してくれなくなるかもしれません(実はこちらの影響の方が深刻です)。韓国の企業や政府が借りた借金は多額であり、貿易などで稼いだお金だけで返せるものではありません。したがって、借金を返すためには「借り換え」(リファイナンス)が必要です。

ところが、リファイナンスのタイミングで韓国の通貨・ウォンが暴落していたら、外国人投資家は韓国に強い不安に感じ、韓国にお金を貸すときに、高い金利を取るか、最悪の場合にはリファイナンスができなくなってしまうなどの状況が生じます。

こうした事態を防ぐために、外貨準備があります。しかし、以前から指摘している通り、韓国の外貨準備の内容は極めて怪しく、私は韓国が発表している約3700億ドルの外貨準備のうち、70~80%は「ウソ」ではないかと疑っています。

つまり、私の仮説では、韓国が発行している「外貨建の外国為替平衡基金債券」とは、「自国通貨買いのための資金調達」であり、極めて危なっかしい債券ですし、これを「米国10年債プラス55ベーシス」程度で引き受けてしまう米国の投資家の能天気さにも驚きます。

基本的統計すら信頼できない国だが…

以上の議論は、いくつもの仮定を置いているため、どこかの仮定が間違っていれば、議論が間違っている可能性もあります。ただ、自然に考えて、韓国が本当に3700億ドルを超える外貨準備を保有しているのであれば、「外貨建ての外国為替平衡基金債券」という、こんな怪しげな債券を発行する必要などないはずです。

本日の議論をまとめておきます。

  • 資金循環統計から判明する韓国国内の債券発行高と、韓国銀行が発表する韓国国内の債券統計は一致しない(おそらくこれは公募と私募の違いなどによるもの)
  • 外貨建債券や外貨建借入金の額は「その他の外国債権債務」などの項目に紛れるなど、資金循環統計は「粉飾」されている可能性がある
  • 韓国の外貨準備の70~80%は内訳が不明である
  • 「外貨建の外国為替平衡基金債券」の発行残高は韓国国内の統計から試算することが不可能である

いずれにせよ、韓国は基本的統計すら信頼できない国ですが、この「外貨建ての外国為替平衡基金債券」がデフォルトすれば、韓国はアルゼンチンやロシアと並んで「外貨建てソブリン債のデフォルト」を発生させた国になります。

その意味で、韓国が発行する外貨建て債券に注目する価値はありそうです。

新宿会計士:

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  • 日経ビジネスオンライン『日本に再び「韓流ブーム」が来る?』にコメントを投稿しました says:

    日経ビジネスオンラインに、次のコメントを投稿しました。

    齊藤さんって、『経営判断、迷ったら「占い」に頼るのも吉』を書いた人ですよね?その時にも私はコメントを投稿したのですが、改めてもう一度、同じことを申し上げます。

    「記事として極めてお粗末です」、と。

    一応、まじめに反論しておきますね。
    現在、中国で韓流が排除されつつあることは事実です。このことは、様々な報道や統計からも確認できます。ただ、「(A)韓流が中国市場で締め出されている」からといって、「(B)韓流が日本市場で受け入れられる」という話にはなりません。ここで事象(A)と事象(B)は全く独立だからです。

    もちろん、中国市場で締め出された韓流コンテンツ製作者が、再び日本市場攻略に力を入れる、という流れはあるでしょう。しかし、そうした韓流コンテンツを「受け入れるかどうか」は、まさに日本の消費者の判断であり、韓流が日本で受け入れられるかどうかは韓流が中国市場でどういう取扱いを受けているのとは全く別次元の話です。

    というか、もしかして齊藤記者ご自身が韓流のファンなのかな?と疑ってしまいました(仮に自分が韓流好きのあまり、目が曇っているのだとしたら、ジャーナリスト失格です)。いずれにせよ、同じ日経ビジネスオンラインに掲載されている鈴置編集委員などの記事を読んで、記事の書き方を勉強されてはいかがでしょうか?

  • 日経ビジネスオンライン『「百害あって一利なし」の日韓スワップ』にコメントを投稿しました says:

    金融規制専門の「独立系ビジネス評論サイト」を運営しています。

    日韓通貨スワップ協定についての特設ページを設けていたという事情もあり、今年1月6日の日本政府による事実上の「対韓制裁措置」を受けて、私が運営するウェブサイトへのアクセス数が激増しましたが、それだけこの協定に対する人々の関心も高いということでしょう。

    鈴置、真田両氏の対談でも言及されている、「日韓スワップは日本にもメリットがある」というロジックについて、私なりに若干の捕捉をしておきたいと思います。日本国内のスワップ推進派の主張は、だいたい次のようなものです。
    (1)韓国の通貨危機を未然に防ぐことで、間接的に日本企業にも恩恵がある。
    (2)為替相場安定に寄与し、日本企業の事業計画の安定にも役立つ。
    (3)通貨スワップは「単なる通貨の交換」であり、「資金援助」ではない。

    このうち(1)と(2)は、2014年4月16日の国会答弁で当時の山崎達雄・財務省国際局長が述べた内容ですが、いずれも間違いです。なぜなら、民間企業がどこの国とおつきあいするのも自由ですが、企業の事業は「自己責任」であり、日韓スワップという「日本国民の負担となりかねない協定」を使って、韓国に進出している企業「だけ」救済しなければならないという理屈は成り立たないからです。

    また、(3)についても、ソフト・カレンシーである韓国ウォンを、ハード・カレンシーである米ドルや日本円と交換する協定が、「等価交換」であるはずなどありません。

    つまり、日韓スワップ推進派の理屈はいずれも「詭弁」に過ぎません。私たち日本国民には、政治家や官僚、経団連会長らが振りかざすこれらの「詭弁」を見抜くだけの理論武装が求められているのではないでしょうか?

  • 日経ビジネスオンライン『「中国側に寝返る韓国」にスワップは追い銭』にコメントを投稿しました says:

    日経ビジネスオンラインに、次のコメントを投稿しました。

    日韓スワップには、韓国の「通貨的な信用力」を裏付ける効果があるため、韓国に進出している日本企業や、韓国の政府・企業・金融機関が発行した債券を保有している日本の機関投資家などを助けるという効果があることは間違いありません。実際、財務省もそのように説明しています。具体的には、2014年4月16日の「第186回国会・衆議院財務金融委員会」で参考人として国会に招致された財務省の山崎達雄国際局長(※当時)が、このような答弁を行っています。

    ただ、こうしたロジックは、自己責任で韓国と関わりを持った日本企業を、日本国民の負担となるかもしれないスワップにより救済する、と言っているのと全く同じであり、有権者の一人としては、到底容認できません。

    財務省などが主張する、「日韓スワップは日本にもメリットがある」といった説明は、一種の屁理屈です。本日の真田先生のご発言には、こうした日韓スワップの性格・位置付けの正確な実態に触れられていて、非常に心強く感じました。