日韓関係の6つの類型
地球を飛び回る「安倍外交」には様々な成果が生じています。「スーパーマリオ」に扮した安倍総理の姿は全世界で絶賛されましたが、地球を何周もするほどの安倍外交には、憲法の制約で軍事力の行使ができない日本の立場を好転させる効果が期待されます。ただ、安倍政権は不思議なことに、日本を侮辱し続ける韓国に対しては譲歩し続けています。この対韓融和姿勢の理由は、いうまでもなく中国を牽制するためであり、いわば「必要悪」のようなものですが、それでも日本国民の感情としては許せないという気持ちが強いのも事実です。本日は、「日韓関係自体を目的とする愚」について指摘するとともに、「日韓関係の6類型」を提示し、外交について改めて考えてみたいと思います。
安倍外交の成果は大きい
私がこのウェブサイトを開始して、ちょうど2か月になります。始めたばかりのウェブサイトにしては、思ったよりも多くのPV数を頂いており、大変ありがたく感じています。設立間もないこのウェブサイトを訪れてくださる皆様に、できるだけ日々、様々な種類の「知的好奇心を刺激するコンテンツ」を提供したいと考えています。ただ、私の悪い癖ですが、一つのテーマについて深く考えることが多く、これに加えて後先考えずに文章を書いてしまうため、後で読み返すと「書き足りない」ことがたくさん出てきてしまいます。そのため、同じようなテーマのエントリーが連続することもあるのですが、どうかご容赦ください。
というわけで、本日は再び、厄介な日本の隣国の話題です。当ウェブサイトでは9月10日付で、「『日韓友好』自体を目的とした外交をしてはならない」とするエントリーを掲載しましたが、北朝鮮の核実験等もあったため、改めて私の主張をもう一度繰り返しておきます。
安倍晋三政権は2012年12月に発足し、安倍総理は歴代内閣のなかでも群を抜いて多数の国を訪問しています。この夏だけでみても、南米・アフリカ・ロシア・中国・ASEANと忙しく訪問。リオ五輪の閉会式に「スーパーマリオ」の衣装で参加し、世界中から賞賛されたばかりですが、その安倍総理は「TICAD6」で3兆円規模のアフリカ支援を表明し、ロシア・ウラジオストクでプーチン大統領と会談。さらに中国・杭州でG20に参加し、そのままラオスでASEAN首脳会談に参加したという多忙さです(図表1)。
図表1 2016年夏の安倍総理の大活躍
日付 | 概要 |
---|---|
8月21日 | リオ五輪の閉会式に参加。「マリオ」のコスチュームで会場の万雷の拍手を受ける |
8月25日 | アフリカ訪問の途中に立ち寄ったシンガポールでナザン前大統領の弔問を行う |
8月26日~28日 | アフリカ・ケニアの首都ナイロビを訪問し、TICAD Ⅵ(第6回アフリカ開発会議)に参加。3兆円相当の投資などを表明 |
9月2日~3日 | ロシア連邦・ウラジオストクを訪問し、プーチン大統領と3時間を超える会談を行い、プーチン大統領の年内訪日などで合意 |
9月4日~5日 | 中国・杭州で行われたG20首脳会談に参加 |
9月6日~8日 | ASEAN関連首脳会議等に出席するため、ラオスの首都・ビエンチャンを訪問 |
ちなみに、リオは東京から見て地球の真裏にあります。私自身も3年前に南米に行ったことがあるのですが、14時間かけてニューヨークまで行き、そこから乗り換えてさらに10時間のフライトでした。安倍総理は政府専用機を利用していると思われるため、「乗り継ぎ」ではなく「直行便」で出掛けたのだと思いますが、それにしてもいったん日本に帰国し、さらにすぐにアフリカに出かけ、ロシア、中国、ラオス、と、本当に多忙です。
ところで、この「安倍外交」には、いずれも一貫した目標があります。それは、「国益の最大化」です。「国益」とはいうまでもなく、「軍事的安全」と「経済的利益」です。とくに、中国が軍事的な野心を強めている中で、憲法第9条第2項の縛りがあります。かかる状況の中、中国が尖閣諸島に侵攻してきたときに、法律上、日本政府としては中国人民解放軍と交戦することはできません。中国の日本に対する武力侵攻の可能性を低くするためにも、日本としてはできるだけ多くの国を味方につけておくことは有意義です。もちろん、安倍総理が各国で友好関係を強化している理由は、対中牽制だけが目的ではないと思います。しかし、武力行使が禁じられている日本にとっては、できるだけ多くの国と親交を深めることはとても重要です。
対韓外交は不可解な譲歩の連続
一方、当ウェブサイトでは何度も指摘してきたとおり、一見すると「安倍外交」は韓国に対してやたらと融和的です。韓国は日本に対し、様々な不法行為や嫌がらせを働いています。たとえば韓国は日本固有の領土である島根県・竹島を不法に占拠していますし、「日本海」という呼称を「東海(East Sea)」と呼び換えようとしています。また、朝日新聞社と同社元記者の植村隆が捏造した「慰安婦問題」を巡っては韓国国民と歴代の韓国政府がこれを政治利用して来ましたし、昨年、日本政府が明治期の産業革命関連施設を「世界文化遺産」登録しようとしたときにも、「朝鮮人が強制連行された施設だ」とウソをつき、その登録を妨害しようとしてきました。
ただ、安倍政権は2015年以降に限っても、韓国に対してずいぶんと不可解な情報を繰り返しています(図表2)。
図表2 韓国に対する融和的な外交姿勢
項目 | 概要 | 現時点の顛末 |
---|---|---|
明治期の世界遺産登録妨害 | 2015年7月に日本政府による明治期の産業革命関連施設の世界遺産登録を韓国が妨害した事件 | ユネスコ大使の佐藤地(くに)が国際会議の場で「(朝鮮人が)強制的に使役された事実を周知するよう努力する」と述べた |
日韓の慰安婦合意 | 朝日新聞社と植村隆が捏造した「慰安婦問題」を巡って日本政府が10億円を支払うなどの解決策で合意した問題 | 2016年9月1日に10億円の送金が完了したが、日本大使館前の慰安婦像は撤去されておらず、それどころか世界中で慰安婦像が増えている |
日韓通貨スワップ協定 | 2015年2月に失効した日韓通貨スワップ協定を巡り、韓国政府側が再開を求めている | 8月27日の日韓財相会談で日韓財相はスワップ協定再開に向けた交渉を始めることで合意した |
日韓軍事情報包括協定(GSOMIA) | 2012年6月に韓国政府が署名直前でキャンセルし、締結されないまま店晒しとなっている | 北朝鮮の核実験を契機に稲田朋美防衛大臣が9月10日、韓国政府に対しGSOMIA締結を求めた |
特に明治期の世界遺産登録妨害事件については、私自身も強い怒りを抱いていますが、その怒りに火を注いだのが、外務省の役人であるユネスコ大使・佐藤地(くに)なる人物の発言です。この人間は、国際会議の場で
「(朝鮮人が)強制的に使役された事実を周知するよう努力する」
などと言い放ち、いわば国際社会で公然と日本人を侮辱したのです。このような人間をいまだに役人として雇っていること自体、外務省がいかに腐った組織であるかという証拠ですが、外務省の失態はこれだけではありません。朝日新聞社と植村隆の捏造の産物である「慰安婦問題」を巡り、昨年暮れに日韓両国外相が唐突な「慰安婦合意」を締結。しかも、日本の岸田文雄外相が「軍の関与のもとに多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」だと明言してしまいました。
さらに、経済的苦境に陥る韓国政府を救済するために、日韓通貨スワップ協定の再締結交渉が開始されているようですし、軍事的にも日韓軍事情報包括協定(GSOMIA)の締結交渉も行われています。これらをどう考えるべきでしょうか?それについて検討する前に、ここで、少しだけ「寄り道」をしたいと思います。
韓国の「敵失」
ところで、やや本論から外れますが、少しだけ「寄り道」します。ここで、「慰安婦像」関連の報道を二つ、紹介しておきましょう。
一つ目は、ドイツに慰安婦像が設置されることで決まった件に関する追加報道です。
韓国がドイツに慰安婦像を設立へ、日本側は日韓合意違反だとして説明要求―中国メディア(2016年9月11日(日) 11時30分付 レコード・チャイナより)
この像は、韓国・水原(すいげん)市が「姉妹都市提携」をしているドイツ・フライブルク市に設立されるものです。水原市自体、韓国の地方自治体ですから、いわば「日韓両国政府での合意」を地方自治体という公的機関が破っているということであり、これはれっきとした国際法違反行為です。
ただし、記事タイトルに「日本側は日韓合意違反だとして説明要求」とありますが、「説明を要求」しているのは、残念ながら日本政府・外務省ではなく、水原市と姉妹都市関係にある日本の福井市だそうです。本来ならば、外務省が「日韓合意違反だ」と大騒ぎしなければなりませんが、こういうところで仕事をしないのが外務省の悪いところですね。「外務省不要論」に拍車がかかりそうです。
二つ目のニュースは、韓国語のものです。
ソウル議会、「平和の少女像守る条例」可決(2016/09/10 12:43付 東洋ニュースより【韓国語】)
韓国の首都・京城(けいじょう)特別市の市議会は「平和の少女像を守る条例」なるものを可決したそうです。ポイントを日本語に翻訳して引用しておきます。
「今回の条例は昨年12月28日、朴槿恵政府が日本軍慰安婦問題を日本と交渉しながら日本大使館の向かい側にある「平和の少女像」について、韓国と日本政府が発表した慰安婦合意文2項で「韓国政府は日本政府が在韓日本大使館の前の少女像について公館の安寧・威厳の維持という観点から懸念していることを理解して、韓国政府としても可能な対応の方向性についての関連団体との協議などを通じて適切に解決されるようにする」により、政府が任意に処理することができないようにして、これを「時の像・モニュメント・オブジェ審議委員会の議決を経るように強制している。」
つまり、韓国政府が独断で日本大使館前に設置された慰安婦像を撤去することを禁止する条例です。日本の常識ですと、地方自治体が条例で政府の行為を禁止することなどできません。仮に、東京にある韓国大使館前に、韓国を侮辱する銅像を建立し、日本政府がそれをウィーン条約に準拠して撤去しようとしたところ、東京都議会がそれを禁止する条例を可決したところで、意味がありません。なぜなら、外国との条約は国内法や国内条例よりも上位にあるからです。
ただ、指導力のない朴槿恵(ぼく・きんけい)政権が、今回の条例により、さらに難しい立場に追い込まれたことは間違いないでしょう。日本政府としては、既に「日韓合意」に基づく10億円を拠出してしまっていますから、あとは「さっさと慰安婦像を撤去しろ」と言い続けるだけで良いのです。どうせ韓国政府が慰安婦像を撤去することなどできっこありませんから、安倍総理が朴大統領と会うたびに、岸田外相が韓国外相と会うたびに、麻生財相が韓国財相と会うたびに、あるいは日本の国会議員が韓国の国会議員に会うたびに、「韓国はウィーン条約と日韓合意に従って慰安婦像を撤去しろ」と言い続けましょう。
以上、「寄り道」でした。
「日韓友好」自体を目標にする愚
私自身、日本国民の一人ですから、韓国という国がこれまで散々、日本を騙し、侮辱し、罵倒してきた歴史について、腹が立つ思いしかありません。したがって、対韓外交だけを切り取ったときに、「安倍政権の対韓外交はけしからん!」と思ってしまいます。ただ、「地球儀を睨んだ安倍外交の一環」として見るならば、韓国に対して積極的に手を差し出す安倍政権のスタンスは、「中国封じ込め」という大目標に照らすなら、一貫していて、筋が通っているものです。その意味で、「理屈の上では対韓融和外交は理解できる」のです。
ただし、日韓関係について、私が一番、申し上げたい言葉があります。それは、
「日韓友好」自体を外交目標にするな!
ということです。日本と韓国の間には、現在のままでは「友好関係」は成立し得ません。その理由は簡単です。韓国は日本に対し、「過去の歴史を半永久的に謝罪し続けること」を求めているからです。
私が考える日韓関係のこれからのパターンとしては、6つあります(図表3)。
図表3 日韓関係の6類型
カテゴリ | 分類 | 概要 |
---|---|---|
日韓友好 | Ⅰ 対等な日韓関係 | 日韓は対等な主権国家同士、友誼を深め、手を取り合ってともに発展していく |
Ⅱ 韓国配慮関係 | 日本は過去の歴史問題に多少配慮し、謝るところはきちっと韓国に謝る | |
Ⅲ 韓国に従う関係 | 韓国が求める「正しい歴史認識」を全面的に受け入れ、半永久的に韓国に謝罪し続ける | |
日韓断交 | Ⅳ 韓国を放置する | 韓国が日本に対して突きつけてくる不当な要求を無視し、敢えて日韓関係の改善を先送りにする |
Ⅴ 日韓断交 | 韓国との関係を断ち切る | |
Ⅵ 韓国を崩壊させる | 韓国と関わらないだけでなく、むしろ積極的に韓国という国が滅亡するのを助ける |
アンケート調査を取ったわけではありませんが、おそらく、一昔前までであれば、大部分の日本国民は「Ⅰ」か「Ⅱ」が望ましいと回答したのではないでしょうか?しかし、韓国があまりにも日本に対して非礼を重ねるため、インターネット上の「ネット右翼」と呼ばれる人たちを中心に、上記「Ⅳ」か「Ⅴ」が適切だと考える人が増えてきていると思います。一方、インターネット上では、最近、「むしろ積極的に韓国を崩壊させてやれ」といった極論(つまり上記「Ⅵ」)も出現しています。その代表的な主張は「誅韓論」という書籍にありますが、「むしろ積極的に韓国という国が滅亡することを日本が助けるべきだ」といった議論が出てくること自体、時代が変わった証拠といえるかもしれません。
ただし、外務省の役人の姿勢を見ている限りでは、どうやら外務省内では上記「Ⅱ」、すなわち「日韓関係自体が大事だから、ここは多少、日本が折れる形となっても良いから、日韓関係のために日本が少し韓国に配慮する」という意見が圧倒的多数を占めているように見えるのです。もしそうであれば、外務省は直ちに解体すべきでしょう。また、朝日新聞や毎日新聞などのレガシー・メディア、日本共産党などの反日勢力が求めているのは、明らかに上記「Ⅲ」のモデルです。彼らは日本の崩壊につながることであれば何でも良いと思っているのかもしれません。
安倍政権は現在のところ、上記「Ⅱ」の方針を採用しているようです。しかし、救いがあるとすれば、安倍総理の「安倍談話」等から判断するかぎり、対韓配慮外交はあくまでも「対中封じ込め」という目標に沿ったものであり、韓国との関係を良くすること自体を目的にしているわけではなさそうだ、という点でしょう。安倍政権にはくれぐれも、短絡的な対韓外交を進めないで欲しいと考えています。
日韓関係は日中関係の従属変数
ただ、韓国は「自国よりも強い敵」からは逃げている国である、という特質を持っています。この手の国が「味方」にいると、何かと厄介です。たとえば「日米韓軍事包括情報協定」などが成立したとしても、韓国はいざというときに、日米の軍事機密情報を中国に流してしまうかもしれません。また、現在は韓国人が観光ビザで日本に自由に入国して来ることができるようになってしまいましたが、これにより農作物などの知的財産権、文化遺産などが窃盗され、韓国に持ち出されています。私は、周辺国と仲が良いに越したことはないものの、外国との友好関係は、本来、日本の国益を高めるために行われるべきであると考えています。すなわち、日本の利益を犠牲にしてまで外国と仲良くするのは「本末転倒」であり、外務省などが進める、日本の国益を犠牲にした対韓融和政策には強い違和感があります。
実は、「韓国問題」とは、昔の日本の外交にヒントがあります。それは、韓国を「外交主体」と考えないことです。明治期に日本は日清・日露戦争を通じて「大韓帝国」の外交権を奪いましたが、その理由は、彼らにまともな外交ができなかったからです。現代の国際社会は主権国家社会ですので、朝鮮半島に存在する二つの国から「外交主権を奪う」というのは非現実的ですが、あくまでも主権国家の枠組みとして見るならば、たとえば南北朝鮮を国家連合としたうえで、将来的には中国の高度な自治区のような形に再編することが考えられます。
中国(中華人民共和国)には香港とマカオという高度な自治区があります。また、香港、マカオいずれも、独自の通貨を発行し、独自の立法も認められています。それと同様、南北朝鮮も、ある意味で中国の高度な自治区となることが、むしろ地域の安全保障に資するのではないでしょうか?
いずれにせよ、日韓関係だけを切り出して日本の外交課題に位置付けること自体が間違いであり、日韓関係は日中関係(や日米関係)の「従属変数」に位置付けるべきものです。くれぐれも、安倍政権にはこの問題を巡るハンドリングを間違えないようにしてほしいと思っています。
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