朝鮮半島情勢が緊迫しており、米軍の艦隊が朝鮮半島付近に集結しているとの情報もあります。こうした中、本日は先週行われた米軍によるシリア攻撃について、時系列で丹念に「いつ、何があったのか」について解きほぐすことで、米国の「本当の狙い」を改めて確認するとともに、私が日本国内のメディアに対して抱いている不満と、それに対する抜本的な解決策を提示したいと考えています。

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    ここからが本文です。

    丹念に読み解くシリア攻撃

    顔面蒼白の習近平

    先週、当ウェブサイトではシリア空軍基地に対する米軍のトマホーク攻撃について取り上げましたが、本日はその続きをもう少し深掘りしておきたいと思います。

    事の経緯をまとめておくと、4月4日(火)、シリアのアサド政権が民間人に対し、経性ガスのサリンを用いた攻撃を行った(とされる)事件が発生。これを受けてドナルド・トランプ米大統領は限定的なシリア攻撃を決断し、シリアの現地時間で2017年4月7日(金)午前4時40分に米軍は攻撃を開始したとのことです。

    ところで、この「攻撃開始時間」は、非常に重要です。次のFTの記事では、シリアの「現地時間金曜日午前4時40分」のことを「米国東海岸時間木曜日午後8時40分である」と報じています。

    Trump launches military strikes against Assad’s Syria(2017/04/07付 FTオンラインより)

    余談ですが、私が調べたところ、シリアは3月31日から夏時間を採用しているため、「米国東海岸時間木曜日8時40分」は「現地時間金曜日午前3時40分」となるはずです。なぜ私がこの細かい事実関係にこだわるのかといえば、シリアに対する攻撃が開始されたのが、トランプ氏と習近平氏のディナー中であったのかどうか、という点が重要だからです。念のために、対応表を作成しておきましょう(図表1)。

    図表1 時間の対応表
    場所と種類 正確な日付と時間
    シリア時間(夏時間) 2017/04/07 金 03:40
    英国時間(夏時間) 2017/04/07 金 00:40
    米国東海岸時間(夏時間) 2017/04/06 木 20:40
    日本時間 2017/04/07 金 09:40
    中国時間 2017/04/07 金 08:40

    WSJ(日本語版)や「テレグラフ」などの報道によると、ドナルド・トランプ米大統領は、米国時間4月6日(木)の習近平(しゅう・きんぺい)中国国家主席との晩餐会が開催されるよりも前の段階で、シリア攻撃を決定していたようです。

    シリア攻撃、トランプ氏の決断まで緊迫57時間(2017 年 4 月 10 日 07:49 JST付 WSJ日本版より)
    How Donald Trump kept the show going at dinner with Xi Jinping as the missiles flew(2017/04/07 21:38付 The Telegraphより)

    WSJとテレグラフの二つの記事をもとに、トランプ氏がシリア攻撃をするまでの行動を時系列でまとめてみましょう(図表2)。

    図表2 トランプ氏の行動の時系列
    日付 時間 行動
    4月4日(火) 午前10時半頃 トランプ大統領、情報機関から化学兵器攻撃の詳細説明を受け、「多くの選択肢」の提示を指示
    午後 数時間にわたり、会合や電話協議を行い、対応策を検討
    午後8時 軍事顧問との会合を開く
    4月5日(水) 午前 再び軍事顧問と協議
    午後3時頃 ヨルダン国王との昼食会を終えてホワイトハウスの危機管理室に戻り、側近に「相応の対応」を指示
    4月6日(木) 午後1時半頃 フロリダに向かう大統領専用機内での会合で、最終的に「比較的攻撃性が弱い軍事的選択肢」を決断
    午後4時頃 フロリダ州の別荘に到着。軍事顧問と再び会合を開いて攻撃を命じた
    午後7時10分 タキシードに着替え、メラニア夫人とともに習近平中国国家主席夫妻との晩餐会会場に向かう
    午後8時40分 米中両国首脳が晩餐会を楽しんでいるさなかに、米軍はシリアへのミサイル発射を開始した
    午後9時15分 晩餐会後に習近平氏一行を宿舎に送り届けたあとで、「マー・ア・ラゴ」内でミサイル発射情報をアップデート、その後記者会見

    しかも、これまでの報道によれば、おそらくトランプ氏はシリア攻撃に踏み切る前に、中国を除く主要国との間で、事前(あるいは事後)に調整していたようなのです。たとえば、前出の「テレグラフ」の記事では、晩餐会の10分前(英国時間だと深夜)に、ジェームズ・マティス米国防長官はマイケル・ファロン英国防相に対し、「大統領から(シリア攻撃の)命令が下った」と明らかにした、と報じています。同様に、テリーザ・メイ英首相はホワイトハウスから、ボリス・ジョンソン英外相はレックス・ティラーソン米国務長官から、それぞれシリア攻撃に関する通告を受けているようです。

    また、シリア攻撃が行われたのは日本時間の金曜日10時前でしたが、安倍晋三総理大臣はその直後に、さっそく「米国の決意を支持する」と表明しています。ということは、報道されていないだけで、実際には米国から安倍総理に対しても何らかの通告があったと見てよいでしょう。

    まさに、「知らぬは習近平のみ」、という惨状だったのです。いわば、「楽しいはずの晩餐会の最中にとんでもない爆弾を食らわされた」格好であり、どこの誰よりも最も「メンツ」を重視する中国の国家主席のメンツは完全に丸潰れとなってしまいました。

    晩餐会翌日の習近平氏が「顔面蒼白」に見えたのは、私だけではないでしょう。

    鳩が豆鉄砲を食らったように…

    つまり、一連の動きを丹念に追いかけてみると、今回のシリア攻撃は、明らかに習近平氏の訪米のタイミングに合わせて行われているものです。図表1に示した通り、攻撃のタイミングは、現地時間では早朝でしたが、米国時間では深夜、中国時間では午前中です。ただ、国家主席が不在の中で、中国は「(関係各国は)冷静さと抑制した対応を維持し、情勢をさらに緊張させないよう求める」と述べるのが精いっぱいだったようです。

    中国、トランプ米政権への直接的批判避ける 政治解決を呼び掛け(2017.4.7 17:30付 産経ニュースより【共同通信配信】)

    長時間のフライトにより米国に到着し、晩餐会をこなした直後の疲れている状況で、「寝耳に水」の唐突なシリア攻撃のニュースを受けて、習近平氏にとってはまさに「鳩が豆鉄砲を食らったような」反応しか示せないのも無理はありません。

    普段であれば、直ちに「中国は今回のシリア攻撃の措置に断固として抗議する」などと反撃したかもしれませんが、今回の中国の反応を見る限り、明らかに「受け身」にならざるを得なかったようです。

    ただ、メンツをつぶされた格好の習近平氏としては、何らかの形で「習近平氏の横っ面を叩いたトランプ氏」に「反撃」するチャンスを探ることになるのかもしれません。それが台湾海峡なのか、それとも朝鮮半島なのかはわかりません。しかし、少なくとも今回の米中首脳会談は、トランプ氏が公言する

    「個人的な信頼関係の構築に成功した」

    というシンプルなものではなかったことだけは明らかでしょう。

    シリア攻撃の3つの意味

    今回の米軍によるシリア攻撃の目的について、トランプ氏は

    「赤ちゃんを含めた一般市民が犠牲になったことに対する報復だ」

    と述べています。しかし、政治家の発言は「額面通り」に受け取るべきではありません。

    まず、トランプ氏にとっては、前出のWSJ日本語版記事によれば、「就任以来、成果を挙げていない」状況にあります(この主張もずいぶんと主観的だと思いますが…)。しかし、次のJBプレスの記事によれば、トランプ氏がシリア攻撃に踏み切ったこと自体は、「米国内で共和、民主の両党側から幅広く支持されている」のだそうです。

    トランプ大統領のシリア攻撃をクリントン氏も支持/共和党も民主党も幅広く賛同の意を表明(2017.4.9付 JBプレスより)

    ということは、トランプ氏にとって今回のシリア攻撃は、少なくとも「最初の成果らしい成果」としてアピールする効果があったとみてよさそうです。

    次に、中国に対し、「次は北朝鮮を攻撃するぞ!」という、強いメッセージを与えることに成功したことも事実です。先週の米中首脳会談では、北朝鮮の核開発についての目立った米中合意はありませんでした。しかし、今回、(表向きには)ロシアとの調整なしにシリア攻撃に踏み切ったわけですから、同様に、中国との調整なしに北朝鮮攻撃に踏み切ることもあり得ると中国に見せつけた効果があったことは間違いないでしょう。

    さらに、私たち日本や、北朝鮮と国境を接する韓国などに対しても、米国が本気で北朝鮮を攻撃するという意思を示したことの効果も大きいといえます。日本は米国にとって最大級の同盟国ですが、現状では韓国も(いちおうは)米国の同盟国のステータスにあります。そして、シリア攻撃は5月9日(火)に予定されている大統領選の有力候補についても、影響を与えた可能性があります。

    <韓国大統領選>安哲秀候補、多者対決の世論調査で初めて1位(2017年04月10日09時10分付 中央日報日本語版より)

    中央日報を含めた複数の韓国メディアの報道によると、次期大統領の有力候補者の中で、左派の安哲秀(あん・てつしゅう)候補が極左の文在寅(ぶん・ざいいん)候補を抜いたそうです。記事では一切触れられていませんが、私の見立てでは、「極左・親北派の文在寅氏を次期大統領に選んでしまうと、韓国はかなり早い段階で米国に見捨てられる」という危機意識が韓国国民の間で働いた可能性はあると思います。

    ただ、韓国の場合は誰が後継者になったとしても、後継政権が反日であるという点に関しては全く同じだと思いますが…。

    報道の正しさを確保するために

    慰安婦捏造メディア「日本の危機が安倍のチャンスとは不思議だ」

    さて、以前から当ウェブサイトをご愛読いただいている皆様ならご存知だと思いますが、私は「金融規制の専門家」であって、本来は「軍事情報の専門家」ではありません。そんな私が、ここ数日、シリア情勢について詳しく触れてきたのは、インターネット時代の恩恵というほかありません。つまり、普通のビジネスマンであっても、東京に居ながらにして、しかも非常に短い時間で、かなり正確な情報を独力で集めることができるのです(ただし初歩的な英語力は必要かもしれませんが)。

    しかし、こうした時代の変化について行けていない人たちといえば、旧態依然とした日本のマス・メディアなのかもしれません。特に酷いのが、「フェイク・ニュース」を乱発しまくっている朝日新聞社グループでしょう。朝日新聞社といえば、「日本軍が朝鮮半島で少女20万人を誘拐して戦場に連行し、性的奴隷とした」とされる「慰安婦問題」をはじめ、世界中で日本人の名誉を深く傷つける捏造報道を繰り返している組織として知られています。

    ただ、皮肉な言い方かもしれませんが、これらのメディアを眺めていると、ときどき「反面教師」として役に立つこともあります。「慰安婦捏造メディア」こと朝日新聞系のウェブサイト「dot.[ドット]」に、元国家公務員の古賀茂明氏が、「北朝鮮やシリアなどの日本の危機が安倍総理のチャンスになるのは不思議だ」と主張する記事を寄稿されています。

    古賀茂明「北朝鮮、シリア 日本の危機が安倍総理のチャンスになる不可思議」(2017/4/10 07:00付 dot.より)

    執筆した方も掲載したウェブサイトも「どっちもどっちだ」と仰る方もいらっしゃるかもしれませんが、リンク先の記事は意外と、私にとっては共感できる点がいくつかあります。

    古賀氏の主張の要点を私の文責で列挙すると、

    • 日本人が、戦後初めて戦争に巻き込まれる危機がすぐそこまで迫ってきている
    • それなのに国民に本当の「危機感」が広がっているようには見えない
    • 安倍政権の「対米追随外交」に合わせて、安倍官邸と自民党は呼吸を合わせて、一気に「朝鮮戦争」への参戦に備える体制整備に入った
    • 今年の3月30日に自民党は「日本も敵基地を攻撃する能力を持つべき」とする提言をまとめて安倍政権に提出した
    • これまで一貫して堅持してきた、日本の「専守防衛」という安全保障政策が完全に放棄されることになる
    • 米国が潜在的に要求している、日本の自主防衛努力(防衛費の抜本的増額)、それによる米国製武器の大量購入、自衛隊の海外派遣による米軍への貢献などは、米国の要求を待つまでもなく、安倍総理自らが進めたい政策だ
    • 日本国民にとっての危機が、むしろ、安倍総理にとっては、チャンスなのである

    ここまでの主張は、実は、趣旨としては私が執筆した『北朝鮮危機は日本にとってのチャンス』などと8割方は同じです。私も、北朝鮮危機に伴い、日本が戦争に巻き込まれるリスクが高いという点には同意しますし、安倍政権が今回の危機を活かして、国民の危機意識を醸成し、あわよくば再軍備への地ならしをしようとしていることは事実だと思うからです。

    え?「国民にとっての国益」と「安倍総理にとっての国益」がずれている?

    ところが、私が古賀氏の主張を読んでいて、唯一の、しかし致命的なエラーを発見したのが、次の下りです。

    • 「国民にとっての国益」と「安倍総理にとっての国益」のズレこそが、今日本が抱えている最大の危機なのかもしれない。」

    ここで思わず「?」と感じます。まさかとは思いますが、古賀氏は「日本の専守防衛という安全保障政策を堅持すること」が「国民にとっての国益」だと、本気で思っていらっしゃるのでしょうか?

    普通に考えてみればわかりますが、憲法第9条第2項とは、「日本国民の生命と財産がどれほどの危機に晒されていたとしても、日本国は絶対に戦争をしてはならず、国民がむざむざ死ぬのを邪魔してはならない」、と規定する、一種の「殺人条項」です。

    古賀氏はまた、こう主張します。

    • しかし、ひとたび参戦すれば、日本は、まさに、米国と並び北朝鮮の敵となり、在日米軍基地だけでなく、日本全土の原発や東京などの大都会が攻撃されることになる。
    • いずれにしても、日本人が、本当に安倍政権の対米追随路線の怖さに気づくのは、やはり、前述した北朝鮮とのミサイル戦争に巻き込まれて、日本の国土が戦場と化し、数千人の死傷者を出すときまで待たなければならないのかもしれない。

    確かに、日本が「第二次朝鮮戦争」に「参戦」すれば、北朝鮮は日本を「敵国」とみなして日本を攻撃してくるかもしれません。それは本当に怖いことですね。しかし、冷静に考えてみればわかることですが、別に日本が「参戦」しようがしまいが、関係ありません。日本が「第二次朝鮮戦争には参戦しない」と宣言したところで、北朝鮮は日本に対して「ミサイル戦争」を仕掛けないという保証にはならないからです。

    むしろ、「北朝鮮とのミサイル戦争に巻き込まれて、日本の国土が戦場と化し、数千人の死傷者を出す」のだとしたら、その理由は「日本が第二次朝鮮戦争に参戦するから」ではなく、「憲法第9条第2項があって日本は今まで有効な反撃手段を手に入れてこなかった」という事実を北朝鮮が知っているからです。

    そうであるならば、憲法第9条第2項の早期撤廃こそが、日本国民にとっての国益であるはずです。

    正しい民主主義とは、言論統制ではない!

    やはり、しょせんは慰安婦問題を捏造して開き直っている新聞社が掲載した論説ですから、クオリティを期待する方が無駄だ、ということでしょう。

    ただ、古賀氏の文章を読んでいただければ、どこでどう論理破綻しているかがよくわかると思います。その意味で、私はこの古賀氏の文章を多くの人々が読んで、「パヨク知識人」(※「知的に劣化した左翼」を揶揄するネット・スラング)らの思考パターンを日本国民が共有し、「騙されないための見識」を身に着けることで、逆に、日本をより良い国にすることができると思います。

    誰だって「はしか」に罹ります。そうなれば、体の中に「抗体」が出来上がり、ちょっとやそっとのウィルスには冒されない、健康な体が作られます。

    知識だってそれと全く同じです。古賀氏の珍説をはじめとする、「慰安婦問題を捏造した朝日新聞社」の歪んだ記事を読んで、それらに騙されるのではなくそれらを笑い飛ばすくらいの健全さが、日本国民には欲しいところです。

    その意味で、私は「正しい民主主義社会」を担保する社会的制度は、「言論統制」ではなく、「徹底した言論の自由」にあると考えています。シリア情勢や北朝鮮危機に関する既存メディアの報道などを眺めていて、私の従来の持論の正しさを改めて痛感した次第です。

     

    ※本文は以上です。

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