今年に入ってから日本政府が韓国に対し、従来にない強硬姿勢を示したことなどを受け、日韓関係が大きく動いています。これを受けて、当ウェブサイトでも連日、「時事ネタ」をベースとした議論を続けてきました。ただ、ここで「そもそも論」に立ち返り、私たち日本人一人ひとりが、日韓関係や日本の将来についてしっかりと考えることが大事です。そこで本日は、ある一冊の「問題作」を題材に、日韓関係の将来性を巡る、一つの「思考実験」にお付き合いください。

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    ここからが本文です。

    問題作『誅韓論』を読む

    本日は普段とやや趣向を変えて、一つの思考実験として、興味深い書籍を紹介したいと思います。
    誅韓論 (晋遊舎新書 S18)

    書名は『誅韓論』(ちゅうかんろん)、著者は「日本戦略ブレイン」だそうです。

    不穏当なタイトルと内容

    この書籍、「天誅」などに使われる「誅」の文字を用いていて、タイトルからして不穏当です。書籍の内容について、リード文を紹介しますと:

    日々エスカレートする韓国による反日工作と、それに対抗手段をとらない日本政府。日本人はこのまま我慢を強いられ続けるのか?2015年以降の東アジアをシミュレーションした結果、本書では「日本人の態度次第で、韓国は数年以内に潰せる」との結論に至った。否めないとされてきた韓国の戦略的重要性の否定、在韓米軍撤退から中国による吸収へ向かう半島情勢と、その時日本がとるべき選択…。世界最大の反日国家を、合法的かつ最小労力で沈黙させる方法がここにある!

    とあります。本書の主張内容を4行で簡単にまとめてみます。

    • 韓国は既に対日非正規戦を始めた現役テロ国家だ
    • その一方で、現在の米国は既に韓国を「守るべき価値のある同盟国」とはみなしていない
    • 長い目で見て中韓両国の一体化は避けられない
    • ならば日本の役割は、日清戦争開始以前の状態に「原状回復」することだ

    …。いかがでしょうか?随分と過激な主張ですね。

    類書との違い

    私自身、住居も事務所も新宿にあるため、暇ができると新宿の書店に出掛け、店頭で「売れ筋」の本をチェックするのですが、じつは、この書籍については書店で見たことがありません。私はこの本をアマゾンで見つけて購入したのです。

    なぜ書店で取扱いがないのでしょうか?

    その大きな理由は、やはり、内容が「過激だから」、ではないでしょうか?

    2012年8月に、当時の韓国大統領だった李明博(り・めいはく)が日本領・島根県竹島に不法上陸した直後から、日本国内では間違いなく嫌韓感情が強まり、現にそれ以降、書店の店頭でも「嫌韓本」を多く見かけるようになりました。

    これらの「嫌韓本」の多くは、韓国がいかに日本を嫌っているか、あるいは韓国がいかに日本に対して非礼を働いているか、といった事例を集めたものです。しかし、この『誅韓論』には、それらの多くの「嫌韓本」と決定的に異なるところがあります。それは、「日本がどう行動すべきか」について、明確に記載している、という点です。

    『誅韓論』でも、第1章では類書と同じく、「韓国の日本に対する敵対行為」が指摘されていますが、これらはあくまでも「議論の前提」に過ぎません。本書の価値は、韓国がいかに「邪悪な意図」をもっているかという説明と東アジア情勢の現状分析を踏まえたうえで、最終章において

    子どもたちの未来を守るためには韓国を潰すしかない

    と結論付けています。何とも過激な主張です。これでは確かに「本屋さん」には置けませんね(笑)

    ただ、日韓関係の先行きを巡って、日本人・日本社会でコンセンサスが形成されているとは言い難い中で、本書は、一種の思考実験(あるいは「議論のたたき台」)としては非常に興味深いものです。

    「慰安婦問題」をどう取り上げているか?

    ところで、この本が刊行されたのは2014年8月20日のことですが、その後、どうなったのでしょうか?

    本書では最終章で、「2016年、日本は韓国との戦争が可能になっている」と主張していますが、残念ながら現実はそうなっていません。実際には、2015年12月28日には「慰安婦に関する日韓合意」、2016年7月には米韓両国が「在韓米軍へのTHAAD配備」、同11月には「日韓包括軍事情報保護協定(GSOMIA)」が締結され、米韓関係・日韓関係は、むしろ強化されました。

    つまり、本書の提言は、現実社会ではそれほど顧みられていないのが実情といえます。

    ただ、日韓関係を巡っては、本書の想定より遅れたものの、やはり大きな動きがありました。というのも、昨年12月28日に、釜山の日本領事館前に新たな慰安婦像が設置され、今年に入って日本政府は駐韓大使の一時帰国などの「対抗措置」を取ったからです。

    このように考えていくと、やはり一昨年前に安倍政権が「日本人の名誉」を犠牲にしてまで締結した「日韓慰安婦合意」の愚かさを再認識せざるを得ません。

    では、本書では慰安婦問題を、どうとらえているのでしょうか?

    言うまでもなく、慰安婦問題とは朝日新聞社と植村隆が捏造し、韓国国民と歴代の韓国政府が尾ひれを付けてきた、「日本軍が朝鮮半島で20万人の少女を組織的に拉致し、戦場で性奴隷にした」とされる与太話です。だいいち、日本軍がそこまでの行為を行ったのなら、日本軍・日本政府から命令書が1枚も出てこないばかりか、米国で3000万ドル以上の資金を投じて取りまとめられた「IWG報告」でも、「女性の組織的な奴隷化」の主張を裏付ける米側の政府・軍の資料は1点も発見されなかった(2014年11月27日付・産経ニュース『米政府の慰安婦問題調査で「奴隷化」の証拠発見されず…日本側の主張の強力な後押しに』)ことは、不思議というしかありません。

    この点、本書では慰安婦問題について、次のように述べています(同P59)。

    「『娘が日本軍に誘拐された』と訴え出た家族は、戦中はおろか戦後も誰一人として現れていない」

    「にも関わらず、韓国人はその『光景』を映画やドラマや漫画などで捏造し、内外で『性奴隷問題』や『アジアのホロコースト』として喧伝している」

    「日本人という一民族を標的として実行している『誣告犯罪』であり、極めて陰険で邪悪なテロである。『ユダヤ人がキリスト教徒の赤ん坊を誘拐して殺している』というウソよりも、さらに悪質で卑劣な、およそ他民族に対する最悪のヘイトクライムである」

    この指摘については、私もほぼ同感です。本書の刊行とほぼ時を同じくして、朝日新聞社は2014年8月5日、文筆家の吉田清治の証言をベースに植村隆が執筆した記事を「虚偽があった」として撤回しましたが、韓国は依然として、これが「捏造である」という事実を認めていません。

    そればかりでなく、2015年12月28日には、愚かにも安倍政権は慰安婦問題が「事実」であるかの前提を置いて、韓国に対して10億円の資金を支払うことで合意してしまったのです。

    安倍総理ご自身が、日韓合意の以前にこの書籍を読んでいたとすれば、そのように愚かな決断をすることはなかったかもしれません。

    韓国の「邪悪な野望」

    もう一つ、本書から「韓国が抱く邪悪な野望」の例を取り上げておきましょう。

    2011年3月に、日本では東日本大震災が発生。福島第一原発が水素爆発を起こすという大惨事を招きました(ただし、爆破したのは当時の日本の首相・菅直人です)。この時に韓国大統領だった李明博は、この日本の原発事故を見て、

    日本の原発産業を壊滅に追い込み、自らその地位に取って代わろうとしていた

    と判断したという、恐ろしい仮説を提示しています(同P28)。

    筆者は、李明博が「経済大統領」として、韓国の原発産業を育成するために、手っ取り早く

    • 日本の原発産業を壊滅に追い込み、行き場を失った大量の日本人技術者と最新技術をごっそりと手に入れる
    • 日本が原発を全廃して電力不足に陥る一方、韓国が急ピッチで原発を増設することで生まれる余剰電力を韓国から日本に輸出することで、日本経済の首根っこを押さえる
    • 原発に代わるエネルギーとしてメガソーラーなどに対する電力買取を制度化し、韓国製パネルの販路を拡大する
    • ウラン濃縮と使用済み核燃料の再処理ができる国へと昇格する

    という、具合に、日本の原発事故を「一粒で四度おいしい」(同P30)結果をもたらす千載一遇のチャンスとして活用しようとしていたと指摘しています。

    実際、本書の指摘では、韓国政府はKCIAやその傘下にある在日組織・日本の左派系の著名人や市民団体などを通じて、反原発運動を盛り上げようとしていたと述べています(同P31)。ただ、旧来のメディアや言論人・著名人の発信は「明らかに反原発に偏っていた」ものの、日本の産業界や国民の抵抗は「意外なほど強く」、「国民の7~8割は頑として(原発の)『即時全廃』を拒絶し続けた」(同P32)ため、こうした反原発運動は頓挫したとしています。

    ただし、この一連の「反原発運動と韓国とのつながり」や「李明博の野望」については、本書では明確な根拠は示されていません。この点については割り引いて考える必要はありそうです。

    日韓関係をどうとらえるべきか?

    以上、『誅韓論』という書籍のごく一部を紹介しましたが、これを踏まえて、私自身の考えについても述べておきたいと思います。

    日韓関係巡る「6つの類型」

    私は現在の日本国内の報道などから判断すると、日韓関係に関する日本側の考え方は、だいたい6つに集約されると思います(図表1)。

    図表1 日韓関係を巡る6類型
    カテゴリ 分類 概要
    日韓友好推進派 ①対等な日韓関係 日本は韓国と、価値を共有する対等な主権国家同士として、友誼を深め、ともに手を取り合って未来に向けて発展していくことを目指す考え方
    ②対韓配慮型関係 日本は過去の歴史問題などに多少は配慮し、謝るべきところは謝り、賠償するところは賠償するなどしつつも、韓国と対等な関係構築を目指す
    ③対韓追従型関係 韓国が求める「正しい歴史認識」を全面的に受け入れ、韓国が「もう良い」と言うまで全面的に謝り続ける
    日韓友好非推進派 ④韓国放置論 韓国が日本に対して突きつけてくる不当な要求を無視し、敢えて日韓関係の改善を先送りにする
    ⑤日韓断交論 韓国との関係を断ち切る
    ⑥誅韓論 韓国という国を、むしろ積極的に滅亡させる

    日韓友好論

    アンケート調査を取ったわけではありませんが、一昔前であれば、日本国民の大部分は、「外交関係はよくわからないが、みんな仲良くやっていけば良いのではないか?」などと軽く考えていたのではないでしょうか?この場合、①の考え方がマジョリティを占めるでしょう。あるいは、経済界や政界などでも、「日韓は対等な主権国家同士、ともに手を取り合って発展すべきだ」とする考え方は存在するでしょうし、オバマ政権時代のなど米国の考え方も、上記①に近いでしょう。つまり、「日本も韓国も米国の同盟国なのだから、仲良くやってくれよ」、というわけです。

    こうした①の考え方は、非常に無責任です。というのも、日本側がどんなに「対等に付き合おう」と提案したところで、肝心の韓国側が、上記①の考え方を拒絶しているからです。

    そこで、仕方なしに出てくるのが上記②の考え方です。

    これは、「円滑な日韓関係のためであれば、多少原理原則を曲げても、日本が譲るべきところは譲る」などの考え方で、私は、日本の外務省の中に、このような考え方を取る者が特に多いような印象があります。こうした考え方を、政府関係者やマス・メディア人らは「大人の対応」などと呼ぶことが多い気がしますが、私に言わせれば「外交事なかれ主義」です。また、2015年12月に安倍政権が行った「日韓慰安婦合意」も、短期的な外交目的(日韓関係の安定化)のために、日本人の名誉を犠牲にしたという意味で、上記②の類型に近いと思います。

    なお、③については、慰安婦問題を捏造した朝日新聞社を筆頭に、日本の左派メディアで広く見られる意見ですが、この考え方については検討する価値すらありませんので、ここでは無視します。

    (2017/01/15 09:05追記)自民党の二階幹事長の発言

    ※本節のみ追記です。

    上記②の考え方を取ると思われる「親韓派政治家」の考え方を、次の時事通信の報道に発見しました。発言者は自民党の二階幹事長です。

    駐韓大使帰任は17日以降=安倍首相帰国後に判断(2017/01/13-20:28付 時事通信より)

    私が注目するのは、この記事にある、次の下りです。

    自民党の二階俊博幹事長は13日(中略)、二階氏はTBSの番組収録で「短期間に解決することが第一目標だ。この事態を一日も早く解消して、友好に満ちた日韓関係をつくっていく努力が大事だ」と述べた。」(※赤太字は引用者による加工)

    つまり、二階氏は、慰安婦像問題や大使の一時帰国措置が、「友好に満ちた日韓関係」を作るうえで問題になっていると認識しているのです。ただ、私に言わせれば、二階氏の主張する「友好に満ちた日韓関係」という表現に、戦後の日本外交の間違いが集約されています。私は、この二階氏の発言にある、「友好に満ちた日韓関係を作ること」自体を外交の目的にするという考え方を受け入れることができません。

    以上、追記でした。

    日韓非友好論

    さて、現在の日韓関係を見ると、日韓友好論のうち①については最初から破綻しており、②についても日本国民のマジョリティから支持を失っていることはほぼ間違いありません(なお、③は論外)。

    そのように考えていくと、「もはや日本国民の多数は『日韓友好』を支持していない」、とする仮説に説得力はあるものの、問題は、「これからの日韓関係をどのように捉えれば良いのか?」については、国民のコンセンサスが取れているとは言い難い点にあります。

    昨年12月に公表された「外交に関する世論調査」によると、昨年11月時点で、韓国に「親しみを感じる」と答えた比率は37.8%、「親しみを感じない」と答えた比率は59.3%でした(図表2)。この比率は、2011年10月時点と比べて、ほぼ逆転しているという点についても、興味深いところです(図表3)。

    図表2 日本国民の対韓親近感

    図表3 日本国民の対韓感情は悪化で横ばい
    調査時点 親しみを感じる 親しみを感じない
    2011年10月 62.2% 35.3%
    2012年10月 39.2% 59.0%
    2014年10月 31.5% 66.4%
    2016年1月 33.0% 64.7%
    2016年11月 37.8% 59.3%

    ただ、日本国民の過半数が「韓国に対して親しみを感じていない」ことはわかりますが、そのうえで日本国民が「対韓関係をどうしたいのか」については、今一つ見えて来ません。

    これについても、別にアンケート調査を取ったわけではないにせよ、私の感覚としては、現在の日本国民の意見は上記④、つまり「韓国のことなど放っておけ」、とする考え方がマジョリティではないかと思います。そして、上記⑤(日韓断交論)は、ほんの少し前までは「極めて少数派」であり、上記⑥に至っては「極論」だったのではないかと思います。

    「日経」冠した大手メディアの「日韓断交論」

    ただ、釜山の慰安婦像設置問題は、さすがに多くの穏健派の日本国民に対しても、日韓関係の再考を迫る事件です。これについて、新春の「日経ビジネスオンライン」の人気シリーズ「早読み深読み朝鮮半島」に、次のような記事が掲載されています。

    2017年、日本が問われる「韓国の見捨て方」(2017年1月1日付 日経ビジネスオンラインより)

    記事の著者は、日本の「コリアウォッチャー」としては「第一人者」でもある、日本経済新聞社の鈴置高史編集委員です。記事の内容を私の文責で簡単にまとめると、「韓国で反米・反日政権が誕生することを契機に、うまく韓国を見捨てることで、不幸中の幸いにすべきだ」、という主張でしょう。

    私は、ついに「日経」という大看板を背負ったメディアにまで、「日韓断交論」が登場したことに、新春から驚いてしまいました。この鈴置編集委員の主張は、以前から私が主張してきた類型でいう⑤に近いと思います。

    再考に値する、本書の「提言」

    以上、日韓関係をどうとらえるかについて、ざっと振り返ってみました。そして、私が見たところ、6つの類型の中で、さすがに「日本が積極的に韓国を誅滅すべし」といった極論(上記⑥)については、保守派の中でもごく少数はであることは間違いありません。

    ただ、現状認識として、韓国が日本に対して極めて強い敵愾心を抱いているという事実、放っておけば慰安婦像が世界中で建立され、日本人の名誉が汚され続けるという見通しについては、日本人が共有しておくべきでしょう。

    もちろん、私個人としても、日本が積極的に韓国に対して戦争を仕掛けるべきだとか、核武装すべきだとか、そういった「極論」を支持することができるかといわれれば、それはそれで微妙です。ただ、「韓国との価値を共有した友好関係」の構築など非現実的ですし、また、日本が一方的に韓国に配慮するような関係も不健全です。

    そのように考えるならば、本書の「提言」が「あまりにも極論過ぎる」と思われない程度には、日本国内で韓国との付き合い方に関するコンセンサスが形成される必要があります。私は、上記④を主軸にしつつ、極論として⑤や⑥の意見が存在する、といった状況が、現実的な落としどころだと見ています。

    ただし、時として現実は「遥かに先を行く」状態になることだってあり得ます。特に、今週20日(金)に米国でトランプ政権が発足し、「日本にだけ我慢を強いる」ような不正常な米国のアジア外交にも修正が掛かることは間違いありません。

    その意味で、今週以降、しばらくは日韓関係から目が離せない展開が続きそうです。

    ※本文は以上です。

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    著者のコンタクト先:info@shinjukuacc.com

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