参議院選挙は「自民圧勝」「改憲派勢力勝利」などと報じられていますが、そのように考えるのは適切なのか、考察してみます。また、参院選の結果を受け、にわかに「改憲」が現実化しつつありますが、憲法をめぐる議論は単純ではありません。

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    ここからが本文です。

    「新宿会計士」、選挙運動に辟易する

    現在、東京都では都知事選・都議選(補選)が行われていて、ここ新宿でも、仕事中に選挙カーが通ることがあります。私は現在、事務所をワンルーム・マンションの一室に構えているため、顧客と大事な電話中に大音量で選挙演説が来ると、電話を中断しなければなりません。また、書籍の原稿やセミナー資料を、常時数本抱えているという事情もあるので、選挙運動は正直、迷惑です。

    しかも、一部の候補者を除くと、多くの場合、単に候補者の名前を連呼して

    「本日は選挙のお願いに上がりました、●●(候補者フルネーム)をもう一度、都政の場に送り届けてください!」

    などと叫ぶのみです。選挙カーを使った選挙運動を見ていても、具体的にその候補者がどんな政治信念を持っているのか、あるいはどんな人なのか、その「人となり」がよくわかりません。

    ちなみに、私自身はすでに投票する候補者を決めていますが、選挙カーに乗って大声で「お願い」しているからという理由で、その候補者に投票するつもりはありません。きちんと自分自身で情報を集め、「都政にふさわしい」と思う候補者に一票を投じるつもりです。

    参議院改革・雑感

    選挙活動はともかくとして、選挙期間中は、「政治」についてじっくり考える良い機会です。もう終わってしまいましたが、今年は参議院議員通常選挙という「大型国政選挙」が行われました。日本国憲法の規定により、参議院議員選挙は3年に1回、所属する議員の半数が改選されるという形式で行われており、今回の選挙は第24回目でした。

    図表 2016年7月実施「第24回参議院議員通常選挙」の結果
    政党名 非改選数

    (①)

    今回改選数

    (②)

    獲得議席数

    (③)

    旧勢力

    ①+②

    新勢力

    ①+③

    自由民主党 66 48 56 114 122
    民主党・新緑風会 17 42 32 59 49
    公明党 11 14 20 25
    日本共産党 11 14
    おおさか維新の会 12
    諸派 12 14 26 14
    無所属
    合計 121 121 121 242 242

    (【出所】参議院ウェブサイト「会派別所属議員一覧」及びWikipedia「第24回参議院議員通常選挙」)よりブログ主作成。なお、「民進党」の参議院の登録会派名称は「民主党・新緑風会」のまま)

    今回の選挙戦については、主要メディアが「自民党が圧勝して民進党が惨敗」し、「改憲派勢力が衆参いずれでも3分の2を超えた」などと報じましたが、果たしてこれは適切でしょうか?

    まず、「自民党が圧勝して民進党が惨敗」の下りから検討してみましょう。

    図表を見てみると、確かに「今回改選数(②)」と「獲得議席数(③)」の比較だけで見れば、自民党は48議席を56議席に増やしており、民進党(図表中の「民主党・新緑風会」)は42議席を32議席に減らしています。これだけを見ると、自民党が勝って民進党が負けたかのように見えます。

    しかし、参議院には「解散総選挙」がない以上、今回の改選議席は6年前の選挙に対する改選です。そして、選挙は3年に1回行われており、今回の選挙については、上記「②」と「③」だけでなく、「非改選数(①)」と「獲得議席数(③)」についても比較してやる必要があります。

    2013年の通常選挙では、民主党(当時)が獲得した議席数は17議席に過ぎず、これに対し自民党は65議席を獲得する圧勝を果たしました。それが、今回の選挙では民進党が32議席に「躍進」。自民党の獲得議席数は56議席に留まったわけですから、今回の選挙戦を「自民党の圧勝」「民進党の惨敗」と決めつけるには違和感があります。

    それだけではありません。自民党は27年ぶりの単独過半数を伺っていたものの、獲得議席数は55議席に留まり(※)、選挙時点での単独過半数回復は達成できませんでした(ただし、上記図表では民主党政権で復興大臣を務めた平野達男参議院議員をカウントしているため、獲得議席数は56議席、同氏をカウントした新勢力は122議席で、選挙後にかろうじて過半数に達しています)。

    次に、「改憲に積極的な勢力が衆参両院で3分の2を獲得した」という下りです。

    「自民・公明両党」と、憲法改正に「前向きである」とされる「おおさか維新の会」、「日本のこころを大切にする党」の4党で162議席に達していることは事実です。しかし、公明党が「憲法改正に前向き」であるのかといわれれば、そこには議論があるでしょう。

    実際、公明党は現行の日本国憲法について、「加憲」の立場をとっています。同党ウェブサイトによると、これは、「『恒久的平和主義』『基本的人権の尊重』『国民主権主義』という『憲法3原則』を守りながら、時代の進展に伴う新しい考え方・価値観を憲法に加える」、という考え方であり、

    「日本国憲法 第9条第1項、第2項は平和主義を体現した規定であり、これは堅持しなければなりません」

    と述べています。これに対して自民党の改憲草案によれば、憲法第9条のうち「第1項」については維持されているものの、現行の第2項が

    「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」

    と書き換えられています。これだと、自民党が目指す「憲法第9条の改正」は難しそうです。

    今こそ憲法議論を!

    ただ、幸いなことに、公明党は、「加憲」というかたちではあるものの、改憲議論そのものには、今のところ前向きであるようです。そうであれば、有権者の付託に応じ、国会はそろそろ改憲に関する議論を始めるべきです。

    戦後の日本では、「憲法第9条」が存在していたことと、一度も外国に攻め込んだことも、外国から攻め込まれたこともないことは事実です。ただ、両者に因果関係があるとみるべきではありません。よく「護憲派」の政治家らが、「憲法第9条があったからこそ日本は戦争に巻き込まれなかった」などと主張していますが、彼らは日米安保条約の存在を無視するなどしており、政治的には説得力などありません。

    別に「改憲」は憲法第9条から入る必要があるというものではありません。たとえば、憲法第11条(基本的人権の尊重)と第97条(「最高法規」と称する基本的人権の尊重規定)が重複していますし、憲法第7条(天皇の国事行為)が天皇陛下個人に過度な国務負担を負わせている可能性があるなど、日本国憲法には見直すべき箇所が多々あります。個人的には、予算単年度主義を定めた第86条を改正し、国の会計に複式簿記の概念を導入してほしいと考えています。

    あるいは、憲法第9条にしたって、たとえば「平和主義について定めた第1項については維持し、自衛戦争を禁じた第2項のみ撤廃する」といった議論があっても良いはずです。

    日本と同じ第二次世界大戦の敗戦国であるドイツでさえ、すでに戦後何十回も憲法を改正しているわけですから、「日本だけが憲法を改正してはならない」という議論などナンセンス極まりない話です。私は、少なくとも「憲法第9条絶対擁護」などと不毛な主張をする「護憲派」の人たちを信頼していません。是非、国の在り方を巡り、国会、そして民間の論壇等で、前向きな議論を繰り広げていきたいものです。

    ※本文は以上です。

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