数字で見る…韓国と「静かに距離を置く」日本の産業界

韓国に対する国を挙げた無関心―――。最近の日韓関係といえば、そもそも(とくに産業界などで)話題になることが減っている気がしますが、これについていくつかの統計を調べてみたら、日本の企業社会が国を挙げて「ステルス撤退」を続けているようにも見えるのです。これは気になる現象です。韓国といえば数年前まで、FCレーダー照射や国際法違反問題で対日不法行為を続けていた相手国ですが、これについてどう考えるべきでしょうか。

久しぶりに韓国ネタ

当ウェブサイトの話題は偏っている!

クリスマスも終わり、世間ではもう冬休みモードに突入している人も多いと思います。

児童・生徒・学生はもちろんですが、社会人であっても金融機関や役所を除けば、「本日で仕事納め」というケースも多いでしょうし、なかには有給休暇を使い、少し早めの年末年始休暇に入っているというケースもあるかもしれません。

例年であれば、当ウェブサイトも年末年始にはアクセスが急減するのですが、ただ、こんなタイミングであっても、やはり是非とも論じておきたいテーマはいくつかあります。

当ウェブサイト、「政治経済評論」と名乗っているわりには、取り上げる話題がそのときどきで偏っており、2019年前後はさながら「韓国専門サイト」のようになっていましたし、2020年以降は「コロナ専用サイト」や太陽光発電や原子力発電などの「再エネ・ベースロード電源論争」の話題などを取り上げてきました。

こうした延長線上で、やはり「取り扱う話題」の偏りは解消しておらず、2024年以降は「税社保取り過ぎ問題」、さらにここ数週間は中国問題を取り上げることが増えているのです(とくにこの1ヵ月間、当ウェブサイトはさながら中国専門サイトの様相を呈していました)。

韓国を話題に取り上げることが急減したが…

さて、これに関連して、来年ますます当ウェブサイトで取り上げる頻度が下がるであろう話題のうち、今のうちに取り上げておきたいものがひとつあります。

韓国です。

かつて当ウェブサイトでは韓国についてかなり深く取り上げていましたが、その理由はもちろん、当時の韓国の対日不法行為が酷すぎたからです(詳しくは『【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』などもご参照ください)。

ところが当ウェブサイトでは最近、韓国観察者の鈴置高史氏の論考を紹介する以外に、韓国を話題として取り上げることがほとんどありません。

鈴置氏の論考を読む価値があることは間違いありませんが、それは鈴置氏が執筆している論考だからであり、正直、著者自身としては、韓国に対する関心は非常に低下しています。

ただ、これはべつに著者だけでの感想ではありません。どうも日本全体として、韓国は「論じる対象」としての関心が急低下しているフシがあるのです。というよりも、日本が産業界を挙げて韓国とのかかわりを薄めてきている、と述べた方が正確でしょうか。

データで読む日韓関係

邦銀対外与信に占める韓国向けのシェアは0.84%

たとえば、当ウェブサイトではなかば定期的に紹介するのが、国際決済銀行(BIS)が集計・公表している『国際与信統計』です(英語の “Consolidated Banking Statistics” を略して『CBS』と呼ばれることもあります)。

先日の『中国や香港からのステルス撤退続く邦銀=国際与信統計』でも取り上げたとおり、邦銀の対外与信は5兆6123億ドル(円換算で835兆2855億円)と過去最高でしたが、その内訳をみると、韓国は472億ドルで18位、邦銀の対外与信総額に占めるシェアはわずか0.84%です(図表1)。

図表1 日本の対外与信相手国一覧(上位20件、2025年9月末時点、最終リスクベース)

(【出所】日銀『物価、資金循環、短観、国際収支、BIS関連統計データの一括ダウンロード』サイトのデータをもとに作成)

472億ドルといえば7兆円あまりであり、「絶対額」として見ると決して少ない金額ではありませんが、それでも韓国が(自称)「先進国」であり、そこそこの経済大国であるとともに、日本から最も近い外国のひとつであるにも関わらず、韓国への与信額とシェアの少なさは印象的です。

対中与信と対韓与信の動きが似ている

しかも、韓国に対する与信総額は、金額自体も横ばいであるとともに、邦銀対外与信に占めるシェアも下がり続けているのですが、その点では中国に対する与信と状況が似ているのです(図表2)。

図表2-1 中国に対する与信(最終リスクベース)

図表2-2 韓国に対する与信(最終リスクベース)

中国、韓国ともに、邦銀から見て与信額が劇的に減っているわけではありませんが、「シェア」についてはジリジリと下がっています。金額が横ばいなのにシェアが下がる理由は、この期間、邦銀の対外与信合計が一貫して大きく増え続けているからです(図表3)。

図表3 邦銀による対外与信合計(最終リスクベース)

これは、なかなかに興味深い現象です。

邦銀としては決して韓国から資金を大々的に引き上げているわけではないものの、韓国以外の国・地域への投資を積み増すことで、結果的に韓国に対する与信シェアが落ちているのです。

対外投資も中韓向けの全体に占めるシェアが低下している

これと同じ現象は、対外直接投資の統計でも確認可能です(図表4)。

図表4-1 日本企業の対外直接投資(中国)

図表4-2 日本企業の直接投資残高(韓国)

どちらの国も、日本企業からの直接投資残高についてはじわじわと増えています(中国は製造業、韓国は非製造業が多いようです)が、これだけを見ると「日本企業は中韓への投資を積極的に増やしている」と勘違いするかもしれません。

しかし、これについても「合計」を見ると、また印象が変わって来るのではないでしょうか?(図表5

図表5 日本企業の直接投資残高(合計)

日本企業の対外直接投資残高は、2014年の約139兆円から2024年には331兆円へと約2.4倍に膨れ上がりましたが、同じ期間、対中投資は約1.6倍、対韓投資は約1.5倍にしか増えていません。

日本企業の投資残高(2014年→24年)
  • 対世界…約2.4倍
  • 対中国…約1.6倍
  • 対韓国…約1.5倍

韓国在住者数はさほど減っていないが…

このことから、日本企業は「中韓から撤収したわけではないが、中韓以外の国・地域への投融資を積み増すことで、中韓の相対的な重要性を下げる」という行動に出ている、といった仮説が成り立つのです。

ちなみに外務省の『海外在留邦人数調査統計』データからも、ビジネスで中韓と関わる人が減っている可能性が浮かびます(図表6)。

中国に関してはかなり露骨で、在留邦人の9割以上は「永住者」ではなく「長期滞在者」、つまり「中国に一時的に居住しているだけで、いずれ日本に帰ってくる可能性が高い人」であり、その人数も年々減っていることがわかります。

図表6-1 中国に在留する日本人

これが、当ウェブサイトで「中国からのステルス撤退」と呼んでいる現象のひとつです。

その一方、韓国在留邦人に関しては、意外なことに、じわじわと増えています。

図表6-2 韓国に在留する日本人

ただ、内訳で見ると、「長期滞在者」については微減から横ばい傾向が続いており、これも日本企業の韓国駐留需要が横ばいから少しずつ減少しているという可能性が示唆されます(もっとも、そもそも海外在住日本人自体が減少傾向にあることは否定できませんが。人口減の影響もあるのでしょうか?)。

単月輸出先では台湾、香港に抜かれて5位に転落

ちなみに、本日までに公表されている財務省『普通貿易統計・国別総額表』によると、2025年11月の単月データで見ると、前月に続き、日本にとっての輸出先の第3位が台湾、第4位が香港となり、韓国は日本にとっての「5番目の輸出先」に転落しています(図表7)。

図表7 当月輸出金額(2025年11月)
相手国・地域金額構成比
合計9兆7095億円100.00%
1位:米国1兆8169億円18.71%
2位:中国1兆6199億円16.68%
3位:台湾7069億円7.28%
4位:香港6082億円6.26%
5位:韓国5854億円6.03%
6位:タイ3618億円3.73%
7位:シンガポール2899億円2.99%
8位:UAE2542億円2.62%
9位:ベトナム2499億円2.57%
10位:ドイツ2387億円2.46%

(【出所】財務省税関『国別総額表 :検索結果』データをもとに作成)

ちなみに単月データで韓国が香港に抜かれて5位となったのは、2025年8月以来、4カ月連続のことでもあります。

韓国といえば「半導体王国」であり、日本からは半導体製造装置等の輸出が多いことなどでも知られていて、長年韓国は日本にとって「3番目の輸出相手国」だったのですが、いったいどういう風の吹き回しなのかは気になるところです。

これについては来年1月下旬に公表されるであろう2025年を通じた輸出入品目データを見て、興味深い点があればまた別途取り上げるかもしれません。

距離を置くのは自然な話

いずれにせよ、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、竹島不法占拠問題など、韓国が作り出した日韓諸懸案は多数積み上がったままの状態ですが、日本が国を挙げて、(少しずつですが)韓国と距離を置こうとしているフシがあるのは興味深い点です。

ただ、日本の韓国に対する姿勢(できるだけ新たな問題が発生しないようにしつつも、ステルスで撤退していくという流れ)は、たとえ政権が変わったとしても、おそらく基調としては今後も変化しないように思えます。

正直、日韓関係は日米韓3ヵ国連携の一環に位置付けられるものであり、それ以上の関係には発展しないでしょう(もちろん、韓国の側で対日不法行為を改めたうえでこれまでの対日不法行為で日本に与えた損害を回復しようと努力するなら話は別ですが)。

あえてお叱りを恐れずに申し上げるなら、著者は国家間の関係も人間関係と同じだと考えています。

要するに「嫌いな相手と無理して付き合う必要はない」、「仲が悪いなら仲が悪いなりに、その国と利害関係を深く共有するような関係になるのは控えるべき」、というものであり、相手国が日本に対して仕掛けてきた不法行為が深ければ深いほど、静かに距離を置こうとする力学が働くのです。

そして、ここ数年の日韓関係(歴史問題捏造、国際法違反、FCレーダー照射等)の経緯を眺めていると、何となく日中関係もどうなっていくかが読めるように思えます。

こうした見方が正しいかどうかについては、おそらく今後数年単位で明らかになって行くのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

本文は以上です。

金融評論家。フォロー自由。雑誌等の執筆依頼も受けています。 X(旧ツイッター) にて日々情報を発信中。 Amazon アソシエイトとして適格販売により収入を得ています。 著書①数字でみる「強い」日本経済 著書②韓国がなくても日本経済は問題ない

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読者コメント一覧

  1. クリリン より:

    韓国で気になるのは来年のスワップ期限切れですね。
    宗主キンペー様が高市護国政権にお怒りなのに一緒になって韓国が騒がないのはコレの更新を勝ち取るまでは大人しくしているからでしょうか?

    1. はにわファクトリー より:

      新聞編集部や NHK を始めとする TV 各局の内部深くに潜入している工作員たちが、年末以降に日韓友好の絆などという白々しいプロパガンダ記事、プロパガンダ番組を次々送り出して来そうな予感がします。ピンときたらスクリーンショット、証拠は OneDrive に送り込んで永遠保管。

      おまふす

  2. 引きこもり中年 より:

    毎度、ばかばかしいお話を。
    韓国:「数字より心情だ。日本産業界にとって、韓国は必要な存在なんだ」
    笑い話ということに、してください。

  3. naga より:

    不満があってもその場ではっきり文句を言わず、ただ来なくなるだけの人が多いと言われる日本人旅行者のような動きでしょうか。

  4. Sky より:

    新年早々にCES2026が開催されます。特ににB2C系技術系企業にとっては重大なイベントです。例年K国メーカーも参加するので、これを定点観測すると技術的視点からの国力の変化を測ることができるでしょう。
    個人的印象では大手のサムソンやLG、ヒュンデはまだまだ意外に頑張っているように思っています。
    あとまるで分野違いですが、全米音楽チャートの2025ランキングでK国の曲が上位にランクインしており、へ〜!って思いました。

  5. 伊江太 より:

    >日本が国を挙げて、(少しずつですが)韓国と距離を置こうとしているフシがあるのは興味深い点です。

    これ、どうなんでしょうね。一昔前、と言ってもそれほど以前でもない時期に、本記事で論じられている色々な事象が起きていたのだったとしたら、アチラの対日不法行為が~と言えるのかなとも思えるのですが、現在われわれの韓国という国に対する関心が薄れてきているのは、アチラが勝手に、日本にとってのみならず、世界にとってもどうでもいい国に、ドンドン成り下がりつつあることの表れじゃないかという気がするんですが。

    思えばムンちゃん、存在感ありましたねぇ。まあ、世界を驚かすほどの悪手を連発したこの人物が、韓国の今日を作ったとみて、間違いはないでしょうがね。それでもって、気持ちだけはなんとかそれを立て直そうと思ってはいたんでしょうけど、後を襲ったユンちゃんは、なんと、今では発展途上国でもめったにはやらないクーデターを起こそうとして、あえなく失脚。そして続いて大統領になったのが、前科がいくつあるかも定かでないほどのな●ず者ですよ。そんな体たらくを、世界に冠たるK民主主義だなんて悦に入ってる国民が集まって成り立ってる国ですからね。まあ、相手にしたってしようがないってことになりますよ。

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