現実味帯びる国民民主党「大躍進」と候補者選びの課題

国民民主党が今夏の参院選でかなり躍進するであろうことは想像に難くないうえ、状況次第では衆参同日選もあり得ることから、国民民主党としては候補者集めをこれから加速させていくのではないかと思われます。ただ、玉木雄一郎氏は同党の公募に千人超が集まっていると述べたそうですが、これら候補者の身体検査はなかなかに大変でもあります。そうなると、現実的には「候補者の一本釣り」なども視野に入れるのではないか、という気がしてなりません。

参院選投票先で「国民>自民」

議論の「可視化」はSNSの功績』の末尾では、今夏の参院線の比例投票先で、国民民主党が14.3%と自民党の13.5%を上回りトップとなった、などとする「紀尾井町戦略研究所」によるオンライン世論調査の結果を紹介しました。原文は下記リンクなどで読めます。

参院選比例投票先は国民民主14%、自民13%、立憲8%、維新5%

―――2025年1月23日 10時06分付 PR TIMESより

これについてはもちろん、現時点での世論が半年後も変わらないという保証はないことに加え、オンライン調査でもあること、国民民主党がとくにネット層から高く支持されているであろう状況証拠が多いことを踏まえると、この調査の結果がただちに今夏の参院選の結果を予想するうえ適切なものとは限りません。

自民党、そんな首相で大丈夫か?

ただ、いわゆる「年収の壁」引き上げなどを巡る議論で自民党が悪手を打ち続けているように見えてしまう(『年収の壁巡って自公が国民民主案に少しだけ歩み寄りか』等参照)ことなども踏まえると、やはり、今夏の参院選では自民党が改選議席を守れるのか、少し慎重にならざるを得ません。

なにせ、今夏の参院選は、故・安倍晋三総理大臣が率いていたころに獲得した議席の入れ替えでもあります。

石破茂・現首相が(参院選時点でも退陣していなければ)再び民意の審判を受ける機会でもありますが、普通に考えてそこそこ勝てるはずだった昨年10月の衆院選で大敗を喫するほどですから、参院選でも自民党は決して楽観視すべきではありません。

ましてや「年収の壁問題」で少なくない有権者の失望を招いている可能性があるなかで、さすがに自民党が第1党の地位を失うまでに大敗するとも考え得られないなかではあるにせよ、自民党の「動向」は大変に気になるところです。

日経調査では少なくとも「国民>立民」に!

こうしたなかで、「紀尾井町戦略研究所」ほどに極端ではないにせよ、やはり国民民主党の好調さを裏付けるような話題がもうひとつ出てきました。

参院選投票先、自民党32% 国民民主党15%で立民上回る

―――2025年1月27日 2:00付 日本経済新聞電子版より

日経新聞によると、日経・テレ東の合同世論調査(24~26日実施)で、「夏の参院選で投票したい政党」で国民民主党が15%でとなり、自民党の32%を下回ったものの、野党第1党の立憲民主党の13%を上回ったことが明らかになったそうです。

ちなみに年代別では30代と40代で国民民主がトップに立った、とも記載されていますが、これなど上記「紀尾井町戦略研究所」や各種メディアの調査、あるいはSNSなどを通じて見えて来る人々の意見などとも非常に整合しているように思えてなりません。

このあたり、著者自身は「政党の評価は政策を見て是々非々で見るべき」と考えている人間のひとりではありますが、別に国民民主党の支持者ではありませんし、たまたま国民民主党が掲げる政策のうち「消費税の減税」「手取りを増やす」などに賛同しているに過ぎません。

しかし、現状のままだと国民民主党が議席を増やす可能性が非常に高いことについては間違いないと言えるでしょう。

公募千人超も!

しかも、今夏の参院選は、情勢次第では衆参同日選となる可能性もありますので、国民民主党側は参院選のみならず、衆院選も念頭に置いて候補者を増やす作業をする価値がありそうです。

こうしたなか、国民民主党の玉木雄一郎代表(役職停止中)は6日、出演したテレビ番組で、同党が候補者を公募したところ、千人を超える立候補希望者が集まっていると述べたのだとか。

国民民主・玉木氏 参院選「東京では必ず1議席」 立候補希望者は1000人超とも

―――2025/01/06 22:22付 産経ニュースより

ただし、ここで個人的な懸念点があるとしたら、「議員になりたい」というだけの者たちが国民民主党の候補者公募に紛れ込むことです。

旧民主党、旧民進党、あるいは日本維新の会などにもよく見られた現象ですが、とくに身体検査をちゃんとしておかないと、議員になったあとでとんでもない不祥事が発覚し、政党自体も大きなダメージを受けることがあり得ます。

公募で集まった千人を超える人たちの身辺調査などを、いったいどうやって実施するのでしょうか?

マンパワー的には、なかなかに大変です。

そもそも、まったく新しい候補者を探してくるというのは、リスク要因でもあります。

一本釣りは?

こうしたなかで、現実的な選択肢として浮上し得るのが、「一本釣り」です。

これは、現に他党に在籍していて、自身がその政党に不満を抱いているであろう候補者のなかから、自党に考えが近い候補者を釣り上げる、というもので、事実上の「選挙互助会」と化している立憲民主党あたりがその有力な候補かもしれません。

ちなみに立憲民主党は野田佳彦代表の路線で減税を否定していますが(※「立憲民主党が減税を否定している」とは当ウェブサイトの私見ですが、実際、同党の昨年10月の衆院選における公約を読んでも減税の「げ」の字も出てきません)、同党内には消費税の減税を唱える勢力もいるようです。

また、旧民主党、旧民進党(あるいは日本維新の会)などを経て現在は無所属である政治家のなかにも、アベノミクス的・リフレ派的な発想に馴染んでいる人たちもいますし、何なら自民党内でも現在の石破執行部に強い不満を持っている議員もいるかもしれません。

(※といっても、自民党政治家は他党と比べ「党を割る」という行為には抵抗感がある人も多いようですが…。)

こうした状況を踏まえると、国民民主党の候補者選びは、まったくの新人を選ぶよりも、どちらかといえば国会議員経験者、あるいはSNSなどである程度のフォロワーを持ち、弁護士や会計士など何らかの公的資格を持っている人間などを中心にフィルタリングをするのが早いのではないか、などと思う次第です。

(※なお、万が一、本稿を国民民主党の選対関係者の方が読んでいらっしゃるならば、念のために申し上げておきますが、山手線の駅名を冠した怪しい自称会計士は、その対象から外してください。国会議員など政治家になるつもりは一切ないからです。)

その意味では、国民民主党による候補者の「一本釣り」が、これから本格化するのかどうかについても、注目する価値はあるかもしれません。

本文は以上です。

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読者コメント一覧

  1. 市井の人 より:

    >自民党、そんな首相で大丈夫か?

    大丈夫だ、問題ない とのネットミームも通用しないようですわな
    SMSを活用した潜在的なヘイト勢力を与党はトコトン読み間違えているご様子
    これじゃ某TV局と大同小異でお先真っ暗 もう持たないんじゃないかなぁ シランケド

    1. 匿名 より:

      60歳以上は自分達が育ってきた政治の中心は常に自民党だったというだけ、期待をしていないくせ何となく自民に票を入れる人が多かったと思います。

      しかし今は、ネット社会です。ハイキングに来ている、70歳代とみられるグループの人が自民はダメだね。とか二階幹事長には失望したとか話しているのを聞くようになってきました。

      次の選挙が楽しみです。

  2. 匿名 より:

    立憲民主党の造反候補の議員は世の中減税ムードになっているから減税を主張しないと生き残れないと選挙のための公約を掲げて就職活動したい連中。
    一本釣りでこんな議員を釣っても世間から見たら外道です。

  3. 特捜班CI5 より:

    石破首相では都議選、参院選は無理? 経済に詳しい斎藤元法務大臣が現状ではベスト?

  4. はるちゃん より:

    国民民主党が次の参議院選挙で政治家としてまともな人を立てられるかどうかが今後の命運を左右する事になるのでしょうね。参議院の選挙ですからどのような経歴の人が良いのかよく分かりませんが。
    今のところ立憲民主党が支持を集めているのは「手取りを増やす」という政策が支持されているからであって、政党への信頼感を得るには至っていないと思います。
    課税最低限度額の引き上げ問題や首を傾げるような候補者を立てることがあれば、政界再編の引き金になる可能性もあり得る支持の盛り上がりは雲散霧消してしまう事になりかねません。
    次回の参議院選挙には、私としては、保守系の思想を持った人で、出来れば地方議会で実績のある人を是非確保して頂きたいと思います。
    まあしかし、どんな人が良い人なのか判断が難しいので、駄目な人は候補者にしないという選び方にならざるを得ないと思いますが。

    1. はるちゃん より:

      ×課税最低限度額の引き上げ問題や
      ○ 課税最低限度額の引き上げ問題で支持者の期待外れの妥協をしたり

  5. Masuo より:

    党勢を増したいが、どこの馬の骨ともわからない奴が入るのは困る、と言うジレンマですかね。

    個人的な希望としては、立憲民主党内の減税派議員、江田とかが党を割って出て、国民民主と合流もしくは共闘すると面白いと思ってます。

    まぁ、立憲民主党が泥船であることに気付いた議員は、早々に離党していく(離党したい)事が考えられるので、仰る通り、国民民主としてはそのあたりの人達をうまく拾っていければいいんじゃないかと思います。

  6. 裏縦貫線 より:

    国民民主党「政策で大躍進」
    某他民主党「大躍進政策」

    1. KN より:

      >大躍進政策

      非科学的な社会主義を掲げている点で親和性がありますなあ。
      結果は聞かないでください。

  7. 柴Q より:

    北九州市議会議員選挙の結果です。
    投票率が40%台と低いので組織票が強く、自民が2議席減、公明は現状維持でした。
    国民民主は、2人しか立ててませんでしたが、当選しました。
    ただ、組織票が強い中でも、国民民主は躍進したといえます。「手取りを増やす」は目立ちました。

    政党1人あたりの得票数でいくと、
    1位 国民 6209票 ダントツ。しかも1人は新人。
    2位 公明 4540票
    4位 自民 4109票
    5位 立民 3349票
    7位 維新 3012票 最下位

    大型選挙で、投票率が50%台なら、もっと強い風が吹きそうです。維新は消えますね。「身を切る改革」が、まったく響きません。

  8. foo より:

    富国強兵

    個人的には、これが出来ない政党は政党に非ずと考えております。
    いつの世も富国強兵、この一点に尽きると考えております。
    国民が疲弊して居ては、国の維持すらままならなくなる。
    この点においては、国民民主党の思想に対しては合格点を差し上げたいと思います。

    自由民主党は既に自由民主党には非ず。
    単なる、左翼が実権を掌握する集団に過ぎなくなってしまっております。
    私は、自由民主党支持を貫いておりましたが、それも今回限り。

    国民民主で心配することは一点のみ。
    国民民主は未だ世界の荒波に揉まれるという経験をしておりません。つまりは外交です。
    個人的にはこの点が最大の心配事です。

    >公募で集まった千人を超える人たちの身辺調査などを、いったいどうやって実施するのでしょうか?

    国民民主党は候補者に対して論文を要求すべきでしょう。有象無象を集めない為にも。
    国民民主党が命題を与えたものに対する論文、及び、候補者自信が持つ自らの問題意識に対して論じた論文などを要求してはどうかと考える次第です。
    勢力を作るのは容易ではないでしょう。しかし、立憲のような有象無象が集う国家感無き政治屋が集団を成しても国益を損なうばかりでありますから、「数」よりは「質」を目指すべきなのかもしれません。私は、この様に考えております。

  9. CRUSH より:

    川越市長選が、注目を集めてますね。

    主な政党(含む国民民主党)がすべて相乗りした、世襲の若い女性候補が、新人相手に落選した由。

    詳細は、ちょっとこれからみて回るのですが、国民民主党にとっては、よい冷や水になったらよいですね。

    「密室協議をヤメロ」
    てのが、やはり分かってないのかと。

    相乗りは、勝っても負けても机の下の貸し借りが発生するでしょうから、無理して勝ち馬に乗ろうとしなくても、是々非々でよろしいやないの。

    石丸伸二が言ってるように、地方自治に国政の代理戦争を持ち込むな!ですわな。

  10. ちょろんぼ より:

    少数野党だからできた事が、多数野党になると
    今までのやり方や思想の統一をする事ができなくなります。
    自民党が失敗しているのも、極右~極左・親米~親中を
    議員(党員)として抱えているからであり
    共産党が成功しているのも、少人数により思想統制がしやすい為
    です。(共産党の事務局員を労働者と使わないのも
    宗教的な思想が党内に溢れているからですね。)
    多数野党になると、共産党系の人が混じりこんできて
    中道を保つ事ができなくなり、分裂する事になるでしょう。
    自民党系が混じりこんでも、特に問題は発生しません。
    というか、マトモな保守を民衆は望んでいるので
    そういうう方向を目指すのもアリかと。(自民党の代替として)

  11. 匿名 より:

    国民民主が言うことを聞かないので、岸破政権は狂ったように夫婦別姓に執着し、予算成立のために立憲と手を組もうとしていますが、それをやったらこの夏は大敗だけでは済まないのでは……歴史に残ることは間違いないですが。

  12. DEEPBLUE より:

    岸破体制を叩き壊す為にも国民民主党には良い戦略を期待しています。

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