中国渡航「レベル0」を維持する外務官僚のリスク感覚
産経の報道によると、外務省は「レベルゼロ」を維持するようです。6月の「蘇州事件」に続き、今月の「深圳事件」を受けて、私たち日本人としては、中国社会に在住する10万人少々の日本人の生命と安全を強く意識せざるを得ない状況に置かれているのですが、外務省の動きは鈍いと言わざるを得ません。
深圳事件の衝撃
中国・深圳市で現地の日本人学校に通う10歳の児童が暴漢に襲われ、亡くなったという事件については、『家族帯同で中国に駐在することのリスクをどう考えるか』や『中国外交部報道官「同様の事例はどの国でも生じ得る」』などで、連続して取り上げてきたところです。
今後、当ウェブサイトではこれを「深圳事件」とでも呼びたいと思います。
当ウェブサイトの問題意識としては、「日本経済にとって中国との関係はそれなりに深い」という状況のなか、在中日本人が安心して在留できる環境を、中国政府がどこまで頑張って作っていけるか、という点に向けられているのですが、これに関しては期待薄です。
というのも、中国政府報道官は、これについて「同様の事例はどこの国でも生じ得る」などと言い放ったからです。
日本人の安全は日中友好に優先する
「白昼堂々と学校に通う罪のない外国人の子供を暴漢が襲う」。
こんな事例が「どこの国でも生じる」というのは、ちょっと驚く認識です。
それに、中国在留日本人は10万人少々ですが、この母集団に対し、は今年6月に蘇州で日本人母子が襲われる事件が生じたばかりですし、日本人が中国当局に不当に拘束されているなどの事案も生じているわけですから、やはり「中国で日本人が狙われるリスク」は意識しなければなりません。
この点、日中の経済関係で見れば、貿易面でのつながりは深く(2023年実績で輸出相手先としては米国に次ぐ2位、輸入相手先としては1位)、人的交流もさかんです(訪日中国人は2024年8月までで4,595,156人、在日中国人は2023年12月時点で821,838人)。
ただ、日本が中国と友好的な関係を築きたいと願っていたとしても、中国社会がそう願わないのであれば、日中友好は机上の空論に過ぎません。
そして、私たち日本人にとって重要なのは、「日中友好」よりも「日本人の安全」です。
いまや中国で日本人という集団自体が敵意を向けられる対象となっているのではないか、とする観点からは、やはり、日本全体として中国との関係を見直す動きも避けられません。
外務省の動きは鈍い
その意味で、その第一歩として、まずは駐在員の家族を帰国させる動きが出て来るかどうかに注目したいと個人的には考えているのですが、これに対する外務省・外務官僚の動きは、まさに「失望」というほかありません。
産経ニュースが昨日夕方に配信したこんな記事が、その証拠です。
中国の危険情報「レベル0」維持 外務省「見直しは検討していない」子供連れには注意喚起
―――2024/09/20 17:46付 産経ニュースより
外務省は現在、『海外安全ホームページ』上、ウイグル、チベット両自治区を除いて中国に対してはレベル1以上の渡航勧告などを行っていませんが、産経ニュースによると外務省は今回の事件発生を受け、次のように述べたのだそうです。
「現段階では見直しの検討はしていないが、中長期的な観点から総合的に判断する」。
産経はこれについて、深圳事件や蘇州事件に加えて日本国内でも靖国神社での落書き事件など「『反日』が理由と見られる事件が続いており」、「日本政府が具体的な行動を取らないかぎり邦人の安全は守れないとの指摘も出ている」、などと評しています(なお、当ウェブサイトもそのような指摘を行ったサイトのひとつです)。
このあたりは、外務省(外務官僚、あるいは外務省という組織・機構)の実務能力に重大な疑義を抱かせるに十分な状況といえるかもしれません。
企業社会の動きに注目したい
これについては、「実務的に見て、日本企業関係者が中国に多数赴任しているなか、『レベル1』以上の警告を出したら日本の企業社会が大混乱に陥るから警告は出せないのだ」、などという人もいるかもしれませんがその言い分はおかしいです。
まともな企業のリスク管理実務の世界では、外務省(だけではありませんが)などが発するアラートは常に情報収集の対象とされているはずであり、また、外務省が実態に即してアラートを出せば、企業側もこれに対し適切な対処を講じることができます。
(※ついでにいえば、サラリーマン的発想からは「外務省がアラートを出してくれたから、駐在員の家族を日本に帰国させる名分が立ちやすくなる」、といった側面もあるのですが…。)
逆に、必要な時にアラートひとつ出せない外務省のような組織が権力を握っているからこそ、日本の企業、民間人がかなり苦労している、という側面もあるのですが(たとえば著者自身も財務省や厚生労働省、金融庁などにはかなり苦労させられています)、これついてはいずれ別稿でねちねちと記述してみたいと思います。
いずれにせよ、日本企業の間で駐在員の家族を帰国させるなどの動きが出て来るかどうか、あるいは政治側でこれに対する対応が出て来るかどうかについては、見守る必要があるといえるのではないでしょうか。
本文は以上です。
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外務省は、日本国民へのリスクの感覚はないが、省益へのリスクの感覚、(外務省職員の)自分へのリスクの感覚は優れている(?)のではないでしょうか。ということは、自分の責任問題になれば、突然、中国渡航レベルが最大危険レベルになるということです。(レベルを上げるのは一瞬で出来ますが、その対応は一瞬ではできません)
それにしても、与野党やマスゴミは、中国渡航レベル0の維持を、どう思っているのでしょうか。
蛇足ですが、企業は、過去に危険レベルをあてた実績があるところ探しだして、そこが今回は、どう言っている、またはどう動いているかを見るべきでしょう。
中国渡航の危険レベルをどう見るか、そして、それへの対応で、(与野党問わず)日本の政治家の危機管理能力が、推しはかれるのではないでしょうか。
典礼準備局は予定調和が何よりお好き。緊急事態発生には対応できないものです。
はにわファクトリー さま
>予定調和が何よりお好き。
予定調和を破ると、省内で問題になるからですか。
一言で言えば「事勿れ主義」なのでしょうね。
相手を刺激させずに無理をしてでも穏便に済ませる為に、不要な譲歩ばかりをして国益などに損害を与えているのです。
これは外務省だけに拘わらず、日本の全ての省庁で発生している事案です。
これを是正しなければいけないのですが、官僚達は「楽をしたい」から抵抗するでしょうね。
ボスが最終責任を負うタイプでないからです。
原発事故発生の時も自分のせいにされたくなくて逃げ回っていましたね、誰よりも首相が。
日本人が他国のことをどう思うかは、「思想・言論の自由」が憲法で保証されていますので。
日本、中国政府がどのような発言をしようと「それを判断材料に、どう思うか?」も自由ですから。
ただ、「所属する組織の都合上そこに滞在するを得ない個人」
を守らないといけない(責任を持たないといけない)「組織」はあると思います。
単なる印象ですけど、外務省は国家間の「懸案」に追われるだけで、解決もしようとせず日々友好関係(仕事がしやすい)が維持できればヨシとしているように感じます。
そんな中から敢えて「懸案」を自ら創り出して、取引材料にしたり丁々発止をやるなんて思いつきもしないのだろうなー、なんて思ってしまいます。
「中国は反日教育をやめろ」
これ、外交懸案にするいいチャンスなんでしょうけどね。
外務省つうより政治家に問題がありそうな気もしますけど。
ついでに韓国にも援用できます。
外務省の「海外安全ホームページ」を覗いてみて、今日現在の内容をいくつか拾ってみると次の通り
・新疆ウイグル自治区、チベット自治区 レベル1:十分注意してください。
・最近、中国各地で人の集まる場所(公園・学校・地下鉄等)における刺傷事件が発生していますので、外出の際は周囲の状況にくれぐれも留意してください。
・テロによる日本人の被害は、シリアやアフガニスタンといった渡航中止勧告や退避勧告が発出されている国・地域に限りません。テロは、日本人が数多く渡航する欧米やアジアをはじめとする世界中で発生しており、これまでもチュニジア、ベルギー、バングラデシュ、スリランカ等においてテロによる日本人の被害が確認されています。
・江蘇省蘇州市において刃物を持った男が邦人2名及び中国人1名を切りつけ、中国人1名が死亡(2024年6月)
・更新日 2024年08月28日(本情報は2024年09月21日(日本時間)現在有効です。)
月1回のペースで更新してるなら、深圳の事件は未記載で不思議はないんでしょうが、まあのんびりしたものですね。緊急事態発生を受けて、臨時の更新くらいやっても良いような気もしますがね。第一、新疆ウイルグル自治区。チベット自治区の渡航危険度がレベル1だなんて、あり得ないでしょう。あんなところ、ウッカリ観光ですなんて入り込んだら、まず無事では済まないでしょうから。
それはともかくとして、今回両地区を除いたチャイナ全域の渡航危険度を引き上げない件について、「外務官僚のリスク感覚」のせいばかりにするのはどうかとも思うのです。
今のチャイナでは、経済不況から社会の不平、不安が横溢しており、またそれを逸らす意味もあって政府によって陰に陽に反日機運が煽られている、ということは確かにあると考えます。ただし、ネットの検閲、監視カメラ等による国民の監視は徹底しており、治安は一応のところ安定しているようです。日本人だからといって、危害が加えられても警察は知らん顔なんてことも、今のところはない。
となれば、「この国は危険だ!」と決めつけるのは、ある程度高度な政治的判断ということになるでしょう。国民に選ばれた上で権能を発揮しているわけではなく、基本的に政府の方針に従って所管業務を行うことだけが許される官僚に、判断を委ねるべき事柄ではないような気がします。
結局の所は、優柔不断、危急に当たってやることといったら大概がピント外れという、かの人物が率いる内閣こそが、責めを負うべき問題のように思えるのですが。
サラリーマンですね
上からの指示が無ければ(叱られるのは嫌)自分からは動かない
特に経済会からはきつく言われているのでしょう
経済会からは今のところ何も話が出ていません
ところで外務省の言う「十分気を付けろ」とは具体的にどのようにするのでしょうか
具体策は現地には伝えられているのでしょうか
私には具体策は思いつきません
中東でよくやる「車でドアtoドア」で行うのでしょうか
会社が認めなければ勝手に帰国するのが良いと思います
命あってのものだねです