G7で「ロシア凍結資産利息」でウクライナ支援合意か
米国のジョン・カービー戦略広報担当調整官は現地時間火曜日、今月13日に開幕を予定しているG7首脳会合(サミット)で、主要国が凍結しているロシアの資産から生じる利息をウクライナの支援や復興などに充てることで合意する見通しだと明らかにしたそうです。現時点においてウクライナ戦争の先行きは予断を許しませんが、それでもロシアを金融面から締め上げる試みは重要です。
目次
カービー氏「ロシアの凍結資産を活用してウクライナ支援を」
以前の『EUがロシアの外貨準備利息をウクライナ支援に活用へ』では、ウクライナ戦争を巡って欧州連合(EU)が凍結しているロシア政府の資産から生じる利息をウクライナ支援に活用する方針だ、などとする話題を取り上げましたが、これに続報が出て来たようです。
G-7 to Announce ‘New Steps’ on Frozen Russian Assets, US Says
―――2024/06/12 7:20 JST付 Bloombergより
ブルームバーグなどによると、ジョン・カービー戦略広報担当調整官は現地時間火曜日、今月13日に開幕を予定しているG7首脳会合(サミット)で、主要国が凍結しているロシアの資産から生じる利息をウクライナの支援や復興などに充てることで合意する見通しだと明らかにしたそうです。
カービー氏はまた、これについて「完全に同意が取れているわけではない」として詳細については言及を控えつつも、首脳間の合意が取れることを「期待している」とも述べたのだとか。
西側が凍結しているのは3000~4000億ドル程度
さて、これについて改めて事実確認をしておくと、西側諸国が凍結しているロシアの資産は、3000~4000億ドル程度であろうと想定されます。
といっても、外貨準備もさまざまな種類があり、中央銀行の金庫に物理的に保管されている金地金のような資産もあれば、特別引出権(SDR)のような、国際通貨基金(IMF)の仕組みを活用した資産もあります。
ここで、IMFのデータのデータなどを考慮に入れると、ウクライナ戦争開始直前の時点で、ロシアの外貨準備は6300億ドル少々であり、このうち金がだいたい1330億ドル前後で、現金預金と有価証券の合計残高が4600億ドル少々だったと考えられます(図表1)。
区分 | 2021年12月末 | 2020年12月末 |
現金預金+有価証券 | 4639億ドル | 4381億ドル |
うち、現金預金 | 1847億ドル | 1386億ドル |
うち、有価証券 | 2791億ドル | 2995億ドル |
金地金 | 1331億ドル | 1388億ドル |
金地金(トロイオンス) | 74,000,000 | 73,900,000 |
上記以外 | 337億ドル | 189億ドル |
外貨準備合計 | 6306億ドル | 5961億ドル |
※金価格(オンス当たり) | 1,798ドル | 1,878ドル |
(【出所】International Monetary Fund, International Reserves and Foreign Currency Liquidityデータをもとに作成)
ということは、西側諸国が凍結しているのは、この「現金預金+有価証券」(2021年12月末時点で4639億ドルほど)のうち、「人民元以外の通貨建ての資産」であろうと推定できます。
ロシアの外貨準備の通貨別構成割合
その一方で、ロシア中央銀行がロシア下院向けに提出しているレポート(※PDFファイル)のP112によると、2022年1月1日時点の外貨準備の通貨別構成は、▼ユーロが33.9%、▼金が21.5%、▼米ドルが10.9%、▼人民元が17.1%、英ポンドが6.2%――などとなっています(図表2)。
図表2 ロシアの外貨準備高の通貨別構成(2022年1月1日、2021年1月1日)
通貨等 | 2022年1月 | 2021年1月 |
米ドル | 10.9% | 21.2% |
ユーロ | 33.9% | 29.2% |
日本円 | 5.9% | (不明) |
英ポンド | 6.2% | 6.3% |
加ドル | 3.2% | (不明) |
豪ドル | 1.0% | (不明) |
シンガポールドル | 0.3% | (不明) |
その他通貨 | ― | 7.2% |
(小計) | 61.4% | 63.9% |
人民元 | 17.1% | 12.8% |
金 | 21.5% | 23.3% |
合計 | 100.0% | 100.0% |
(【出所】ロシア中央銀行・2022年版ロシア下院向けレポートP112をもとに作成)
図表1と図表2については、「外貨準備全体に占める金の構成割合」が、2021年12月末、20年12月末ともにだいたい一致しているため、このロシア中銀のデータは、ほぼ信頼して良さそうです。
そのうえで、ロシアの外貨準備高のうち、金と人民元を除いたものが全体の60%少々を占めていることから、ロシアの外貨準備全体(6306億ドル)のうちの60%、すなわち3700~3800億ドルほどが、ロシアから見て「非友好国」建ての通貨の資産だったと考えられます。
欧州では抵抗も…金融面から締め上げる試みは重要
ただし、この3700~3800億ドルのなかには、SDRなどの引出権も含まれているため、現実にロシアの外貨準備のなかで凍結された金額はそれよりも少ないと考えられる一方、これとは別に、ロシアの公的企業の在外資産なども凍結されているはずです。
したがって、西側諸国が凍結した資産は、3000~4000億ドル程度と推定されます。
ではなぜ、ウクライナ戦争勃発から2年以上も経過して、いまさらこの「外貨準備の利息没収」という話が出て来ているのでしょうか。
じつは、『ロシアの外貨準備資産等没収にスイス大統領が「異論」』などでも述べたとおり、欧州ではロシアの資産を完全に没収することに対し、「法的なハードル」を懸念する意見が根強いのです。
あくまでも個人的な意見として、「ロシアが法を破って国際的な侵略戦争を開始したのだから、そんなロシアを国際法で保護する必要などないのではないか」、といった気持ちもないわけではありませんが、やはり犯罪国家であっても法により守られざるを得ないのは間違いありません。
先ほどのブルームバーグの記事によれば、今回のG7ではざっくり、ウクライナに対する支援として500億ドル程度の融資が検討されており、この500億ドルの担保としてロシアの凍結済の資産が充てられるほか、ロシアの外貨準備からあがる利子がウクライナ支援に流れるとのことです。
また、「匿名を条件に話した米国当局者」はブルームバーグに対し、凍結済みの資産のうち、欧州のものについては、(金利その他の要因に応じて変動するものの)だいたい年間30~50億ユーロに相当する利益が発生していると述べたそうです。
凍結済みの資産のうち、ユーロ建てのものはざっと2000億ドル少々であると考えられることから、昨今の金利情勢に照らして「30~50億ユーロ」は若干少ない気もしますが、それでもロシアが自ら侵攻した相手国に対し、ロシア自身の財産から支援がなされるというのは、大変に有意義な話です。
いずれにせよ、現段階ではロシアの金融資産からウクライナの戦費が調達されるというのは非常に合理的な発想ですし、ロシアが敗北した暁には、ウラジミル・プーチンの身柄を国際刑事裁判所(ICC)に護送するとともに、ロシア連邦の国土や資源も何らかの形で国際社会の管理下に置かれるべきかもしれません。
日本だと、ロシアとの間では長年、北方領土返還交渉が続いていますが、むしろロシアが敗北することで、北方領土どころか千島列島や樺太すらも、将来的には日本の管轄下に置かれる、といった可能性すらあり得るのではないでしょうか。
いずれにせよ、ウクライナ戦争の先行きを巡って、まだ楽観視は許されませんが、それにしても軍事面だけでなく経済・金融面においても、ロシアの戦争遂行能力を低下させる試みは、国際社会の自由・民主主義や法の支配を維持するうえで、極めて有効なものだと考えておいて良いでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
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米国のジレンマ
・ウが勝てるような軍事援助をすればインフレが加速する
・インフレを抑える軍事援助ならばウは勝てない
米国は大統領選挙を控えインフレ抑制は最重要事項。
去年、一昨年のような巨額の軍事援助はできない。
今年春の援助は日本が肩代わりしたとの説が根強くささやかれている。
突然に差し押さえ資産の軍事活用が出てきたのも米国が資金を出せないから。
もちろんそれをやればグローバルサウスのドル、ユーロ離れが加速するだけ。
欧州各国では極右政党が大躍進。
彼らの合言葉は「ウに出したカネを戻せ」
米国でトランプ政権が誕生すればそこで戦争は終わる。
米国のこれからは
・共和党政権になり戦争が終結する
・民主党政権が継続してインフレと移民で国家が疲弊する
どちらにしても西側の敗北が確定している。
ロシアは開戦から
・初期に500万人のウ人がロに避難(戦死者30万人など何の影響もない)
・すでにウの鉱物資源60%、12兆4000億ドルを保有(byWP)
よってロシアの勝利は明らか。
インフレと移民で米欧は激しく疲弊。
代わりにBRICS+が台頭して世界の多極化が進む。
もう答えは出ているのだ!
>代わりにBRICS+が台頭して世界の多極化が進む。
・信頼されない「名誉白人」日本、経済ボロボロの欧州、政治が機能不全の米国…勢力拡大中のBRICSに先進諸国が「見捨てられて当然」の実態
https://gendai.media/articles/-/131354?page=1&imp=0
多極化って?
欧米+日本は、価値観が同じだから、1極になれるとして、BRICSは一つに纏まる軸があるのか?
勝手にやれば良かろう。
あなたはいつも自信満々でやたらと断言を繰り返しますね?
世界情勢など、日本の選挙事情以上に予想が難しい物でしょうに。
根拠薄弱
BRICs+の時代なと永遠に来ない
まぁ、アメリカがウクライナを勝たせようとしているとは見えないですしね。
>もう答えは出ているのだ!
米国が自由民主主義国家陣営の盟主として著しく不適切である、という答えであれば、私は同意ですね。
品性のない、腕力と財力しか取り柄のない蛮族の国だと認識してますので。
ただ、ロシアが米国よりマシかとなると、むしろ悪く。
ロシアが勝利したところでロシアは反資本主義国家陣営の盟主になれないでしょうし。
多極化が進むというか、第三次世界大戦への幕が開いていく過程なんだろなぁと。
日本は戦勝国となって、次の五大国に必ず入りたいものです。
>品性のない、腕力と財力しか取り柄のない蛮族の国だと認識してますので。
有史以来、世界、この世の国に、そうでない国はありましたっけ?
そんな中で、アメリカはマシな方です。
観念の世界に生きている?
アメリカよりマシな国が盟主になって貰わないと、自由民主国家陣営が内部崩壊しそうだなぁって感じるんですよね。
アメリカって病的潔癖症で極左原理主義なところがあって、自由な精神や寛容な精神とは意外と無縁に見えるんですよね。
国家に限らず、自分の観念的な理想を何かに投影して見ても仕方がないですよ。
うーん、理想云々ではなく差し迫った問題だと考えるんですけどね。
行き詰まった資本主義と民主主義を再構築をアメリカが出来ると感じます?
クロワッサンさま
>行き詰まった資本主義と民主主義を再構築をアメリカが出来ると感じます?
こんなこと、誰が出来るのか?
行き詰まっているのなら、誰も再構築出来ないだろうし、再構築する必要があるものなのかも分からない。
歴史の流れは、誰にも分からないですよ。
アメリカ国債は,対米戦争などが始まったとき,敵対国の所有する米国債を無効にできます。ですから,ロシアが米国債の割合を減らして中国国債の割合を増やすのには合理性があります。それに,輸入品に占める中国製品の割合が上昇してますから。1990年以前の冷戦時代のブロック経済の構造に戻りつつあるだけです。ロシアの技術力は欧米にかないませんが,中国の技術力を過小評価してはいけません。例えば,民生用ドローンの世界のシェアの7割は中国のDJIです。この前も空母いずもが中国のドローンで撮影されてましたね。
【独自】「性搾取されたフィリピン女性に賠償を」国連勧告に韓国政府「再審見て決定」
http://japan.hani.co.kr/arti/politics/50283.html
人権派弁護士出身の文在寅が問題を綺麗に解決していないのが不思議というか、納得というか。
失礼、雑談掲示板にコメントしようとして間違えました。
いろんな人が考えているみたいですが、はやく元本に手をつける方法を編み出してほしいです。
何で凍結でなく没収できないの?
太平洋戦争では日本人の財産を没収していたはずだけど?
それゃ、日本が負けると分かっていたからに決まってるじゃん。
あんたも、クラス委員長になって、ジャイアンが悪い事をしたからと言って、懲罰として、ジャイアンの持ち物没収できるかな?
一方、のび太が悪い事をしたら、あなたは、意気揚々と正義漢ぶって、のび太の持ち物取り上げるだろうね。
世界は、正義という空論ではなく、力という実際論で動いているんだよね。