宮下農相「輸出先多角化が重要」→全産業にいえること
経済・産業の安全保障の重要性は、いくら強調してもし過ぎではありません。そして、福島第一原発の処理水放出を契機とした、中国政府による日本の水産物の輸入規制は、貿易先を一部の国・地域に依存することの危険性を強く意識する好機でもあります。こうしたなか、内閣改造で入閣した宮下一郎・農林水産相はインタビューで、調達先の多様化に言及しました。是非とも農林産業分野だけでなく、経済安全保障全体の観点から、これを推し進めていただきたいところです。
中国の輸入規制
福島第一原発の処理水放出を契機に、中国は日本に対し、水産物の輸入規制などの措置を講じています。
これについてはすでに『政治家は「ふるさと納税」で中国の輸出規制に対抗せよ』などでも指摘したとおり、科学的根拠を欠く極めて不当な措置であることについては間違いありません。
ただ、それと同時に『中国の「日本産食品の禁輸措置」は日本経済に影響なし』などを含め、これまでに当ウェブサイトでもしばしば議論している通り、これらの措置が日本経済に対し、壊滅的な打撃を与えるのかといえば、そこもまた微妙でしょう。
少なくとも水産物の輸出額が日本の貿易高に占める割合は(現在のところは)僅少だからです。
もちろん、中国の禁輸措置は日本の関連産業にもそれなりの打撃をもたらすかもしれませんが、数千億円というレベルであれば、短期的には日本国内の需要の新興、中・長期的には新たな販路の開拓を通じて、十分にカバーできる水準です。
輸出入先の多様化
ただ、それ以上に重要な論点があるとしたら、今回の中国の対応は、輸出入特定国に依存しすぎることのリスクを、私たち日本人に改めて突き付けた格好です。
とりわけ、『日本にとって「重要な相手国」は?「数字で」読む外交』でも指摘したとおり、貿易額「だけ」で見れば、日本にとって中国は最も重要な相手国です。輸入品目のなかには、停止したら日本経済にとって大変大きな影響が生じるものも含まれているかもしれません。
たとえば、今回の措置の対象が「水産物の輸入禁止措置」だからまだよかったものの、これがレアアースなどの素材の「対日輸出禁止措置」だったとしたら、日本社会への混乱はさらに広がっていた可能性があります。
このように考えるならば、「経済を政治利用する国」との経済的関係を今以上に深めることが、いかに大きなリスクであるかについて、改めて認識しておく必要があることは間違いありません。
宮下農相のインタビュー
さて、こうしたなかで時事通信に16日、ちょっと興味深い記事が掲載されていました。
輸出先多角化でリスク低減 5兆円目標は堅持 宮下農水相・新閣僚インタビュー
―――2023/09/16 07:13付 Yahoo!ニュースより【時事通信配信】
先日の内閣改造で入閣した宮下一郎・農林水産相が15日、時事通信などのインタビューに応じ、今回の水産物輸入規制を巡って「輸出先の多角化によるリスク低減に取り組む方針を表明した」のだそうです。
ただし、農林水産物・食品の輸出額(時事通信によると、2022年は1.4兆円)を、25年に2兆円、30年に5兆円に拡大する目標は堅持する、としています。
時事通信が報じた宮下農相の最初の発言は、これです。
「ロシアによるウクライナ侵攻に伴い肥料や飼料の価格高騰や品不足が発生し、調達先が偏っていることが明確になってきた。経済安全保障の観点からリスクを低減することが重要だ。安定的に食料や生産資材が輸入できるようにする」
…。
非常に正しい認識です。
宮下農相はまた、「ホタテの輸出が中国に偏っているのがリスクだということも分かってきた」などとしたうえで、「これを契機に輸出先を多角化していく」とも述べた、ということですが、話はホタテに留まりません。べつに農産物の輸出入だけでなく、日本の産業全般に言える話でしょう。
いずれにせよ、産業・経済の安全保障という文脈からは、宮下農相には西村康稔経産相、高市早苗・経済安保担当相らとも、閣内でうまく連携していただきたいものです。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
>輸出先の多角化
輸出のみならず、輸入についても多角化は重要ですね。エネルギーやレアメタルの分野では特に。
>エネルギーやレアメタル
この2つは、産地に偏りがある。特に、レアメタルは、どういう訳か、C国にしかないとも言える状態。他にも産地はあるが、価格でC国に敵わない。
エネルギーについては、輸入先の多角化もあるが、エネルギー源の多様化も必要。
レアメタルに関しては、レアメタルを使う製品に頼らないことが必要。
EVの推進なんて、交通・物流をC国に牛耳られる世界になってしまうかもしれない。
>価格でC国に敵わない
まぁそうだと思います。環境への対策をコストととらえるか、金のために人民の健康や自国の環境なんかどうにでもなる・できる国ですので。資源に関して結果は民主党政権時の尖閣後が近しいものかな?と思っております。
エネルギーについて言えば問題というかは東日本でしょうか?
東西の原発稼働率でこれは3.11以降から変わってないように思えるのですが、何がネックになっているのか…。
EVはそれほど心配していません、だって無理だから。
内燃機関を作ることが出来なかった国・企業だけが今優勢に見えてるだけで、本質はモリゾウ氏の『敵はカーボン』で、BEVや水素の選択肢はあり、EVだけが正解とは思っていないから。
C国の現状では既に需給のバランスが崩れているようですが、C国もK国も供給しかしていないのでその後は?を考えると、耐用期限が近づくと別の問題が出てくるように思います。
因みに日本だとEV車のリサイクルバッテリーを使った商品ものも出てきてますね。これをC国企業ができるのか…。
結論、EUの寄生虫で金の亡者である独次第かもしれませんが、技術とお金をC国の様な価値を共有できないような国に、日本以外の国も渡さないようにすれば自滅するんだろうと思っております。
>日本以外の国も渡さないようにすれば自滅するんだろうと思っております。
全くその通りです。
韓国をみれば当たり前の認識だろう。いま尿素水でゆれている。フィリピンのバナナ、台湾のパイナップルいまはマンゴーか。当の中国はオーストラリアにアタマをさげ石炭の輸入を再開した。巨大な市場を背景に中国は輸出入で脅しをかける。かつて我が国でもレアアースで禁輸の憂き目にあった。そのときは新規開発で返り討ちにし、レアアースの暴落に追い込んだが海産物は自然が相手で影響は大きい。輸出入の多角化は大いに結構だ。逆に中国に屈しない体制構築は賛成である。
日本の農家が長年苦労して開発した品種も
しっかり保護してもらいたいです
これは、農家の裏切り者を出さないことが必要なこと。こんな奴は、厳罰にするしかない。
シャインマスカットだか、イチゴの品種だか忘れたけど、農家のうちで苗を無償提供したんだよね。この農家は厳罰に値する。あぁ思い出した。イチゴの方は盗まれたんだよね。無償提供はシャインマスカットの方。
盗まれたと言っても、騙されるほどの甘ちゃんだったから。
警戒心が足りないのだが、自分が持っているものの価値も分からないような農家は、仲間に入れるべきではないか、或いは、リスク意識を皆が持っているべきであった。
スパイはいないという甘ちゃん意識ではやっていけない。
みんなの苦労が、そんな甘ちゃんのせいで、全てぱぁーになるのだから。そんな農家は、何十億円でも倍賞しろ、と。
輸出先多角化は、言うのは簡単ですが、これまで目の前の問題に追われて、先延ばししてきたのでは、ないでしょうか。
>「ホタテの輸出が中国に偏っているのがリスクだということも分かってきた」
文章から最近になっては分かったとも受け取れますね
ホタテは(中国)国内受給のみで間にあっていることを考えれば日本からの輸出はリスク以外の何物でない
https://www.foods-ch.com/sp/tokushu/shokuhin/1694493318325/
輸出に限らず、リスク分散、卵を一つの籠に持ってはいけないというのは、企業や投資の世界でも共通しています。
中国が主な産地であるレアアースやレアメタルなども、中国への依存度を下げる努力が行われています。
また、企業のIPO審査でも、仕入れ先や販売先、製品などに偏りが無いか、それが致命的なリスクにならないかというところが重要な審査項目になっています。
逆に、選択と集中も必要な場合がありますので、リスク分散は企業にとっても個人にとっても常に大きな課題ではないでしょうか?
はるちゃん 様
>選択と集中も必要な場合がありますので、リスク分散は企業にとっても個人にとっても常に大きな課題
仰る通りですね。
ただ評論家的に言えば、
「物事には優先順位がある」だと思います。
大前提は、国家・企業・個人の存続(奴隷ではない)が第一。其れあってのお金。
其れを忘れた小番頭レベル以下の政治屋・経営者・個人が金に目が眩み、リスク管理を忘れて回復不能な深手を負う。
「選択と集中」もコストダウンもJITも第一線はゴールを目指して一生懸命やり、経営層が上記大前提に鑑みブレーキ等コントロールををかける。第一線でも常識として一本足はやらない。
一本足は最先端の先行投資ではやっても重心のかかる本業では最低二本足、出来れば三本足。四本以上は調達では不要、マーケットは利益率と成長見込み次第でいくらでも可。
その意味で、自民党も中間管理職には有識者(甘利さん、高市さん、小林鷹之さん)もいらっしゃり、安倍さんの時には致命傷になる前に、ある程度の手を打っていたが、今は停滞しているように見える。
菅さんを入れないのは、インバウンドの数値目標を放置(公明党が悪いとしても)して、共産中国、韓国からの観光客流入をコントロールしようとしなかったので。
(コロナ禍で時を失したのかもしれないが)
追加:中・露・南北朝鮮はまとめて1本。
こういう記事があると、岸田憎しだけで自民党を完全に見限れるのかと逡巡します。当選回数が多いと単純な経験に加えて、様々な政策方針への姿勢がわかりますし(改憲や原発への賛否、外交姿勢等々)。宮下農相は長野県連会長も勤めており、前任の後藤茂之氏(去年の参院選のアレな候補者の責を負って辞任)も概ね信用できる議員と見ていますし。
維新国民、あるいは何らかの新党に、そこまで方針や実力がわかっている議員(候補)が多いかというと、中々。
彼らがそこまで高評価か?と思われるかもしれませんが、長野であがってくる顔ぶれというと、少し前だと矢崎こうじ(変態新聞の異名の元になったwaiwai責任者)や、TBS杉尾、マジモン世襲なだけの羽田など。相対的にはそりゃーもう。
>長野県連会長
随分前から、農協が日本農業発展の最大の障壁と言われているんですが。こんな人が農相では、補助金行政しか出来ないのでは?
小泉が、郵政をぶっ壊すついでに、農協もぶっ壊してくれていれば、日本の農業や漁業は、もっと競争力が持てたはず。
「輸入・輸出に関するリスク分散」はぜひともやってもらいたいですが、
だからこそ日本に弱点を植え付けておきたい勢力は全力でジャマするでしょうね。
中国に忠誠を誓ったかの様な態度を取るマスコミやライターは特に。
責任者・関係者のつまらないスキャンダルや失言で頓挫しない事を切に祈ります。
日本の弱みは「”モノをつくるモノ”をつくるモノ(原材料)」の対外依存にあります。
キーデバイス(核心技術)の掌握と取引先(選択肢)の多角化で克服して欲しいですね。