中国人が秋の日本旅行を忌避か?
中国国際放送は盛大に勘違いしているのかもしれませんが、中国人観光客が激減したとして、現在の日本経済に大きな影響が生じるというものではありません。すでにオーバーツーリズムの問題に悩まされている日本にとって、ある意味では願ったりかなったりです。それよりも、中国国際放送が「放射能汚染水」などと虚偽の内容を報じること自体、同放送が風評加害者となっている証拠です。
インバウンド観光業の課題
日本の「インバウンド観光業・外国人観光客」の実情については、当ウェブサイトでは常々、日本政府観光局(JNTO)や法務省などが公表する出入国に関する統計データ、財務省の貿易統計などをもとに、できるだけさまざまな角度から検証しているつもりです。
これらに基づく暫定的な結論を述べておくならば、訪問者の出身国によっては、それなりに多くのカネを日本に落としてくれる効果も期待できる反面、産業政策としては大変に効率が悪く、また、オーバーツーリズムや不法滞在などの二次的な弊害ももたらしている、というものです。
当ウェブサイトの勝手な決めつけで恐縮ですが、日本がインバウンド需要を振興する大きな意義は、大きく①外国人観光客が日本にカネを落としてくれること、②日本を体験した外国人観光客が日本のファンとなってくれること、の2点にあります。
しかし、①については、正直、そこまで効率の良い産業振興ではありません。
たとえば日本の輸出高は毎年100兆円前後(2022年実績だと98兆1842億円)ですが、このうち品目で見て「機械類及び輸送用機器」、すなわち日本が得意とする半導体製造装置や自動車、精密機器などは、全体の60%前後を占めています。
これに対し、観光庁が公表する『訪日外国人消費動向調査』によると、2023年4-6月期における外国人旅行者の日本国内での支出額は1兆2052億円であり、単純に4倍することで年換算すれば、ざっと5兆円、といったところです。
今後、観光客がさらに増え、毎月300~350万人、年間4000万人前後の外国人が日本を訪れてくれるようになったとしても、この外国人観光客の支出合計額は7~8兆円程度、あるいはせいぜい10兆円程度が限界とみるべきでしょう。
人数目標ありきから脱却すべき日本観光
正直、この人手不足の時代、労働集約的な観光産業にマンパワーを取られるよりも、半導体産業、ナノテクなどのように、これから日本が力を入れていくべき産業はほかにももっとあるように思えてなりません。
これに加えて現在、各所で不法滞在外国人が問題となっていて、とくに埼玉県などではクルド人(トルコ国籍保持者)などが集住していることが知られており、これら外国人による社会的なトラブルも多く報じられるようになっています。
病院でクルド人「100人」騒ぎ、救急受け入れ5時間半停止 埼玉・川口
―――2023/07/30 13:30付 産経ニュースより
ちなみにトルコは日本政府によるビザ免除措置の適用対象国のひとつです(外務省・4月2日時点の『ビザ免除国・地域(短期滞在)』参照)。
また、現実に観光ビザで日本に入国し、そこから就労ビザに切り替えて(あるいはビザすら取得せず不法滞在状態で)日本に在留している者の実態調査は必要でしょう。実際、ウェブサイトで調べると、外国人を安い労働力として雇うためのアドバイザリー・ファームなどは多数見つかります。
このように考えると、役所が「数値目標ありき」でインバウンド観光を振興することには、改めて反対したいと思います。
たかだか年間数兆円の観光収入のために、労働集約的な観光産業に大々的に投入すべきマンパワーの余力は日本経済にはありませんし、人数目標を達成するために、むしろ素行に問題のある外国人の入国を許すとなれば、それは本末転倒だからです。
余談:入国税の検討を!
ただし、先ほど指摘した2つの効果――①外国人観光客が日本にカネを落としてくれることと、②日本を体験した外国人観光客が日本のファンとなってくれること――を考慮に入れるならば、外国人観光客を呼び込む努力は悪い話ではありません。あとは費用対効果の問題です。
余談ですが、個人的には出国税(出国1回あたり1,000円)を廃止し、外国人観光客を対象にした入国税の仕組みを導入することも必要と考えています。
なぜなら、入国税を問題なく負担できる国の人たちであれば、日本観光を楽しんでもらえる反面、入国税の支払いというハードルを設けることで、不法滞在を目的とした入国者に対しては、入国をためらわせる効果が期待できるからです。
また、その入国税の収入を、インバウンドによるオーバーツーリズムで現在被害を受けている人たち(たとえば『中国で販売される旅行商品は日本が韓国の9倍=韓国紙』でも触れた、江ノ電沿線の住民)に対する補償などに使用する、といった考え方も成り立ちます。
中国メディアの盛大な勘違い
さて、余談はこのくらいにして、インバウンドに関連し、ちょっと気になる報道記事を発見しました。
「国慶節」大型連休 日本ツアー旅行にキャンセルの動き
―――2023-08-27 14:18付 中国国際放送日本語版より
これは中国国際放送(CRI)の日本語版が27日付で配信したもので、1行目から次の通り、誤りが含まれています。
「日本では現地時間24日、福島第一原子力発電所での放射能汚染水の海洋放出が始まりました」。
当たり前の話ですが、日本が海洋放出しているのは「放射能汚染水」ではありません。「ALPS処理水」です。こうやって堂々と誤った内容を日本語で垂れ流す中国国際放送は、まさに風評加害者です。
ただ、本稿で注目しておきたい箇所は、ほかにもあります。
「中国メディアが26日に複数のオンライン旅行プラットフォームを調べたところ、日本への旅行商品はまだ販売されていますが、サイト上の目立つ場所には置かれていないことが分かりました。また、多くの観光業関係者によると、日本へのツアー予約をキャンセルしたり、『国慶節』の大型連休中の日本旅行について『様子見』をする人が発生したとのことです」。
「日本は、中国の大型連休の『国慶節』による莫大なメリットを受けるはずでしたが、日本の汚染水の海洋放出による安全問題に伴い、『国慶節』大型連休中の中国人の日本観光旅行は大幅に減少すると見込まれます」。
正直、「願ったりかなったり」、といったところです。
中国人民の皆さんにとっても、「放射能汚染水」とやらが垂れ流されているような国に旅行に出かけるのは怖いでしょうし、中国政府が禁輸にした日本産の水産物は、日本旅行をしたらいくらでも口にする機会があるでしょうから、日本ツアーを「キャンセル」することは、合理的な行動ではないでしょうか。
このあたり、中国国際放送は盛大に勘違いしているのかもしれませんが、すでにインバウンドはコロナ禍以前の8割程度の水準に回復しています。中国人観光客がコロナ禍前と比べ、3割程度の水準にとどまっているにも関わらず、です。
ここに中国人観光客が急増すれば、オーバーツーリズムで日本の観光産業がパンクする可能性すらあります。経済的な効果から見て、とりあえず中国のノージャパン運動は、日本経済に悪影響を与えるものとは限らないものであることには留意が必要でしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
これは朗報
オーバーツーリズムが解消されますね
中国人からは入国税をとりましょう
香港サウスチャイナモーニングポストによると「中国の日本水産物輸入禁止は、日本の水産業より、中国の水産業に打撃を加える逆効果を生みだす」そうです。
https://n.news.naver.com/mnews/article/214/0001295811
そうですよね。日本から放出された処理水が、広大な太平洋を一回りし、何年後かに日本沖に入り魚を汚染するのが怖いというのなら、中国近海で取れた水産物が大丈夫という確証もないですからね。
政治的意図に基づき、科学的根拠もなく、風評を煽るから、そんなことになる、事業自得ですな。
カナダの処理水の方が思い切り濃いのにねえ。いっそ対日全面禁輸でも良いぞ崩壊の巻き添えが減るから
中共人が日本旅行を忌避する事は
大変喜ばしい事です。
日本に来たら海産物を食べないと
イケマセンからね。(日本料理の真髄は魚料理だよ)
中共の子分の南国人も日本旅行を
忌避すべきなのに、地元では反日、
でも旅行は日本、はおかしいと思いませんか?
「処理水」云々よりも、現在の中国国内の経済事情からすれば、よほどの富裕層でない限り呑気に海外旅行など行く気になれない、というのが真相ではないかと思われます。
またその富裕層にしても、習近平が2021年に唱え始めた「共同富裕」政策に対し、自らの資産を守るか海外移転工作に必死ではないでしょうか。
まっ、資産移転がてら日本へ遊びにい行く、というような手合いもいるかもしれませんが。
中国の観光業者が日本旅行の勧誘を控えたのは、対日制裁を発動した共産党に睨まれる事を恐れたからでしょう。
まあ、今でも観光地は結構混雑してますし、ホテルも人手不足ですので、中国の団体さんには来てもらわなくてもよろしいのでは無いでしょうか?
富裕層はどうするのか少し気になりますが。
中国は腹を固めましたね。
数年内に台湾侵攻、尖閣強奪でしょう。
たん瘤の日本、その社会をできるだけ分裂させ、混乱させておきたい・・・。
孫子の兵法の国、中国の深謀遠慮を、私は今感じています。
岸田のバカには、中国と対峙する気概も担力もない。日本人の現地駐留者や旅行者への配慮もあるんだろうが、中国人は日本にもいる。違いは国土の大小と核保有の有無だろう。そりゃ14億の市場は魅力だろうが、日本人の被害者がいるのだ。あのバカ面をみると情けない。中国とは国交断絶でも良いくらいだ。あんなニイハオトイレがある不衛生な国はお断りだ。図体がでかくても、ジァイアンはお断りだ。銀座の真ん中でウンコしやがって!
中国がCPTPP加盟申請をした際に、大阪の商工会議所?だったかの会頭が諸手を挙げて歓迎するみたいな発言をしていましたね。当時、日本ではよくこんな阿呆でも経済界の重鎮が務まるんだと思った次第でしたが、多分日本の経済界には似たりよったりの人物が多いのかも知れませんね。中国からしたら手玉に取るのにこんな楽な国はないでしょうね。揺さぶれば揺さぶるほどハニー林やセカンドフロアみたいな政治家とどこぞの商社出の元駐中国大使みたいな中共命の経済界がタッグを組んでそのうちに中国様に配慮しろと言い出すやも?仕掛けられたにもかかわらず、大人の対応とか言ってのんきにヘラヘラしている国は自ら滅亡しますね。三倍返しろ岸田‼
>たかだか年間数兆円の観光収入のために、労働集約的な観光産業に大々的に投入すべきマンパワーの余力は日本経済にはありません
観光庁の天下り先確保のための「インバウンド政策」ではないと信じたいです。
労働者減少・人口減少の時代に、これからの日本のグラウンドデザイン
国としてどの分野に人材・資金を投入するのか描くべきですね(官僚の腕の見せ所)
自衛官より、国内の介護・物流より、海外からの観光客のための労働者が大事!ではない!
高めの入国税、いいアイデアですね。オーバーツーリズムや不法滞在解消できれば、ですね。
中共政府から日本旅行を禁止してくれたり中共の大衆世論が反日になって日本旅行などトンデモナイという風潮が中共で支配的になってくれれば,日本としては実に願ったり叶ったりですね.
日本側と言えば,検討使岸田が何も決断しようとしない人で,しかも中共大好き,中共ベッタリな茂木さんや河野さんらが岸田政権の要所に配置されているので,検討使岸田率いる中共大好き内閣・与党執行部が継続する限り,現実問題として日本政府のほうから中共人に対して訪日規制を行ったりする可能性は皆無と言って良く,是非とも中共側から日本旅行NG!となってもらいたいものです.
本当にこれは久々の明るいニュースかも.