富坂氏が「バランス外交を捨てた韓国の収支決算」指摘
拓殖大学海外事情研究所の富坂聰教授は尹錫悦(いん・しゃくえつ)韓国大統領の訪米を巡って、「韓国の対外政策が『バランス外交』から『対米擦り寄り』に変化したが、そのわりに韓国にとって成果は芳しいものではない」、「それを『民主主義の自由の重視のため』と額面通りに受け取るほど世界は愚かではない」などと冷徹に指摘しました。まったくそのとおりでしょう。
米中等距離外交、あるいは「コウモリ」外交
韓国の尹錫悦(いん・しゃくえつ)政権が発足以来、対日関係の改善を掲げていたことは事実ですが、私たち日本人が忘れがちな視点があるとしたら、尹錫悦政権発足後も、韓国はしばらく米中等距離外交を続けていた、という事実です。
この「韓国は自由・民主主義陣営に所属していながら、中国やロシアなどの全体主義国家とのバランスを図っているフシがある」という点を敢えて無視している詭弁の提唱者といえば、松川るい参議院議員がその典型例でしょう(『「徴用工解決で安保協力が進む」という松川議員の詭弁』等参照)。
これに対し、韓国観察者の鈴置高史氏などは、「米中等距離外交こそが韓国の宿痾(しゅくあ)である」と指摘し続けているわけですが、著者自身が見たところ、少なくとも日本のオールドメディア(新聞・テレビ)界隈は、「松川理論」に考え方が近いようにも見えます。
拓殖大・富坂聰教授の指摘
もっとも、インターネット時代というのは面白いもので、ゴールデンウィーク中でも、有益な記事はどんどんと出て来ています。そのひとつが、Yahoo!ニュースに5月5日付で掲載された、こんな記事です。
中国とロシアとバランス外交を捨ててアメリカにすり寄った韓国の収支決算
―――2023/05/05 18:10付 Yahoo!ニュースより
記事を執筆したのは、拓殖大学海外事情研究所の富坂聰教授です。
リンク先記事の分量は3000文字弱ですが、極めて論理的かつ読みやすいすっきりとした構成ですので、負担感なしに読んでいただけるのではないかと思います。また、Yahoo!ニュースの記事は基本的に、(今のところは)無料かつ無制限で閲覧できるようですので、興味があれば、是非とも直接、読んでみてください。
ただ、富坂氏の文章は、なかなかに辛辣です。大雑把に要約すると、「韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の対外政策が『バランス外交』から『対米擦り寄り』に変化したが、そのわりに韓国にとって成果は芳しいものではない」、などと冷徹に指摘する論考です。
そして、こうした主張が豊富で具体的な証拠付きで、しかも「それを『民主主義の自由の重視のため』と額面通りに受け取るほど世界は愚かではない」といった具合に、歯に衣着せぬ厳しい論調で展開されている、というわけです。
こうした正論、日本の外交当局者に加え、「松川理論」を信奉する一部の政治家、メディア関係者らに突き付けたいほどでもあります(もっとも、この論考に対してはツイッター上ではさらに辛辣に、「バランス外交ではなくコウモリ外交では?」といったツッコミも出ているようですが…)。
人民元決済は拡大していないが…
なお、当ウェブサイト的に反応したい部分がもう一箇所あるとしたら、次のくだりでしょう。
「フランスのエマニュエル・マクロン大統領の訪中によりヨーロッパが中国とのデカップリングを否定し、サウジアラビアなど中東の国々も中国に接近。北京を訪れたブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ(ルーラ)大統領は『人民元決済』へ道を開いた」
この点に関しては一言だけ、コメントをしておきたいと思います。
じつは、人民元決済という意味では、『「人民元の国際取引が着実に増える」記事に事実誤認も』でも話題に取り上げたとおり、正直、国際決済の世界において人民元の使用が広まっているという気配は、現在のところ見られません。
もちろん、このくだり、「人民元決済が今後もどんどん広まっていく」という意味で触れられているというわけではなく、単純に「米中の陣取り合戦」という文脈で出てきたものだとは思います。
したがって、「人民元が今すぐ米ドルに代わって国際的な基軸通貨となる」という意味ととらえるべきではありません。
次のテーマは「半導体」か「通貨」か
ただ、それと同時に、米中双方の「巻き返し合戦」が予想されるなかで、鈴置氏や富坂氏らは「半導体」分野に注目しますが、著者自身としては、今後は「通貨」ないし「金融」についてもテーマとなり得るのではないかと考えています。
とりわけ、韓国が現在、外国と締結している通貨スワップの額を確認すると、その約3分の2近くが人民元であることがわかりますが(図表)、中国としては、「これ以上米国に擦り寄るならばスワップを停止するぞ」という「脅し」を賭けることも、理論上は可能です。
図表 韓国が外国と締結している通貨スワップの内訳(ドル換算額)
(【出所】韓国銀行及び関係国の中央銀行等のデータをもとに著者作成。なお、為替換算はBISデータをもとに2023年4月18日時点のものを使用している)
いずれにせよ、日本の一部のメディアによる報道を眺めていると、岸田文雄首相の明日以降の訪韓を巡っても、「日韓関係改善を歓迎する」という、じつに能天気な論陣を張っているようですが、物事がそこまで単純ではないことだけは間違いないでしょう。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
そんな日韓関係論を巡って、素晴らしい書籍が出てきた。鈴置高史氏著『韓国消滅』(https://t.co/PKOiMb9a7T)。
日韓関係問題に関心がある人だけでなく、日本人全てに読んでほしい良著。
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【おしらせ】人生で10冊目の出版をしました
自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題、火器管制レーダー照射、天皇陛下侮辱、旭日旗侮辱…。韓国によるわが国に対する不法行為は留まるところを知りませんが、こうしたなか、「韓国の不法行為に基づく責任を、法的・経済的・政治的に追及する手段」を真面目に考察してみました。類書のない議論をお楽しみください。 |
【おしらせ】人生で9冊目の出版をしました
日本経済の姿について、客観的な数字で読んでみました。結論からいえば、日本は財政危機の状況にはありません。むしろ日本が必要としているのは大幅な減税と財政出動、そして国債の大幅な増発です。日本経済復活を考えるうえでの議論のたたき台として、ぜひとも本書をご活用賜りますと幸いです。 |
富坂氏の記事と今日のこの記事を読んで思い出した事は、李朝末期の混乱。日本に付くか、中国か露か。この3派争いに舅嫁の権力争い「遊び」が加わって、国内はめちゃくちゃ。
この半島は大陸からの出口、それ故に逆に海洋国から見れば、大陸勢力への防御点。この半島には常に3方からの圧力が加わっている。常に圧力が加わることは、常に内部にストレスが生まれている事になる。しかも、3方向からとなれば、そのストレスの発生バランスは、極めて複雑な状態になっているはず。まさしく、李氏朝鮮末期や、今日の韓国の様な状態は、このストレスの状態が発現したものと言える。ストレスとは、内部応力のことで、応力とは、文字通り「対応する力」のこと。つまり、外圧に対応して内部に発生するのだから、内部の状態を見れば、今どんな外圧が掛かっているかが分かるとも言える。外圧の掛かり方に応じて内部の応力の有り様は変わる(理科の教科書に縞模様の写真があった)。この半島に生まれ生き続けるには、この常に流動する混乱から抜け出す事は難しいのだろう。
李朝末期と状況が似てる(国内が団結せず四分五裂して潰し合い)とは、ロウソク革命の頃からかの国で自虐的に言われてることですよ。
これまでもそう。
これからもそう。
たぶん。
団結しない=約束できない。
ものすごくシンプルな構図ですよね。
個人的に富坂聰は親中派というか
スパイとまでは言わないが
中国の代弁者だと思っています
同意
親中派であることは確かなように感じます。
他の対中代弁者は「データに基づく論考」すら習近平政権では書いてはならないようなので、観察者位じゃないでしょうか。
A社とかのように前提すら成り立たない記事と違い一読に値するだけでも最近は貴重です。中国絡みは賞賛一辺倒で
夕刊フジでコラムを連載していた時にZAKZAK(夕刊フジの公式HP)に記事がアップされた時のコメント欄は必ず批判が多かったですね。
夕刊フジは産経新聞社の夕刊タブロイド紙で、保守系の読者の多い事から、彼をシナポチと認識するのも当然の流れでしたしね。
大国の中間にある弱小国が、中立政策を採ろうが、どちらかに肩入れしようが、それで旨味を得られることは滅多にありません。尹大統領の訪米成果が乏しいというのなら、多額の防衛費増強(言い換えれば米国武器の購入)を約束して、ようやく許された今年1月の岸田首相の訪米成果は、どうでしょうか。「バイデン大統領から日本の取り組みについて称賛を得た」だけですよね。ないのが当たり前です。「取り立てて成果はないが、歓待を受けた」で良いのです。
他国の外交成果をうんぬんする必要はない、と考えます(そんなものは韓国の野党がやればよい)。
日本は、他国のことをとやかく言っている余裕は無い状況だと・・・。
何を言ってるの!?
今だからこそ他国のことをしっかり論じるべきでしょう
平和ボケしてるね
自国の平和と安全を確保し国富の喪失を防ぐこと、が肝要と常に考えております。
これが、平和ボケということなのですね?
他国のことをしっかり論じて、自国の平和と安全を確保し国富の喪失を防ぐことが出来るのならば、そうしましょう。
残念ながら、現在はそのような悠長なことを言っておられる状況ではないと、判断しての意見です。
落ち着いてください
あなたは新宿会計士さんはじめとする海外を分析する記事自体を愚弄してますよ
嫌なら、日本の問題点ばかり取り上げる反日サイトでも見てれば良いじゃないですか
僕はそれでは本当の問題点を見極めれないと思ってますので!
他人と比較しないと自分のことはわからないものですよ?
その前に、他人にレッテルを貼る癖は止めましょう。
次に、多様な意見があるんだな、と自分の頭の中に客観性の領域を設けましょう。
自分の立派な意見は大事にするとしても、自分と考えが違うとして、他人に直ぐ批判的になる熱情は、少し冷却しましょう。
民主主義とは、多様な意見の存在を認めつつ、それらを集約して行くこと。
直感的に自分と違う意見だと感じると、直ぐに相手にレッテルを貼るのは、兎に角止めた方がいいのでは。
「平和ボケ」という意味不明のレッテル言葉が無ければ、そもそも、返信はしませんでした。
>「韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の対外政策が『バランス外交』から『対米擦り寄り』に変化したが、そのわりに韓国にとって成果は芳しいものではない」
米国は、彼らの外交には「”見てくれ”だけで、中身がない」ことを知っているからです。
ぜひとも岸田首相にも「”見てくれ”じゃなく、中身を見てくれ!」と申し添えたいです。
・・ね。
“ウマい!”
でも、”人を見る目”の無い岸田さんには酷な要求と思います。
”人を見る目”が有れば、もう少しましなブレーンが集まるでしょうし、
”私欲の為のスタンドプレー”と”米国の真意”を取り違える事も無いしょう。
くれぐれも”第二の宮澤喜一”にならないことを望みます。
前任首相たちが持ち得なかったすばらしい外交カードを手に入れた。そんな高揚感が岸田首相の前のめり行動から滲んで出ているようです。
今さら何を。
そんな冷淡な視線は彼には理解できないのでしょう。早計で有頂天になりやすいタイプはと予測していましたが、予想どおりでした。
「そのわりに韓国にとって成果は芳しいものではない」って?
既に、戦後何十年も、身に余るほどの成果を貰ってきているではないですか?
今の韓国の「自由で贅沢で奔放な」国民生活は、韓国国民の力で獲得し、その享受を継続し続けられているのでしょうか?
それは、多分に、米国と日本の援助と支えと庇護に寄るものでしょう、客観的に見てそれ以外に何があるのでしょうか?
それを、前政権は、全て捨て去ろうという方向への政権運営をしていたのです。
それを、少し元に戻したというだけなのが、現政権です。
「やあ、良く戻って来たね」というのが、米国の思いです。
これが、今回の訪米の主旨であって、これ以上のものではありません。
訪米の成果とは、「やあ、良く戻って来たね」と米国大統領に受け入れてもらったことです。
楽韓さんより。
韓国メディア「東シナ海に有望なガス田があるのに、日本との共同開発協定はあと5年で終わってしまう!」「政府はなんとかしろ!」……無理じゃない?
2023年05月05日
https://rakukan.net/article/499249552.html
訪韓する岸田國士戯曲賞…じゃなかった岸田文雄の手土産として、ガス田共同開発協定の延長なんてどうでしょう?
協定を延長しても共同開発を進めなければ実害は無い、なーんて考えてやっちゃうかなーって。
韓国の現政権は、国会では少数与党なので、パフォーマンスは上がらないでしょうねぇ。
あと、もう少し長い目で見ないと駄目だと思います。
まあ、次の政権がどうなるかで、評価は変わるとも思いますが。
来年の国会議員選挙が来年に行われます。
その時に、現与党が60%以上の議席を取らないと、現大統領は残り3年の任期中、何も出来ないで終わる可能性が高いです。
半導体関連についてはフイナンシャルタイムズがこういう記事を出してるらしいけどどうなんだろう?
サムスン・SKハイニックス、一息つけるか…「中国装備搬入1年延長」
https://s.japanese.joins.com/JArticle/304006
> こういう記事を出してるらしいけどどうなんだろう?
打上花火なのか、当たっているのか、現時点では判りませんが、予測範囲内ですね。
3品目包括化も、グループA入りも、バイデンの内諾がなければ、岸田がする訳ないので、訪米前に尹は十分成果を得ていた訳で、更にオマケが付くカモという話。(富坂氏の評価とは違うカモ知れないが、たっぷり成果を得ての答礼なんじゃないかと。)
3品目包括化は、韓国が輸入したものを、中国にある韓国資本の工場へ流す事を、バイデンが当面黙認するというのを含んでいるのではないかと思われる。
またグループA入りは、日本から武器・弾薬の生産に必要な素・部・装を遠慮なく輸入して、韓国が製品を輸出して大儲け、且つ、矢面に立たずに済む様、米国が買い上げて紛争当事国に配るというオマケ付きなので、尹としては笑いが止まらんだろう。
しかし、武器・弾薬は輸出直接しないけど、武器・弾薬の生産に必要な素・部・装は輸出するという(韓国経由の迂回輸出みたいなもの)、日本のお間抜けな政策というか、韓国を儲けさせる為の策みたいなものは何とかならんのかねぇ。