ロシア下院議長「西側制裁にアナザーG8で対抗を!」
インチキマクドでセルゲイ君(15)「コーラ以外味はほとんど同じ」
ロシアの下院議長が土曜日、SNSに「西側諸国のロシアに対する制裁は『アナザーG8』の結成の契機となるかもしれない」、などと投稿したのだそうです。その構成国は中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、メキシコ、イラン、トルコの8ヵ国だそうであり、「購買力平価換算のGDP」では旧来のG7と比べて24.4%も規模が大きいのだとか。
成果に対し犠牲が大きすぎる!
2月24日に始まった、ロシアによるウクライナに対する違法な戦争を巡っては、すでに100日以上が経過したにも関わらず、いまだに終息の気配はありません。
局地的に見れば、ロシアはウクライナ東部(とくにドンバス地域)や南部を含めた地域の占領に成功し、黒海の封鎖でウクライナの穀物の輸出を妨害するなど、持久戦の様相を呈してきています。
ただ、これをロシアにとっての「戦果」と呼んで良いのかどうかについては微妙でしょう。というのも、ロシアが被った「損害」が、客観的に見て、あまりにも大きすぎるからです。
たとえば、開戦直後の日本時間2月27日早朝には、西側主要国がさっそく、ロシアが保有する外貨準備の凍結やロシアの主力銀行のSWIFTNetからの排除、ロシアの政府・企業の新発債市場からの締め出しなどの措置が講じられましたが、この措置は現在に至るまで解除されていません。
それにロシアに対しては半導体を含めた戦略物資の禁輸措置が講じられたほか、欧州などは領空上のロシア機の飛行を禁止する措置を講じるなどし、さらにはロシアの航空会社は軒並み欧米諸国への乗り入れができなくなりました。
この状態を放っておけば、おそらく早ければ数ヵ月のうちに、遅くとも数年のうちに、西側諸国からリースで調達しているであろう航空機の運航にすら支障を来すようになるでしょう。なぜなら、航空機の部品が西側諸国から入って来なくなるからです。
クレカ、マクドに加え、地上戦力の3分の1喪失説も!
また、ロシアに対しては民間企業の間でも撤退する動きが加速しており、世界的なハンバーガーチェーンであるマクド社に加え、クレジットカードの国際ブランドなどもロシアの事業を一部中断するなどし、結果的にロシア国民は西側から金融的、経済的、文化的に隔絶されてしまった格好です。
ロシアが払っている犠牲は、それだけではありません。
また、黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が(ロシアの公式発表によれば)「火災と悪天候により沈没」したのを筆頭に、ロシア軍にはさまざまな損害が生じているようなのです。
以前の『「ロシア軍は投入戦力の3分の1を喪失」=英国防衛省』でも紹介しましたが、英国防衛省の分析に基づけば、5月中旬までにロシア軍はウクライナ戦争に投入した地上戦力の3分の1を失った可能性がある、などとされています。
英国防衛省は別のタイミングで「ロシア軍は地上戦力の65%をウクライナ戦争に投入した」とツイートしていますので、これら一連の英国防衛省の分析が正しかったと仮定すれば、ロシア軍の地上戦力はすでに4分の1が失われた格好です。
それに、対戦車兵器「ジャベリン」を含め、西側諸国から提供されたさまざまな兵器もロシア軍に対し猛威を振るっているようですし、「ロシアが武器を供与している相手国でもロシア産の武器に対する信頼が揺らいでいるのではないか」、などとする「軍事専門家」の方もいらっしゃるようです。
もっとも、個人的にはこの戦争がロシアの無様な敗北に終わってほしいと願う気持ちも強い反面、ウクライナの人々の無事を心の底から祈りたいと思う気持ちも強く、その意味では早く戦争が終結してほしい、という相反する願いを持っている次第です。
「新マクドロゴ」など、反応に困る記事も!
こうしたなか、ロシアのメディアを眺めていると、ときどき、ちょっと反応に困る記事を発見してしまうこともあります。
先日の『日露貿易の急減に「追い打ち」をかける新たな輸出規制』では、ロシアのメディア『タス通信』(英語版)の記事に日本の対露輸出規制の話題が大きく報じられていた、などとする話題とともに、マクドの後継事業体に関する話題も取り上げました。
マクドといえばまさに32年前、旧ソ連時代にプーシキン広場前に第1号店が開店した際、できた長蛇の列ができたことが東西冷戦終結の象徴でもあります。そして、今年3月にマクドが一時休業を発表した際にも長蛇の列が再現されたというのも、じつに味わい深いところです。
McDonalds closes restaurants and suspends operations in Russia.
This is footage from when the first ever McDonalds opened in the Soviet Union in 1990 in Moscow.
Queues literally round the block #Russia #McDonalds pic.twitter.com/XJGmy8S1Mn
— Danny Armstrong (@DannyWArmstrong) March 9, 2022
Supersize me ! There’s a long queue forming in Moscow outside the huge and historic #McDonalds on Pushkin Square after the US fastfood giant announced it was closing in Russia. pic.twitter.com/C8mZCzFhpc
— Jason Corcoran (@jason_corcoran) March 8, 2022
なお、これに関してはロイターに昨日、こんな「続報」が出ていました。
Tasty name but no Big Mac: Russia opens rebranded McDonald’s restaurants
―――2022/06/12 21:50 GMT+9付 ロイターより
ロイターによると、マクドの店舗をロシア国内で新しく引き継ぎ、営業を開始した事業者の店舗名は「Vksno & tochka」だそうです(意味合いは「おいしい、それだけ」だそうです。「ブクスノ・アンド・トーチカ」とでも発音するのでしょうか?)。この「おいしい、それだけ」なる店舗を巡り、ロイターは悲しそうに、こう伝えます。
「今や黄金のアーチはなくなり、フィレオフィッシュは単なるフィッシュバーガーに名を変えた。ビッグマックはロシアを去った」。
ちなみにメニューはダブルチーズバーガー(129ルーブル)、フィッシュバーガー(169ルーブル)などで、ビッグマックなどのハンバーガー類やマック・フルーリーなどのスイーツメニューはなく、全体的にマクド時代より値下げされているのだそうです。
ちなみにお味の方はどうなのでしょうか。
15歳のセルゲイ君は、チキンバーガーとフライドポテトをムシャムシャ食べながら「コーラ以外はほとんど同じ」と述べたのだそうです(逆にいえば、コーラは味が違うのでしょう)。それに、記事によるとどうやらケチャップやソースのたぐいは旧マクド店舗のものを流用しているのだそうです(それらの在庫がなくなったらどうなるのでしょうか?)。
本家・米国マクドの劣化コピーとしての本質が表面化しないかどうか、他人事ながら心配ではあります。
アナザーG8構想
こうしたなか、「ちょっと反応に困るな…」、などと感じてしまう記事は、ほかにもありました。同じタス通信に週末に掲載されていた、こんな話題です。
US sanctions policy to create another G8 group – Russian parliament speaker
―――2022/06/11 21:12付 タス通信英語版より
タス通信によると、ロシア下院のバチェスラフ・ボロージン議長が土曜日、SNS『テレグラム』に米国による対ロシア制裁を批判する内容を投稿。あわせてこうした米国主導の経済制裁が「新たなG8を創設する原動力となるだろうと主張した、というのです。」
この「G8」とは、中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、メキシコ、イラン、トルコの8ヵ国だそうであり、「購買力平価換算のGDP」では旧来のG7と比べて24.4%も規模が大きいのだそうです。
そのうえでボロディン氏は、「ロシアとの間で対等な立場で互恵的な関係を構築しようとする国」にとってはその交渉ができる状況を「米国が自らの手で作り出した」、などと述べた、としています。
この点、ボロディン氏が列挙した8ヵ国のうち、イランを除く7ヵ国は「G20構成国」でもありますし、さらには中国やインドなどが対ロシア制裁に参加していないことも事実です。
ただ、その反面、果たしてこの8ヵ国が集まったところで、それを「アナザー・G8」と呼べるのかどうかは微妙でしょう。
少なくとも金融・通貨という側面で見れば、ロシアと同様な金融制裁を喰らっているイラン、通貨危機寸前の状況にあるトルコを筆頭に、いずれの国の通貨も「国際的な通貨」とは言い難いところです(『SWIFTデータで見る「G20スワップ」の非現実性』等参照)。
また、これら8ヵ国で「アナザーG8」が結成されたとしても、ボロディン氏が期待する「西側諸国と全面対決する枢軸」を構成するとも考え辛いところです。1人あたりGDP水準もまったく異なります。
トルコは(いちおうは)NATO加盟国ですし、インドは日米豪3ヵ国と「クアッド」を構成しています。なにより彼のいう「アナザーG8」には、G7のような「自由・民主主義・人権・法の支配」などの「共通項」が存在していません。
こうした共通項もなしに、G7に対抗するために「数合わせ」をするというのも、先ほどの「インチキマクド」のような怪しさを内包しています。
正直、その8ヵ国に加え、何なら韓国や北朝鮮も加えて「アナザー・G10」などが結成されたとしても、西側諸国の脅威にはなり辛いところだと思う次第ですが、いかがでしょうか。
本文は以上です。
日韓関係が特殊なのではなく、韓国が特殊なのだ―――。
— 新宿会計士 (@shinjukuacc) September 22, 2024
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>果たしてこの8ヵ国が集まったところで、それを「アナザー・G8」と呼べるのかどうかは微妙でしょう。
中国に取込まれに行くのですから、個人的には「アナター・ the end」と呼びたいところです。・・。
>何なら韓国や北朝鮮も加えて
タイトル見て、最初に思ったのです♪
アナザーG8?冷戦よもう一度、って事でしょうか?
冷戦の頃はソ連が東側で一強状態だったし、それ以上にインターネットがなかった。
今や後進国ですらスマフォが出回っている時代なのに、世界を再び東西に分けたいとしたら
あまりにも無理難題過ぎませんかね……?
中国なら自分の利益の為に、そしてロシアが亡びたら自分だけが世界の敵になりかねない
恐怖で嫌々ながらも協力するかも知れないけど、ロシアの言いなりにはならないでしょう。
他の6つは欧米に思うところがあっても、だからと言って親ロシアかと言うと……
うん、やっぱり無理難題過ぎませんかね?その構想。
>この「G8」とは、中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、メキシコ、イラン、トルコの8ヵ国だそうであり、「購買力平価換算のGDP」では旧来のG7と比べて24.4%も規模が大きいのだそうです。
中国とインドは領土問題で紛争中だし、イランとトルコもクルド人も絡めて問題を抱えてたような。
メキシコはNAFTAで米国とがっつり組んでますが、韓国のように対ロシアで米国と歩調を合わせない選択肢を採る事は出来ますかね。。。
自由民主主義国家陣営と全体主義国家陣営との間でグラデーション状に広がる国々を巡っての陣取り合戦ですね。
Pink FloydのThe Dark Side of The Moon、思い出しちゃいました。日本タイトルは「狂気」でしたねぇ。
>個人的にはこの戦争がロシアの無様な敗北に終わってほしいと願う気持ちも強い反面、ウクライナの人々の無事を心の底から祈りたいと思う気持ちも強く、その意味では早く戦争が終結してほしい、という相反する願いを持っている次第です。
上記は全くそう反していませんよ、”ロシアを早期に無様な敗北に追い込めばよい”のです。
ただ、”第三次世界大戦にならなようにしながら”と言うのが難しいところ。
しかし、”他国の主権と領土を侵害し、町を破壊し人々を虐殺ながら、自国はほとんど何の被害も受けない”と言うのは何か釈然としません。
これは世界中の真面な感覚を持つ人なら当たり前に持つと思うので、
ここをもっと強調しながら、
・2014年以前のロシア領土には攻め込まない(勝つ程ウクライナ人にとっては一番難しい)
を条件に
・軍隊は派遣しないが2014年以前の領土から侵略者ロシア軍を追い出せるだけの兵器は供与
しても第三次世界大戦にはならないのではないかと思います。
その手助けとして”もし核兵器や大量破壊兵器を使えば
ロシア=悪の権化、世界平和の敵(今でもそうですが)として、
国連安保理から除名を提案すること”をもっとキャンペーンするべきと思います。
また、このまま戦争を続けて疲弊すると”中共に侵略されるぞ”をもっと吹き込むべきと思います。
今でも
・他国の主権と領土を武力で侵略
・無辜の民を虐殺
・核兵器で他国を恫喝(NPTの敵)
と、
”悪の権化、世界平和の敵”となっているロシアに与する、まともな国は無いと思います。
過去の欧米の侵略に反感を持つアジア・アフリカの国にしても、ロシアがやっている事とそのメンタリティーは、反感の対象である、その”過去の侵略者”と同じこと、に気づかない訳はないと思います。(エルドアン、習近平はプトラーと同じメンタリティと思いますが。)
強いて言えば、北朝鮮と言うならず者国家ぐらい。
まあ、何かで固まれば「Evil 8」の称号を差し上げましょう。
素朴な感想ですけど、構想だけなら、どこかの政治団体(?)などが、ロシアを滅ぼすためのアナザーG9構想を言い出しても、よいことになりませんか。
蛇足ですが、中国が「韓国を正しい朝貢国に戻すための、アナザーG8構想」を打ち出してもよいことになります。もちろん、それが形になるかは分かりませんが、日本が、それにどこまで反対するのかは見てみたいです。
tryだーG7
ここで以前から
半分冗談で囁かれた
G7やクワッドに対抗する、
ならず者国家版の
G8やクワッド構想が
まさかロシア下院議長の
口から飛び出すとは愉快です (^^)/
ならず者G8候補の
顔ぶれ見て思うのは、
入ってもらえない国を
勝手に挙げてる一方で
プーチンの子分ベラルーシが
入れてもらってないのは
すでに属国でロシアの一部の
扱いなのでしょうか?
せっかく参加希望したであろう
文ちゃんは下野してしまい、
熱烈参加希望の鳩ぽっぽさんは
政権取れるわけなどなく、
なんてぐたぐたの顔ぶれなんだろうと
微笑ましく思います。
私用でバタバタしていて、過去記事を読むのに手間取り、時宜を外しているかと思いますが、某○ッキーさんを始めとした方々のご意見をうかがえれば幸いです。
まず、某高校生名探偵は「真実はひとつ」と言いますが、藪の中を持ち出すまでもなく真実は人の数だけあります。
その意味で、○ッキーさんの信じる「ロシア政府・メディアが正しく、西側政府・メディアの言うことは間違っている」も『真実』でしょうし、サイト主さんや反論をぶつける方々の「ロシアメディアを読んでいると嘘を自分からさらけ出すスタイルがわかる」もまた『真実』でしょう。
さて、『真実』とはなんぞや、です。
世の中には、
①客観的事実
②主観的意見
③(事実と意見から構築する)推測(あるいは願望)
の3つがあります。
この3つを合わせて『真実』と言うのだと理解しています。
そして、西側政府の発表とロシア政府のどちらがより①「事実」を述べているかが本来論じるべき点(論点、またはイシュー)かと思います。
西側政府とロシア政府の言い分について、①「事実」を比較することが可能な出来事は今のところ多くありません。
たとえばブチャの虐殺について、双方の言い分は真っ向から対立しています。
これを元にすると、どちらを信じるかという②「意見」の問題になってしまいます。
過去記事のコメントを見る限り、○ッキーさんのコメントも、それに対する反応も②「意見」の異見だと感じました。
なので、①「事実」から比較しましょう、という話です。
西側、ロシア側ともに①「事実」を認めていることは「黒海艦隊旗艦のモスクワの沈没」です。
これが西側がいうミサイルによる撃沈なのか、ロシア側のいう事故による沈没なのか、が②「意見」の相違になります。
②「意見」が違えば、当然、アウトプットである『真実』は異なりますので、どちらがより正確な①「事実」を述べているかを比較すればどちらがより嘘つきかがわかります。
さて、モスクワの沈没ですが、某准教授ではありませんが、「現象には必ず原因があ」ります。
なにもなく船は沈みません。
そもそも、原因がないなら最初から浮いていません。
なので、「浮力を失った」ことが根本的な原因です。
ではなぜモスクワは「浮力を失った」のでしょうか。
「穴が空いた」か、「比重が重い」のどちらかでしか浮力は失われません(ここ、船舶の
専門家ではないので異論は大歓迎です)。
浸水または潜水艦のように制御された状態での艦内空気の排出と海水の取り込み、外部からの重量物の設置以外で突然「比重が重」くなる現象はありません。質量保存の法則です。
最初から「比重が重い」なら船として欠陥があって浮かびません。
モスクワは、「海の底の都」を目指して潜行したわけではありませんし、ロシア政府・メディアの発表からも重量物の設置による「比重が重く」なったという話はありません。
つまり、浸水によって沈没したことになります。
さて、ではなぜ浸水したのでしょうか。
西側はミサイルによって穴が空いたからと言います。
ロシアは火災が搭載爆薬に延焼した上に、悪天候によって沈没したと発表しています。
真っ向から言い分(=②「意見」)が異なりますので、どちらかが沈没したという①「事実」の原因について誤ったことを言っていることになります。
さて、では検証可能な科学的①「事実」から読み解きましょう。
沈没前の火災が、ミサイルによるものか、搭載爆薬への延焼かは①「事実」不明ですので、②「意見」の域を出ません。
なので、ロシア側が言う、悪天候が①「事実」か、です。
以下のサイトによれば、当日、クリミア半島の東側対岸にあるロシアの空港(沈没場所から直線距離で500km程離れた場所)における気象についての電文では、沈没当日、低気圧が発生していた模様です。
https://news.yahoo.co.jp/byline/moritamasamitsu/20220419-00292104
ならば悪天候だったかというと、上記サイトが正しければ、平均風速は3~5m/s程度、瞬間風速でも11m/s程度とのこと。
積乱雲は認められるが大規模なものではないそうです。
11m/sはGoogle先生に聞くと、「木の大枝が揺れたり、電線がうなったりする」ほどの風速だそうですが、「傘はさしにくい」ということで、傘を差せるレベルのようです。
それで沈没、、、しますかねぇ。おっと、私の②「意見」になってしまいました。
しかし、「やや強い風」に分類されるとのことです。
そして、労働安全衛生法で定める悪天候では、「10分間の平均風速が毎秒10メートル以上」を強風、「瞬間風速が毎秒30メートルを超える風」を暴風と定義しています。
先ほどのサイトが正しければ、残念ながらどちらも悪天候という基準には達していません。
もちろん、日本国が法律で定める悪天候の基準がロシアでも通用するわけではありません。
某国では、映像を見る限りほぼ波が凪いでいる状況でも遭難船救助のために「搭載するレーダーを総動員して」「火器管制レーダー」まで使用するレベルの悪天候に該当するそうですから、国が違えば基準も異なります。
まして、事前に(原因は特定されていないながら)火災を起こしていた船ですから、やや強い風で揺れて沈んでしまうこともありえるかもしれません(この辺りになると①「事実」か②「意見」かは分けて書くのが難しいですね)。
とはいえ、(日本政府の基準が正しいと盲信するつもりはありませんが)足場を組んでの作業時などに参考にする基準である労働安全衛生法の定義が、感覚的に的外れとも思えません(②「意見」です)。
つまり、ロシア政府・メディアのいう悪天候が正しいのであれば、戦時下だからか表に出てきていない気象データを堂々と発表すればいいわけですが、残念ながらそういった「事実」はありません。
発表すれば自らに有利になるデータを公表しないのは、そのようなデータがないか、計測していないか、悪天候が嘘か、の3つしかありません。
戦時下で機密情報で公表できないこともあるかもしれませんが、黒海艦隊旗艦が撃沈されたというロシア側に著しく不利で交戦相手の士気を高める②「意見」を否定するためなら、公表してしかるべきと考えます。
もちろん、ロシア政府やプーチン大統領が、私なんぞの頭では理解できない崇高な理由をもって公表を控えている可能性もあります。
また、戦時下でデータが消失した可能性はあり得ます。
計測していないことはないでしょう。日本の常識は当てはまりませんが、黒海ほどの大きな水域でかつ、沿岸に多くの漁業関係者や船舶運行者がいる水域の気象データを計測していないとはちょっと考えにくいです。
となると、ゲスの勘ぐりではありませんが、悪天候が嘘、と言うのが一番可能性が高そうに見えます。
②「意見」を超えて、③「推測」の範囲に入りますが。
なので、ロシア側の言い分の方が正しいことを証明するためには、ロシアなり、ウクライナなり、他の黒海沿岸諸国なりが当日の気象が悪天候であることを科学的データで示せば良いのです。
これをロシアが進んでしない理由について、アッキーさん他、ロシアの言い分が正しいと②「意見」を表明された方々のお考えをお聞かせいただければ、前向きな議論になるのではないかと思います。
よろしくお願いいたします。